信号待ちや渋滞でブレーキペダルを踏み続けなくても停車状態を保持してくれる「オートブレーキホールド」。足への負担が減り、追突防止にも役立つ便利な機能として、いまや多くの車に標準装備されています。しかし、この機能には地味ながら大きな弱点があります。それは、エンジン(パワースイッチ)を切ると設定がOFFにリセットされ、次に乗るときにもう一度ボタンを押さなければならない車種が多いという点です。
毎回の乗車のたびにボタンを押すのは、わずかな手間とはいえ煩わしいもの。押し忘れたまま走り出してしまい、「あれ、効いてない」と気づくことも少なくありません。そこで注目されているのが、エンジンを切る前のON/OFF状態を記憶し、次回始動時にその設定へ自動的に戻してくれる「自動復帰メモリー機能」です。
この記事では、メーカーの取扱説明書・FAQ、販売店の情報、社外キットの適合表をもとに、自動復帰メモリー機能を採用していることが確認できた車種を整理しました。あわせて、似た車種でも非採用だったモデルも紹介します。なお、全車種を網羅できているわけではないため、購入前には必ず該当年式の取扱説明書で確認してください。
オートブレーキホールドの「メモリー機能」とは
オートブレーキホールドは、信号待ちなどでブレーキを踏んで停車したあと、ペダルから足を離してもブレーキ力を保持する機能です。メーカーによって呼び名は異なり、トヨタでは「ブレーキホールド」、ホンダでは「オートマチックブレーキホールド」、日産では「オートブレーキホールド」と表記されます。
一般的な車では、この機能はエンジンを切るたびにOFF状態へ戻ります。つまり毎回乗車するたびにボタンを押し直す必要があるわけです。これに対し「自動復帰メモリー機能(記憶機能)」とは、電源をOFFにする直前のON/OFF状態を車両が記憶しておき、次に始動したときに同じ設定へ自動で復帰させる仕組みを指します。前回ONにしていたなら、次回も最初からON状態(もしくはシートベルト装着などの条件を満たすと待機状態に復帰)になるため、押し忘れや手間を解消できます。
日産車はこのメモリー式を採用しているモデルが多いと言われており、ユーザーの間でもたびたび話題になります。一方で、トヨタやホンダは長らくメモリー機能を持たない車種が中心でしたが、近年は採用車種が少しずつ増えてきています。
自動復帰メモリー機能の搭載が確認できた車種
ここからは、取扱説明書やFAQ、適合表などで搭載が確認できた車種をメーカー別に整理します。年式や型式によって有無が変わるため、表内の情報も併せてご確認ください。
トヨタ・レクサス
トヨタでは、2025年8月の一部改良以降のシエンタが、ブランドとして最初にメモリー機能を採用した車種とされています。続いて2025年9月以降のアクアにも採用され、取扱説明書には「ブレーキホールドシステムのONおよびOFF設定は、パワースイッチをOFFにしても維持されます」と明記されています。

高級ブランドのレクサスでは、2026年1月以降のIS300hが最初の採用車種です。こちらも取扱説明書に記載があります。さらに2026年8月以降のES350hにも搭載が確認できました。加えて、2026年10月の改良モデルとなるRXにも採用されるとの報道が出ており、こちらは現時点では報道段階の情報です。
| 車種(型式・年式) | 根拠・備考 |
|---|---|
| シエンタ(2025年8月の一部改良以降) | トヨタで最初の採用 |
| アクア(2025年9月以降) | 取扱説明書に「パワースイッチをOFFにしても維持されます」と記載 |
| アルファード(2026年6月以降) | 取扱説明書に「パワースイッチをOFFにしても維持されます」と記載 |
| ヴェルファイア(2026年6月以降) | 取扱説明書に「パワースイッチをOFFにしても維持されます」と記載 |
| レクサス IS300h(2026年1月以降) | レクサスで最初の採用。取扱説明書に記載あり |
| レクサス ES350h(2026年8月以降) | 取扱説明書に記載あり |
| レクサス LBX(2026年10月の改良モデル) | 改良で採用される |
| レクサス RX(2026年10月の改良モデル) | 改良で採用されるという報道段階 |
トヨタ・レクサスは2025年以降、新型車や改良モデルから順次メモリー機能を取り入れ始めている流れが読み取れます。

ホンダ
ホンダでメモリー付きを最初に採用したのは、2021年4月以降のヴェゼル(RV系)です。その後、2024年以降の新型フリードにも同じメモリー付きの仕様が引き継がれています。
ZR-Vも対応車種のひとつで、取扱説明書には再始動後も「前回と同じ設定で復帰」する旨が記載されています。また2025年9月以降のプレリュードでは、次の起動時にシートベルトを締めると待機状態に復帰する動作となっています。

このほか、社外キットメーカーの適合表では「自動ON機能は車両標準装備」とされている車種として、ステップワゴン(RP6〜8、2022年5月以降)、CR-V(RS5・6、2026年2月以降)、N-ONE e:/Super-ONE(2025年9月以降)、インサイト(RM7、2026年7月以降)が挙げられています。ただし、これらはキットメーカーの記載から判断したもので、メーカー公式の取扱説明書では確認できていない点にご注意ください。
| 車種(型式・年式) | 根拠・備考 |
|---|---|
| ヴェゼル(RV系、2021年4月以降) | ホンダで最初にメモリー付きを採用した車種 |
| フリード(2024年以降の新型) | ヴェゼルと同じメモリー付き |
| ZR-V | 再始動後も「前回と同じ設定で復帰」と取扱説明書に記載 |
| プレリュード(2025年9月以降) | 次の起動時に、シートベルトを締めると待機状態に復帰 |
| ステップワゴン(RP6〜8、2022年5月以降) | 社外キット適合表で「自動ON機能は車両標準装備」とされる |
| CR-V(RS5・6、2026年2月以降) | 社外キット適合表で「自動ON機能は車両標準装備」とされる |
| N-ONE e:/Super-ONE(2025年9月以降) | 社外キット適合表で「自動ON機能は車両標準装備」とされる |
| インサイト(RM7、2026年7月以降) | 社外キット適合表で「自動ON機能は車両標準装備」とされる |
日産
日産は、冒頭で触れたとおりメモリー式を採用する車種が多いと言われています。今回、取扱説明書で明確に確認できたのは、ノート(E13)、エクストレイル(T33)、セレナ(C28)の3車種です。いずれも「パワースイッチをOFFにしても、その設定が維持されます」と記載されています。

なお日産では、このほかにもアリア、オーラ、キックス、サクラ、スカイライン、デイズ、ルークス、リーフ、新型エルグランドなどにオートブレーキホールドそのものが搭載されています。メモリー式が多いとされるブランドではありますが、今回メモリー機能の有無を取扱説明書で直接確認できたのは上記3車種にとどまります。これらの車種のメモリー対応を期待する場合は、該当年式の取扱説明書で個別に確認することをおすすめします。
| 車種(型式・年式) | 根拠・備考 |
|---|---|
| ノート(E13) | 「パワースイッチをOFFにしても、その設定が維持されます」と取扱説明書に記載 |
| エクストレイル(T33) | 同上 |
| セレナ(C28) | 同上 |
三菱
三菱では、アウトランダー(PHEV)が、OFFにしたときの設定を記憶し、次の起動時に反映する仕様となっています。デリカD:5も、2026年1月以降の取扱説明書において、電源をOFFにしても設定を記憶すると記載されています。

軽自動車では、デリカミニ/eKスペースが2023年5月の仕様変更以降、記憶機能を純正で追加しています。裏を返せば、それ以前のモデルには搭載されていないため、中古車を検討する際は仕様変更の時期を意識する必要があります。
| 車種(型式・年式) | 根拠・備考 |
|---|---|
| アウトランダー(PHEV) | OFFにしたときの設定を記憶し、次の起動時に反映 |
| デリカD:5(2026年1月以降の取扱説明書) | 電源をOFFにしても設定を記憶 |
| デリカミニ/eKスペース(2023年5月の仕様変更以降) | 記憶機能が純正で追加された |
スバル
スバルは基本的にエンジンを切るとAVH(オートビークルホールド)がOFFに戻る仕様ですが、フォレスター(SL型)には例外として条件付きのメモリー機能があります。ドライバーモニタリングシステムで「始動時の車両設定変更」をONにすると、前回のAVH設定を呼び出せる仕組みです。ただしグレードによってはこの機能が非搭載となる点に注意が必要です。

| 車種(型式・年式) | 根拠・備考 |
|---|---|
| フォレスター(SL型) | 条件付き。ドライバーモニタリングシステムで「始動時の車両設定変更」をONにすると前回のAVH設定を呼び出せる。グレードによって非搭載 |
メモリー機能が「採用されていない」ことが確認できた車種
購入検討時には、似た車種でも非採用だったモデルを知っておくと役立ちます。以下は、取扱説明書や適合表などで非採用と確認できた車種です。
トヨタでは、新型RAV4と、2026年に改良されたノア/ヴォクシーが非採用です。同じく人気のカローラクロスも改良後に非採用のまま、ヤリスクロスも2026年2月の改良後は非採用のようです。トヨタはシエンタやアクアから採用を始めたばかりで、人気SUVやミニバンには必ずしも波及していないことがわかります。
ホンダでは、売れ筋の軽であるN-BOX(JF5)が非採用です。スバルは、前述のフォレスターSL型の例外を除き、エンジンを切るとAVHがOFFに戻る仕様が基本です。
このほか、スズキのeビターラ、ダイハツの新型ムーヴも非採用です。マツダについては、新型CX-5(KM)を含むほぼ全車が、毎回ONにする社外キットの適合対象となっているため、メモリー機能は備えていないと考えられます。
| メーカー | 車種 | 備考 |
|---|---|---|
| トヨタ | 新型RAV4 | 非採用 |
| トヨタ | ノア/ヴォクシー(2026年改良) | 改良後も非採用 |
| トヨタ | カローラクロス | 改良後も非採用 |
| トヨタ | ヤリスクロス(2026年2月改良後) | 非採用のよう |
| ホンダ | N-BOX(JF5) | 非採用 |
| スバル | フォレスターSL型以外の全般 | エンジンを切るとAVHがOFFに戻る |
| スズキ | eビターラ | 非採用 |
| ダイハツ | 新型ムーヴ | 非採用 |
| マツダ | 新型CX-5(KM)含むほぼ全車 | 社外キット適合対象のため、メモリー機能はないと考えられる |
メモリー機能がない車でも「自動ON」にする方法
メモリー機能が非採用の車種でも、諦める必要はありません。社外メーカーからは、エンジン始動後にオートブレーキホールドを自動でONにするキットが数多く販売されています。カプラーオンで取り付けられる製品も多く、毎回ボタンを押す手間を解消できます。
実際、マツダ車やトヨタの一部車種のように、メーカー純正ではメモリー機能を持たないモデルほど、こうした社外キットの適合リストに名を連ねている傾向があります。メーカーが機能を用意していない部分を、アフターパーツが補っている構図と言えるでしょう。ただし車両の仕様によっては、シートベルト装着やドアの閉鎖など一定の条件を満たさないとONにできないケースもあるため、導入前に適合条件をよく確認してください。
購入前に必ず確認したい注意点
最後に、メモリー機能の有無を調べるうえで押さえておきたいポイントをまとめます。
最も重要なのは、同じ車種でも年式・改良の時期・グレードによって有無が変わるという点です。たとえばホンダのヴェゼルは旧型RU系には搭載されておらず、メモリー付きは新型(RV系)からです。三菱のデリカミニ/eKスペースも、2023年5月より前のモデルには記憶機能がありません。スバルのフォレスターのように、同じ型式でもグレードによって搭載・非搭載が分かれるケースもあります。
そのため、中古車や旧年式を検討する場合は、車種名だけでなく型式と年式まで必ず確認することが欠かせません。また本記事で紹介したステップワゴン、CR-V、N-ONE e:、インサイトの4車種は、社外キットメーカーの記載をもとに判断したもので、メーカーの取扱説明書では確認していません。確実を期すなら、販売店やメーカーに問い合わせるか、該当年式の取扱説明書で「パワースイッチをOFFにしても設定が維持される」といった記述があるかを直接チェックするのが確実です。
まとめ
オートブレーキホールドの自動復帰メモリー機能は、日々の運転のちょっとした手間を減らしてくれる、地味ながら実用性の高い装備です。現状では日産がメモリー式を多く採用してきた一方、トヨタ・レクサスも2025年のシエンタ・アクア、2026年のIS300hなどから本格的に採用を始めており、今後さらに広がっていくことが期待されます。
一方で、新型RAV4やノア/ヴォクシー、N-BOX、新型ムーヴなど、人気車種でも非採用のモデルは少なくありません。もし検討している車にメモリー機能がなくても、社外キットで自動ON化できる場合があります。車選びの際は、本記事の一覧を参考にしつつ、最終的には型式・年式ごとの取扱説明書で確認することを強くおすすめします。

