三菱自動車の北米法人(Mitsubishi Motors North America, Inc.)は2026年8月25日(現地時間)、テネシー州フランクリンで開催したディーラー会議にて、北米向け中期経営計画「Momentum 2030(モーメンタム2030)」の更新内容を正式に発表しました。
「Momentum 2030を打ち出したとき、これほど野心的なビジョンが実現できるのか疑問視する声もあった。しかし今日、そのビジョンは確かな形となりつつある」――北米法人のマーク・チャフィン社長兼CEOはそう語り、この計画が単なる事業計画ではなく、ブランドの将来を左右する「長期的なコミットメント」であることを力強く宣言しました。
三菱が北米市場で本気を見せた
この発表では、新型バッテリーEVの投入、アウトランダー派生のタフ系新グレード、そして日産との協業によるピックアップトラック市場への再参入という、三菱にとって歴史的とも言える大きな方針転換が明らかになりました。加えて、全世界のファンが待ち望む「パジェロ(海外名:モンテロ)の名称復活」にも触れられており、グローバル規模での三菱ブランド再建への強い意志が伝わります。本記事では、その全容を詳しく解説します。


Momentum 2030とは? 4つの戦略的柱
Momentum 2030は、三菱が北米市場での成長を実現するために策定した5年間の事業ロードマップです。今回の更新では、以下の4つの戦略的柱が改めて明確に示されました。
- 電動化への道筋(A path to electrification):BEV・PHEVを中心に電動化を推進し、米国の環境規制や消費者ニーズの変化に対応する。
- 製品ラインアップの刷新と拡大(A path to a renewed and expanded product lineup):現在の4モデル体制を段階的に拡充し、顧客の選択肢を大幅に増やす。
- 販売モデルの近代化(A path to a modernized retail sales model):デジタル化・顧客体験の向上を通じて、ディーラービジネスを次世代型へ転換する。
- 販売網拡大と持続的成長(A path to network expansion and sustainable sales growth):全米約300店舗のディーラーネットワークをさらに拡大し、ブランドの存在感を高める。
これらの柱は互いに連動しており、単に「新型車を出す」だけでなく、「ブランドとして米国市場に根付く」ための包括的な戦略を形成しています。
2027年までに4モデルから6モデルへ:ラインアップ大拡充
現在、三菱の北米ラインアップはアウトランダースポーツ、エクリプスクロス、アウトランダー、アウトランダーPHEVの4車種にとどまっています。しかし今回の計画では、2027年第1四半期までに全6モデル体制へと一気に拡充することが宣言されました。2027年時点での北米向け全ラインアップは以下の通りです。
- アウトランダースポーツ(Outlander Sport)
- エクリプスクロス(Eclipse Cross)
- アウトランダー(Outlander)
- アウトランダーPHEV(Outlander PHEV)
- 新型エクリプス スポーツバック(Eclipse Sportback)(BEV・2026年秋登場予定)
- 新型アウトランダー派生モデル(オフロード特化グレード・2027年第1四半期登場予定、モデル名は後日発表)
わずか数年でラインアップを50%増やすという計画は、近年の三菱北米事業の停滞を考えると非常に意欲的であり、日産との連携によるプラットフォームやパワートレインの共有が、このスピード感を支えていると言えます。
注目①:新型BEV「エクリプス スポーツバック」が2026年秋に登場
今回のラインアップ拡充の柱となるのが、新型バッテリーEV「エクリプス スポーツバック(Eclipse Sportback)」です。2026年6月に北米で世界初公開済みのこのモデルは、2026年後半(秋頃)に米国・カナダで発売予定となっており、いよいよ発売が現実のものとなってきました。
エクリプス スポーツバックは、日産の新型リーフ(ZE2)をベースにした三菱ブランドのリバッジモデルとされており、日産との技術・プラットフォーム共有によって開発コストを抑えつつ、三菱らしいSUVデザインと走行性能を融合させた一台です。「エクリプス」という車名は、1990年代に北米で人気を博したスポーツクーペに端を発する三菱の代表的なネームであり、そのブランドイメージをEV時代に引き継ぐ重要なモデルでもあります。
電動化の流れが加速する北米市場において、PHEVで実績を積んできたアウトランダーに加え、フル電動SUVを投入することで、三菱は幅広いパワートレイン選択肢を提供できるようになります。
注目②:アウトランダー派生の本格オフロードモデルが2027年に登場
2027年第1四半期に投入が予告されているのが、アウトランダーをベースとした「タフ系・オフロード特化の新グレード」です。モデル名は現時点では未発表ですが、ティーザー画像からはアウトランダーよりも力強いフロントフェイスを持つ、アドベンチャー志向の派生モデルであることが読み取れます。
三菱はこれまでも、パジェロスポーツ(アジア・中東向け)やトライトン(グローバルピックアップ)などの本格オフロードモデルで実績を積んできたブランドです。北米市場においては、ラダーフレームを採用した本格SUVへの需要が根強く、このアウトランダー派生モデルはその需要を取り込む位置づけと考えられます。一部では、アウトランダーよりもさらに大きな3列シートSUVになる可能性も取り沙汰されており、今後の続報が大いに注目されます。
注目③:日産との協業でピックアップトラック市場に"再参入"へ
今回の発表でもっとも業界を驚かせたのが、「日産との協業を通じた北米ピックアップトラック市場への再参入」の表明です。三菱は過去にマイティマックス(Mighty Max)として北米のピックアップトラック市場に参入していた歴史がありますが、長らくそのセグメントから撤退していました。今回の発表は、実に数十年ぶりとなる北米ピックアップ市場への本格回帰宣言です。
具体的な車両はまだ正式発表されていませんが、ティーザー画像ではボクシーなデザインの分割型LEDヘッドライトと、日産フロンティア(Nissan Frontier)によく似たダブルキャブのシルエットが確認できます。技術的な詳細は明かされていないものの、日産が新型エクステラ(Xterra)や次世代フロンティアに向けて開発しているラダーフレーム構造のプラットフォームをベースに、純粋な内燃機関(ICE)とハイブリッドパワートレインが搭載されると予想されています。
なお、このモデルはグローバル展開中のトライトン(Triton)とは別の、北米専用モデルとして開発されるとされており、ルノー・日産・三菱アライアンスの相乗効果を最大限に活用した戦略的製品となる見込みです。北米のピックアップトラック市場はフォードF-150、シボレーシルバラード、ラム1500などが激戦を繰り広げる巨大セグメントであり、三菱がそこに名乗りを上げることは、ブランド復権に向けた最大の勝負手と言えるでしょう。
注目④:伝説の名車「パジェロ(モンテロ)」がついに復活
今回の北米向けMomentum 2030発表と並行して、三菱自動車本社(日本)も「パジェロ(海外名:モンテロ)」の車名復活を正式発表しました。2026年9月2日に世界初公開予定のこの新型パジェロは、トライトンにも採用されるラダーフレーム構造のシャーシを採用した本格クロスカントリーSUVで、7年ぶりの復活として世界中のオフロードファンから熱い視線を集めています。
北米市場への導入については「現時点で決定していない」とされていますが、Momentum 2030の文脈では「最も象徴的なブランド名の復活はグローバルな三菱の地位を強化するもの」として位置付けられており、将来的な北米展開の可能性も否定されてはいません。一部情報によれば、北米への導入は2030年以降を見込んでいるとされています。
パジェロはその名が示す通り、三菱が世界に誇るオフロードブランドの象徴であり、ダカール・ラリー12連覇という輝かしい競技実績を持ちます。この名車の復活は、単なる新車投入を超えて、「アドベンチャーブランドとしての三菱」を世界に再び印象付ける意味を持っています。
背景:なぜ今、三菱は北米で本気になったのか
三菱自動車は近年、国内市場ではデリカD:5やアウトランダーPHEV、デリカミニなどで一定の存在感を保ちつつも、北米市場ではシェアが低迷していました。しかし、ルノー・日産・三菱アライアンスの枠組みの中で日産との協業関係が深化したことで、プラットフォームやパワートレインの共有が現実的なコスト削減手段となり、今回のような野心的な製品拡充計画が実現可能になったと見られています。
さらに、北米における消費者のSUV・トラック需要は依然として旺盛であり、特にオフロード性能を重視したアドベンチャー系SUVのセグメントは急速に成長しています。三菱が培ってきた「4WDとオフロード走行技術」というブランドDNAは、この市場トレンドと非常に相性が良く、今まさに勝負に出る絶好のタイミングと言えます。
2030年に向けた三菱北米事業の全体像
今回のMomentum 2030更新は、単に「新型車を何台か追加する」というレベルを大きく超えた、三菱の北米事業における構造的な転換を意味します。電動化(BEV・PHEV)、オフロード特化モデル、ピックアップトラック再参入、パジェロ復活によるフラッグシップSUV路線の強化——これらの動きは、「三菱=アドベンチャーとオフロードのブランド」というアイデンティティを軸に、北米でのブランド再構築を目指す一貫した戦略として読み解くことができます。
全米約300店舗のディーラーネットワークのさらなる拡充と、近代化された販売モデルの導入も併せて進められることで、製品・販売・サービスの三位一体での競争力強化が期待されます。
まとめ:三菱の北米戦略、ここが重要
今回の「Momentum 2030」更新発表のポイントを整理すると、2026年秋には新型BEV「エクリプス スポーツバック」が北米デビューを果たし、2027年第1四半期にはオフロード特化のアウトランダー派生モデルが加わることで、現在4車種のラインアップが6車種に拡大します。さらに将来的には日産との協業により北米ピックアップトラック市場に再参入することが正式表明されており、象徴的モデル「パジェロ(モンテロ)」の北米導入も長期的な視野で検討されています。
三菱自動車が2030年に向けてどのような姿に進化するのか、その動向は日本のカーファンにとっても非常に気になるところです。新型パジェロの世界初公開(2026年9月2日予定)を皮切りに、今後の発表ラッシュから目が離せません。
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