英国の名門ブランド・ジャガーは2026年10月6日(現地時間)、ニューヨークにて新生ジャガー初の市販モデルとなる完全電動ラグジュアリー4ドアGT「Type 01(タイプ ゼロワン)」を世界初公開しました。
概要|新生ジャガー初の市販EVがついにベールを脱いだ
2024年に内燃機関(ICE)搭載モデルの生産を終了して以来、ジャガーはブランドの未来を賭けた「一大転換」を進めてきました。その集大成が、2024年末に公開されたコンセプトカー「Type 00」の思想を受け継ぐ、この量産モデル「Type 01」です。
注目すべきは、ジャガーが従来のライバルであったBMW・アウディ・メルセデス・ベンツから明確に距離を置き、ポルシェやベントレーといった「超高級ブランド」との勝負に打って出た点にあります。半世紀以上にわたるブランドの歴史に対する「大胆な賭け」であり、この一台はジャガーの命運を左右する極めて重要なモデルと位置づけられています。
価格とラインアップ|エントリーでも2000万円超のプレミアム戦略
Type 01の受注開始は2027年を予定しています。日本市場向けの価格は以下の通りです。
- Type 01 1030(テンサーティ):2188万円〜
- Type 01 DESIGN VISION(デザインビジョン):2552万円〜
英国では約13万ポンド(約2500万円)から、米国でもおよそ13万ドルからのスタートが見込まれており、ハイスペック仕様では15万ポンド(約3200万円)を超えるとされています。この価格設定こそが、ジャガーが「ベントレー級」の超高級市場を本気で狙っていることの何よりの証拠といえるでしょう。
デザイン|「A Copy of Nothing」白紙から生まれた唯一無二のプロポーション
Type 01は、「Exuberant Modernism(活気あふれるモダニズム)」という新たなクリエイティブ哲学と、「A Copy of Nothing(なにものかのコピーではない)」という精神のもと、既成概念に一切縛られない“白紙の状態”からデザインされました。
名車「E-TYPE」や「XJS」といった往年の系譜を受け継ぎつつも、過去のどのジャガーとも似ていない革新的なフォルムが最大の特徴です。

エクステリアの見どころ
低いルーフライン、短いフロントオーバーハング、長く伸びるボンネット、そして迫力の23インチアルミホイールが圧倒的な存在感を放ちます。フロントには従来型のグリルを持たず、バンパー下部に小さなグロスブラックのエアインテークを配置。

最大の個性は、リアウインドウを完全に排除した斬新なリアエンド造形です。ポルシェと同じく、後方視界は最新のカメラシステム(ClearSight Rear View Display)で確認します。フェンダーの「インゴット」部分には、ジャガーの象徴である「リーパー(跳躍するジャガー)」が精巧にあしらわれています。

妥協なき空力性能
アクティブベーンや3段階展開式リアスポイラーを搭載し、風洞実験による徹底した空力最適化を実施。その結果、空気抵抗係数(Cd値)0.23という同社ロードカー史上最高のエアロダイナミクスを達成しました。この優れた空力性能は、後述する航続距離や高速安定性にも大きく貢献しています。

パワートレーン|ジャガー史上最強1030PS、0-100km/h加速3.2秒
専用EVアーキテクチャ「JEA」を初採用
車体骨格には、英国で設計・開発・製造されるジャガー専用の独自EVプラットフォーム「Jaguar Electric Architecture(JEA)」を初採用。既存のEVプラットフォームでは実現できなかった低い着座位置とドラマチックなシルエット、そして刺激的な走りを両立させています。グランドツアラーとして理想的な前後50:50の重量配分も、この専用設計によって実現しました。

トライモーターAWDが生む圧倒的パフォーマンス
- 搭載モーター:フロント1基(260kW)+リア2基(310kW×2)のトライモーター構成
- 最高出力:1030PS(1015HP) ※ジャガーのロードカー史上最強
- 最大トルク:1365Nm(1007lb-ft)
- 0-100km/h加速:3.2秒
- 中間加速(100→180km/h):わずか4.0秒
インテリジェント・トルクベクタリングを備えたAWDシステムに加え、フォーミュラE世界選手権に参戦する「JAGUAR TCS RACING」チームの知見がフィードバックされています。
走りを支える最新シャシー技術
足まわりには4輪エアサスペンション、可変容量式エアスプリング、ツインバルブ式アクティブダンパー、そして四輪操舵(オールホイールステアリング)システムを採用。底知れぬパワーと、GTにふさわしい洗練されたフラットな乗り心地を高次元で融合しています。
バッテリー・航続距離・充電性能|850V超高電圧システムを搭載
Type 01は容量118kWhのリチウムイオンバッテリー(NMC)を搭載し、850Vの超高電圧電動アーキテクチャを採用しています。
- 航続距離:EPAモード最大400マイル(約643km)/WLTPモード最大450マイル(約720km)
- 急速充電:最大350kWのDC急速充電に対応
- 充電スピード:わずか13分で200マイル(約321km)分を給電、10→80%の充電は約22分で完了
長距離移動を前提とするグランドツアラーとして、十分すぎる実用性能を備えているといえるでしょう。
インテリア|「セントラルスパイン」が創る4つの独立空間
手作業で上質に仕立てられたキャビンの中心には、縦方向に貫く真鍮(ブラス)調アルマイト仕上げの構造体「セントラルスパイン」が配置されています。これにより、乗員一人ひとりのための独立した4つのゾーンが生み出されます。全体に配された真鍮エレメントが、インテリアの美しい水平基調と圧倒的なスケール感を際立たせています。

最新インフォテインメントと没入型オーディオ
近年のEVにありがちな巨大なタブレット型ディスプレイを採用しなかった点は、むしろ好感が持てるポイントです。



- ダッシュボード正面:運転情報を高精細表示する24インチ一体型ガラスOLED(有機EL)ディスプレイ
- センターコンソール:スマートフォン感覚で操作できる7インチ縦型センタータッチスクリーン(空調・オーディオ制御)
- ステアリング:Range Rover GTでも採用される大胆な2スポークデザイン

音響面では、自動車業界初となるダッシュボード幅いっぱいに広がる「フルワイド・パノラミック・サウンドバー」を組み込んだ「ジャガー・イマーシブ・サウンド・システム」を搭載。音の振動を直接乗員に伝える「センサリー・オーディオ・シート」と組み合わせることで、包み込まれるような没入感あふれる音響空間を実現しています。全席を覆う大型パノラミックガラスルーフも、小ぶりなサイドウインドウによる閉塞感を払拭する役割を担っています。

ジャガー担当MDのコメント
ジャガー担当マネージング・ディレクターのロードン・グローバー氏は、次のようにコメントしています。
「ドラマチックなデザインから人々を魅了するドライビングエクスペリエンスにいたるまで、『Type 01』はジャガーの真髄を凝縮させ、新時代を象徴するラグジュアリー・グランドツアラーとして具現化したモデルです。『E-TYPE』や『XJS』の時代と同様に、デザインとエンジニアリングに一切の妥協をすることなく、人々の憧れとなる存在となり、英国ブランドであるジャガーの新たな礎となるでしょう」
まとめ|Type 01はジャガー復活の“切り札”となるか
新型「Type 01」は、1030PSという圧倒的パワー、Cd値0.23の優れた空力性能、850V超高電圧システムによる実用的な航続距離、そして「A Copy of Nothing」を体現する唯一無二のデザインを兼ね備えた、新生ジャガーの旗艦モデルです。
一方で、ベントレーやロールス・ロイスの顧客を振り向かせられるかどうかは未知数であり、ミニマルすぎるインテリアが「ラグジュアリー」として受け入れられるかという課題も指摘されています。この大胆な賭けが吉と出るのか——日本導入が見込まれる2027年に向けて、Type 01の動向から目が離せません。

