日本の物流を支える商用車市場に、注目すべき新情報が飛び込んできました。トヨタ自動車は2025年6月16日、小型商用車「タウンエース」のバンタイプである「タウンエースバン」の改良モデルを日本で発売しました。今回の改良は、最新の法規対応と原材料価格の高騰に伴う価格改定が主な焦点となっており、生産が一時休止されていたバンタイプの車両が再び市場に戻ってきたことで、多くのビジネスユーザーから期待が寄せられています。
生産再開と価格改定の背景：法規対応とコスト上昇の波
これまで、特定車両の生産終了が話題となる中で、タウンエースバンもまた、法規対応の遅れから2024年10月以降、在庫販売のみとなっていました。しかし、今回の改良によって最新の法規に適合し、生産が再開されたことは、商用車が必要なユーザーにとって朗報と言えるでしょう。この法規対応は、安全性の向上を求める現代の車両基準に合致するための重要なステップです。
一方で、世界的な原材料価格の高騰は、自動車業界全体に大きな影響を与えています。タウンエースバンも例外ではなく、今回の発売に合わせて価格改定が実施されました。タウンエースバンは2,007,500円から2,442,000円という価格帯となり、エントリーモデルの価格は188,500円アップし、これまでの100万円台後半から200万円台へと引き上げられています。これは、原材料費や物流費などのコスト上昇を反映したものであり、現在の経済状況を鑑みれば避けられない措置と言えるでしょう。残念ながら、タウンエースのトラックモデルは引き続き生産が休止されていますが、バンの生産再開は市場に活気をもたらすはずです。タウンエースは、ダイハツ「グランマックス」のOEMモデルとしても知られていますが、今回の改良により、トヨタとしての独立した魅力をさらに高めています。
機能性と利便性を追求したエクステリアデザイン
新型タウンエースバンの外装は、商用車としての機能性を最優先に考えたシンプルなデザインが特徴です。無駄を省いたスタイリングは、過酷な使用環境にも耐えうる堅牢さを感じさせます。ボディタイプにはバンとトラックが用意されています（トラックは現在生産休止中）。さらに特装車（TECS）として、冷凍車やパワーリフト車も選択できるため、多様なビジネスニーズに対応可能です。
特に、冷凍車は冷却能力が－5度までの中温冷凍車と、＋5度までのクーリング車の2種類が用意されており、生鮮食品や医薬品など、温度管理が必要な荷物の輸送に最適な選択肢となります。パワーリフト車は、重い荷物の積み下ろし作業を劇的に効率化し、ドライバーの負担軽減にも貢献します。これらの特装車の存在は、タウンエースが単なる移動手段ではなく、ビジネスをサポートする「ツール」としての価値を追求していることを示しています。
ボディサイズは、タウンエーストラックが全長4295mm×全幅1675mm×全高1920mm、ホイールベース2650mm。タウンエースバンが全長4065mm×全幅1665mm×全高1930mm、ホイールベース2650mmとなっています。トラックとバンでは全長に違いがあり、トラックではバンよりも230mm長いことで、2430mmの荷台長を確保し、より多くの荷物を積載できるよう工夫されています。
快適性と実用性を両立したインテリア
新型タウンエースバンのインテリアは、仕事で長時間過ごすドライバーの快適性と実用性を高い次元で両立するように設計されています。シンプルな中にも使いやすさを追求したレイアウトは、煩雑な操作を避け、運転に集中できる環境を提供します。
特にタウンエースバンでは、広々とした後部空間を確保し、最大積載量750kgを実現しています。これは、多くの荷物を効率的に運搬できることを意味します。また、最大5人乗りにも対応しているため、作業員を現場まで運ぶといった用途にも柔軟に対応できます。
パワフルで経済的なエンジン性能
新型タウンエースバンには、2020年の改良時に小型商用車のために新開発された1.5L直列4気筒ガソリンエンジン「2NR-VE」が搭載されています。このエンジンは、最高出力97ps、最大トルク13.7kgmを発揮し、荷物を積んで停車と発進を繰り返す市街地の低中速域で、豊かなトルクによるパワフルな走行性能を実現しています。商用車にとって重要な、積載時の加速性能や坂道での登坂能力も十分に確保されていると言えるでしょう。
また、「2NR-VE」エンジンは、燃焼効率の向上やエンジン内部のフリクション低減、そしてアイドリングストップ機能の採用により、優れた低燃費性能と低排出ガス性能を両立しています。環境性能への配慮は、現代のビジネスにおいて非常に重要な要素であり、燃料コストの削減にも直結するため、ユーザーにとって大きなメリットとなります。
トランスミッションは、用途に合わせて4速ATと5速MTから選択可能です。ATは市街地での頻繁な停車・発進に、MTはよりダイレクトな操作感と燃費性能を求めるユーザーに適しています。駆動方式は、積載時の安定性に優れるFR（後輪駆動）をベースとし、悪路や積雪路での走行を想定した4WDモデルもラインナップされています。これにより、様々な道路状況や使用環境に対応できるようになっています。
進化した燃費性能：WLTCモードで最高12.9km/L
新型タウンエースバンの燃費性能は、2020年の改良時に新開発エンジンを搭載したことで大幅に改善されています。旧モデルから約20％もの改善が図られており、実燃費に近いとされるWLTCモード値で、タウンエースバンは最高12.6km/L、タウンエーストラックは最高12.9km/Lを達成しています。
具体的には、タウンエーストラックの後輪駆動車では4速ATが11.9km/L、5速MTが12.9km/L。4WDでは4速ATが11.3km/L、5速MTが12.4km/L。タウンエースバンの後輪駆動車では4速ATが12.0km/L、5速MTが12.6km/L。4WDでは4速ATが11.4km/L、5速MTが12.2km/Lという数値が公表されています。この燃費性能の向上は、日々の燃料費を削減し、ビジネスのランニングコスト低減に大きく貢献するため、商用車を選ぶ上で非常に魅力的な要素となります。
充実の安全装備でドライバーをサポート
新型タウンエースバンには、ドライバーの安全をサポートする充実した安全装備が搭載されています。特に注目すべきは、ダイハツの衝突回避支援システム「スマートアシスト」の採用です。
「スマートアシスト」は、夜間の歩行者や昼間の自転車運転者も検知する衝突回避支援ブレーキ機能を備えています。これにより、万が一の事故を未然に防ぐ、あるいは被害を軽減する効果が期待できます。また、駐車場などでアクセルとブレーキペダルを踏み間違えた際に、急発進を抑制する誤発進抑制機能もパッケージ化されており、ヒューマンエラーによる事故のリスクを低減します。
さらに、ドライバーの視界を明るくサポートするLEDヘッドランプ（マニュアルレベリング機能付）や、視認性が高く後続車からの視認性を向上させるLEDランプをリヤコンビネーションランプに採用することで、夜間や悪天候時の視認性が向上し、安全運転を支援します。これらの安全装備は、日々の業務で長距離を走行するドライバーにとって、安心感と疲労軽減に繋がり、結果的に事故のリスク低減に貢献することでしょう。
編集部から一言
改良された新型タウンエースバンは、2025年6月16日に発売されました。トヨタは、最新の法規に対応することでタウンエースの生産を再開し、改めて日本の商用車市場での存在感をアピールしていく方針です。
生産再開によって再び市場に投入される新型タウンエースバンは、その高い実用性、経済性、そして安全性能によって、多様な業種のビジネスに貢献することを目指しています。物流の効率化が求められる現代において、新型タウンエースバンは、間違いなく商用車選びの新たな選択肢となるでしょう。今後の市場での評価や、さらなるラインナップの拡充にも期待が高まります。
あなたのビジネスに、新しいタウンエースバンはどのような可能性をもたらすでしょうか？
トヨタ タウンエース
