トヨタ自動車は2026年5月12日、タクシー専用ユニバーサルデザイン車両「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」を一部改良して発売しました。今回の改良では、メーター内に「制動灯表示灯」が標準装備され、運転支援システムによる自動制動時にも点灯する機能が新たに追加されています。本記事では、最新改良の内容をはじめ、JPN TAXIの価格・スペック・魅力をわかりやすく解説します。
JPN TAXI(ジャパンタクシー)とは?
JPN TAXI(ジャパンタクシー)は、トヨタ自動車が2017年10月に発売したユニバーサルデザインタクシー専用のトールワゴン型LPGハイブリッド車です。世界初のLPGハイブリッドシステムを搭載した商用車として登場し、従来のクラウンコンフォート・クラウンセダンの後継モデルに位置づけられています。

2013年の第43回東京モーターショーに参考出品された「JPN TAXI Concept」をベースに市販化されており、国土交通省が定める「ユニバーサルデザインタクシー」の認定要件をトヨタ車として初めて満たした車種でもあります。タクシー専用設計でありながら、一般ユーザーが購入して自家用車登録することも可能で、自動車教習所での第二種運転免許教習車としての導入実績もあります。



2026年5月 最新一部改良の内容
今回の一部改良における最大のポイントは、「制動灯表示灯」の標準装備化です。この機能は単なるブレーキランプの追加ではなく、運転支援システムがブレーキ操作を行った際にもメーター内の表示灯が点灯するというものです。

従来は、ドライバー自身がブレーキペダルを踏んだ時だけ制動状態を把握していましたが、今回の改良により、自動制動システムが作動した際にもメーター内の制動灯表示灯が点灯し、「今、車がシステムによってブレーキをかけている」ということをドライバーに視覚的に伝えます。これにより、ドライバーは自分の操作とシステムの介入を明確に区別できるようになり、運転中の安心感が大幅に向上します。
タクシーは1日に何十・何百回とブレーキ操作を行うプロドライバーが乗車する車両です。運転支援システムへの理解と信頼を深めることは、乗客の安全確保にも直結する重要な改良といえます。
改良のポイントまとめ:
- メーター内に制動灯表示灯を標準装備
- 運転支援システム(Toyota Safety Sense)による自動制動時にも表示灯が点灯
- ドライバーへの視覚的フィードバックにより、システム制動状態をリアルタイムで認識可能
- 安全運転支援と乗客への安心提供の両立を実現
2026年5月改良後の価格
今回発売された改良モデルの販売価格は以下のとおりです(消費税込み)。
- 標準グレード「和(なごみ)」:348万9,200円
- 上級グレード「匠(たくみ)」:371万3,600円
タクシー事業者向けに設計されたプロフェッショナルユース車両として、これらの価格は航続距離や耐久性、安全装備の充実度を考慮すると競争力の高い設定といえます。
直前の改良履歴:2025年6月一部改良の内容
2026年5月の改良直前にあたる2025年6月2日にも、JPN TAXIは大きな一部改良を受けていました。この際の改良内容は多岐にわたり、タクシーとしての実用性と安全性を大幅に向上させるものでした。
まず航続距離の延伸として、LPGタンクの容量が従来の52リットルから58リットルに拡大されました。これにより、1回の給油で走れる距離が伸び、タクシー事業者にとっての給油頻度の低減と業務効率の向上に貢献しています。また、メーターの意匠が変更され視認性が向上したほか、7インチTFTカラーメーターとマルチインフォメーションディスプレイの採用により、運転情報がより直感的に確認できるようになりました。

安全装備面では、プリクラッシュセーフティの機能が大幅に拡充されました。従来の歩行者・自転車検知機能に加え、交差点右折時の対向直進車検知、右左折時の横断歩行者・自転車運転者検知、交差点出会い頭時の車両・自動二輪車検知、緊急時操舵支援機能、低速時加速抑制機能など、複雑な交差点シーンに対応した多彩な機能が追加されています。タクシーは都市部の交差点を何度も通過するため、これらの安全機能の充実は事故防止に直接寄与します。
さらに、ブラインドスポットモニターの搭載、外部給電アタッチメントの追加、天井サーキュレーターの設置など、乗客の快適性とドライバーの利便性を高める装備も充実しました。価格は「和」が336万7,100円から、「匠」が359万2,600円からとなっていました(2025年6月当時)。

JPN TAXIの主要スペック
JPN TAXIの基本スペックは以下のとおりです。
搭載エンジンはトヨタ1NZ-FXP型、1,496cc直列4気筒DOHCのLPGエンジンで、出力は54kW(74PS)/4,800rpm、トルクは111N・m(11.3kgf・m)/2,800〜4,400rpm。これに交流同期電動機(2LM型、45kW・61PS、最大トルク169N・m)を組み合わせたLPGハイブリッドシステムにより、システム最高出力73kW(100PS)を発揮します。変速機は電気式無段変速機(CVT)を採用しています。
燃費性能はJC08モードで19.4km/L(WLTCモード:16.5km/L、市街地モード:18.0km/L、郊外モード:17.0km/L、高速道路モード:15.7km/L)という優れた数値を誇り、タクシー事業者のランニングコスト低減に大きく貢献しています。

車体寸法は全長4,400mm×全幅1,695mm×全高1,750mm(車高アップパッケージ装着時1,765mm)、ホイールベース2,750mm、車両重量1,390〜1,410kgです。5ドアトールワゴンボディを採用し、乗車定員は通常5名、車いす乗車時は3名となっています。駆動方式はFF(前輪駆動)で、プラットフォームはトヨタBプラットフォームを使用。サスペンションは前がマクファーソンストラット式コイルスプリング、後がトレーリングリンク車軸式コイルスプリング(3リンク)という構成です。
| スペック | JPN TAXI ハイブリッド |
|---|---|
| 全長 | 4,400mm |
| 全幅 | 1,695mm |
| 全高 | 1,750mm |
| ホイールベース | 2,750mm |
| エンジン | 1NZ-FXP 1.5L 直4DOHC LPGエンジン+ モーター(リダクション機構付THSII) |
| 排気量 | 1,496㏄ |
| 最高出力 | 54kW(74p)/4,800rpm |
| 最大トルク | 11.3kgm/3600~4,400rpm |
| システム出力 | 73kW(100ps) |
| WLTCモード燃費 | 16.8km/L |
| JC08モード燃費 | 19.4km/L |
ユニバーサルデザインと車いす対応
JPN TAXIの最大の特徴のひとつが、国土交通省認定の「ユニバーサルデザインタクシー」としての設計思想です。大開口のスライドドアと低床フロアを採用することで、高齢者や小さな子ども、車いす利用者でもスムーズに乗り降りできます。

車いす乗降用スロープは折りたたみ2つ折り構造で、長さ1,100mmの設計となっており、耐荷重は300kgに対応しています(ピンクシール)。延長用スロープも樹脂素材の一体成形品が採用され、組立作業が大幅に簡略化されました。車両への乗り込みを補助するグリップや専用シートなど、車いすユーザーに配慮した装備が随所に盛り込まれており、「誰でも利用できるタクシー」としての完成度は非常に高い水準にあります。
また、訪日外国人観光客を意識した和のデザインや清潔感のある内装素材、抗菌仕様のグリップ類など、多様な乗客に対応できるよう細部にまで気配りが施されています。
LPGハイブリッドシステムの優位性
JPN TAXIが採用するLPGハイブリッドシステムは、世界初の技術であり、環境性能と動力性能を高次元で両立しています。LPG(液化石油ガス)はガソリンと比較してCO2排出量が少なく、タクシーのような大量走行車両において環境負荷を大幅に低減できます。ハイブリッドシステムとの組み合わせにより、市街地走行での低速・停車・発進が繰り返されるシーンでも高い燃費効率を発揮し、「平成30年排出ガス基準75%低減レベル(☆☆☆☆☆)」という最高評価の排出ガス認定も取得しています。
Toyota Safety Senseによる安全性
JPN TAXIにはトヨタの先進運転支援システム「Toyota Safety Sense」が標準装備されています。プリクラッシュセーフティ(自動ブレーキ)、レーンディパーチャーアラート、オートマチックハイビームなどの基本機能に加え、2025年6月の改良以降は交差点シーンに特化した多くの検知機能が追加されました。今回2026年5月の改良で追加された「制動灯表示灯」は、これらの運転支援システムとドライバーをつなぐ新しい情報伝達手段として機能し、システムへの信頼性と透明性をさらに高めるものです。





JPN TAXIのグレード構成
JPN TAXIのグレード構成は、標準グレードの「和(なごみ)」と上級グレードの「匠(たくみ)」の2種類です。「和」は必要十分な装備を備えたスタンダード仕様であり、「匠」はより上質な内外装と充実した装備を誇るプレミアム仕様です。タクシー事業者の予算や運用スタイルに合わせて選択できる構成となっています。
まとめ:進化し続けるジャパンタクシー
2017年の登場以来、JPN TAXI(ジャパンタクシー)はユーザーの声を丁寧に反映しながら継続的な改良を重ねてきました。車いすスロープの使いやすさ改善、安全装備の拡充、LPGタンク容量の増加、そして今回の制動灯表示灯の標準装備化まで、「誰にでも、いつでも使いやすい」というコンセプトを着実に進化させ続けています。
訪日外国人の増加や高齢化社会の進展に伴い、バリアフリー対応のタクシーへの需要はますます高まっています。JPN TAXIはその最前線に立つ車両として、今後もタクシー業界の中核を担い続けるでしょう。

