日野自動車は2026年10月27日、バッテリーEV(BEV)のフルフラット路線バス「日野ブルーリボン Z EV」を一部改良し、2026年11月初旬から出荷を始めると発表しました。今回の改良は、寒い地域での使いやすさと、営業所での充電作業のしやすさを高める内容です。
ブルーリボン Z EVは2024年10月31日に発売された、日野の大型EV路線バスです。最前部から最後席まで段差のない「フルフラットフロア」が最大の特徴で、今回は発売から約2年での改良となります。全国のバス事業者でEVバスの導入が進むなか、冬の暖房や充電設備の配置といった、実際に運行してみて見えてきた課題に応える改良といえます。
この記事では、新型ブルーリボン Z EVの変更点、スペック、航続距離と充電、安全装備、ディーゼル版との違い、導入前にチェックしたいポイントまで、わかりやすくまとめました。

そもそも日野ブルーリボン Z EVとは?
「日野ブルーリボン」は、日野自動車の大型路線バスのシリーズ名です。全国の路線バスで長く使われてきたディーゼル車・ハイブリッド車に加え、2024年10月にバッテリーとモーターだけで走るEV版として登場したのが「日野ブルーリボン Z(ズィー) EV」です。
走行中に排気ガスやCO2を出さないゼロエミッション車で、エンジン音や変速ショックがないため、乗客の快適性だけでなく、ドライバーの運転疲労の軽減にもつながるとされています。ラインアップは全長10.5mのショートボデー(都市型)で、代表車型の乗車定員は70人です。
新型ブルーリボン Z EV 一部改良の発表日と出荷時期
一部改良は2026年10月27日に発表され、改良モデルは2026年11月初旬から出荷開始となります。路線バスは乗用車と違い、バス事業者が販売会社を通じて仕様を決めて発注する商用車のため、「発売日」ではなく「出荷開始」と案内されています。
【変更点まとめ】新型ブルーリボン Z EVはここが変わる
今回の改良の主な変更点は以下の通りです。
- 寒冷地仕様オプションを新設定:プレヒーターを採用し、暖房性能を高めるとともに、冬の航続可能距離の改善に寄与
- 充電口を後面へ移設:車両側面から車両後面に移し、並列駐車のままでも充電作業がしやすくなった
- EV識別ラベルを追加:保安基準の一部改正に対応し、車両の前部・側面・後部に表示
① プレヒーター付きの寒冷地仕様オプションを新設定
EVは、エンジン車のようにエンジンの熱を暖房に使えません。そのため冬は暖房に電気を使い、その分だけ走れる距離が短くなりやすいのが弱点です。ブルーリボン Z EVはもともと、消費電力の少ないヒートポンプ暖房を加えたパッケージ電動エアコンと、暖房性能の高い高電圧ヒーターを組み合わせていました。
今回はこれに加えて、プレヒーターを採用した寒冷地仕様オプションが新しく設定されました。日野は、暖房性能の向上と冬季の航続可能距離の改善に寄与すると説明しています。北海道・東北・北陸など、冬の寒さが厳しい地域の事業者にとっては、EVバスを選ぶうえでのハードルが下がる改良です。なお、寒冷地仕様でどのくらい航続距離が変わるかという具体的な数値は公表されていません。
② 充電口を車両側面から後面へ移設
改良前は車両の側面にあった充電口が、車両後面に移されました。バスの営業所では、多くの車両を横に並べて止める「並列駐車」が一般的です。充電口が側面にあると、隣のバスとの間に充電ケーブルを通すスペースが必要になり、駐車の間隔や作業のしやすさに影響します。
後面に充電口があれば、バスを詰めて並べたままでも、後ろ側から充電作業ができます。限られた敷地に充電器を設置する事業者にとって、車両を置ける台数や作業効率に関わる実用的な改良です。充電はこれまでと同じく急速充電(CHAdeMO規格)で、最大出力50kWに対応します。
③ 前部・側面・後部にEV識別ラベルを追加
保安基準の一部改正に対応するため、車両の前部・側面・後部にEV識別ラベルが追加されました。
新型ブルーリボン Z EVの価格
ブルーリボン Z EVの車両価格は、2024年の発売時、今回の改良時ともに公式には発表されていません。路線バスは用途や仕様に合わせて販売会社と相談して決めるため、価格は販売会社への問い合わせとなります。
参考として、2026年8月21日に一部改良されたディーゼル版の代表車型の価格(公式発表)を載せておきます。
| 車種(代表車型) | パワートレイン | 乗車定員 | 価格(税込) |
|---|---|---|---|
| 日野ブルーリボン Z EV 大型路線/都市型 |
モーター 250kW | 70人 | 未発表 |
| 日野ブルーリボン(ディーゼル) 大型路線/都市型/中乗り |
4HK1-TCH 169kW(230PS)・6速AT | 87人 | 3,315万9,390円 |
| 日野レインボー(ディーゼル) 中型路線/都市型/中乗り |
4HK1-TCS 153kW(208PS)・6速AT | 61人 | 2,976万8,200円 |
2024年の発売時、日野はブルーリボン Z EVの販売形態として売り切りのほか、グループ会社CUBE-LINXの商用電動車向けワンストップサービス「エモぷらっと」の利用も案内しています。充電器や電力設備、工事の手配まで含めて相談できる仕組みです。
新型ブルーリボン Z EVのボディサイズ
代表車型(都市型)のサイズは、改良の前後で変わっていません。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 全長×全幅×全高 | 10,545×2,485×3,330mm |
| ホイールベース | 4,990mm |
| 最小回転半径 | 7.9m |
| 乗員 | 70人 |
| 後方室内高 | 2,405mm(ノンステップエリア水平面)/2,265mm(立席エリア最後端) |
全長約10.5mは、都市部の路線で扱いやすいサイズです。屋根の上に高電圧バッテリーを積むため全高は3,330mmとなっており、車庫や洗車機の高さ制限は事前に確認しておきたいところです。
ゼロエミッション!新型ブルーリボン Z EVの外装(エクステリア)
外観は、白いボディに黒い窓まわりと屋根上のカバーを組み合わせたデザインで、側面には「Zero emission」のロゴが入ります。屋根の上が盛り上がって見えるのは、高電圧バッテリーとパッケージ電動エアコンを載せているためです。
灯火器類はすべてLED化され、視認性の向上と省電力化を両立しています。屋根上にバッテリーを載せる重さに対応するため、ルーフ・側面・フロアの骨格をつないだ「環状骨格」でボデーを強化しており、ボデー剛性が上がることで車内の静かさにも役立っています。今回の改良では、後面の充電口と前・横・後ろのEV識別ラベルが外観上の見分けポイントになります。
段差ゼロ!新型ブルーリボン Z EVの内装(インテリア)

フルフラットフロア
最大の特徴は、最前部から最後席までステップがないフルフラットフロアです。リヤアクスルの左右にモーターを内蔵した「ハブモーター付きドロップアクスル」を採用し、高電圧バッテリーを屋根の上と最後部の座席下に分けて置くことで、後ろまで床を低く平らにしています。高さのあるタイヤハウス上の座席をなくし、すべての席に段差なしでアクセスできるため、お年寄りや車いす・ベビーカーの利用者にもやさしい作りです。

座席・バリアフリー装備
- 優先席を前向きにして、立ち座りしやすく。各席の前に幅広のグリップを設置
- 広い車いすスペース・フリースペースと、自動巻取り式の床固定式車いす固定装置
- 乗り降りのときに車両の左側を下げる車高調整装置
- 簡単に設置できる反転式スロープ板
- 握り棒や押しボタンに朱色・黄赤色を使い、見分けやすい配色
空調・換気
エアコンには外気導入機能があり、窓を開けなくても換気できます。待機中にキーをOFFにしても一定時間エアコンを動かせる「延長稼動機能」や、細かい粒子を集めるエアロゾルフィルターも備えます。
新型ブルーリボン Z EVのパワートレインとスペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 型式(代表車型) | ZAC-KV828L1-F6JE |
| モーター | 交流誘導電動機 |
| 最高出力 | 250kW |
| バッテリー | リチウムイオンバッテリー(総電力量242kWh) |
| 充電方式 | 急速充電(CHAdeMO方式・最大50kW) |
| 一充電走行距離 | 360km(国交省審査値) |
バッテリーは商用EV向けのモジュール方式で、屋根の上と後部の2か所に分けて積み、重量配分を整えています。バッテリー専用の水冷式温度管理システムをルーフ部とリヤ部の2系統で備え、性能の安定とバッテリーの長寿命化を図っています。日野はディーゼル版ブルーリボンと同等の動力性能を確保していると説明しています。

運転席は、ディーゼル車のメーターをベースにEV固有の情報を表示し、EVならではの操作をできるだけ減らしています。回生ブレーキは4段階で強さを選べ、フットブレーキを踏んだときも回生ブレーキを優先して使うため、電費の向上とブレーキパッドの寿命延長に役立ちます。電動パーキングブレーキと総輪ディスクブレーキも採用しています。
新型ブルーリボン Z EVの航続距離と充電
一充電走行距離は360km(国交省審査値)で、日野は路線バスで使われる航続距離をカバーするとしています。ただし外気温や冷暖房の使用、乗車人数によって短くなる点には注意が必要で、とくに冬の暖房の影響が大きいことが、今回の寒冷地仕様オプションの設定につながっています。
バッテリーは国内主流の350Vで充電できる高電圧タイプで、急速充電(CHAdeMO Ver1.0、外気温20℃・出力50kWの場合)で残量20%から80%まで約3.2時間です。夜間に営業所で充電し、日中に運行する使い方が基本になるでしょう。
また、別売の外部給電器をつなぐと家庭用の100V電源として電気を取り出せるV2L機能を備えています。災害で停電したときには、避難所などへの電力供給に使えます。
新型ブルーリボン Z EVの安全装備
- フロントブラインドスポットモニター:死角になりやすい車両直前の歩行者・自転車を検知し、警告表示とシートバイブレーターで注意を促す(自車速10km/h以下で作動)
- ドライバー異常時対応システム(EDSS):乗務員の異常時に段階的に減速して停車。停車後は電動パーキングブレーキが自動で作動
- ドライバーステータスモニター(DSM):カメラで居眠り・脇見・姿勢崩れを検知して警告し、応答がなければEDSSを作動
- LED式灯火器類:視認性の向上と省電力化
なお、ディーゼル版のブルーリボン・レインボーには2026年8月の改良で出会い頭警報なども加わっていますが、ブルーリボン Z EVの今回の改良内容には安全装備の追加は含まれていません。
新型ブルーリボン Z EVとディーゼル版の違いを比較
| 項目 | ブルーリボン Z EV | ブルーリボン(ディーゼル) |
|---|---|---|
| 動力 | モーター 250kW | 4HK1-TCH 169kW(230PS) |
| 乗車定員(代表車型) | 70人 | 87人 |
| 床 | 最後席までフルフラット | ノンステップ |
| 排出ガス | ゼロ | あり(令和7年度重量車燃費基準適合) |
| 価格(税込) | 未発表 | 3,315万9,390円 |
ディーゼル版は乗車定員が多く、燃料補給の時間も短いため、長い距離を走る路線や輸送力が必要な路線に向きます。一方、Z EVは排気ガスが出ず静かで、段差のない車内が強みです。病院や駅を結ぶ路線、高齢の利用者が多い路線、環境への取り組みを打ち出したい自治体の路線などで力を発揮するタイプといえます。
新型ブルーリボン Z EVはどんな事業者に向いている?
おすすめ① 【寒冷地の事業者なら】寒冷地仕様オプション付き
冬の気温が低い地域では、暖房による電力消費が運行計画に直接響きます。今回新設定された寒冷地仕様オプションは、暖房性能と冬の航続可能距離の改善を狙ったもので、これまでEVバスの導入をためらっていた地域の事業者にとって検討しやすくなりました。
新型ブルーリボン Z EVの出荷はいつ?
改良モデルは2026年11月初旬から出荷が始まります。路線バスは受注生産が基本のため、実際に各地の路線で走り始める時期は、事業者ごとの発注時期や架装・登録の日程によって変わります。
導入前にチェックしたい3つのポイント
1つ目は、充電設備の準備です。CHAdeMO方式の急速充電器と、それに見合った電力契約・受電設備が必要になります。充電口が後面になったことで、充電器を置く位置も車両の後ろ側を前提に計画するとスムーズです。
2つ目は、冬の運行条件です。一充電走行距離360kmは国交省審査値で、実際には暖房や乗車人数で短くなります。寒い地域では寒冷地仕様オプションを付けるかどうかを、路線の距離と運行本数から判断しましょう。
3つ目は、定員と車庫の条件です。代表車型の乗員は70人で、ディーゼル版(87人)より少なくなります。全高3,330mmと合わせて、混雑する時間帯の輸送力や、車庫・洗車機の高さを事前に確認しておくと安心です。
新型ブルーリボン Z EVに関するよくある質問(FAQ)
Q. 新型ブルーリボン Z EVの改良モデルはいつから出荷されますか?
A. 2026年11月初旬から出荷が始まります(発表は2026年10月27日)。
Q. 一番大きな変更点は何ですか?
A. プレヒーターを採用した寒冷地仕様オプションの新設定と、充電口の後面への移設です。あわせてEV識別ラベルが追加されました。
Q. 航続距離はどのくらいですか?
A. 一充電走行距離は360km(国交省審査値)です。外気温や冷暖房の使用、乗車人数によって短くなります。
Q. 充電にはどのくらい時間がかかりますか?
A. 急速充電(CHAdeMO、外気温20℃・出力50kWの場合)で、残量20%から80%まで約3.2時間です。
Q. 価格はいくらですか?
A. 公式には発表されていません。販売会社への問い合わせとなります。
まとめ:新型ブルーリボン Z EVは「冬」と「充電」に強くなった実用改良
日野ブルーリボン Z EVの今回の一部改良は、見た目やスペックを大きく変えるものではありません。しかし、プレヒーター付きの寒冷地仕様オプション、後面への充電口移設、EV識別ラベルの追加と、どれも実際にEVバスを運行する現場の使いやすさに直結する内容です。
最後席まで段差のないフルフラットフロア、360kmの一充電走行距離、V2Lによる災害時の給電といった持ち味はそのままに、寒い地域や敷地の限られた営業所でも導入しやすくなりました。これから路線バスのEV化を考える事業者にとって、有力な選択肢の一つになりそうです。
最新情報が入り次第、随時更新していきます。

