2025年8月18日、アウトモビリ・ランボルギーニは米カリフォルニア州ペブルビーチで開催された「モントレー・カー・ウィーク2025」において、29台限定の特別モデル「フェノメノ(Fenomeno)」を発表しました。
ランボルギーニ史上最強のハイブリッドスーパーカーが誕生
このモデルは、ランボルギーニ史上最も強力なV型12気筒エンジンと3基の電気モーターを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載し、システム合計出力1080馬力を誇る究極のスーパースポーツカーです。
フェノメノの車名の由来と歴史的意義
闘牛「フェノメノ」の伝説
車名「フェノメノ」は、ランボルギーニの伝統に従い、闘牛の名前に由来しています。2002年にメキシコのモレリアで勇敢に闘った有名な闘牛「フェノメノ」は、2人の闘牛士を相手に見事な闘いぶりを示し、その勇敢さから命を救われたという伝説があります。フェノメノという言葉は、イタリア語とスペイン語で「驚異的な」という意味を持ち、真に卓越した唯一無二のものを表現しています。
ランボルギーニ限定モデルの系譜
フェノメノは、ランボルギーニの伝統的な限定モデルの集大成として位置づけられています。この系譜は以下のように続いてきました:
- レヴェントン(Reventón) - 2007年
- セスト・エレメント(Sesto Elemento) - 2010年
- ヴェネーノ(Veneno) - 2013年
- センテナリオ(Centenario) - 2016年
- シアン(Sián) - 2019年
- カウンタック(Countach) - 2021年
- フェノメノ(Fenomeno) - 2025年
革新的なパワートレイン:1080馬力のハイブリッドシステム
V12エンジンの詳細スペック
フェノメノの心臓部は、自然吸気式6.5リッターV型12気筒エンジンです:
- 最高出力: 835馬力(614kW)/9,250rpm
- 最大トルク: 725Nm(73.9kgf-m)/6,750rpm
- 最高回転数: 9,500rpm
- 比出力: 128馬力/リッター(ランボルギーニ史上最高)
このエンジンは9,500rpmの最高回転数に対応できる特別なバルブトレインを採用し、9,250rpmで835馬力を発生します。これはランボルギーニの歴代V12エンジンの中で最も高い比出力を誇ります。
3基の電気モーター構成
ハイブリッドシステムは、戦略的に配置された3基の電気モーターで構成されています:
- フロント2基のモーター
- 油冷式アキシャルフローモデル
- 各110kW(150馬力)を発揮
- トルクベクタリング機能付き
- 回生ブレーキ機能搭載
- 各モーター最大トルク:350Nm
- リヤ1基のモーター(8速DCT一体型)
- ラジアルフラックスモーター
- ギヤボックス上部に配置
- スターターモーターと発電機の役割も担う
- P2/P3ポジション切り替え可能
バッテリーシステム
- 容量: 7kWh
- 配置: トンネル下の最適化されたスペース
- 技術: リチウムイオンバッテリー
- 特徴: 低重心化とコンパクト設計を実現
卓越したパフォーマンス性能
加速性能とトップスピード
フェノメノは、ランボルギーニ史上最高のパフォーマンスを記録しています:
- 0-100km/h加速: 2.4秒
- 0-200km/h加速: 6.7秒
- 最高速度: 350km/h超
- パワーウェイトレシオ: 1.64kg/馬力(ランボルギーニ史上ベスト)
制動性能
革新的なCCM-R Plusカーボンセラミックブレーキシステムを採用:
- フロントディスク: 420×40mm
- リヤディスク: 410×32mm
- 100-0km/h制動距離: 30m
- 技術: LMDhレースカー「SC63」と同等の技術
航空工学にインスパイアされたデザイン
エクステリアデザインの特徴
フェノメノは「エレガントな宇宙船」として設計され、以下の特徴を持ちます:
フロントセクション
- 流線形の力強い面構成
- ウラカンGT3インスパイアのエアインテーク
- 猛牛の角へのオマージュとなる独特なライトシグネチャー
- 新ロゴを採用したカーボンファイバー製フロントスプリッター
サイドビュー
- エッセンツァSCV12のロングテールにインスパイアされた単一ライン
- NACAダクトの新解釈による大型エアインテーク
- 30%向上したサイドクーリング効率
- フェノメノ専用タービンデザインホイール(F21インチ/R22インチ)
リヤセクション
- ランボルギーニ史上前例のないデザイン
- 「Y」字型ライトシグネチャーの縦方向再解釈
- 可動式リヤウイングのオメガ型デザイン
- カーボンファイバー製ディフューザー
エアロダイナミクス技術
先進的なエアロダイナミクス機能
- フロントスプリッターの二重エアカーテン
- Sダクトシステムによる空力負荷制御
- ルーフ窪み構造による冷却最適化
- 可動式リヤウイングによる高速安定性向上
モノフューズレージ構造:航空宇宙技術の応用
シャシー技術
フェノメノは「モノフューズレージ」と呼ばれる革新的なシャシー構造を採用:
- 材質: カーボンファイバー製モノコック
- フロント構造: フォージドコンポジット製
- 技術: 航空工学にインスパイアされた設計
- 効果: 軽量化と剛性の両立
パワートレイン配置の最適化
革新的なレイアウト
- 縦置きV12エンジン
- 横置き8速DCTギヤボックス
- トンネル下バッテリー配置
- 最適化された重量配分
インテリア:パイロット体験の新次元
コックピット設計
フェノメノのインテリアは「Feel like a pilot」哲学の新解釈です:
デジタルインターフェース
- 3つのデジタルディスプレイ
- ミニマリストデザイン
- ほぼ全てのボタン操作を排除
- レーシングカー同様の没入感
材質とクラフトマンシップ
- 主要部分にカーボンファイバーを使用
- フェノメノ専用スポーツバケットシート
- 3Dプリント技術製カーボンファイバーエアベント
- 宇宙船を彷彿とさせるアンビエントライト
先進的な車両制御システム
6Dセンサー技術
ランボルギーニ初搭載の6Dセンサーによる高精度制御:
機能
- 3軸加速度測定(左右、前後、上下)
- 3軸角速度測定(ピッチ、ロール、ヨー)
- リアルタイム車両状態推定
- カルマンフィルタリング活用
制御システム
- IVE(統合車両推定器)
- IBC(統合ブレーキコントローラー)
- IPB(統合パワーブレーキ)制御
- 制動距離10%短縮効果
新世代8速DCT
技術的特徴
- 極めて高速なシフト性能
- 燃費最適化機能
- 連続ダウンシフト機能
- P2/P3ポジション切り替え
専用装備とタイヤ技術
フェノメノ専用ホイールとタイヤ
ホイール仕様
- フロント:21インチ シングルナット鍛造
- リヤ:22インチ シングルナット鍛造
- デザイン:タービン専用デザイン
タイヤ仕様
- ブランド:ブリヂストン ポテンザスポーツ
- フロント:265/40ZRF21
- リヤ:355/25ZRF22
- 技術:フェノメノ専用ランフラット
- 性能:空気圧ゼロでも80km/h×80km走行可能
CEOコメントに見る開発哲学
ステファン・ヴィンケルマンCEOは以下のようにコメントしています:
「2007年にレヴェントンを発表したときに私たちが目指したのは、ランボルギーニの真髄を究極的に表現する、至高のスーパースポーツカーを創り出すことでした。この新たな'Few Off'モデルも、ランボルギーニのDNAを構成する卓越性とイノベーションの理念を受け継いでいます。フェノメノで、ランボルギーニは再び比類ないスーパースポーツカーをリミテッドエディションという形で世に送り出します。」
デザインディレクターが語るコンセプト
ミティア・ボルケルトデザインディレクターのコメント:
「フェノメノは、私たちの先進的なデザイン言語に、新しく、正統的で勇敢な針路を定めています。私たちは上品で洗練されていると同時に美的で本質的な、極めて優雅なデザインを創り出しました。それは意外性を持ったエレガントな宇宙船で、すべてがカーボンファイバー製でありながら、伝統を忠実に守っています。」
完全仕様表
ランボルギーニ・フェノメノ 主要諸元
項目 | 仕様 |
---|---|
ボディサイズ | 全長5,014×全幅2,076×全高1,161mm |
ホイールベース | 2,779mm |
エンジン | V型12気筒 自然吸気 |
総排気量 | 6,498cc |
エンジン最高出力 | 835馬力(614kW)/9,250rpm |
エンジン最大トルク | 725Nm/6,750rpm |
モーター最高出力 | 245馬力(180kW) |
システム最高出力 | 1,080馬力(794kW) |
バッテリー容量 | 7kWh |
トランスミッション | 8速DCT |
駆動方式 | 4WD(四輪駆動) |
パワーウェイトレシオ | 1.64kg/馬力 |
0-100km/h加速 | 2.4秒 |
0-200km/h加速 | 6.7秒 |
最高速度 | 350km/h超 |
100-0km/h制動距離 | 30m |
まとめ:スーパーカーの新たな章の始まり
ランボルギーニ・フェノメノは、単なる限定モデルを超えた存在です。29台という極めて限られた生産台数、1080馬力というシステム出力、2.4秒の0-100km/h加速性能、そして航空宇宙技術にインスパイアされたデザインと構造により、自動車工学の新たな可能性を示しています。
この「驚異的な」スーパーカーは、ランボルギーニが掲げる「卓越性とイノベーション」という理念の結晶であり、ハイブリッド技術とスーパーカーの融合における新たな基準を打ち立てました。フェノメノは、過去の偉大な限定モデルたちの遺産を受け継ぎながらも、未来のスーパーカーが目指すべき方向性を明確に示す、真に歴史的な意義を持つモデルと言えるでしょう。
29台のオーナーだけが体験できるこの「宇宙船のようなエレガンス」は、ランボルギーニ史上最も革新的で、最もパワフルな限定モデルとして、永遠に自動車史に刻まれることになります。
ランボルギーニ