2025年11月10日、トヨタ自動車はタイ・バンコクで第9世代となる新型「ハイラックス」を世界初公開しました。現行の8代目が2015年にデビューしてから約10年ぶりとなる今回のフルモデルチェンジは、単なるフルモデルチェンジではなく、デザイン、パワートレーン、装備のすべてを一新する大幅な進化を遂げています。

10年ぶりの全面刷新!第9世代が世界初披露
8代目ハイラックスの歴史
現行の8代目ハイラックスは2015年5月にタイで世界初公開され、日本では2017年9月に発売が開始されました。7代目は国内導入されなかったため、日本市場にとっては久々の復活となり、大きな注目を集めました。

8代目は発売以来、以下のような改良を重ねてきました。
- 2019年6月:マイナーチェンジでフロントデザイン刷新、トヨタセーフティセンス標準装備
- 2020年8月:特別仕様車「Z"Black Rally Edition"」追加
- 2021年10月:スポーツグレード「Z"GR SPORT"」追加
- 2023年12月:最上級グレード「Z"Revo Rocco"」追加(4,772,000円)

特に2023年の「Z"Revo Rocco"」は、タイ仕様の豪華装備を日本に導入したモデルとして話題となりました。

新旧デザイン徹底比較
フロントマスク:ハンマーヘッドから「サイバー相撲」へ
8代目(旧型)

- 大型のメッキグリルを採用
- ハンマーヘッドと呼ばれる力強いデザイン
- プロジェクター式ヘッドライト(上位グレードはBi-Beam LED)
- フロントバンパー下部に大型エアインテーク
9代目(新型)

- 「サイバー相撲(Cyber Sumo)」デザインテーマを採用
- ボディ同色のハニカムグリル(カローラクロス/クラウンエステート風)
- スリムなLEDヘッドライト
- グリル上部に「TOYOTA」レタリングバッジ
- "コ"の字型LEDデイタイムランニングライト
- 角張ったバンパーインテークと頑丈なスキッドプレート
評価ポイント
8代目の力強さを保ちながら、より洗練されたモダンなデザインに進化。特にBEVモデルはグリルレスデザインで未来感を演出しています。
サイドビュー:伸びやかなプロポーションは継承
8代目(旧型)

- 全長:5,340mm
- 全幅:1,855mm
- 全高:1,800mm
- ホイールベース:3,085mm
9代目(新型)

- 全長:5,320mm(-20mm)
- 全幅:1,855mm(同じ)
- 全高:1,800mm(同じ)
- ホイールベース:3,085mm(同じ)
グリーンハウス、ピラー、ドアは8代目から引き継がれていますが、再設計されたフロント・リアフェンダーと箱型ホイールアーチにより、新鮮な印象を与えています。
リアデザイン:よりシャープで彫刻的に
8代目(旧型)

- 縦型テールライト
- シンプルなバンパーデザイン
- 「HILUX」ロゴをテールゲートに配置
9代目(新型)

- シャープなLEDテールライト
- より彫刻的なバンパーデザイン
- モダンでスポーティな印象
内装・装備の進化を比較
コックピットデザイン:ランドクルーザー譲りの最新装備
8代目(旧型)の内装

- 8インチディスプレイオーディオ(上位グレード)
- 4.2インチTFTマルチインフォメーションディスプレイ
- アナログメーター基調
- 手引き式ハンドブレーキ
- 比較的シンプルな装備
9代目(新型)の内装

- 12.3インチフリースタンディング・インフォテインメントディスプレイ
- 12.3インチデジタルインストゥルメントクラスター(下位グレードは7インチ)
- ランドクルーザー由来のチャンキーなステアリングホイール
- 電動パーキングブレーキ(EPB)+オートブレーキホールド(ABH)
- 小型シフトノブ
- センターコンソールのドライブモードセレクター
- 助手席側ダブル収納コンパートメント
- ダッシュボードマウント式カップホルダー
最大の進化ポイント:電動パーキングブレーキ採用

これまでのハイラックスは商用車ベースの性格から手引き式ハンドブレーキを採用していましたが、新型では**電動パーキングブレーキ(EPB)**を初採用。これにより、以下のメリットが生まれます。

- センターコンソールのスペース有効活用
- オートブレーキホールド機能による渋滞時の利便性向上
- より乗用車的な快適性の実現
- ランドクルーザーFJやハイラックス・チャンプとの差別化
この装備変更により、ハイラックスは「商用車ベースのピックアップ」から「高級SUVとしても使えるピックアップ」へと大きく進化しました。
パワートレーン比較:電動化への大転換
8代目(旧型)のパワートレーン
2.4L ディーゼルターボエンジン(2GD-FTV)
- 最高出力:110kW(150PS)/3,400rpm
- 最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1,600-2,000rpm
- トランスミッション:6速AT(6 Super ECT)
- 駆動方式:パートタイム4WD
- 燃費:11.7km/L(WLTCモード)
9代目(新型)のパワートレーンラインアップ
トヨタの「マルチパスウェイ」戦略により、5種類のパワートレーンを用意。
ディーゼルエンジン
2.8L 直列4気筒ディーゼルターボ+マイルドハイブリッド
- 最高出力:150kW(204PS)/3,000-3,400rpm
- 最大トルク:500Nm/1,600-2,800rpm
- トランスミッション:6速AT
- 駆動方式:パートタイム4WD
- 排気量アップ(2.4L→2.8L)により出力・トルク大幅向上
- マイルドハイブリッドシステム追加で燃費改善
2.7L 直列4気筒ガソリンエンジン(継続採用)
- 詳細スペックは今後発表予定
BEVモデル「TRAVO-e」(完全新規)
デュアル電動モーター+59.2kWhバッテリー
- 駆動方式:4WD(前後デュアルモーター)
- フロントモーター:205Nm
- リアモーター:269Nm
- システム総出力:196ps(144kW)
- バッテリー容量:59.2kWh
- 航続距離:
- 240km(WLTPモード)
- 300km以上(NEDCモード)
- 充電ポート:左フロントフェンダー
- グリルレスデザイン
- 整流板付きホイール
FCEVモデル(2028年以降予定)
- 水素燃料電池電気自動車
- 欧州・オセアニアに投入予定
- 詳細スペックは未発表
パワートレーン比較まとめ
| 項目 | 8代目(旧型) | 9代目(新型) |
|---|---|---|
| ディーゼル排気量 | 2.4L | 2.8L |
| 最高出力 | 150PS | 204PS |
| 最大トルク | 400Nm | 500Nm |
| ハイブリッド | なし | マイルドHV追加 |
| BEV | なし | 新規追加 |
| FCEV | なし | 2028年追加予定 |
| パワートレーン選択肢 | 1種類 | 5種類 |
シャシー・走行性能の進化
8代目(旧型)のシャシー

- IMVラダーフレームプラットフォーム
- FIRM(Frame with Integrated Rigidity Mechanism)構造
- フロント:ダブルウィッシュボーン式独立懸架
- リア:リーフスプリング式
- 手動式パワーステアリング/油圧パワーステアリング
- パートタイム4WD(H4F/H4L/L4L)
9代目(新型)のシャシー

- アップグレードされたIMVラダーフレーム
- 電動パワーステアリング(EPS)採用
- フロント:独立コイルスプリング式サスペンション(新設計)
- リア:リジッドアクスル・リーフスプリング式(改良)
- 2種類のサスペンションチューニング
- 重量物運搬・牽引重視チューニング
- 日常使用の快適性重視チューニング
- パートタイム4WDシステム(ハイ・ローレンジ)
- リアロッキングディファレンシャル標準装備
- マルチテレインセレクトシステム(オプション)
走行性能の進化ポイント
ボディ剛性の強化
8代目でも高い評価を得ていたボディ剛性がさらに向上。オンロード・オフロード双方での安定性が向上しています。
EPSの採用効果
- より正確なステアリングフィール
- 疲労軽減効果
- 将来的な運転支援技術への対応
サスペンションの進化
用途に応じた2種類のチューニングにより、商用ユースとファミリーユース双方に最適な乗り心地を提供。
安全装備・先進技術の比較
8代目(旧型)の安全装備
Toyota Safety Sense搭載(2019年改良以降)

- プリクラッシュセーフティ(歩行者検知機能付)
- レーントレーシングアシスト
- レーダークルーズコントロール
- オートマチックハイビーム
- ロードサインアシスト
その他装備
- ICS(インテリジェントクリアランスソナー)
- BSM(ブラインドスポットモニター)
- RCTA(リヤクロストラフィックアラート)
9代目(新型)の安全装備
トヨタセーフティセンス3.0

- 「大幅に拡張された」ADASスイート
- 乗用車ラインアップと同等レベルの安全性
- 詳細機能は今後発表予定
視界支援システム

- パノラミックビューモニター(新規)
- マルチテレインモニター(新規)

これらの装備により、狭い場所での取り回しや悪路走行時の安全性が大幅に向上しています。
安全装備比較まとめ
| 装備 | 8代目(旧型) | 9代目(新型) |
|---|---|---|
| セーフティセンス | TSS | TSS 3.0 |
| パノラミックビュー | なし | 新規追加 |
| マルチテレインモニター | なし | 新規追加 |
| ADAS | 基本機能 | 大幅拡張 |
グレード構成とボディタイプの変更
8代目(旧型)日本仕様のグレード構成
標準グレード
- X(エントリーグレード)
- Z(標準グレード):4,072,000円
- Z"GR SPORT":4,312,000円(2021年追加)
- Z"Revo Rocco":4,772,000円(2023年追加、最上級)
キャビンタイプ
- ダブルキャブのみ
- シングルキャブ、エクステンデッドキャブは日本未導入
9代目(新型)のグレード構成
ボディタイプの変更
- ダブルキャブのみに集約
- シングルキャブ・エクステンデッドキャブを廃止
- よりファミリーユース向けに特化
タイ仕様グレード構成
Hilux Travo Prerunner & 4TREX シリーズ
- Smart MT/AT:ベーシックグレード
- Premium MT/AT:上位グレード
- 4TREX Premium MT/AT:オフロード志向モデル
- 価格帯:1,029,000〜1,090,000バーツ
Hilux Travo Overland シリーズ(最上級)
- Overland AT:1,102,000バーツ
- Overland Plus AT:1,176,000バーツ
- 4TREX Overland AT:1,292,000バーツ
- 4TREX Overland Plus AT:1,366,000バーツ
グレード別装備の違い
| グレード | グリル | ヘッドライト | フェンダー | タイヤ |
|---|---|---|---|---|
| Standard | ボディ同色 | 単眼LED | ボディ同色 | 標準 |
| 4TREX | グロスブラック | LEDリフレクター | 無塗装ブラック | オールテレイン |
| OVERLAND | グロスブラック | オールLED | グロスブラック | オールテレイン |

スペック比較表
ボディサイズ比較
| 項目 | 8代目(旧型) | 9代目(新型) |
|---|---|---|
| 全長 | 5,340mm | 5,320mm |
| 全幅 | 1,855mm | 1,855mm |
| 全高 | 1,800mm | 1,800mm |
| ホイールベース | 3,085mm | 3,085mm |
| 最低地上高 | 215mm | 224mm |
| 最小回転半径 | 6.4m | 6.3m |
ディーゼルエンジンスペック比較
| 項目 | 8代目 2.4L | 9代目 2.8L |
|---|---|---|
| 排気量 | 2,393cc | 2,755cc |
| 最高出力 | 150PS/3,400rpm | 204PS/3,000-3,400rpm |
| 最大トルク | 400Nm/1,600-2,000rpm | 500Nm/1,600-2,800rpm |
| ハイブリッド | なし | マイルドHV |
| トランスミッション | 6AT | 6AT |
| 燃費(WLTC) | 11.7km/L | 未発表 |
牽引・積載能力比較
| 項目 | 8代目(旧型) | 9代目(新型) |
|---|---|---|
| 最大牽引能力 | 3,500kg | 3,500kg(想定) |
| 荷台長 | 1,565mm | 維持される見込み |
| 荷台幅 | 1,380mm | 維持される見込み |
| 最大積載量 | 500kg | 500kg(想定) |

価格帯の変化
8代目(旧型)日本仕様の価格
- X:約340万円
- Z:4,072,000円
- Z"GR SPORT":4,312,000円
- Z"Revo Rocco":4,772,000円(最上級)
9代目(新型)の予想価格
日本仕様(2026年年央発売予定)
- ディーゼルモデルを導入予定
- BEVモデルの国内投入は未定
- 価格は今後発表予定
予想価格帯
- エントリーグレード:420万円前後(+80万円程度)
- 上位グレード:480〜520万円程度
- BEVモデル(導入される場合):600万円前後
装備の大幅向上、電動パーキングブレーキ採用、エンジン排気量アップなどにより、8代目比で50〜80万円程度の価格上昇が予想されます。
まとめ:新旧ハイラックスどう変わった?
主要な進化ポイント10選
- デザイン:ハンマーヘッドから「サイバー相撲」へ、よりモダンに
- 電動パーキングブレーキ:手引き式から電動式へ、使い勝手が大幅向上
- ディスプレイ:8インチから12.3インチへ大型化
- デジタルメーター:アナログから12.3インチデジタルへ
- エンジン:2.4L→2.8L、出力54PS向上、トルク100Nm向上
- マイルドハイブリッド:燃費と加速性能の向上
- BEV追加:完全電動モデルの新規導入
- EPS採用:より正確なステアリングフィール
- 安全装備:TSS 3.0、パノラミックビュー、マルチテレインモニター追加
- ボディタイプ:ダブルキャブのみに集約、ファミリー向け特化
8代目から継承された長所
- 信頼性の高いラダーフレーム構造
- 優れたオフロード性能
- 3,500kgの牽引能力
- 500kgの荷台積載量
- 世界195カ国以上で販売される実績
新型が優れている点
- 電動化ラインアップ:BEV、FCEV追加で環境対応
- 乗用車的快適装備:電動パーキングブレーキ、デジタルコックピット
- 先進安全装備:乗用車レベルのADAS
- パワフルなエンジン:排気量アップで204PS/500Nm
- 2種類のサスチューニング:用途に応じた選択が可能
旧型が有利な点
- 価格:新型比で50〜80万円安い
- シンプルな構造:商用車としての耐久性・整備性
- 実績:10年間の販売実績と信頼性
- 中古車市場:豊富な流通量と安定した価格
こんな人には新型がおすすめ
- 最新の安全装備を求める人
- ファミリーユースでも使いたい人
- 電動パーキングブレーキなど快適装備が欲しい人
- より力強い走りを求める人
- 環境性能を重視する人(BEVモデル)
こんな人には旧型(中古)がおすすめ
- コストパフォーマンスを重視する人
- シンプルな構造を好む人
- すぐに購入したい人(新型は2026年年央)
- 実績ある車種を選びたい人
グローバル展開スケジュール
- 欧州・オーストラリア:2025年12月から
- アジア市場:2026年以降順次
- 日本:2026年年央(ディーゼルモデル)
- BEV導入:市場により異なる
- FCEV導入:欧州・オセアニアに2028年以降
結論:10年分の進化を詰め込んだフルモデルチェンジ
第9世代トヨタ・ハイラックスは、8代目の「タフで信頼できるピックアップトラック」という本質を守りながら、電動化、快適装備、先進安全技術という現代に求められる要素を全面的に取り入れた、真のフルモデルチェンジと言えます。
特に電動パーキングブレーキの採用は、ハイラックスが「商用車ベースのピックアップ」から「高級SUVとしても使えるピックアップ」へと大きく進化したことを象徴しています。
BEVモデルの追加により、商用車・ピックアップトラック市場でも電動化の波が本格的に始まることを示しており、2028年のFCEVモデル投入により、トヨタの「マルチパスウェイ」戦略の集大成となるでしょう。
日本での発売は2026年年央。ディーゼルモデルから導入予定ですが、BEVやFCEVモデルの国内導入も大いに期待されます。
世界195カ国以上、累計2,800万台以上の販売実績を誇るハイラックス。その伝説は、第9世代でさらなる新章を刻むことになるでしょう。
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