メルセデス・ベンツが2025年12月8日に発表した新型GLBクラスは、同社のコンパクトSUVラインナップにおいて重要な転換点を迎えました。今回のフルモデルチェンジでは、電気自動車モデルを先行投入し、従来のEQBを統合。さらに、2026年にはハイブリッドモデルも追加される予定です。本記事では、新型GLBクラスの詳細なスペック、装備、価格、発売日まで徹底解説します。
1. 新型GLBクラスの主要変更点まとめ
フルモデルチェンジのハイライト
新型GLBクラスは、メルセデス・ベンツの新世代コンパクトSUV戦略の中核を担うモデルとして、以下の主要な変更が施されています。
主要変更点：
- EVモデル先行投入：EQBを統合し、電気自動車モデルから市場投入
- 新世代プラットフォーム採用：内燃機関とEVの両方に対応する柔軟な設計
- ボディサイズの大幅拡大：全長で約98mm延長
- 最新MBUXシステム搭載：ChatGPT4oベースのAIアシスタント搭載
- メルセデス・スーパースクリーン：最大3画面構成の大型ディスプレイ
- 800V電気アーキテクチャ：高速充電に対応
- 2速トランスミッション：電気自動車専用の新開発ギアボックス
- 3列シート7人乗り対応：拡大されたホイールベースによる広々空間
市場でのポジショニング
GLBクラスは、コンパクトな「GLAクラス」と中型の「GLCクラス」の間に位置するモデルとして企画されており、特にファミリー層をターゲットとした3列シート対応が大きな特徴です。新型では全長がGLCクラスを上回る設計となり、クラスを超えた室内空間を実現しています。
2. エクステリアデザインの進化
フロントデザイン：力強さと先進性の融合
新型GLBクラスのフロントデザインは、メルセデス・ベンツの最新デザイン言語を採用し、従来モデルから大きく進化しています。
フロントデザインの特徴：
- 大型グリル：存在感のある大型グリルが力強い印象を演出
- スリーポインテッドスター モチーフのヘッドライト：ブランドアイコンを取り入れた独創的なデザイン
- フルワイドライトバー：ヘッドライトを繋ぐ横一文字のライトバーが先進的
- 複雑なDRLパターン：スター型の緻密なデイタイムランニングライト
リアデザイン：物議を醸す革新的スタイリング
リアデザインは特に大胆な変更が加えられており、賛否両論を呼ぶ可能性があります。
リアデザインの特徴：
- 縦型テールライトクラスター：数年前のEQXXコンセプトからインスパイアされたデザイン
- フルワイドライトバー：リア全体を横断する細いライトバーで連結
- スターパターンの組み込み：フロント同様、スリーポインテッドスターのモチーフを採用
- フラッシュドアハンドル：走行中に格納され、空力性能を向上
全体的なデザイン評価
Carcoopsは「特にハンサムなSUVではないが、先代モデルも同様だった」とコメントしており、機能性と先進性を重視したデザインアプローチと言えます。好みは分かれるものの、メルセデス・ベンツの新世代デザインへの移行を明確に示しています。
3. ボディサイズの大幅拡大
詳細ボディサイズ比較
新型GLBクラスは、前モデル及びEQBと比較して全方向にサイズアップしています。
新型GLBクラス（2026年モデル）：
- 全長：4,732mm（186.3インチ）
- 全幅：1,861mm（73.3インチ）
- 全高：1,687mm（66.4インチ）
- ホイールベース：2,889mm（113.7インチ）
- 最小回転半径：11.9m（39.0フィート）
前モデルGLBクラス：
- 全長：4,640mm
- 全幅：1,835mm
- 全高：1,700mm
- ホイールベース：2,830mm
- 最小回転半径：11.7m
前モデルEQB：
- 全長：4,684mm
- 全幅：1,834mm
- 全高：1,701mm
- ホイールベース：2,829mm
サイズ拡大の影響
メリット：
- 全長+98mm：特に2列目、3列目の足元空間が大幅に改善
- ホイールベース+60mm：乗り心地の向上と室内空間の拡大
- 全幅+27mm：横方向の余裕が増加
デメリット：
- 最小回転半径+0.2m：わずかに取り回し性が低下
- 全高-14mm：デザイン重視でわずかに低くなったが、実用上の影響は軽微
上位モデルGLCクラスとの比較
興味深いことに、新型GLBクラスの全長4,732mmは、上位モデルのGLCクラス（4,720mm）を超えています。これにより、GLBクラスはコンパクトSUVとしては非常に広い室内空間を提供できるようになりました。
4. インテリアと最新テクノロジー
メルセデス・スーパースクリーン：業界最先端のディスプレイシステム
新型GLBクラスの内装で最も注目すべきは、オプション装備となる「メルセデス・スーパースクリーン」です。
スーパースクリーンの構成：
- ドライバーディスプレイ：10.25インチ
- センターインフォテインメントスクリーン：14インチ
- 助手席用ディスプレイ：14インチ
- 合計：3画面構成で圧倒的な情報表示能力
第4世代MBUXシステム：AIとの統合
新型GLBクラスには、メルセデス・ベンツの最新インフォテインメントシステムである第4世代MBUXが搭載されています。
MBUXシステムの特徴：
- ChatGPT4oベースのバーチャルアシスタント：自然な会話でシステムを操作
- Microsoft & Google AI統合：高度な音声認識と学習機能
- Unity Game Engine採用：滑らかで直感的なユーザーインターフェース
- OTA（無線）アップデート対応：常に最新のソフトウェアに更新可能
パノラミックガラスルーフ：スターライトエクスペリエンス
特徴：
- 調光機能付き：ボタン操作で透明から不透明に変化
- 158個のスターデザイン：エクステリアのスリーポインテッドスターと連動したデザイン
- 照明機能：夜間に星が光る演出
シートレイアウトとラゲッジスペース
シート構成：
- 5人乗り2列シート仕様
- 7人乗り3列シート仕様
ラゲッジ容量：
- 5人乗り仕様：通常時540L、最大1,715L（リヤシート格納時）
- 7人乗り仕様：通常時480L、最大1,605L（リヤシート格納時）
- フロントトランク（EV専用）：127L（4.5立方フィート）
EVモデルでは、エンジンを搭載しないフロント部分にフランク（フロントトランク）が追加され、実用性がさらに向上しています。
インテリアデザインの評価
ダッシュボードは他の新型メルセデス同様、ほぼ完全にフラットなデザインとなっており、興味深いデザイン要素はほとんどありません。これは、大型ディスプレイを中心としたミニマリスティックなアプローチを採用しているためです。
5. パワートレインとスペック
電気自動車モデル：2つのパワーレベル
新型GLBクラスは、まず電気自動車モデルのみで市場投入されます。
GLB 250+（with EQ Technology）
スペック：
- モーター配置：リア1基
- バッテリー容量：85kWh（リチウムイオン）
- 電気アーキテクチャ：800V
- 出力：272ps（268hp）
- 連続トルク：247 lb-ft（335 Nm）
- 最大トルク（短時間ブースト）：335 lb-ft（454 Nm）
- トランスミッション：電気自動車専用2速
- 0-100km/h加速：7.4秒
- 航続距離：630km（392マイル、WLTP）
- 駆動方式：RWD（後輪駆動）
GLB 350 4Matic（with EQ Technology）
スペック：
- モーター配置：前後各1基（デュアルモーター）
- フロントモーター出力：109ps
- リアモーター出力：272ps
- 合計システム出力：349hp（381ps）
- 合計トルク：380 lb-ft（515 Nm）
- バッテリー容量：85kWh
- トランスミッション：電気自動車専用2速
- 0-100km/h加速：5.5秒
- 航続距離：615km（382マイル、WLTP）
- 駆動方式：AWD（4Matic）
2速トランスミッションの利点
新型GLBクラスに採用された電気自動車専用2速トランスミッションは、以下の利点を提供します：
- 発進時の力強い加速：1速で最大トルクを効率的に伝達
- 高速巡航時の効率性：2速で回転数を抑えて航続距離を延長
- 総合的な効率向上：単速トランスミッションよりも幅広いシーンで最適化
2026年追加予定のパワートレイン
エントリーレベルEVモデル
メルセデス・ベンツは、2026年により手頃な価格のエントリーレベル電気自動車モデルを追加することを確認しています。詳細なスペックはまだ公表されていませんが、より多くの顧客層にアプローチする戦略です。
ハイブリッドモデル（48Vマイルドハイブリッド）
エンジンスペック：
- エンジン：直列4気筒1.5Lガソリンターボ（ミラーサイクル）
- エンジン出力：3種類のチューニング
- 136ps
- 163ps
- 190ps
- モーター出力：27ps（48Vマイルドハイブリッド）
- トランスミッション：8速デュアルクラッチ（DCT）
- 駆動方式：FF（前輪駆動）または4WD（四輪駆動）
ハイブリッドモデルは、前・後輪駆動の両方で展開され、3つの出力レベルから選択可能です。新開発の1.5Lミラーサイクルエンジンは、従来の1.4Lエンジンに代わる高効率パワーユニットとして、ディーゼルエンジンに匹敵する燃費性能を実現します。
6. 航続距離と充電性能
優れた航続距離
新型GLBクラスのEVモデルは、85kWhの大容量バッテリーにより、実用的な航続距離を実現しています。
航続距離（WLTP）：
- GLB 250+（RWD）：630km（392マイル）
- GLB 350 4Matic（AWD）：615km（382マイル）
これらの数値は、日常使用はもちろん、週末の長距離ドライブにも十分対応できる水準です。コンパクトSUVセグメントにおいては非常に競争力のある数値と言えるでしょう。
高速充電性能
800V電気アーキテクチャの採用により、新型GLBクラスは業界トップクラスの充電性能を実現しています。
充電性能：
- 最大充電出力：320kW（急速充電対応時）
- 10分充電での走行可能距離：260km
- 充電時間の大幅短縮：前世代EQBと比較して顕著に改善
実用性の向上
10分の充電で260km走行可能という性能は、高速道路のサービスエリアでの休憩時間程度で実用的な充電が完了することを意味します。これにより、長距離旅行時の充電ストレスが大幅に軽減されます。
7. 燃費性能
ハイブリッドモデルの燃費
新型GLBクラス ハイブリッドモデル：
- 予想燃費：15.5km/L（WLTCモード予想値）
新開発の1.5Lミラーサイクルエンジンと48Vマイルドハイブリッドシステムの組み合わせにより、従来のディーゼルモデルに匹敵する優れた燃費性能を実現しています。
参考：前モデルの燃費
- 1.4Lガソリン（FF）：13.4km/L
- 2.0Lディーゼル（4WD）：15.8km/L
新型ハイブリッドモデルは、ディーゼルモデル廃止後もその優れた燃費性能を継承する形となります。
プラグインハイブリッドの廃止
注目すべき点として、新型GLBクラスではプラグインハイブリッドモデルが廃止されています。これは、メルセデス・ベンツが電気自動車への完全移行を見据え、中途半端なPHEVよりも、本格的なEVと効率的なマイルドハイブリッドの二本柱戦略を採用したことを示しています。
8. 安全装備と運転支援システム
包括的なセンサーシステム
新型GLBクラスには、最新世代の運転支援システムが標準またはオプションで装備されます。
センサー構成：
- カメラ：8台
- レーダーセンサー：5台
- 超音波センサー：12台
このセンサー群により、車両周囲360度を高精度に監視し、様々な状況下で適切な運転支援を提供します。
MB.DRIVE運転支援システム
システムの特徴：
- 水冷式高性能コンピューター：大量のセンサーデータをリアルタイム処理
- OTA（無線）アップデート対応：常に最新の機能とアルゴリズムに更新
- AI学習機能：ドライバーの運転パターンを学習し、最適な支援を提供
主要な安全機能（予想）
メルセデス・ベンツの最新モデルに準じて、以下の機能が搭載されると予想されます：
- アクティブディスタンスアシスト ディストロニック：全車速追従式クルーズコントロール
- アクティブステアリングアシスト：車線維持支援
- アクティブブレーキアシスト：衝突回避・被害軽減ブレーキ
- ブラインドスポットアシスト：死角車両検知
- アクティブレーンチェンジアシスト：半自動車線変更
- 駐車アシストパッケージ：360度カメラと自動駐車機能
- トラフィックサインアシスト：交通標識認識
- アテンションアシスト：ドライバー疲労検知
これらのシステムにより、新型GLBクラスは高いレベルの安全性と快適性を両立しています。
9. 価格とグレード構成
ドイツ市場での価格（確定）
メルセデス・ベンツは、ドイツ市場での価格を以下のように発表しています。
ドイツ価格：
- GLB 250+ with EQ Technology：€59,048（約990万円）
- GLB 350 4Matic with EQ Technology：€62,178（約1,040万円）
日本市場予想価格
日本市場での価格はまだ正式発表されていませんが、以下のように予想されます。
予想価格（日本）：
- 内燃機関モデル（エントリーグレード）：660万円～
- EVモデル（GLB 250+）：840万円～
- EVモデル（GLB 350 4Matic）：920万円～
- ハイブリッドモデル（中間グレード）：720万円～780万円
参考：前モデルGLBクラスの日本価格
- GLB 180：644万円
- GLB 200 d 4MATIC：697万円
- AMG GLB 35 4MATIC：935万円
価格上昇の理由
新型GLBクラスの価格上昇は、以下の要因によるものです：
- 新世代プラットフォーム採用：開発コストの増加
- 800V電気アーキテクチャ：高度な電動化技術
- 最新MBUXシステム：AI統合などの先進技術
- 大型ディスプレイシステム：メルセデス・スーパースクリーンのコスト
- ボディサイズ拡大：材料費と製造コストの増加
ただし、装備内容の大幅な向上を考慮すれば、コストパフォーマンスは適正と言えるでしょう。
10. 発売日と市場展開
欧州市場
発表日：2025年12月8日
納車開始：2026年春（ドイツを含む欧州主要市場）
日本市場
日本での発売時期は正式発表されていませんが、欧州市場での納車開始から数ヶ月遅れての導入が予想されます。
予想スケジュール：
- 正式発表：2026年夏頃
- 予約受付開始：2026年秋頃
- 納車開始：2026年末～2027年初頭
北米市場
Carcoopsの記事によれば、米国市場での価格はまだ発表されていませんが、ドイツと同様の価格帯で展開されると予想されています。
モデル展開のタイムライン
2026年春：EVモデル（GLB 250+、GLB 350 4Matic）
2026年後半：エントリーレベルEVモデル追加
2026年～2027年：ハイブリッドモデル（3種の出力レベル、FF/AWD）
まとめ：新型GLBクラスの評価と展望
進化のポイント
新型メルセデス・ベンツGLBクラスは、以下の点で大きく進化しました：
- 電動化戦略の明確化：EVファーストのアプローチで市場投入
- サイズとスペースの拡大：GLCクラスを超える全長で広々空間を実現
- 最新テクノロジーの投入：AI統合MBUXとスーパースクリーンで圧倒的な先進性
- 実用的な航続距離：600km超の航続距離で日常使用に十分
- 高速充電対応：10分で260km走行分の充電が可能
競合との比較
同セグメントの競合モデルとしては、BMW iX1、アウディQ4 e-tron、ボルボXC60などが挙げられます。新型GLBクラスは、特に以下の点で優位性があります：
- 3列シート7人乗り対応：競合にはない実用性
- 最新AI統合システム：インフォテインメントの先進性
- 800V充電インフラ対応：将来的なインフラ進化に対応
課題と改善点
一方で、以下の課題も指摘できます：
- デザインの賛否：特にリアデザインは好みが分かれる可能性
- 価格上昇：前モデルと比較して約20万円以上の価格上昇
- 最小回転半径の増加：取り回し性がわずかに低下
購入を検討すべき人
新型GLBクラスは、以下のような方に特におすすめです：
- ファミリー層：3列シート7人乗りが必要な家族
- テクノロジー愛好家：最新のAIシステムを体験したい方
- 環境意識の高いドライバー：EVまたは高効率ハイブリッドを求める方
- メルセデス・ブランドのファン：最新のメルセデスデザインを先取りしたい方
最終評価
新型メルセデス・ベンツGLBクラスは、コンパクトSUVセグメントにおいて、実用性と先進性を高いレベルで両立した魅力的なモデルです。特に電動化技術と最新インフォテインメントシステムの投入により、今後数年間は競争力を維持できるでしょう。
ただし、デザインの好みは分かれる可能性があり、また価格も決して安くはありません。購入を検討される方は、実車を確認し、特にリアデザインや大型ディスプレイシステムの使い勝手を実際に体験することをおすすめします。
メルセデス・ベンツは、新型GLBクラスを通じて、コンパクトSUV市場における存在感を一層高めていく考えです。今後の市場での評価と販売動向に注目が集まります。
