メルセデス・ベンツのフラッグシップセダン「Sクラス」が、モデル史上最大規模の改良を受けて2026年6月11日に日本で正式発表・予約受注を開始しました。
1886年の自動車特許取得から140周年という記念すべき年に誕生した新型Sクラスは、車両全体の50%以上・約2,700点にのぼる部品を新規開発または再設計した、まさに集大成モデルです。本記事では、新型Sクラスの変更点・外装・内装・スペック・燃費・安全装備・価格・発売日まで徹底的に解説します。
新型Sクラスの主な変更点まとめ:
2021年のフルモデルチェンジから約5年半を経て実施された今回の改良は、通常の「マイナーチェンジ」の枠をはるかに超えたビッグアップデートです。主な変更点を以下にまとめます。

- 新世代ブランドデザインを採用した全面刷新のエクステリア
- 新開発「フラットプレーンクランク」採用のV型8気筒4Lターボエンジン「M177 Evo」搭載(S580)
- 自社開発OS「MB.OS」を核とする第4世代MBUXインフォテインメントシステムの採用
- 「MBUXスーパースクリーン」(14.4インチ+12.3インチ)を全車標準装備化
- ChatGPT・Google Gemini・Microsoft Bingを統合した生成AI対応バーチャルアシスタント
- 後席に13.1インチ大型ディスプレイ+Microsoft Teams対応カメラを搭載
- デジタルベントコントロール・ヒーター付きフロントシートベルトなど快適装備の刷新
- AIを活用した「MB.DRIVE」運転支援システムの進化
誕生の背景:140周年の集大成モデル:
メルセデス・ベンツは1886年、カール・ベンツが世界初の自動車特許を取得したブランドです。それから140年の歴史を誇る2026年に、ブランドの最高峰であるSクラスをこれほどの規模で刷新したことは、単なる商品改良ではなくブランドの技術力の証明そのものといえます。「いつの時代も世界の自動車の指標」と称されるSクラスが、また新たな時代の基準を打ち立てようとしています。
現行Sクラスは7代目(W223型)として2021年1月にデビュー。そのプラットフォームを継承しながら、今回の改良では外装・内装・エンジン・ソフトウェアのあらゆる領域にわたって徹底的な進化が施されています。
外装(エクステリア)デザイン:
新型Sクラスの外観は、メルセデス・ベンツが近年採用を進める「新世代ブランドデザイン」を全面的に取り入れており、従来モデルと比べて大幅に存在感が増しています。

フロントフェイスでは、ブランドエンブレムである「スリーポインテッドスター」をモチーフにしたグラフィックを持つ新設計のヘッドライトを採用。デイタイムランニングライトにスリーポインテッドスターのシルエットが描かれており、一目でSクラスとわかる個性的な表情を作り出しています。グリルは前モデルから20%拡大され、内部にも複数の小型スリーポインテッドスターを配置。ボンネット上のオーナメントとあわせてイルミネーションが設定されており、夜間の存在感も格段に向上しています。

リアには、フロントと統一されたスリーポインテッドスターのグラフィックを持つ新デザインのテールランプを採用。全体として、より彫刻的かつ現代的なスタイリングへと進化しています。

オプションのAMGラインパッケージを選択すれば、よりスポーティなフロント・リアバンパーとサイドスカート、最大21インチのAMGアルミホイールが装着され、セダンでありながらダイナミックな雰囲気を演出できます。
内装(インテリア)デザイン:
新型Sクラスの車内に足を踏み入れれば、テクノロジーと高級感の融合に圧倒されるはずです。最大のトピックは、「MBUXスーパースクリーン」を全車標準装備としたことです。12.3インチのデジタルメータークラスター、14.4インチのセンターインフォテインメントディスプレイ、そして12.3インチの助手席側ディスプレイが一体となって室内幅いっぱいに広がるこの大画面は、従来のSクラスではオプション扱いだったものを全グレード標準化したものです。

ステアリングホイールも新設計されており、従来のタッチパネル式から物理スイッチを取り入れた直感的な操作系に変更。ドライバーが目線を落とすことなく主要な機能を操作できる実用性が重視されています。
円形のエアベントには「デジタルベントコントロール」を搭載し、フロント・リアのエアベントの向きをユーザーの設定に合わせて自動調整します。また、シートヒーターと連動する「ヒーター付きフロントシートベルト」がオプションに設定されており、包まれるような温かさを体感できます。センターコンソールもリニューアルされ、デュアルワイヤレススマートフォンチャージャーと照明付きカップホルダーを備えた洗練されたデザインになっています。
後席の進化も見逃せません。13.1インチの大型タッチディスプレイを持つ最新の後席エンターテイメントシステムが搭載され、取り外し可能なリモコンに加え、ビデオ通話を可能にするカメラも内蔵。出張や移動中でもMicrosoft Teamsでのオンライン会議に対応できる点は、ビジネスユーザーにとって非常に魅力的なポイントです。
音響システムには、Burmester 3Dサラウンドサウンドシステムを標準採用。さらに上質なオーディオ体験を求めるユーザーには、39スピーカー構成の4Dサラウンドサウンドシステムがオプションで用意されています。新色「ビーチブラウン/ブラック」など新たなインテリアカラーも追加され、個性的なコーディネートが楽しめます。
インフォテインメント・AI:第4世代MBUX × MB.OS:
新型Sクラスの頭脳となるのが、メルセデス・ベンツが自社開発したオペレーティングシステム「MB.OS」です。MB.OSはインフォテインメントから運転支援、ドライビングパフォーマンスに至るまで車両全体の機能を一元的に統合し、従来より大幅に高速な処理性能とシームレスなユーザー体験を実現します。

このMB.OSを核として動作する第4世代MBUXは、単なる操作インターフェースを超えた進化を遂げています。Google Cloudの「Automotive AI Agent」による車内会話サービス、Google Mapsを統合したナビゲーション、そしてChatGPT・Microsoft Bing・Google Geminiの3つの生成AIを統合した「MBUXバーチャルアシスタント」を搭載。友人と自然な会話をするように、複数ターンにわたる文脈のある対話が可能です。「近くの和食レストランを探して」「今日の天気は?」といった日常的な問いかけから、複雑な目的地設定まで、音声だけで車のほぼすべての機能を操作できます。
さらに、メルセデス・ベンツ・インテリジェント・クラウドへの接続により、OTA(Over-The-Air)無線アップデートに対応。購入後も継続的にソフトウェアが更新され、常に最新の機能・性能を維持できます。この点は、現代のプレミアムカーに求められる重要な要素のひとつです。
スペック・パワートレイン:
新型Sクラスの日本仕様には、2つのパワートレインが設定されています。
エントリーモデルの「S 450 d 4MATIC(ISG)」には、直列6気筒3.0リッターディーゼルターボエンジンに48Vマイルドハイブリッドシステム(ISG:インテグレーテッド・スターター・ジェネレータ)を組み合わせたパワートレインを搭載。最高出力367ps、最大トルク76.5kgmを発生し、環境性能と力強い走りを両立しています。前モデルと比較してトルクが大幅に向上(前モデル51.0kgm→76.5kgm)している点も見逃せません。
上位モデルの「S 580 4MATIC Long(ISG)」には、新開発の「M177 Evo」エンジンを搭載します。このV型8気筒4.0リッタービターボエンジンの最大の特徴は、一般的な乗用車エンジンで採用されるクロスプレーンクランクではなく、フェラーリなどのスーパーカーに用いられる「フラットプレーンクランク」を採用していることです。フラットプレーンクランクは、より鋭いレスポンスと高回転域での伸びやかなフィーリング、そして独特のエキゾーストノートが得られる構造です。改良されたターボチャージャーハウジングと燃料噴射システムとの組み合わせにより、最高出力395kW(537ps)・最大トルク750Nmを実現しており、前モデルの503ps/71.3kgmから大幅な向上を果たしています。両モデルとも9速ATとの組み合わせで4輪駆動システム「4MATIC」を標準装備します。
海外市場では、直列6気筒3.0リッターガソリンターボ+マイルドハイブリッドの「S500」(449ps)、プラグインハイブリッドの「S450e」(EV航続距離118km)・「S580e」(EV航続距離103km)なども設定されており、今後の日本導入も期待されます。
サスペンションには「E-Active Body Control」システムを搭載し、アダプティブダンパー、マルチコアプロセッサー、カメラ、センサーが連携することで、1秒間に1,000回もの精緻な乗り心地の最適化を実行。路面の凹凸を先読みして車体の姿勢を制御することで、高い快適性と卓越したハンドリングを同時に実現しています。
燃費:
新型Sクラスの燃費(WLTCモード)は、3.0リッターディーゼルマイルドハイブリッドを搭載するS 450 d 4MATICで13.5km/Lを達成しています。ディーゼルエンジンの高い熱効率に48Vマイルドハイブリッドの回生技術を組み合わせることで、5m超・2トン近い大型フラッグシップセダンとしては優秀な数値を記録しています。
安全装備・運転支援システム「MB.DRIVE」:
新型Sクラスには、AIを活用した最先端の運転支援・安全システムが採用されています。車両には高度な処理能力を誇る高性能コンピューターを搭載し、10台の外部カメラ、5台のレーダーセンサー、12台の超音波センサーが周囲360度の交通環境をリアルタイムで把握します。これらのセンサーから得られた膨大なデータを、AIアルゴリズムが高精度に解析・処理することで、従来の運転支援システムをはるかに超えた精度を実現しています。
標準装備の「MB.DRIVE」および「MB.DRIVE ASSIST」には、ディスタンスアシスト・ディストロニック(アダプティブクルーズコントロール)、ステアリングアシスト、レーンチェンジアシストなどが含まれます。ステアリングホイールには静電容量式の「ハンドオフ認識機能」を採用しており、従来のようにしっかりと握る必要はなく、手を軽く添えるだけでシステムがドライバーの存在を認識します。
駐車支援システム「MB.DRIVE PARKING ASSIST」では、走行中に車両両側の駐車スペースを早い段階から自動検知し、スムーズな駐車をアシスト。上位仕様の「MB.DRIVE PARKING ASSIST 360」では360度カメラによるサラウンドビュー表示と、駐車時のホイールへのダメージを防ぐリムプロテクション警告も備わります。
後席の安全性も強化されており、後席左右にリアエアバッグを採用。降車時の事故を防ぐドア開放警告システムも搭載し、室内ライティングとの連動で視覚的にも注意を促します。さらに、「E-Active Body Control」サスペンションを活用した「インパルスサイド」機能により、側面衝突が予測された場合に瞬時に車高を上昇させ、衝撃を車体下部の頑丈な構造で吸収することで乗員の安全を守ります。
ボディサイズ:
新型Sクラスのボディサイズは、前世代から一回り拡大されており、室内の快適性がさらに向上しています。
- ベースモデル:全長5,195mm × 全幅1,920mm × 全高1,505mm、ホイールベース3,105mm
- ロングモデル:全長5,290mm × 全幅1,930mm × 全高1,505mm、ホイールベース3,215mm
参考として前世代(ベースモデル)は全長5,125mm × 全幅1,900mm × 全高1,495mm・ホイールベース3,035mmでしたので、全長・全幅・ホイールベースともに拡大されていることがわかります。それでも、4.5度の動作角を持つ「リアアクスルステアリング(後輪操舵)」の採用により、ベースモデルの最小回転半径はわずか5.4mに抑えられており、下位モデルのEクラスに匹敵する取り回しの良さを実現しています。全長5m超のフラッグシップセダンとは思えない都市部での扱いやすさは、この技術の賜物です。
価格:
新型Sクラスの日本仕様の価格(メーカー希望小売価格・税込)は以下の通りです。
- S 450 d 4MATIC(ISG):1,598万円(予約受注中)
- S 580 4MATIC Long(ISG):2,365万円(予定価格・9月以降導入予定)
前モデルのエントリーグレード「S450d 4MATIC」は1,575万円でしたので、価格アップ幅は約23万円となっています。大幅な機能・装備の刷新を考慮すれば、その差は非常に小さいといえます。なお、S580はV8エンジン搭載の最上位ガソリンモデルで、こちらは9月以降の発表・納車開始予定となっています。
発売日・納車時期:
新型メルセデス・ベンツSクラスは2026年1月30日にワールドプレミアされ、2026年6月11日に日本での正式発表および予約受注が開始されました。ユーザーへの納車は9月以降が予定されています。まず「S 450 d 4MATIC」から受注・納車が始まり、V8搭載の「S 580 4MATIC Long」については9月以降に発表・導入の予定となっています。
ライバル車との比較:
新型Sクラスが属するウルトララグジュアリーセダンのセグメントには、BMWアルピナ「B12」やポルシェ「パナメーラ」、レクサス「LS」などが競合として挙げられます。ロールス・ロイスやベントレーはさらに上の価格帯に位置しますが、Sクラスはテクノロジーの最前線を走る点でこのカテゴリーの中でも際立った存在感を持ちます。特に今回搭載されたMB.OSと第4世代MBUXは、車載OSのインテグレーションという点で業界トップレベルの完成度を誇っており、テクノロジー面ではSクラスが一頭地を抜いているといえるでしょう。
Sクラスの歴史:
メルセデス・ベンツSクラスは、1972年に「W116型」として初代が登場したブランドの旗艦モデルです。世代を重ねるたびにその時代の最先端技術を惜しみなく投入し続けてきた歴史があり、ABSやエアバッグなど現在では当たり前となった安全技術も、Sクラスが世界で初めて量産採用したものが少なくありません。現行の7代目(W223型)は2021年登場で、今回の大規模改良モデルはその集大成バージョンに位置づけられます。また、最上級サブブランド「メルセデス・マイバッハ」のSクラスも引き続きラインアップされており、こちらはさらに長いホイールベースを持つ究極のラグジュアリーリムジンとして展開されています。
まとめ:
2026年版の新型メルセデス・ベンツSクラスは、単なるマイナーチェンジではなく、モデル史上最大規模の刷新を受けた実質的な次世代モデルといっても過言ではありません。MB.OS×第4世代MBUXによる次世代インフォテインメント、ChatGPT・Gemini・Bingを統合した生成AIアシスタント、新開発フラットプレーンクランクV8エンジン、AIによる高度な運転支援システム「MB.DRIVE」など、あらゆる面で時代の最前線を走る装備が凝縮されています。価格は1,598万円〜と決して安くはありませんが、自動車というプロダクトの究極形を体験したい方にとって、これ以上の選択肢はないと断言できる一台です。
S 450 d 4MATIC(ISG)は現在予約受注受付中。S 580 4MATIC Long(ISG)は2026年9月以降に発表・導入予定です。最新情報はメルセデス・ベンツ日本の公式サイトをご確認ください。

