中国のEV市場で旋風を巻き起こす、トヨタの新型EV「bZ3X」。広州モーターショー2024でその詳細が2024年11月15日に発表され、2025年3月の発売を予定しています。bZシリーズの新たな旗手として、中国消費者のニーズを徹底的に追求したbZ3Xは、一体どんな魅力を秘めているのでしょうか?その全貌に迫ります。
トヨタ bZ3X:中国市場向けEVの概要
- トヨタの純電動サブブランド「bZシリーズ」の新型SUV。
- 中国専売モデルとして、広汽トヨタが製造・販売。
- 開発段階から中国消費者のニーズを反映。
- 実用性重視のファミリー向けSUV。
- コンパクトなサイズながら、広々とした室内空間と荷室を確保。
エクステリア
- フロントフェイスは、シャープなラインと滑らかな曲面を組み合わせた親しみやすいデザイン。
- サイドビューは、3セクションのウエストラインが伸びやかなシルエットを演出。
- リアは、細い帯状のテールランプがワイド感を演出。
インテリア
- シンプルながらも洗練されたデザイン。
- 7インチ横長ディスプレイ(インストルメントパネル)と12.3インチタッチディスプレイ(センター)を搭載。
- クアルコム製Snapdragon 8155チップセット搭載でスムーズな操作性を実現。
- 11個のスピーカーで構成されるヤマハ製サウンドシステムを搭載。
パワートレイン
- シングルモーター(二輪駆動)とツインモーター(四輪駆動)の2種類を設定。
- 航続距離(CLTC方式):シングルモーター 615km、ツインモーター 560km。
先進技術
- 中国の自動運転スタートアップ企業「Momenta」と共同開発した先進運転支援システム「Momenta5.0」を搭載。
- 高速道路だけでなく、市街地走行にも対応したADAS(先進運転支援システム)。
- 自動運転レベルL2++に相当。
- ハンズオフ走行、分岐レーンへの自動進入、自動駐車、車外からの駐車操作などに対応。
- NVIDIAのOrin-Xチップセット(254 TOPS)、126ラインのLiDARユニットなど、最新のハードウェアを採用。
価格
- 10~15万元(約213万円~約320万円)。
発売時期
- 2025年3月発売予定。
bZシリーズ最新作、中国専売SUV「bZ3X」とは?
トヨタの電動化戦略を担うbZシリーズ。グローバルで展開するSUV「bZ4X」や中国専売セダン「bZ3」に続き、満を持して登場するのが「bZ3X」です。
トヨタと広州汽車集団有限公司、広汽トヨタ自動車有限会社、IEM by TOYOTAが共同開発し、心地が良い動く家を意味する「COZY HOME」をコンセプトに、大空間で快適な居住性を実現したファミリー向けSUVタイプのBEVです。最新の運転支援システム、スマートコックピットを搭載し、安全で快適なドライブに加え、新しい体験価値を提供します。
bZ3Xは、広汽トヨタが製造・販売を担う、中国市場に特化したEVです。開発段階から中国の消費者の声を反映し、広汽トヨタとトヨタが共同で開発しました。その特徴は、コンパクトなサイズながら、広々とした室内空間と荷室を確保した、実用性重視のファミリー向けSUVである点です。
新型 bZ3X 先進技術が凝縮されたエクステリアとインテリア
bZ3Xのデザインは、先進性と実用性を兼ね備えています。フロントフェイスは、シャープなラインと滑らかな曲面を組み合わせた、ファミリーカーらしい親しみやすい印象。サイドビューは、3セクションのウエストラインが伸びやかなシルエットを演出し、狭い窓枠と幅広のホイールアーチが力強さを強調しています。リアは、細い帯状のテールランプがワイド感を演出。スポーティさと安定感を両立したデザインとなっています。19インチホイールを採用。ボディサイズは全長:4,600mm、全幅:1,875mm、全高:1,645mm、ホイールベース:2,850mmとなっています。
インテリアは、シンプルながらも洗練された空間が広がっています。インストルメントパネルには7インチの横長ディスプレイ、センターには12.3インチのタッチディスプレイを配置。中国のEVでは主流となっているこのスタイルを採用することで、ユーザーに馴染みやすいインターフェースを提供しています。さらに、クアルコム製Snapdragon 8155チップセットを搭載し、スムーズな操作性を実現。11個のスピーカーで構成されるヤマハ製サウンドシステムが、上質な音楽体験を提供します。7つのエアバッグを装備しています。
新型 bZ3X 自動運転レベルL2++の先進運転支援システム「Momenta5.0」
bZ3Xで最も注目すべき点は、中国の自動運転スタートアップ企業「Momenta」と共同開発した、先進運転支援システム「Momenta5.0」です。これは、トヨタ車として初めて搭載される、市街地走行にも対応したADAS(先進運転支援システム)です。
Momenta5.0は、LiDARとカメラ映像を組み合わせ、高精度マップをリアルタイムで生成することで、高速道路だけでなく、複雑な市街地でも高度な運転支援を実現します。自動運転レベルはL2++に相当し、ハンズオフ走行、分岐レーンへの自動進入、自動駐車、車外からの駐車操作など、多彩な機能を備えています。
このシステムは、NVIDIAのOrin-Xチップセット(254 TOPS)や126ラインのLiDARユニットなど、最新のハードウェアを採用することで、中国メーカーの競合車種に引けを取らない高度な自動運転を実現しています。
新型 bZ3X 驚きの価格設定と中国市場におけるインパクト
bZ3Xの価格は、10~15万元(約213万円~約320万円)と、その先進的な機能を考えると、非常に競争力のある価格設定となっています。中国メーカーが低価格帯のEVを次々と投入する中、bZ3Xの価格優位性は大きな武器となるでしょう。
広汽トヨタは、すでにbZ4Xを販売しており、bZ3Xの投入により、中国市場におけるEVラインナップをさらに強化します。また、ミドルセダンEV「bZ7コンセプト」の市販モデルも1年以内に投入予定で、今後の展開に期待が高まります。
中国EV市場は、中国メーカーの台頭により、トヨタを含む日系メーカーや欧州メーカーのシェアが低下傾向にあります。bZ3Xは、安全性を重視し、ユーザーニーズに応えるトヨタの姿勢を体現したEVとして、中国市場に新たな風を吹き込む存在となるでしょう。
新型 bZ3X 中国専売の背景にある、自動運転技術の課題
2020年9月22日に日本の特許庁に「BZ3X」を申請(商願2020-116944)しています。bZ3Xは、残念ながら中国専売車となっています。その背景には、自動運転技術に関する法規制や解釈が、国や地域によって異なるという課題があります。また、欧米では、中国テック企業に対する安全保障上のリスクとなる懸念事項が存在します。中国政府も、輸入EVによるデータ流出を警戒し、通信機能を制限しています。EV開発は、性能競争から、SDV(Software Defined Vehicle)化に伴うソフトウェア競争へと移行しつつありますが、国や地域による規制の違いが、新たな障壁となっています。
bZ3Xの中国専売は、こうした状況を反映した結果と言えるでしょう。グローバルで自動運転技術を展開するには、各国・地域の法規制への対応が必須であり、自動車メーカーは、それぞれの市場に合わせた技術開発を迫られています。
編集部から一言
トヨタ bZ3Xは、中国市場のニーズを捉え、先進技術と価格競争力を両立させた、革新的なEVです。市街地走行に対応したADAS「Momenta5.0」は、中国のEV市場に大きなインパクトを与えるでしょう。
bZ3Xの成功は、トヨタの中国市場におけるプレゼンス向上に大きく貢献するだけでなく、今後のEV開発の方向性を示す重要な指標となる可能性を秘めています。
広汽トヨタ bZ3X