2023年5月に発売された三菱デリカミニが、わずか2年という異例の早さでフルモデルチェンジを果たしました。この電撃的なモデルチェンジは単なる偶然ではなく、三菱自動車の戦略的判断と本気度の表れです。
初代デリカミニの爆発的成功により、販売台数はベース車のeKクロススペースの4倍にまで急上昇。この成功により三菱は自信と開発予算を獲得し、満を持してゼロから設計した真のデリカミニを世に送り出すことになったのです。
新型デリカミニの三大進化ポイント
1. 制約から解き放たれた本物のデザイン
新型デリカミニの外観は、一見すると初代のキープコンセプトに見えますが、実際は骨格から全て一新された完全な別物です。
フロント周りの大胆な進化
- トレードマークの丸目ヘッドライトがさらに大型化し、よりキリリとした表情に
- ボンネットの厚みを増し、ジープのような縦スリットグリルで力強さを演出
- スキッドプレート風デザインも大型化され、SUVらしさが格段に向上
専用設計へのこだわり
最も注目すべきは、兄弟車のeKスペースとは異なる専用フェンダーを採用している点です。軽自動車では珍しいコスト度外視の専用設計により、デリカミニ独自の個性を確立しています。
さらに驚くべきは、デリカのロゴスペース確保のためにナンバープレートを左にオフセットしている点。この徹底したブランディングへの執念は、三菱の本気度を物語っています。
2. 軽自動車の常識を破壊する豪華な内装
モノリスディスプレイの衝撃
新型デリカミニの内装で最初に目を引くのは、7インチ液晶メーターと12.3インチインフォテインメントシステムを一枚の板のように見せたモノリスディスプレイです。これは軽自動車としては規格外の装備で、一部の自動車ジャーナリストからは「日産の海外向け高級SUV並みの仕上がり」と評価されています。
Google搭載による先進性
国内三菱車初となるGoogle搭載インフォテインメントシステムにより、スマホ感覚でGoogleマップの利用や「OK Google」によるエアコン操作、YouTubeなどのアプリ追加も可能になりました。
グランピング家具風の上質シート
シートはグランピング施設の家具をイメージした非常におしゃれで上質なデザインに一新。プレミアムグレードは落ち着いたカーキ、スタンダードグレードは明るいアイボリーを採用し、初代オーナーが不満を漏らしていた座り心地も劇的に改善されています。
アウトドア仕様の実用装備
- 表皮は防水加工済みでアウトドア用品も安心して積載
- 後席には空気循環用サーキュレーター
- 窓には3段階調整可能なシェード
- 前席背もたれにはテーブルを完備
- 汚れに強い素材で泥だらけの道具も気兼ねなく積める
3. 三菱の魂が宿る本格的な走り
マイルドハイブリッド廃止の英断
新型デリカミニで最も衝撃的なのは、マイルドハイブリッドシステムの廃止です。一見すると退化に思えるこの判断こそが、三菱の走りへのこだわりを示しています。
エンジンの根本的改良
660cc直列3気筒DOHCエンジンは、ピストンのフリクション(摩擦抵抗)を徹底的に低減し、エンジン制御プログラムも全面見直し。これによりモーターアシストなしで初代のマイルドハイブリッド車と同等の燃費性能を実現しています。
CVTの革新的チューニング
従来の軽自動車にありがちな「アクセルを踏んでもエンジン音だけが先行するラバーバンドフィール」を完全に解消。アクセル操作に応じてリニアにエンジン回転数が上昇する、ダイレクトで気持ち良い加速フィールを実現しました。
エンジン仕様
- 自然吸気エンジン: 直列3気筒660cc(52ps/6.2kgm)
- ターボエンジン: 直列3気筒660ccターボ(64ps/10.2kgm)
- トランスミッション: CVT(ステップAT風制御)
- 駆動方式: FF/4WD選択可能
燃費性能の向上
- 自然吸気FF: 22.0km/L(現行20.9km/Lから向上)
- 自然吸気4WD: 20.0km/L(現行19.0km/Lから向上)
- ターボFF: 20.5km/L(現行19.2km/Lから向上)
- ターボ4WD: 18.5km/L(現行17.5km/Lから向上)
注目すべきは、マイルドハイブリッドシステムを廃止しながらも燃費性能を向上させている点です。
足回りへの本格投資
火山製高性能ダンパー初採用
ショックアブソーバーには軽自動車用三菱として初となる火山製高性能ダンパーを採用。内部フリクションを極限まで減らし、細かな路面の凹凸をしなやかに吸収してフラットで上質な乗り心地を実現しています。
デリカD5のエースエンジニアが担当
足回りセッティングを担当したのは、デリカD5やアウトランダーの開発を手がけた三菱のエースエンジニア。彼らが三菱のテストコースで走り込み、デリカミニ専用の妥協なきセッティングを施しました。
本格的ドライブモードセレクター
軽自動車として初めて搭載された本格的なドライブモードセレクターは、アウトランダー譲りの立派なダイヤル式。ノーマル、エコ、パワーに加え、三菱ならではのグラベルとスノーモードを選択可能です。
- POWER(パワー): 力強い走りを重視
- ECO(エコ): 燃費効率を最優先
- NORMAL(ノーマル): バランスの取れた標準モード
- GRAVEL(グラベル): 砂利道などの悪路対応
- SNOW(スノー): 雪道での安全走行
特にグラベルモードでは、雨で抜かるんだキャンプ場への進入や雪道走行を想定し、エンジンレスポンス、CVTシフトマップ、横滑り防止装置、トラクションコントロール、ブレーキLSD、電動パワーステアリングまで統合制御する本格的なシステムとなっています。
新旧デリカミニ徹底比較
外観の変化ポイント
フェンダー表現の革命
- 初代:塗り分けによるフェンダー表現(力技的手法)
- 新型:立体的に張り出した本物のフェンダー
ヘッドライト形状の進化
- 初代:シンプルな丸目デザイン
- 新型:ウインカーが内側で点灯する立体的デザイン
リアウインドウ形状の変更
- 初代:跳ね上げたようなデザイン
- 新型:すっきりとした真四角でボリューム感アップ
キャラクターラインの立体化
- 初代:一直線で中央付近にくびれ
- 新型:立体的な造形でフェンダーをより強調
内装の劇的進化
ダッシュボード
- 初代:従来的な軽自動車レイアウト
- 新型:eKスペースとは完全に異なる専用設計のダッシュボード
ディスプレイ
- 初代:分離型の液晶とオーディオ
- 新型:一体型モノリスディスプレイ
素材・質感
- 初代:樹脂中心の実用的内装
- 新型:ステッチ入りレザー調素材、エンボス加工など高級車レベル
兄弟車との差別化戦略
新型デリカミニと同時発表された日産ルークス(eKスペース)との差別化も見事です。
デザインアプローチの違い
- ルークス:都会的でスポーティなワゴンタイプ
- デリカミニ:SUV系でワイルドなアウトドア仕様
装備の差別化
- ルーフレール:ルークス(なし)、デリカミニ(装備)
- フェンダー:ルークス(ボディ同色)、デリカミニ(ブラックアウト)
- バンパー:完全に異なる設計
価格・グレード構成
新型デリカミニの価格帯は約195万円~295万円に設定されています。初代の約184万円からの値上がりはありますが、専用設計の数々と圧倒的な質感向上を考慮すれば、決して高すぎる価格ではありません。
競合のSUV風軽自動車より高価格帯に設定されているものの、デリカミニでしか味わえない独自の価値を提供しています。
市場への影響と将来展望
軽ハイトワゴン市場への衝撃
新型デリカミニの登場により、軽ハイトワゴン市場のランキングが10数年ぶりに塗り替わる可能性が高まっています。
主要競合車への影響
- ホンダN-BOX:絶対王者の地位に初めての本格的脅威
- スズキスペーシア:アウトドア系での競争激化
- ダイハツムーヴキャンバス:スライドドア搭載で直接競合に
三菱・日産連合の戦略成功
NMKV(日産三菱合弁会社)による開発体制の成果が結実した新型デリカミニ。両社のリソースを結集することで、単独では実現困難な高品質車の開発に成功しています。
まとめ:真のデリカミニの誕生
新型デリカミニは、初代の成功で得た自信と予算をもとに、制約から解き放たれた三菱のデザイナーとエンジニアが理想を追求した真の初代と呼ぶべき完成度を実現しています。
デリカロゴのためにナンバーをずらすほどの執念、軽自動車の常識を破壊する豪華な内装、デリカD5の血統を受け継ぐ三菱の魂が宿る走り─これらすべてが詰まった新型デリカミニは、間違いなく「バカ売れ確定」の一台です。
2025年秋の発売を前に、すでに予約注文が開始されている新型デリカミニ。軽自動車ユーザーの日常を冒険に変えてくれる理想の1台として、市場に新たな旋風を巻き起こすことは間違いありません。