2025年12月、政府・与党は自動車購入時に課税される「環境性能割」を2026年度から2年間停止する方針を固めました。この決定は年間2000億円規模の減税となり、自動車購入を検討している消費者にとって大きなメリットとなります。
環境性能割とは？消費者が知っておくべき基礎知識
環境性能割の概要と導入背景
環境性能割は、2019年10月の消費税率10%への引き上げに伴い、それまでの「自動車取得税」を廃止する代わりに導入された税金です。車両の環境性能（燃費性能など）に応じて、車両取得価額の**0～3％**が消費税とは別に課税される仕組みになっています。
この税制は地方税として年間約2000億円の税収があり、地方自治体の重要な財源となっていました。しかし、自動車業界からは長年「消費税との二重課税になる」として廃止を求める声が上がっていました。
環境性能割停止による具体的なメリット
新車購入時の減税額シミュレーション
環境性能割の停止により、消費者はどれくらいお得になるのでしょうか？具体的な例で見てみましょう。
【300万円の新車を購入する場合】
- 車両本体価格の約90%（270万円）に3%が課税
- 停止前：環境性能割として約8万1,000円が課税
- 停止後：8万1,000円の減税
【400万円の新車を購入する場合】
- 車両本体価格の約90%（360万円）に3%が課税
- 停止前：環境性能割として約10万8,000円が課税
- 停止後：10万8,000円の減税
この減税効果は、オプション装備の追加や、より上位グレードの選択を可能にする金額です。
買い替え時期を検討している方へのメリット
高市早苗総理大臣は、この政策の狙いについて次のように説明しています。
「トランプ関税により輸出がしにくい状態で苦しんでいる自動車会社を応援しようと。2年に限って停止すると言ったら、買い替え時期が来ている人が早めに買い替えてくれるかなと」
つまり、この2年間は自動車購入の絶好のタイミングと言えます。
トランプ関税と自動車業界の現状
米国関税が日本の自動車産業に与える影響
トランプ政権の関税政策により、日本の自動車メーカーは米国への輸出に大きな影響を受けています。この状況下で、政府は国内市場の活性化を通じて自動車産業を支援する方針を打ち出しました。
環境性能割の停止は、輸出の苦境を国内需要の喚起でカバーしようとする戦略の一環です。自民党の小野寺五典税調会長も「自動車関係諸税については『環境性能割』の2年間の停止。これは私どもしっかり受け止めさせていただく」と述べており、業界からの要望を受け入れた形となっています。
2028年度以降の環境性能割はどうなる？
今後2年間での再議論
環境性能割の停止は「2年間限定」の措置です。2026年度の与党税制改正大綱には、2028年度以降の環境性能割のあり方について、今後2年かけて再議論していく旨が明記される方針です。
つまり、この2年間は自動車税制の過渡期となり、消費者にとっては購入のチャンスである一方、2028年以降の税制については不透明な状況が続きます。
電気自動車（EV）への新たな課税の可能性
注目すべき点として、EV（電気自動車）に対する新たな課税の仕組みが検討されています。
EVへの新課税検討の背景：
- ガソリン車と比べて税負担が軽いEV
- 車体が重く、道路へのダメージが大きい
- 重量に応じて課税する新たな仕組みを検討
小野寺税調会長は「環境普及のためにも、EVにもしっかり支援もしていきたい。そういうバランスをとった形で今後、具体的な税の形にするかということは、来年に向けてしっかり協議していく」と述べており、EV普及と公平な税負担のバランスをどう取るかが今後の課題となります。
自動車購入時にかかる税金の全体像
環境性能割の停止を理解するには、自動車購入時にかかる税金全体を把握しておくことが重要です。
現在の自動車購入時の税金
- 環境性能割（2026年度から2年間停止予定）
- 車両取得価額の0～3%
- 環境性能に応じて税率が変動
- 自動車重量税
- 車両重量に応じて課税
- 新車登録時と車検時に納付
- 自動車税/軽自動車税
- 排気量に応じて年額で課税
- 毎年5月に納付
- 消費税
- 車両本体価格とオプション費用に10%
環境性能割が停止されることで、このうちの1つの税負担がなくなるため、購入者の負担は大幅に軽減されます。
地方自治体への影響と国の補填
年間2000億円の税収減への対応
環境性能割は地方税として年間約2000億円の税収があります。この停止により、地方自治体では大幅な減収が見込まれますが、国が補填する方向で調整が進められています。
この補填により、地方自治体の財政に大きな影響を与えることなく、消費者への減税効果を実現する仕組みが構築される予定です。
自動車購入を検討している方へのアドバイス
2026年度からの2年間が購入のベストタイミング
環境性能割の停止を最大限活用するために、以下のポイントを押さえておきましょう。
購入を検討すべき方：
- 買い替え時期が近づいている方
- 新車購入を数年以内に考えていた方
- 300万円以上の車両購入を予定している方
購入時期の目安：
- 2026年4月以降の購入がお得
- 2028年3月までの2年間が減税期間
- 早めの計画で車両選定に余裕を持つ
環境性能割停止期間中の注意点
- 在庫状況の確認
減税効果により需要が高まる可能性があるため、人気車種は早めの商談が推奨されます。 - 2028年度以降の税制
環境性能割が復活する可能性や、新たな税制が導入される可能性を考慮に入れましょう。 - EVの課税動向
電気自動車の購入を検討している方は、新たな重量課税の詳細が決まるまで情報収集を続けることが重要です。
まとめ：環境性能割停止は消費者にとって大きなチャンス
2026年度から2年間の環境性能割停止は、自動車購入を検討している消費者にとって見逃せない大型減税措置です。300万円の新車で約8万円、400万円の新車で約10万円の減税効果があり、購入の負担が大幅に軽減されます。
トランプ関税により苦境に立つ自動車業界の支援策として打ち出されたこの政策は、同時に国内市場の活性化と消費者の購買意欲を高める効果が期待されています。
2028年度以降の税制については今後2年間で再議論されるため、この期間が自動車購入の絶好のタイミングと言えるでしょう。買い替えを検討している方は、ぜひこの機会を活用して、お得に新車を手に入れることをお勧めします。
日刊自動車新聞
