ホンダが2027年型「パスポート トレイルスポーツ」を正式発表した。第4世代パスポートはわずか1年前の2025年初頭に市場投入されたばかりだが、ホンダはすでに大規模なアップデートを実施している。その理由は明快だ。現行パスポートの販売構成においてトレイルスポートモデルが全体の80%以上を占めており、オフロード志向ユーザーからの圧倒的な支持がそのまま開発の優先順位に直結しているからである。ホンダ自身が「これまでホンダが作った中で最もオフロード性能の高いSUV」と表現し、「クラスをリードするオフロード性能とオンロード走行性の両立」を謳うこの新型が、ラダーフレームSUVの存在意義を問い直す存在になりつつある。
サスペンション刷新:単なる「リフトアップ」ではない徹底的な再設計
2027年型パスポート トレイルスポートの最大の変更点は、サスペンションの根本的な再設計だ。単純にスプリングを交換して車高を上げるような「リフトキット的」なアプローチとは一線を画し、ホンダのエンジニアはサスペンション主要部品の約70%を新設計した。具体的には、スプリング、ダンパー、コントロールアーム、スタビライザーバー、ナックル、フロントドライブシャフト、フロントサブフレームを含む計28点ものサスペンション関連部品が新設計・改良または刷新されており、車高アップに伴うジオメトリーの乱れを最小化しながら、オフロード性能とオンロード操縦性の双方を同時に高めるという高難度の目標を達成している。

その結果として実現したのが、1.38インチ(約35mm)の最低地上高アップである。旧型トレイルスポートの8.27インチ(約210mm)から、2027年型では**9.65インチ(約245mm)**へと大幅に向上した。アプローチアングルおよびデパーチャーアングルは各2度向上して25度となり、ブレイクオーバーアングルは3度向上して23度に達する。これらの数値改善は、岩場・深い轍・ブラインドクレストといった本格的なオフロードシーンでの走破性に直結するものだ。

| スペック | 2027年型 | 2026年型 | 向上幅 |
|---|---|---|---|
| 最低地上高 | 9.65インチ(245mm) | 8.27インチ(210mm) | +1.38インチ |
| アプローチアングル | 25度 | 23度 | +2度 |
| デパーチャーアングル | 25度 | 23度 | +2度 |
| ブレイクオーバーアングル | 23度 | 20度 | +3度 |
さらに注目すべきは、この再設計がオフロード性能だけでなくオンロードでのステアリングフィールと応答性の改善にも寄与しているという点だ。多くのリフトアップ施工後のSUVが日常走行でのハンドリングに妥協を強いられるのとは対照的に、ホンダはオン・オフ両域でのバランスを追求した。これはモノコックボディのSUVならではのアドバンテージでもある。
ライバル比較:トヨタ4ランナーやスバル アウトバックを超えるのか?
ホンダが最低地上高の比較対象として名指しするのは、トヨタ 4ランナー TRDオフロード、スバル アウトバック ウィルダネス、フォード ブロンコスポーツ バッドランズ サスカッチという錚々たるオフロードSUV群だ。公式発表によれば、パスポート トレイルスポートの9.65インチという最低地上高はこれらすべてを上回るとされており、これは数値上では大きな強みになる。
しかし、ここで冷静な分析が必要だ。トヨタ4ランナーはラダーフレーム構造にリジッドリアアクスルを組み合わせた本格クロスカントリーモデルであり、最低地上高の数値だけでは語れない「総合的なオフロード耐久性」と「岩場での対応力」を持っている。一方でパスポートはモノコック構造の独立懸架サスペンションを採用しており、段差越えの滑らかさや轍でのアーティキュレーション改善においては優位性を持つが、最悪環境下でのタフネスという点では構造上の差異が存在する。
これはどちらが優れているかという問題ではなく、ユーザーのニーズに何が合うかという問いである。Car and Driverが鋭く指摘するように「パスポートは、トラックに乗っているような見た目を求めながら、クルマのような乗り心地を求める人のためのSUV」という側面は今も変わっていない。本格的な岩場や泥濘地を攻略したい人には4ランナーやブロンコ(無印)が向いているが、週末のダートトレイルや砂利道での冒険を楽しみつつ平日は快適な乗り心地で通勤したいという大多数のユーザーにとっては、パスポート トレイルスポートのバランスは非常に魅力的な選択肢となる。
エクステリアデザイン:タフさを数センチ高いボディで表現
スタイリング面での変更は控えめながらも、的確な箇所に施されている。ロサンゼルスのホンダデザインスタジオが手がけた変更のポイントは主に3点だ。まず、ロードスター系のポジションライトを連想させるアンバーLEDライトをフードスクープに新設したことで、フロントフェイスにより攻撃的な表情が加わった。次に、前後のフェンダーフレアが拡大され、ワイドトレッドをより強調するビジュアルが作られた。そして、フロントスキッドプレートの造形がよりダイナミックにリスカルプチャーされた。

カラーラインナップでは、2026年型の「オブシディアンブルーパール」に替わり「スモークブルーパール」が採用された。このカラーは2026年型ホンダ パイロットで初登場したもので、シリーズ間の連続性を感じさせる選択だ。また人気の「ブラックアウトパッケージ」はスキッドプレート部分にブラックガーニッシュが追加され、よりステルス感の強いルックスに磨きがかかっている。

インテリアと装備:上位グレードの標準機能が全グレードに拡大
インテリアの基本構成は先代から引き継がれるが、注目すべき装備拡充が行われた。これまでフラッグシップの「トレイルスポーツ エリート」のみに標準装備されていた加熱式ステアリングホイールと、TrailWatch™カメラシステムが全トレイルスポートグレードで標準装備となった点は大きなバリューアップと言える。

TrailWatch™は、フロント・リア・サイド・360度の計4視点を切り替えられるカメラシステムで、急斜面の死角、深い轍、トレイルの端など、通常の視野では確認しにくい障害物を回避するための強力な補助ツールだ。タイヤの位置をガイドするグラフィックと組み合わさることで、単なる後退支援を超えたオフロードナビゲーション機能として機能する。

さらに2026年夏にホンダが正式ローンチしたHTX(Honda Trail Experience)アプリも注目に値する。これはパスポート トレイルスポート、パイロット トレイルスポート、CR-V トレイルスポートのオーナー向けに開発された専用オフロードアプリで、1,500名以上のオーナーの意見をもとに米国のホンダエンジニアが開発した。標高・ピッチ・ロール・ブレーキ圧・スロットル開度・エンジン温度・タイヤ角度・GPS座標といったリアルタイム車両データの表示に加え、iPhoneカメラと連携したデータオーバーレイ動画の撮影・エクスポート機能も備えており、SNSシェアも想定した現代的なアウトドアユーザー向け設計になっている。



パワートレイン:V6の安定感は継続
エンジンは先代から引き継がれた**3.5リッターV6自然吸気エンジン(285hp / 213kW)**を継続搭載する。このエンジンはアラバマ州リンカーンのホンダ工場内のエンジン生産設備で製造されており、SUVの日常使用からタフな登坂まで十分なトルクを発揮する信頼性の高いユニットだ。サスペンションが大幅に刷新されたことで、このV6エンジンのポテンシャルをより引き出せる走行シーンが広がったとも言える。
製造・販売:メイド・イン・アメリカの誇りと日本輸出の開始
2027年型パスポートは、カリフォルニア州でデザインされ、オハイオ州でエンジニアリングされ、アラバマ州リンカーンのホンダ アラバマ オートプラントで専用生産される。同工場はパスポートのほかパイロット、オデッセイ、リッジラインの生産拠点でもあり、過去21年間のCars.com アメリカン・メイド・インデックスにおいて最多の44車種をトップ10に送り込んでいる工場だ。
さらに特筆すべきは、2027年初頭から日本市場への「パスポート トレイルスポーツ エリート」の輸出が予定されている点だ。日本の消費者が本格的なホンダ製オフロードSUVを正規ルートで入手できるようになるという意味で、グローバルにおけるパスポートのポジショニング強化の一環と捉えられる。
販売開始は2026年9月中の予定で、価格は販売開始に近いタイミングで発表される見込みだ。

総評:ラダーフレームSUVは本当に必要か?
冒頭の問いに戻ろう。「ラダーフレームSUVは本当に必要か?」という問いに対して、2027年型パスポート トレイルスポートが示す答えは「使い方によっては、もはや必要ない」だ。
最低地上高9.65インチ、アプローチアングル25度、ブレイクオーバーアングル23度というスペックは、週末のダートロードやハイキングトレイルへのアクセス、砂浜や雪道の走行といった「現実的なオフロードシーン」においては十分以上の能力を持つ。それでいてオンロードでの乗り心地・燃費・ハンドリングはラダーフレームSUVに対して明確に優位であり、日常使いとアドベンチャーユースの両立という点でパスポートは非常に高いレベルに達している。
一方で、本格的な岩場走行、ウインチングが前提のエクストリームオフロード、あるいは高負荷牽引をメインに考えるユーザーにはラダーフレームの構造的なタフネスが引き続き重要になる。しかしそれはSUV市場全体のごく一部のユーザーに限った話だ。
ホンダ パスポートのトレイルスポート販売比率が80%を超えるという事実は、市場がすでにこの方向性に大きな支持を送っていることを雄弁に示している。2027年型の刷新によって、パスポートはオフロードSUVセグメントにおいてより強力な選択肢として確立されたと言えるだろう。
まとめ:2027年型ホンダ パスポート トレイルスポート 主要アップデート一覧
- サスペンション:主要部品の約70%を新設計、計28点を改良・刷新
- 最低地上高:8.27インチ → 9.65インチ(+1.38インチ)
- オフロードアングル:アプローチ・デパーチャー各+2度(25度)、ブレイクオーバー+3度(23度)
- エクステリア:アンバーLEDフードライト追加、フェンダーフレア拡大、フロントスキッドプレート再設計
- カラー:スモークブルーパール追加(オブシディアンブルーパール廃止)
- 標準装備化:全トレイルスポートグレードに加熱式ステアリングホイールとTrailWatch™カメラ
- 新機能:HTX(Honda Trail Experience)アプリ対応
- 販売開始:2026年9月(米国)、2027年初頭より日本輸出開始予定

