2025年4月17日、スウェーデンの自動車メーカー、ボルボ・カーズは、同社のフラッグシップセダンである「S90」に大幅な改良、いわゆるビッグマイナーチェンジを施し、その詳細を発表しました。
ボルボのラインナップにおいて、SUVの「XC90」、ワゴンの「V90」と並び、最上位に位置づけられるS90は、洗練されたスカンジナビアンデザインと先進の安全技術、そして快適なドライビング体験を提供するモデルとして、世界中のユーザーから高い評価を得てきました。2017年に日本市場へ導入された現行モデルは、当初500台の限定販売という形でしたが、その人気の高さから2021年には小規模な改良と共に通常販売モデルへと移行しました。
そして今回、満を持して行われたビッグマイナーチェンジでは、デザイン、テクノロジー、快適性、走行性能の全てにおいて、さらなる進化を遂げています。この記事では、大幅に魅力を増したボルボ新型S90の全貌について、スペックや装備、そして市場における位置づけまで、詳しくご紹介していきます。
ボルボ新型S90 ビッグマイナーチェンジ まとめ
発表・位置づけ
- ボルボがフラッグシップセダン「S90」のビッグマイナーチェンジを2025年4月17日に発表。
- XC90、V90と並ぶボルボの最上級モデルの一つ。
- デザイン、技術、快適性、走行性能を全面進化。
エクステリアデザイン
- EV「ES90」や改良型「XC90」由来の新世代ボルボデザインを採用し、よりモダンで洗練された外観に。
- フロント:スリムな「トールハンマー」LEDヘッドライト、新しい凸型グリル(斜線パターン)、新デザインバンパー(垂直基調エアインテーク)。
- リア:トールハンマーモチーフの新デザインテールランプ、新デザインバンパー。
- サイド:新デザインのダイヤモンドカットアルミホイール。
インテリアデザイン
- スカンジナビアン・ラグジュアリーを追求し、シンプルさと上質さ、機能性を向上。
- インフォテインメント:新たに11.2インチ縦型大型タッチスクリーンを採用(高解像度化、新インターフェース、Google搭載、OTA対応)。
- 快適性向上:遮音材追加による静粛性向上、アダプティブサスペンション標準装備(市場による)。
- B&Wプレミアムサウンドオーディオシステムも進化(オプション)。
パワートレイン(日本仕様)
- 高性能プラグインハイブリッド「T8 Recharge Plug-in hybrid」を搭載。
- システム構成:2.0Lガソリンエンジン + 前後モーター + 大容量バッテリー。
- スペック:エンジン317ps/40.8kgm、モーター(F)71ps/16.8kgm、(R)145ps/31.5kgm。
- EV航続距離:81km (WLTCモード)。
- 燃費:14.5km/L (WLTCモード、ハイブリッド時)。
- トランスミッション:8速AT。
- 駆動方式:電子制御AWD。
- 海外市場ではマイルドハイブリッド仕様も存在。
先進安全・運転支援システム「インテリセーフ」
- ボルボの最新・最高水準の安全技術を標準装備。
- 主な機能:
- City Safety(衝突回避・被害軽減ブレーキ:車両、歩行者、サイクリスト、大型動物検知)。
- インターセクション・サポート、オンカミング・レーン・ミティゲーション。
- ステアリング・サポート(衝突回避支援機能)。
- アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)、パイロット・アシスト(車線維持支援)。
- ステアリングアシスト付BLIS(後車衝突回避支援機能付ブラインドスポット情報)。
- CTA(クロス・トラフィック・アラート、衝突回避・被害軽減ブレーキ付)。
- パーク・アシスト・パイロット(駐車支援、被害軽減ブレーキ付)。
- 先行車発進告知機能、リア衝突回避・被害軽減ブレーキ・システム(2021年改良で追加)。
- 堅牢なボディ構造や各種エアバッグなどパッシブセーフティも充実。
ボディサイズ
- 全長4970mm × 全幅1880mm × 全高1445mm、ホイールベース2940mm。
- V90より長く低い、スポーティでエレガントなプロポーション。
- フラッグシップにふさわしい堂々たるサイズ感と広い室内空間。
価格・発売日(日本)
- グレード:S90 Recharge Ultimate T8 AWD Plug-in hybrid。
- 価格:10,890,000円(消費税込)。
- 発売時期:2025年夏。
グローバル市場
- 主にアジア市場(特に中国)をターゲットとして開発・販売。
- 欧米市場(米国、英国、フランスなど)では、市場動向や関税問題により販売縮小または終了の見込み。
- 日本市場では継続販売。
- 将来的にはEVセダン「ES90」がフラッグシップとなる可能性。
総合的な魅力
- 洗練された最新デザイン、先進的なデジタル体験、高い静粛性と快適性、パワフルで効率的なPHEV、世界最高水準の安全性を兼ね備えたフラッグシップセダン。
洗練を極めたエクステリアデザイン:新世代ボルボの顔
今回のビッグマイナーチェンジにおける最も大きな変更点の一つが、エクステリアデザインの大幅な刷新です。ボルボは近年、電気自動車(EV)へのシフトを加速させており、そのデザイン言語も新世代へと移行しつつあります。新型S90のエクステリアは、ボルボが将来のフラッグシップEVセダンとして発表したコンセプトモデルや、先行して改良された兄弟車「XC90」のデザイン要素を取り入れ、よりモダンで洗練された印象へと生まれ変わりました。特に注目すべきはフロントマスクの変更です。ボルボのデザインアイコンである「トールハンマー」をモチーフとしたLEDヘッドライトは、従来よりもスリムな形状となり、デイタイムランニングライトのアウトラインが強調されるデザインに変更されました。これにより、シャープで知的な表情を生み出しています。さらに、ヘッドライトはノーズに沿ってより内側まで伸び、新デザインのフロントグリルへと繋がっています。この新しいグリルは、これまでの凹型のデザインから、立体感のある凸型のデザインへと変更され、2方向から伸びる斜線が中央で重なり合うパターンが採用されています。この緻密なデザインは、車両全体の質感を高めるとともに、ボルボの新世代モデルであることを明確に示しています。フロントバンパーのデザインも一新され、サイドのエアインテークは垂直基調のデザインとなり、ワイドで安定感のあるスタンスを強調しています。ボンネットやフロントフェンダーの形状も見直され、より流麗でダイナミックなシルエットが与えられています。
リアセクションのデザインも、フロントとの調和を図る形で大幅に変更されました。従来はコの字型だったテールランプは、フロントのトールハンマーヘッドライトのデザインモチーフを踏襲した、よりシャープで水平基調のデザインへと変更されています。これにより、リアビューもよりモダンで洗練された印象となり、夜間における視認性も向上しています。リアバンパーのデザインも刷新され、エキゾーストパイプの処理なども含めて、よりクリーンで一体感のある造形となっています。サイドビューでは、新デザインのダイヤモンドカットアルミホイールが足元を引き締めます。エレガントさとスポーティさを両立したデザインは、S90のキャラクターに見事にマッチしており、車両全体の高級感を一層高めています。これらのデザイン変更は、単に見た目の印象を変えるだけでなく、空力性能の向上にも寄与していると考えられます。ボルボは、デザインと機能性を高い次元で両立させることを常に追求しており、新型S90においてもその哲学が貫かれています。全体として、新型S90のエクステリアは、ボルボらしいクリーンでエレガントなスカンジナビアンデザインを継承しつつ、最新のデザイントレンドと技術を取り入れることで、フラッグシップセダンにふさわしい、より洗練され、存在感のある佇まいを実現しています。
堂々たるボディサイズと快適な空間:フラッグシップの風格
ボルボ新型S90のボディサイズは、全長4970mm × 全幅1880mm × 全高1445mm、ホイールベースは2940mmとなっています。これは、ボルボのラインナップにおけるフラッグシップセダンとして、十分な存在感と余裕のある室内空間を確保するためのディメンションです。同じプラットフォームを共有するフラッグシップワゴンの「V90」(全長4935mm × 全幅1880mm × 全高1475mm、ホイールベース2940mm)と比較すると、全長は35mm長く、全高は30mm低く設定されています。この低く伸びやかなプロポーションが、S90のスポーティでエレガントなキャラクターを強調しています。全幅はV90と共通の1880mmであり、日本の道路環境においても比較的扱いやすいサイズ感を維持しています。長いホイールベースは、広々としたリアシートのレッグルームに貢献しており、後席の乗員にも快適な移動空間を提供します。フラッグシップSUVの「XC90」(全長4955mm × 全幅1960mm × 全高1775mm、ホイールベース2985mm)と比較すると、全長はほぼ同等ながら、全幅は80mm、全高は330mmも小さく、より低重心で安定感のあるセダンらしいフォルムとなっています。新型S90は、その堂々たるサイズ感と洗練されたスタイリングによって、見る者に強い印象を与え、オーナーには所有する喜びをもたらすでしょう。
ボルボ 主要モデル ボディサイズ比較表
項目 | 新型S90 | V90 | XC90 |
---|---|---|---|
全長 | 4,970mm | 4,935mm | 4,955mm |
全幅 | 1,880mm | 1,880mm | 1,960mm |
全高 | 1,445mm | 1,475mm | 1,775mm |
ホイールベース | 2,940mm | 2,940mm | 2,985mm |
上質さと機能性を融合したインテリア:デジタル体験の進化と快適性の向上
新型S90のインテリアは、エクステリアと同様に、ボルボが推進するスカンジナビアン・ラグジュアリーの最新の解釈を体現しています。シンプルでありながら上質、そして直感的な操作性を追求した空間は、ドライバーと同乗者に安らぎと快適さを提供します。今回の改良における最大のハイライトは、インフォテインメントシステムの大幅なアップデートです。従来モデルに搭載されていた縦型の9インチセンターディスプレイに代わり、新たに11.2インチの大型タッチスクリーンディスプレイが採用されました。この新しいディスプレイは、単にサイズが大きくなっただけでなく、ピクセル密度が従来比で21%向上しており、より鮮明で高精細な表示を実現しています。地図表示や各種情報の視認性が大幅に向上し、より快適なドライブをサポートします。また、インターフェースも刷新され、ホーム画面には頻繁に使用するアプリや車両設定へのショートカットが配置されました。これにより、ドライバーは少ない操作で目的の機能に素早くアクセスできるようになり、運転中の視線移動を最小限に抑えることができます。この新しいインフォテインメントシステムは、Googleとの共同開発によるAndroid Automotive OSをベースとしており、Googleマップ、Googleアシスタント、Google Playストアなどのサービスが車載化されています。これにより、スマートフォンとの連携に頼らずとも、常に最新の地図情報やリアルタイムの交通情報を利用でき、音声コマンドによる直感的な操作も可能です。さらに、OTA(Over-The-Air)アップデート機能も搭載されており、ソフトウェアの更新や新機能の追加が、ディーラーに車両を持ち込むことなく、無線通信を通じて自動で行われます。これにより、常に最新の状態で車両を使用することができ、利便性が大幅に向上しています。
インフォテインメントシステムの進化に加え、インテリア全体の質感と快適性もさらに高められています。ボルボが得意とする天然素材を用いた上質なトリムや、人間工学に基づいて設計されたシートはそのままに、今回の改良では遮音材の追加や配置の見直しが行われ、室内の静粛性が一層向上しました。エンジンノイズやロードノイズ、風切り音などが効果的に抑制され、高速走行時でも静かで落ち着いた室内空間を実現しています。これにより、ドライバーは運転に集中でき、同乗者はリラックスして移動時間を過ごすことができます。オプションで設定されているBowers & Wilkins(B&W)プレミアムサウンドオーディオシステムも、2021年の改良で音場再現性が向上し、新たに「ジャズクラブモード」が追加されるなど、進化を続けています。新型S90では、さらに磨き上げられた音響空間で、臨場感あふれる音楽体験を楽しむことができます。また、快適性を高める装備として、アダプティブサスペンションが標準装備(市場による)となっている点も見逃せません。路面状況や走行スタイルに応じてダンパーの減衰力を自動で調整し、常に最適な乗り心地と安定したハンドリングを提供します。物理的なスイッチの数を極力減らし、大型タッチスクリーンに機能を集約することで実現したクリーンでミニマルなダッシュボードデザインは、視覚的な広がりと開放感をもたらします。新型S90のインテリアは、最新のデジタル技術と、ボルボならではの上質な素材、そして快適性を追求した装備が見事に融合し、まさに現代のラグジュアリーセダンにふさわしい、洗練された移動空間を提供します。
パワフルかつ効率的なプラグインハイブリッド:電動化時代のパフォーマンス
日本市場に導入される新型S90のパワートレインは、ボルボが推進する電動化戦略の中核をなす「T8 Recharge Plug-in hybrid」が搭載されます。このシステムは、高効率な2.0リッター4気筒ガソリンエンジンに、フロントとリアにそれぞれ配置された電気モーター、そして大容量のリチウムイオンバッテリーを組み合わせた高性能なプラグインハイブリッドシステムです。エンジンは最高出力317馬力、最大トルク40.8kgmを発生し、これにフロント71馬力/16.8kgm、リア145馬力/31.5kgmの電気モーターが加わることで、システム全体として非常にパワフルなパフォーマンスを発揮します。特にリアに搭載された高出力モーターは、発進時や加速時に力強いトルクを提供し、スムーズでありながら鋭い加速感を実現します。また、このリアモーターは単独で後輪を駆動することも可能であり、滑りやすい路面やコーナリング時における車両の安定性を高める電子制御AWD(全輪駆動)システムとしても機能します。
プラグインハイブリッドシステムの大きなメリットの一つであるEV走行能力も向上しています。大容量化されたバッテリーにより、満充電状態からのEV航続距離はWLTCモードで81kmに達します。これは、日常的な commutes(通勤)や買い物などの短距離移動であれば、ガソリンを一切使用せずに電気だけで走行できる距離であり、環境負荷の低減とランニングコストの削減に大きく貢献します。自宅や充電ステーションでバッテリーを充電しておけば、日常の多くのシーンをゼロエミッションで走行することが可能です。トランスミッションには、多段化された8速オートマチックトランスミッションが組み合わされ、エンジンの効率的な回転域を維持しながら、スムーズでシームレスな変速を実現します。パワフルなエンジンとモーターの能力を最大限に引き出し、あらゆる走行状況で最適なドライバビリティを提供します。燃費性能も、プラグインハイブリッドならではの高い効率性を実現しています。ハイブリッドモードでの走行時の燃費は、WLTCモードで14.5km/Lと公表されており、大型のラグジュアリーセダンとしては優れた数値を達成しています。充電した電力とガソリンを効率的に使い分けることで、長距離ドライブにおいても優れた経済性を発揮します。なお、一部の海外市場(主にアジア市場)では、前輪駆動の2.0リッターマイルドハイブリッドエンジン搭載モデルもラインナップされるようですが、現時点での日本市場への導入はプラグインハイブリッドモデルのみとなる見込みです。新型S90のパワートレインは、電動化技術を積極的に活用することで、力強いパフォーマンスと優れた環境性能、そして高い経済性を見事に両立させています。
ボルボ新型S90 T8 Plug-in hybrid スペック表
項目 | S90 T8 Plug-in hybrid |
---|---|
エンジン | 2.0リッター4気筒 ガソリンエンジン +モーター |
エンジン出力 | 317ps / 40.8kgm |
モーター出力(フロント) | 71ps / 16.8kgm |
モーター出力(リア) | 145ps / 31.5kgm |
EV航続距離 | 81km |
トランスミッション | 8速AT |
駆動方式 | 4WD (AWD) |
世界最高水準の安全性能「インテリセーフ」:ボルボの安全哲学を凝縮
ボルボブランドの中核をなす価値観であり、世界的に高い評価を得ているのが、その先進的な安全技術です。新型S90にも、ボルボが長年にわたり培ってきた安全に関する知見と最新技術を結集した統合安全システム「IntelliSafe(インテリセーフ)」が標準装備されています。インテリセーフは、事故を未然に防ぐための「アクティブセーフティ(予防安全)」と、万が一の事故発生時に乗員を保護するための「パッシブセーフティ(衝突安全)」の両面から、ドライバーと同乗者、そして車外の人々を守るための多彩な機能で構成されています。
アクティブセーフティの中核となるのが、「City Safety(シティセーフティ)」と呼ばれる衝突回避・被害軽減ブレーキシステムです。車両前方のカメラとミリ波レーダーを用いて、車両、歩行者、サイクリスト、そして大型動物までを検知し、衝突の危険が高まるとドライバーに警告を発します。ドライバーが回避操作を行わない場合には、自動でブレーキを作動させ、衝突の回避または被害の軽減を図ります。このシステムは、右折時に対向車線を走行してくる車両を検知する「インターセクション・サポート」や、対向車線へのはみ出しを検知し、ステアリング操作を補助して元の車線へ戻す「オンカミング・レーン・ミティゲーション」といった機能も内包しており、様々な交通状況下での安全確保に貢献します。さらに、被害軽減ブレーキだけでは衝突を回避できないとシステムが判断した場合、ステアリング操作をアシストして回避行動を支援する「ステアリング・サポート(衝突回避支援機能)」も搭載されています。緊急回避が必要な際には、システムが前後タイヤの内輪側にブレーキをかけることで、車両の挙動を安定させ、ドライバーが安全にステアリング操作を行えるようサポートします。
運転支援機能も充実しています。「アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)」は、設定した速度を上限に、先行車との車間距離を自動で維持しながら追従走行を行います。「パイロット・アシスト(車線維持支援システム)」は、ACC作動中にステアリング操作をアシストし、車線の中央を維持するように支援します。これらの機能により、高速道路での長距離運転や渋滞時のドライバーの疲労を大幅に軽減します。また、車線変更時の安全を確保する機能として、「ステアリングアシスト付BLIS(ブラインドスポット・インフォメーション・システム)」があります。これは、左右の死角に車両が存在する場合にドアミラー内のインジケーターで警告し、ドライバーが車線変更しようとした際にはステアリングに穏やかな修正トルクを加えて、元の車線に留まるよう促します。後退時の安全確保にも配慮されており、「CTA(クロス・トラフィック・アラート)」は、駐車スペースから後退して出庫する際に、左右から接近してくる車両や歩行者、自転車などをリアバンパー内蔵のミリ波レーダーで検知し、警告音でドライバーに知らせるとともに、必要に応じて自動でブレーキを作動させます(衝突回避・被害軽減ブレーキ機能付)。駐車操作を支援する「パーク・アシスト・パイロット」にも被害軽減ブレーキが組み込まれており、縦列駐車や並列駐車の操作中に、車両前後の予想進路上に障害物を検知すると自動でブレーキを作動させます。2021年の改良では、信号待ちなどで先行車が発進したことに気づかずに停車し続けている場合にドライバーに知らせる「先行車発進告知機能」や、後方からの追突の危険を検知した場合にハザードランプを高速点滅させて後続車に警告し、さらに衝突が避けられないと判断した場合にはブレーキを自動で作動させて被害を軽減する「リア衝突回避・被害軽減ブレーキ・システム」といった機能も新たに追加されています。
これらの先進的なアクティブセーフティ機能に加え、万が一の事故に備えるパッシブセーフティ技術も万全です。高張力鋼板を多用した堅牢なボディ構造「セーフティケージ」をはじめ、乗員保護のための各種エアバッグシステム、衝突の衝撃を吸収するシート構造、衝突時に乗員をシートにしっかりと固定する「電動プリクラッシュ・テンショナー付フロントシートベルト」、道路逸脱事故の際に乗員にかかる衝撃を緩和する「ランオフロード・プロテクション」など、ボルボならではの包括的な安全対策が施されています。新型S90は、ボルボの安全哲学「人を中心に考える」を具現化した、世界最高水準の安全性能を備えたセダンと言えるでしょう。
日本市場での価格と発売時期:フラッグシップの価値に見合う設定
大幅な改良を受けて登場したボルボ新型S90の日本市場における価格は、プラグインハイブリッドモデル「S90 Recharge Ultimate T8 AWD Plug-in hybrid」のワングレード展開で、10,890,000円(消費税込)と発表されました。これは、改良前の同等グレードと比較して約30万円の価格上昇となります。この価格設定には、最新のデザイン採用、11.2インチ大型インフォテインメントシステムへのアップデート、OTA機能の搭載、静粛性の向上、そして充実した先進安全・運転支援システムの標準装備化など、多岐にわたる改良内容が反映されています。ボルボのフラッグシップセダンとしての高い質感、先進性、そして安全性を考慮すれば、その価値に見合った価格設定と言えるでしょう。新型S90の日本での発売は、2025年夏から開始される予定です。ボルボは、この魅力的なフラッグシップセダンを市場に投入することで、セダン市場における存在感を高めるとともに、同じく90シリーズに属するXC90やV90との相乗効果によって、ブランド全体のイメージ向上を図っていく戦略です。
グローバル市場におけるS90:変化する市場への対応
今回の新型S90は、グローバル市場全体を見据えつつも、特にアジア市場、中でも中国市場を主要なターゲットとして開発が進められた側面があります。近年、世界の自動車市場、特に欧米市場では、SUVへの需要シフトが顕著であり、従来型のセダンの販売は厳しい状況にあります。実際に、S90はすでに英国やフランスといった一部のヨーロッパ市場では販売が中止されています。また、米国市場においても、セダン市場の縮小に加え、過去の政権下での中国製品に対する関税措置の影響もあり、S90の販売は低迷し、今回の改良モデルが導入されない可能性が高いと報じられています。ボルボの米国事業部は、S90の販売を終了する方向で調整しているとも伝えられています。このような市場環境の変化に対応するため、ボルボは新型S90の販売戦略を、セダンへの根強い需要が見込めるアジア市場に重点を置く形へとシフトさせています。中国のディーラーでは2025年夏から販売が開始され、その後、日本を含む「一部」の市場でも展開される予定です。一方で、電動化へのシフトを加速させるボルボは、S90とは別に、完全電気自動車(EV)のフラッグシップセダンとして「ES90」の開発も進めています。将来的には、このES90がボルボの最上級セダンとしての役割を担っていくことになるでしょう。ただし、このES90についても、生産拠点によっては米国の関税問題の影響を受ける可能性が指摘されています。日本市場においては、幸いにも改良された新型S90が導入されることになり、ボルボのフラッグシップセダンを求めるユーザーにとっては朗報と言えます。
まとめ:新時代のラグジュアリーセダン、ボルボ新型S90の魅力
2025年にビッグマイナーチェンジを受け、さらなる進化を遂げたボルボ新型S90は、現代のラグジュアリーセダンに求められるあらゆる要素を高次元で融合させたモデルです。新世代ボルボのデザイン言語を取り入れた洗練されたエクステリア、11.2インチの大型ディスプレイとGoogle搭載インフォテインメントシステムによる先進的なデジタル体験、そして遮音性の向上やアダプティブサスペンションによって磨き上げられた快適な室内空間。パワートレインには、力強いパフォーマンスと優れた環境性能を両立するT8プラグインハイブリッドシステムを搭載し、電動化時代のドライビングプレジャーを提供します。そして何よりも、ボルボの代名詞とも言える世界最高水準の先進安全・運転支援システム「インテリセーフ」が、乗員だけでなく周囲の人々の安全をも守ります。一部の市場では販売戦略が見直される動きもありますが、日本市場においては、その魅力を存分に味わうことができます。新型ボルボS90は、単なる移動手段ではなく、上質な時間と空間、そして安心感を提供する、まさにボルボのフラッグシップにふさわしい一台です。洗練されたデザインと最先端の技術、そして揺るぎない安全性を求めるユーザーにとって、新型S90は非常に魅力的な選択肢となるでしょう。2025年夏、日本の路上でその新しい姿を見かける日が、今から待ち遠しく感じられます。