ダイハツ工業は、2025年10月29日から11月9日まで東京ビッグサイトで開催される「ジャパンモビリティショー2025」において、次世代軽自動車のコンセプトカー「K-VISION(Kビジョン)」を世界初公開しました。軽自動車として初めてストロングハイブリッドシステムを搭載したこのモデルは、軽自動車市場に革命をもたらす可能性を秘めています。
出展テーマは「わたしにダイハツメイ。小さいからこそできること。小さいことからひとつずつ。」。ダイハツは1907年の創業以来、人々の暮らしに寄り添いながら、小さなボディにワクワク感、親しみやすさ、便利さを凝縮したクルマを発明し続けてきました。その精神を「ダイハツメイ」と名付け、初代ミゼットを基点に広がる未来の姿を表現しています。
K-VISIONとは?みんなの次世代軽自動車

K-VISIONは「みんなの次世代軽自動車」をコンセプトに開発された軽ハイブリッド車です。将来の電動化を見据えた次世代DNGAプラットフォームに、ロッキーHEVで好評を博している「e-SMART HYBRID」システムを軽量・小型化して搭載。100%モーター駆動による静かで力強い走り、優れた環境性能、外部給電機能など、電動車の魅力を充電不要の使い方で実現した、軽自動車の新スタンダードを目指しています。
ボディサイズとデザイン

K-VISIONのボディサイズは、全長3,395mm×全幅1,475mm×全高1,680mm、ホイールベース2,460mmと、軽自動車規格を最大限に活用。全高は現行タント(1,755~1,775mm)とムーヴ(1,655~1,670mm)の中間に位置し、ハイトワゴンクラスに分類されます。この絶妙な全高設定は、ストロングハイブリッドシステムのバッテリー搭載による低重心化と、広い室内空間の両立を実現するための工夫と考えられます。
エクステリアデザインは、シンプルで親しみやすい直線基調。左右に両側スライドドアを備え、利便性を高めています。特徴的なのは、フロントフェイスのサイドまで回り込むブラックガーニッシュと、「C」の字を上下に配置した印象的なシグネチャーランプを備えた真四角のヘッドライト。ロアグリルは長方形で、非常にシンプルながら先進感とスタイリッシュさを感じさせるデザインです。
注目すべきは、従来のダイハツ「D」の字をモチーフにしたエンブレムではなく、「DAIHATSU」の文字ロゴが採用されている点。これは新世代ダイハツのデザインアイデンティティを示唆している可能性があります。

革新的な軽自動車用ストロングハイブリッドシステム
新開発「e-SMART HYBRID」の軽量・小型化技術
K-VISIONの最大の特徴は、軽自動車用に新開発された「e-SMART HYBRID」システムです。モーターとエンジンを同軸に直結配置し、パワーコントロールユニット(PCU)と機電一体化したトランスアクスルによって、軽自動車サイズに小型・軽量化を実現しました。
このストロングハイブリッドシステムは、エンジンで発電してモーターで駆動するシリーズハイブリッド方式を採用。100%モーター駆動による静かで力強い走りを提供します。従来のエンジン+CVT車と比較して約20%以上も燃費性能が向上し(ダイハツ調べ)、お財布にも環境にも優しい性能を実現しています。
充電不要で電動車の魅力を実現
K-VISIONの大きなメリットは、充電が不要な点です。ストロングハイブリッドシステムにより、エンジンが発電するため、プラグイン充電の手間や充電インフラの心配がありません。これまで通りの使い方で、電動車の魅力を享受できるのです。
さらに、外部給電機能を採用しており、災害時には約4日分の電力を賄う大容量を確保。燃料が満タンの状態で停車中に消費電力400Wで供給した場合、生活に必要な電力を約4日間まかなえるとされています。これは災害大国である日本において、非常に重要な機能といえるでしょう。
インテリア:シンプルで直感的な次世代コックピット

K-VISIONのインテリアは、モダンなライトグレーを基調カラーとし、インパネやドアトリムには暖色系のアンビエントライトを配置。軽自動車クラスを超えた上質な仕立てとなっています。
インパネは、アンビエントライトを奥に配置して遠近感を与えるとともに、手前はトレーのような水平かつフラットな空間を確保。荷物を置けそうな実用的な設計です。中央にはインフォテインメントシステムのディスプレイを備え、メーターも薄型の液晶を採用。視認性と利便性、先進感の強調に役立っています。

ダイハツのコーポレート統括本部 ブランド推進室 室長の木下稔淳氏は、「初心者や高齢の方々はもちろん、誰にでも使いやすい乗り物であるために、シンプルで直感的な設計を新開発した」と説明しています。
広い室内空間と両側スライドドアによる優れた利便性も特徴で、日常使いから家族でのお出かけまで、幅広いシーンに対応します。
次期タント?それともムーヴ?市販化への期待

K-VISIONが次期タントやムーヴに繋がるのかは現時点では明らかにされていませんが、業界関係者の間では大きな期待が寄せられています。
全高がタントとムーヴの中間に位置することから、タントの使い勝手を維持しながら、より洗練されたスタイリングと高効率なパワートレーンを実現した新世代モデルとして登場する可能性があります。あるいは、全く新しいラインナップとして、ストロングハイブリッド専用モデルが誕生する可能性も否定できません。
軽自動車市場では、ホンダN-BOX、スズキ・スペーシア、三菱デリカミニ、日産ルークスなど、スーパーハイトワゴンが人気を博していますが、K-VISIONはそれらとは一線を画す「環境性能」と「電動車の魅力」を武器に、新たな市場を切り開く可能性を秘めています。
軽自動車の電動化戦略とK-VISIONの位置づけ
日本の自動車市場において、軽自動車は約4割を占める重要なセグメントです。カーボンニュートラルの実現に向けて、軽自動車の電動化は避けて通れない課題となっています。
しかし、軽自動車はコストや車両サイズの制約が大きく、BEV(バッテリー電気自動車)化には多くの課題があります。充電インフラの整備状況や航続距離への不安、バッテリーコストの高さなど、ユーザーの受容性にも課題が残ります。
K-VISIONが採用するストロングハイブリッドシステムは、これらの課題を解決する現実的なソリューションといえます。充電不要で電動車の魅力を享受でき、既存のガソリンスタンドインフラをそのまま活用できるため、ユーザーの利便性を損なうことがありません。
ダイハツは、ジャパンモビリティショー2025において、BEVの「ミゼットX」や「KAYOIBAKO-K」、市販予定車の「e-ATRAI STICKER FACTORY」なども出展しており、多様な電動化戦略を展開しています。K-VISIONは、その中でも最も現実的で、多くのユーザーに受け入れられやすいソリューションとして位置づけられています。
ダイハツの発明精神「ダイハツメイ」
今回のジャパンモビリティショーでは、K-VISION以外にも興味深いコンセプトカーが多数出展されています。
初代ミゼットの発明精神を未来へ受け継ぐ「ミゼットX」は、自転車以上、軽自動車未満の扱いやすく安心できるジャストサイズの新モビリティ。小さいからこそオープンエアの軽やかな気持ちよさを身近に感じ、FRならではの走りを手軽に楽しめる「K-OPEN(コペン)」。ラストワンマイル領域の新しい働き方・地域への寄り添い方を提案する「KAYOIBAKO-K」など、ダイハツの「小さいからこそできること」を体現したモデルが並びます。
これらのコンセプトカーは、ダイハツが創業以来大切にしてきた「暮らしに寄り添った目線」と「発明精神」を未来に繋ぐものです。
まとめ:軽自動車の新スタンダードへ
ダイハツ「K-VISION」コンセプトは、軽自動車として初めてストロングハイブリッドシステムを搭載したモデルとして、業界に大きなインパクトを与えています。
100%モーター駆動による静かで力強い走り、約20%以上の燃費向上、充電不要の使い勝手、災害時の外部給電機能など、ユーザーにとって魅力的な特徴を数多く備えています。次世代DNGAプラットフォームと軽量・小型化されたe-SMART HYBRIDシステムの組み合わせは、軽自動車の電動化における現実的なソリューションとして、高く評価されるでしょう。
K-VISIONが市販化されるかどうか、そして次期タントやムーヴとしてデビューするのか、あるいは全く新しいモデルとして登場するのか。具体的な発売時期や詳細なスペックは今後の発表を待つ必要がありますが、ダイハツが目指す「軽自動車の新スタンダード」は、確実に形になりつつあります。
ジャパンモビリティショー2025でのK-VISIONの展示は、11月9日まで続きます。実車を見る機会がある方は、ぜひダイハツブースを訪れて、次世代軽自動車の魅力を体感してみてはいかがでしょうか。
ダイハツ ニュースリリース

