2025年8月15日、米国モントレーカーウィークにおいて、インフィニティは注目の新型コンセプトカー「QX65 モノグラフ」を世界初公開しました。このコンセプトモデルは、2017年に生産終了となった伝説的なクロスオーバーコーペ「FX」の精神を受け継ぐ次世代モデルとして、自動車業界内外から大きな期待を集めています。
FXの DNA を現代に蘇らせる革新的デザイン
クロスオーバークーペ市場の先駆者としての復活
インフィニティは2003年にFXを発表し、クロスオーバークーペブームの火付け役となりました。その独創的なスタイリングと走行性能で一世を風靡したものの、後継モデルのQX70は2017年に生産終了。その後登場したQX55は、2024年の販売台数がわずか3,721台と苦戦を強いられていました。
しかし、今回発表されたQX65 モノグラフは、そうした過去の課題を乗り越える革新的なアプローチを示しています。このコンセプトカーは、近い将来の市販化を前提とした「薄いベールに包まれたコンセプト」として位置づけられており、インフィニティブランドの復活を象徴するモデルとなることが期待されています。
竹林からインスパイアされたフロントデザイン
アート・イン・モーション哲学の具現化
QX65 モノグラフのフロントエンドは、竹林からインスピレーションを得た角度のあるアクセントを持つワイドグリルが特徴です。この力強いラインには、イルミネーション付きエンブレムと細長いデジタルピアノキーライトが組み合わされ、インフィニティ独自の「アート・イン・モーション」デザイン哲学を見事に体現しています。
ヘッドライトはより下部に配置され、垂直エアカーテンの上にスタック配置。スポーティなフロントバンパーには目立つエアインテークが設けられ、機能性とデザイン性を両立させています。
流麗なサイドプロファイルとダイナミックな比率
FX を彷彿とさせる印象的なシルエット
サイド部分では、ソフトカーブと流れるような表面を特徴とするスタイリッシュな「アート・イン・モーション」デザインが採用されています。傾斜したウィンドスクリーン、ゆるやかに傾斜するルーフライン、そしてFXを彷彿とさせるグリーンハウスが、このクロスオーバーの個性的な性格を物語っています。
22インチホイールとコントラストルーフ
コントラストブラックルーフは光沢のあるブラッククラッディングによってエコーされ、ブラックテーマはツートーン仕上げのスポーティな22インチホイールまで拡張されています。さらに、ダイナミックなルーフラインをハイライトし、ルーフをボディから視覚的に分離する微妙なブロンズの「スピア」も注目ポイントです。
トワイライトペイントが演出する夕暮れの美学
時間の移ろいを表現する革新的カラーリング
コンセプトモデルは「トワイライト」と名付けられた印象的なペイントジョブを纏っています。このカラーリングは「夕暮れが夜に変わる瞬間の赤と金の色合いを模倣」しており、光の当たり方によって表情を変える革新的な仕上げとなっています。
航空機からインスパイアされたリアデザイン
ジェット機の尾翼を模した3Dライトバー
ドラマティックなラインはリア部分まで続き、角張った窓がスポイラーに囲まれています。アドベンチャラスなリフトゲートと、ジェット機の尾翼からインスピレーションを得た垂直エクステンションを持つ3次元ライトバーが特徴的です。デザイナーたちはまた、ディフューザー風のアクセントを持つスポーティなバンパーをクロスオーバーに与えています。
アルフォンソ・アルバイサ氏によるデザイン哲学
インフィニティのスタイリング責任者であるアルフォンソ・アルバイサ氏は、QX65 モノグラフについて次のように語っています:
「このモデルは、根本的なスピード感とエレガンスの感覚で彫刻されており、非常に筋肉質で強いプロポーションとブレンドされています。すべては期待を裏切るファストバックルーフシルエットによって特徴づけられています。」
市販モデルの詳細スペックと展望
2.0L VC-ターボエンジンの搭載予定
生産モデルは「今後数ヶ月以内」に発表される予定で、過去のスパイ写真からは大幅な変更は期待すべきではないことが示唆されています。QX65は本質的にQX60の2列シート版となり、両モデルは多くの共通点を持つことが予想されます。
予想スペック:
- エンジン:ターボチャージド2.0L 4気筒
- 最高出力:268hp(200kW/272PS)
- 最大トルク:286lb-ft(387Nm)
- トランスミッション:9速オートマチック
- 駆動方式:AWDシステム(オプション)
インフィニティブランド復活の起爆剤となるか
プレミアムクロスオーバー市場での差別化戦略
QX65 モノグラフは、単なる新型車の予告にとどまらず、インフィニティブランド全体の方向性を示す重要なマイルストーンです。BMW X4、メルセデス・ベンツGLC クーペ、アウディQ5 スポーツバックといった強豪ひしめくプレミアムクロスオーバークーペ市場において、独自のデザイン言語と走行性能で差別化を図ることが期待されています。
日産アライアンスとの技術共有
日産アライアンス内での技術共有により、最新の運転支援システム「プロパイロット」や、電動化技術「e-POWER」の将来的な搭載も視野に入れていると考えられます。これにより、環境性能と走行性能を両立した次世代クロスオーバーの実現が期待されています。
市場投入時期と価格戦略の予測
2026年モデルイヤーでの北米デビュー予想
業界関係者の分析によると、QX65の市販版は2026年モデルイヤーとして北米市場にデビューする可能性が高いとされています。価格帯については、現行QX60の上位グレードを基準として、45,000ドル〜55,000ドル程度のレンジが予想されています。
競合他社との比較ポイント
- デザイン優位性:独創的なファストバックスタイル
- 技術力:VC-ターボエンジンの先進性
- 価格競争力:ドイツ勢との価格差
- 信頼性:日産品質への期待
- アフターサービス:全国ディーラーネットワーク
日本市場導入の可能性と課題
右ハンドル化への技術的課題
日本市場への導入については、右ハンドル化のコストと需要のバランスが課題となります。しかし、インフィニティブランドの復活をかけた戦略的モデルとして、限定導入される可能性も否定できません。
国内プレミアムSUV市場での位置づけ
国内では、レクサス NX、BMW X4、メルセデス・ベンツ GLC クーペなどとの競合が予想されます。独自のデザインアイデンティティを武器に、差別化を図ることが成功のカギとなるでしょう。
まとめ:インフィニティの新たな章の始まり
QX65 モノグラフは、インフィニティブランドにとって重要な転換点を示すコンセプトモデルです。FXから受け継がれたクロスオーバークーペのDNAと、現代的なデザイン言語の融合により、これまでにない魅力的な車両が誕生することが期待されています。
市販版の詳細発表が「今後数ヶ月以内」に予定されている中、プレミアムクロスオーバー市場に新たな選択肢を提供することで、インフィニティブランドの復活に大きく貢献することでしょう。特に、独創的なデザインと先進技術の組み合わせは、自動車業界に新たなトレンドを生み出す可能性を秘めています。