2025年のジャパンモビリティショーで、トヨタから待望の次期ハイエースコンセプトが公開されました。1967年の初代登場から約60年、国内外で愛され続けてきたハイエースが、ついに次世代モデルへと進化を遂げます。現行の200系が2004年から20年以上も販売されているロングライフモデルであることを考えると、この新型は商用車市場に大きなインパクトを与える存在となるでしょう。
本記事では、ジャパンモビリティショー2025で実際に展示された次期ハイエースコンセプトの内外装を徹底的に分析し、その魅力と優れている点、そして残念に感じる点まで詳しく解説します。

ジャパンモビリティショー2025で世界初公開された次世代商用バン
公開されたハイエースコンセプトの概要
今回のJMS2025では、2つのボディタイプが展示されました。
標準ルーフタイプ

- ホイールベースが短い標準仕様
- ルーフレールを装備した提案
- シンプルで機能的なデザイン
ハイルーフタイプ

- 全高を高く設定したモデル
- ホイールベースも延伸
- より大容量の荷室空間を実現
このバリエーション展開は、現行の200系ハイエースが持つ「ロングボディ」「スーパーロングボディ」といった多様なボディタイプ展開を継承するものと考えられます。

外装デザインの魅力と特徴

セミボンネット化による革新的な変更
次期ハイエースの最も大きな変更点は、従来のキャブオーバー型からセミボンネット型へのボディスタイル変更です。これは単なるデザイン変更ではなく、安全性と快適性を大幅に向上させる重要な進化といえます。
現行の200系ハイエースはエンジンを運転席の下に配置するキャブオーバー型を採用しており、荷室空間を最大限に確保できる一方で、衝突時の安全性や乗り心地の面では課題がありました。次期ハイエースではエンジンを車体前側に移動させることで、衝突時にエンジンルームがクラッシャブルゾーンとして機能し、乗員の安全性を大幅に向上させています。
ハイエースらしさを継承したフロントデザイン

展示されたコンセプトモデルのフロント周りは、海外で販売されているH300系ハイエースとの共通性を感じさせながらも、日本市場向けに最適化されたデザインとなっています。
優れている点:
- ボンネットが前に出たことで衝突安全性が向上
- フロントバンパー下部が手前側に張り出し、歩行者保護性能も考慮
- 縦型のリアコンビランプなど、ハイエースのアイコンを残したデザイン
- スタイリッシュでありながら商用車としての機能美を保持

残念な点:
- セミボンネット化により全長が若干延長され、狭い場所での取り回しに影響する可能性
- キャブオーバー型特有の優れた視界の広さが若干損なわれる
- 従来のハイエースファンにとっては、アイデンティティが変わったと感じる可能性
革新的なディスプレイ機能

次期ハイエースの外装で特に注目すべきは、車両に搭載されたディスプレイ機能です。Aピラー部分やリアウィンドウにディスプレイが設置され、「診療中」「待ち時間15分」といった情報を表示できるようになっています。

優れている点:
- 移動診療車、移動販売車など、ビジネスユースでの活用範囲が拡大
- 看板代わりとして機能し、広告効果も期待できる
- 停車中の情報発信により、顧客サービスの向上に貢献
- 移動図書館など、公共サービスへの応用も可能
残念な点:
- 実用化された際のコスト増加が懸念される
- ディスプレイのメンテナンスや故障時の修理費用
- 走行中は使用できないため、使用シーンが限定的
内装デザインと機能性の進化

フラットフロアがもたらす使い勝手の向上
次期ハイエースの内装で最も評価できる点は、完全フラットフロアの実現です。これはBEV(バッテリー電気自動車)化を前提とした設計により可能となりました。
優れている点:
- 荷物の積み下ろしが格段に容易になる
- 車椅子の乗降がスムーズに行える
- カスタマイズの自由度が大幅に向上
- 低床化により、高齢者や身体の不自由な方の乗降が楽になる
展示車両は訪問診療車仕様となっており、椅子がスライドして車外に出るギミックを搭載していました。この機構により、足が不自由な方でも容易に乗車できる設計となっています。
先進的なステアリングシステム
次期ハイエースには、トヨタがこれまで開発してきた手動運転補助装置が搭載されています。ステアリングだけでアクセルとブレーキの操作が可能で、足元にペダルがありません。
優れている点:
- ハンディキャップのある方でも運転が可能
- 福祉車両としての活用範囲が拡大
- トヨタの先進技術の伏線回収として評価できる
- ユニバーサルデザインの実現
残念な点:
- 一般ユーザーには馴染みのない操作系統
- 従来の運転感覚との違いに慣れが必要
- オプション装備となる可能性が高く、標準化されない懸念
収納と装備の充実

展示された現場仕様のハイエースには、脚立、ヘルメット、長靴、送風機などが積まれており、実際の使用シーンを想定した作り込みが見られました。

優れている点:
- タイダウンフックが随所に配置され、荷物の固定が容易
- ステップが乗り込みやすい高さと強度を確保
- ドアラッチなど細部の耐久性が考慮されている
- 再生樹脂を使用した素材で、カーボンニュートラルにも貢献
残念な点:
- 商用車らしい実用性重視で、乗用車的な高級感は控えめ
- 多くの収納スペースは追加オプションとなる可能性
- カスタマイズ前提の設計のため、標準状態では簡素な印象
次期タウンエース「KAYOIBAKO(カヨイバコ)」との違い
ジャパンモビリティショー2025では、次期ハイエースと同時に次期タウンエースとされる「KAYOIBAKO」も展示されました。両車の違いを理解することで、次期ハイエースの立ち位置がより明確になります。
KAYOIBAKOの特徴


ボディサイズ:
- 全長3990mm×全幅1790mm×全高1855mm
- ホイールベース3127mm
- より小型で取り回しやすいサイズ
ドア構成:
- 前後両方がスライドドアという革新的な構造
- Bピラーレスの大開口部により、積載効率が向上
- 生子のように両側がバッと開く構造
用途の違い:
- KAYOIBAKOは移動販売やキャンピングカーベースを意識
- ユーティリティ性を重視したライトデューティー用途
- 次期ハイエースはヘビーデューティーな商用用途がメイン
タイヤに込められた意味
興味深いことに、KAYOIBAKOにはブリヂストンの高級タイヤブランド「レグノ」が装着されていました。これは商用車としては異例の選択です。
考察される意味:
- 単なる4ナンバー商用車を超えた3ナンバー乗用車的な位置づけの可能性
- 静粛性と乗り心地を重視したユーティリティビークルとしての方向性
- 将来的なグレード展開や差別化の伏線
電動化戦略とパワートレイン
BEVを中心とした電動化
次期ハイエースの展示車両はすべてBEV(バッテリー電気自動車)でしたが、これはあくまでコンセプトカーとしての提案であり、市販時には複数のパワートレインが用意される見込みです。
予想されるパワートレインラインナップ:
- 2.0L直列4気筒ガソリンエンジン(136ps/18.6kgm)
- 2.8L直列4気筒ディーゼルエンジン「1GD」(177ps/45.9kgm)
- プラグインハイブリッド(PHEV)
- バッテリー電気自動車(BEV)
電動化のメリット:
- フラットフロアの実現
- 静粛性の向上
- 環境性能の大幅な改善
- メンテナンスコストの削減(BEVの場合)
電動化の課題:
- 初期購入コストの増加
- 充電インフラの整備状況
- 航続距離への不安(BEVの場合)
- 商用車としての実用性の検証
マルチパスウェイ戦略
トヨタは「マルチパスウェイ」という考え方を採用しており、地域や用途に応じて最適なパワートレインを選択できる体制を整えています。次期ハイエースでも、この戦略が反映されるでしょう。
優れている点:
- ユーザーのニーズに合わせた選択が可能
- 全世界で販売するための柔軟性
- 段階的な電動化による市場への適応
課題となる点:
- 車種展開が複雑になりすぎる可能性
- 在庫管理や生産計画の複雑化
- 販売店スタッフの商品知識の向上が必須
安全装備の進化
トヨタセーフティセンスの標準装備
次期ハイエースには、トヨタの予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス」が標準装備される見込みです。
主な安全装備:
- プリクラッシュセーフティ(歩行者・自転車検知機能付き)
- レーンディパーチャーアラート
- オートマチックハイビーム
- レーダークルーズコントロール
- VSC&TRC(横滑り防止装置)
- ヒルスタートアシストコントロール
- オートアラーム(盗難防止装置)
優れている点:
- 商用車にも乗用車並みの安全装備
- 事故リスクの低減による保険料の削減効果
- ドライバーの疲労軽減
- 企業の安全管理責任への対応
残念な点:
- システムの複雑化により、修理コストが増加
- 誤作動への対応や過信による事故のリスク
- 古い世代のユーザーには使いこなしが困難な可能性
発売時期と価格予想
発売スケジュール
次期ハイエースの発売時期は、2027年が予定されています。ハイエースは2026年に60周年を迎えるため、記念すべきタイミングでのフルモデルチェンジとなります。
発売までのスケジュール予想:
- 2025年10月:ジャパンモビリティショーでコンセプト公開(完了)
- 2026年後半:生産型プロトタイプの公開
- 2027年初頭:正式発表・発売開始
- 2027年春:BEVモデルの追加
価格設定
次期ハイエースの価格は、現行モデルから小幅アップの260万円~460万円程度になると予想されています。
グレード別価格予想:
- ベースグレード(2.0Lガソリン):約260万円~
- 中級グレード(2.8Lディーゼル):約320万円~
- 上級グレード(ワイド・ロングボディ):約380万円~
- 特別仕様車:約400万円~
- BEVモデル:約450万円~
価格面での考察:
優れている点:
- 商用車として現実的な価格設定
- 豊富なグレード展開により、幅広いユーザーに対応
- 電動化モデルも含め、選択肢が豊富
残念な点:
- 現行モデルからの値上がりは避けられない
- BEVモデルは高額になる可能性
- 安全装備の標準化により、エントリーグレードの価格上昇
競合車種との比較
日産NV350キャラバンとの競争

ハイエースの最大のライバルである日産NV350キャラバンも、近年大幅な改良を受けています。
ハイエースの優位性:
- トヨタブランドの信頼性と高いリセールバリュー
- 豊富なカスタマイズパーツと改造ノウハウの蓄積
- ディーゼルエンジンの評判の良さ
- 電動化モデルの先行投入
キャラバンの優位性:
- 低床化による積載性の高さ(キャブオーバー維持)
- 比較的安価な価格設定
- 商用車としての実用性優先の設計
ホンダN-VANとの差別化

軽商用車のN-VANは、小規模事業者にとってハイエースの代替候補となる可能性があります。
ハイエースの優位性:
- 圧倒的な積載容量
- 長距離走行での快適性
- 多人数乗車への対応
- パワフルなエンジン性能
実用性から見た評価
商用車としての実用性
優れている点:
- フラットフロアによる積載効率の向上
- 低床化による荷物の積み下ろしのしやすさ
- カスタマイズの自由度の高さ
- 耐久性を考慮した随所の作り込み
- 現場での使用を想定した装備
残念な点:
- セミボンネット化により、荷室長が若干短くなる可能性
- キャブオーバー型と比較して、最大積載量が減少する懸念
- 4ナンバー登録できるボディタイプが限定される可能性
- 電動化により車両重量が増加し、積載量に影響
乗用車(ワゴン)としての快適性
優れている点:
- セミボンネット化により乗り心地が大幅に向上
- エンジンノイズと振動の低減
- 衝突安全性の向上による安心感
- 先進安全装備による運転の楽さ
- 電動化による静粛性の大幅な改善
残念な点:
- 商用車ベースのため、乗用ミニバンほどの快適性は期待できない
- シートの質感やインテリアの高級感は控えめ
- 乗り心地は改善されるものの、乗用車には及ばない可能性
カスタマイズ市場への影響
ハイエースは、日本最大のカスタマイズ市場を持つ車種の一つです。次期ハイエースのモデルチェンジは、この市場にも大きな影響を与えます。
カスタマイズ面での期待:
- フラットフロアにより、キャンピングカーのレイアウト自由度が向上
- 電動化により、車内での電力使用の利便性が大幅に改善
- 新しいデザインに合わせたエアロパーツ市場の活性化
懸念される点:
- ボディ構造の変更により、既存のパーツが使用不可能
- 電子制御の高度化により、改造の難易度が上昇
- 車両価格の上昇により、カスタマイズベースとしての敷居が高くなる
まとめ:次期ハイエースの総合評価
優れている点のまとめ
- 安全性の飛躍的向上 - セミボンネット化による衝突安全性の大幅な改善
- 使い勝手の向上 - フラットフロアと低床化による積載性の向上
- 快適性の改善 - 乗り心地、静粛性の大幅な向上
- 電動化への対応 - 環境性能とランニングコストの改善
- 先進装備の充実 - トヨタセーフティセンスなど最新の安全装備
- ユニバーサルデザイン - 高齢者や身体の不自由な方への配慮
- ビジネス活用の拡大 - ディスプレイ機能など新しい使い方の提案
残念な点・懸念されるポイント
- キャブオーバーの魅力の喪失 - 従来の優れた視界と最大積載量の減少
- 価格上昇 - 新技術の採用によるコスト増加
- 従来ユーザーの適応 - 大きく変わった操作感覚への慣れが必要
- 電動化の課題 - 充電インフラや航続距離への不安
- カスタマイズの継続性 - 既存パーツの使用不可と新規開発の必要性
- 複雑化するシステム - 修理コストの増加とメンテナンスの難しさ
最終評価
次期ハイエースは、商用車としての実用性を保ちながら、安全性と快適性を飛躍的に向上させた意欲的なモデルチェンジとなっています。セミボンネット化という大きな決断は、時代のニーズに応えるための必然的な進化といえるでしょう。
現行の200系ハイエースが20年以上も愛され続けてきた実績を考えると、次期ハイエースには大きな期待がかかります。トヨタがマルチパスウェイ戦略を採用し、ガソリン、ディーゼル、PHEV、BEVと幅広いパワートレインを用意する方針は、多様化するユーザーニーズに応える賢明な判断です。
2027年の発売まであと約1年。今後も続報が期待される次期ハイエースから目が離せません。商用車の新時代を切り開く存在として、次期ハイエースの成功を期待したいと思います。
よくある質問(FAQ)
Q1: 次期ハイエースの発売日はいつですか?
A: 2027年の発売が予定されています。
Q2: 4ナンバー登録は可能ですか?
A: はい、4ナンバー登録が可能なボディタイプが継続設定される予定です。
Q3: 現行ハイエースのカスタムパーツは使えますか?
A: ボディ構造が大きく変わるため、多くの既存パーツは使用できなくなる見込みです。
Q4: 電気自動車モデルはありますか?
A: BEVモデルの設定が予定されています。発売時期は本体より遅れる可能性があります。
Q5: 価格はどのくらいになりますか?
A: 260万円~460万円程度が予想されています。グレードやパワートレインにより大きく変動します。
Q6: 海外仕様のH300系とは違うのですか?
A: はい、日本市場向けに専用設計されており、H300系とは異なる車両です。
Q7: キャブオーバーモデルは今後も販売されますか?
A: 次期ハイエースはセミボンネット型に統一される見込みで、キャブオーバーモデルの継続販売は予定されていません。
トヨタニュースリリース

