トヨタ自動車は2025年10月29日、東京ビッグサイトで開催中のジャパンモビリティショー2025(JMS2025)において、次期型ハイエースを示唆する「ハイエースコンセプト」を世界初公開しました。20年以上にわたって製造が続けられている現行200系ハイエースの後継モデルとして、大きな注目を集めています。
ジャパンモビリティショー2025で世界初公開された次世代商用バン
公開されたハイエースコンセプトの概要
今回のJMS2025では、2つのボディタイプが展示されました。
標準ルーフタイプ

- ホイールベースが短い標準仕様
- ルーフレールを装備した提案
- シンプルで機能的なデザイン
ハイルーフタイプ

- 全高を高く設定したモデル
- ホイールベースも延伸
- より大容量の荷室空間を実現
このバリエーション展開は、現行の200系ハイエースが持つ「ロングボディ」「スーパーロングボディ」といった多様なボディタイプ展開を継承するものと考えられます。
KAYOIBAKOコンセプトからの進化

2023年のKAYOIBAKOコンセプトとは
今回公開されたハイエースコンセプトは、2023年のJMS2023で発表された「KAYOIBAKO(カヨイバコ)」コンセプトの進化系といえるデザインを採用しています。
KAYOIBAKOの特徴:
- BEV(バッテリー式電気自動車)の商用バン
- コンパクトなボディサイズ(全長3990mm×全幅1790mm×全高1855mm)
- ハイエース並みの荷室長3127mmを確保
- 超拡張性能を備えた設計思想
統一されたデザインコンセプト
トヨタの佐藤恒治社長は、プレスブリーフィングで「段ボールに色々なサイズがあるように、KAYOIBAKOにもいくつかのサイズがあります。XLからSサイズまで、小さな箱はダイハツがつくり、大きな箱はトヨタがつくります」と説明しました。
ハイエースコンセプトは、フロントフェイス、サイドビュー、リヤビューのすべてにおいてKAYOIBAKOと共通するデザインを採用。トヨタが目指す「新しい働くクルマ」としての統一されたブランドイメージを体現しています。
現行ハイエース200系から何が変わるのか
現行200系ハイエースの歴史と特徴
現在国内で販売されている5代目ハイエース(200系)は、2004年に登場したロングセラーモデルです。
200系の主な特徴:
- ワンボックス型の高効率なボディ形状
- 広大な荷室空間
- 複数のボディタイプ展開(ロング、スーパーロング、ワイド幅など)
- 継続的な安全機能のアップデート
1967年の初代モデル登場以来、ハイエースは日本をはじめアジア、中近東、オセアニア、アフリカ、中南米など世界各国で愛用されてきた商用バンの人気ブランドです。
海外向け300系との関係
一方、海外市場向けモデルは2019年にセミボンネット型の6代目(300系)へ刷新されています。このボディは国内でも乗用ワゴンモデル「グランエース」として2019年から2024年まで販売されました。
今回公開されたハイエースコンセプトは、短い鼻付きの1ボックススタイルで、グローバル展開する300系(グランエース)を想起させつつも、サイドビューには伝統的なハイエースのイメージを継承しています。
電動化への期待と可能性
EV・ハイブリッド化の示唆
ハイエースコンセプトのリヤ下部には、すっきりとまとめられたフォルムが採用されています。これはパワートレーンの電動化を視野に入れている可能性を示唆しています。
考えられる電動化のシナリオ:
- バッテリーEV(BEV)
- ハイブリッド(HEV)
- プラグインハイブリッド(PHEV)
- マルチパワートレーン展開
KAYOIBAKOがBEVコンセプトとして登場したことから、ハイエースコンセプトにも電動化技術が投入される可能性は高いと考えられます。
商用車の電動化における課題
商用バンの電動化には、以下のような課題があります:
積載性との両立
大容量バッテリーを搭載しながら、広い荷室空間を確保する必要がある
航続距離の確保
荷物を満載した状態での長距離移動に対応するため、十分なバッテリー容量が必要
コスト面の配慮
商用車ユーザーにとって、イニシャルコストとランニングコストのバランスが重要
トヨタは、薄型バッテリーや新たなバッテリー技術の投入により、これらの課題を解決しようとしている可能性があります。
次期型ハイエースに求められる機能
現代の商用車に必要な要素
20年以上モデルチェンジしていない現行200系から大幅な進化が期待される次期型ハイエースには、以下のような機能が求められます。
安全装備の充実
- 最新の予防安全技術
- 先進運転支援システム(ADAS)
- 死角検知システム
- 自動ブレーキの高度化
環境性能の向上
- 燃費・電費の改善
- 排出ガスのクリーン化
- 電動化技術の導入
快適性と利便性
- 運転席周りの快適性向上
- 最新のコネクティビティ機能
- 荷役作業の効率化
多様なニーズへの対応
- 様々なボディタイプの展開
- カスタマイズ性の向上
- 用途に応じた専用仕様
ハイエースの市場における位置づけ
国内商用車市場での存在感
ハイエースは、日本の商用車市場において圧倒的な支持を得ています。
主な利用シーン:
- 配送・物流業
- 建設・工事業
- キャンピングカーベース
- 福祉車両
- 送迎用ワゴン
特にキャンピングカーのベース車両としての人気は高く、カスタマイズ市場も大きく発展しています。
ライバル車種との競合
国内商用バン市場では、以下の車種がライバルとなります:
- 日産NV350キャラバン
- ホンダN-VAN
- スズキエブリイ
- ダイハツハイゼットカーゴ
ハイエースは特に中・大型クラスにおいて、NV350キャラバンとの競合が注目されます。
市販化の時期と予想価格
発売時期の予測
ハイエースコンセプトが市販化される時期については、公式発表はありませんが、以下のような予測が可能です:
早期シナリオ:2026年後半~2027年
現実的シナリオ:2027年~2028年
慎重シナリオ:2028年以降
現行200系が21年目を迎えていることから、できるだけ早期の市販化が期待されています。
予想価格帯
電動化技術の導入により、現行モデルよりも価格が上昇する可能性があります。
現行200系の価格帯:約240万円~約400万円
次期型の予想価格:約300万円~約500万円
ただし、BEVモデルは補助金の適用により、実質的な購入価格は抑えられる可能性があります。
ユーザーの期待と反応
SNSでの反響
JMS2025でのハイエースコンセプト公開を受けて、SNSでは様々な反応が見られます:
ポジティブな意見:
- ついにフルモデルチェンジの兆しが見えた
- デザインがモダンで好印象
- 電動化による環境性能向上に期待
懸念の声:
- 電動化によるコスト増加が心配
- 伝統的なハイエースらしさが失われないか
- 航続距離や充電インフラへの不安
商用車ユーザーのニーズ
実際に商用車として使用するユーザーからは、以下のような要望が聞かれます:
- 積載性能の維持・向上
- 耐久性と信頼性
- 維持コストの抑制
- 長期間使用できる設計
- カスタマイズの自由度
トヨタの商用車戦略
カーボンニュートラルへの取り組み
トヨタは2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、商用車の電動化を加速させています。
主な取り組み:
- BEV商用車の開発
- ハイブリッド技術の応用
- 水素燃料電池車の研究
- マルチパスウェイ戦略
ハイエースコンセプトは、この戦略における重要な位置づけにあると考えられます。
グループ連携による展開
佐藤社長の発言からも明らかなように、トヨタはダイハツなどグループ企業と連携し、小型から大型までの商用車ラインナップを展開する方針です。
KAYOIBAKO ファミリー構想:
- Sサイズ:ダイハツが担当
- M~XLサイズ:トヨタが担当
- 統一されたデザインコンセプト
- 用途に応じた最適なサイズ展開
まとめ:次期型ハイエースへの期待
ジャパンモビリティショー2025で公開されたハイエースコンセプトは、20年以上続く200系ハイエースの後継モデルとして、大きな期待を集めています。
次期型ハイエースのポイント:
- 2つのボディタイプ展開 - 多様なニーズに対応
- 電動化技術の導入 - 環境性能と経済性の両立
- KAYOIBAKOとの統一デザイン - トヨタの新しい商用車ブランド
- グローバル300系の影響 - セミボンネット型の採用
- 超拡張性能 - カスタマイズや派生モデル展開の容易さ
現段階ではコンセプトモデルであり、市販化の詳細は明らかにされていませんが、長年にわたってユーザーから愛され続けてきたハイエースの新時代の幕開けとなる可能性を秘めています。
今後のトヨタからの続報に注目が集まります。ジャパンモビリティショー2025は11月9日まで一般公開されており、実車を確認することができます。次世代の働くクルマの姿を、ぜひ会場で体感してください。

