トヨタは2026年11月3日、2027年のWRC(FIA世界ラリー選手権)に新型ラリーマシン「GR Celica Rally1(GRセリカ ラリー1)」を投入すると発表しました。2027年型「GR Yaris Rally1(GRヤリス ラリー1)」と合わせて、2車種・2チームで戦う新しい体制になります。
発表はフィンランド・ユヴァスキュラにあるTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)の本拠地で行われました。GRセリカ ラリー1を走らせるのは新チーム「TOYOTA RACING」、GRヤリス ラリー1を走らせるのは「GAZOO Racing TOYOTA」です。かつて世界ラリーでタイトルを重ねた「セリカ」の名前が、最高峰クラスに戻ってくることになります。
なお、GRセリカ ラリー1の車両写真やカラーリングはまだ公開されていません。記事中の写真は、体制発表の集合写真と、2026年シーズンを戦った現行のGRヤリス ラリー1です。
この記事では、GRセリカ ラリー1の概要、2チームの体制とドライバー、2027年の新しい車両規定、セリカのWRCの歴史、市販車「GRセリカ」への期待まで、わかりやすくまとめました。


新型GRセリカ ラリー1とは?発表の背景と概要
GRセリカ ラリー1は、トヨタが2027年のWRCに投入する最高峰クラス「Rally1」のラリーマシンです。WRCは2027年から新しい車両規定に切り替わり、各メーカーは新しいマシンを用意する必要があります。トヨタはこのタイミングで、これまでのGRヤリスに加えて「セリカ」の名前を持つ2台目のマシンを用意しました。
公式発表では、GRセリカ ラリー1とGRヤリス ラリー1は新しい規定に合わせて並行して開発されており、2台は同じ出力と性能を備えるとされています。つまり、どちらかが上位版というわけではなく、2つのチームが同じ条件で勝利を争う形です。
トヨタは発表の中で、セリカを「トヨタのラリー史において最も象徴的な車名の一つ」と表現しています。1990年代に世界チャンピオンを獲得した名前が、約30年の時を経てWRCの最前線に戻ることになり、ラリーファンだけでなく、かつてのセリカを知る世代からも注目を集めそうです。
【発表内容まとめ】新型GRセリカ ラリー1と2027年体制のポイント
今回の発表のポイントは、主に以下の4点です。
- 2車種で参戦:新型GRセリカ ラリー1と2027年型GRヤリス ラリー1を投入
- 2チーム体制:TOYOTA RACINGとGAZOO Racing TOYOTAが対等なライバルとして戦う
- 最大6台:各ラウンドに最大6台のワークス車両を投入する準備を進める
- 世界王者3人:エバンスに加え、タナックとロバンペラが復帰
① セリカの名前がWRCに復活
最大の話題は、やはり「セリカ」の復活です。TOYOTA RACINGのドライバーには新型GRセリカ ラリー1が託されます。車両の詳細やカラーリングは、2027年シーズンの開幕前にあらためて発表される予定です。

② 2つのチームが本気で競い合う
2つのチームは、同じユヴァスキュラの拠点で運営されます。それでも位置づけは「優勝を争う対等なライバル」です。トヨタは、チーム同士の競争で戦いを活発にし、ファンが新しいストーリーを楽しめるようにするねらいを説明しています。
③ 1ラウンドに最大6台のワークスカー
各チームに3組のドライバーが登録され、1つのラリーに最大6台のワークス車両が出走する可能性があります。2026年までのトヨタは1チームでの参戦が基本だったため、台数の面でも大きな拡大です。
④ 2026年の王者と元王者がそろう
2026年の王者エルフィン・エバンスに加え、2019年王者のオィット・タナック、2022・2023年王者のカッレ・ロバンペラが名を連ねます。世界チャンピオン経験者が3人そろう、非常に厚いラインナップです。
新型GRセリカ ラリー1と2027年型GRヤリス ラリー1のチーム・ドライバー一覧
| チーム | 車両 | ドライバー/コ・ドライバー |
|---|---|---|
| TOYOTA RACING | GR Celica Rally1 【新型】 | エルフィン・エバンス/スコット・マーティン オリバー・ソルベルグ/エリオット・エドモンドソン サミ・パヤリ/マルコ・サルミネン |
| GAZOO Racing TOYOTA | GR Yaris Rally1 (2027年型) | オィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ 勝田貴元/アーロン・ジョンストン カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン |
ロバンペラは2027年、一部のラリーにのみ出場する予定です。そのため、シーズン中にほかのドライバーを加えることもできる形になっています。トヨタは、9度の世界チャンピオンであるセバスチャン・オジエのような経験豊富なドライバーや、若手ドライバーの起用も検討するとしています。
新型GRセリカ ラリー1を走らせるTOYOTA RACINGの3組

エルフィン・エバンス/スコット・マーティン
2026年のドライバーズチャンピオンとコ・ドライバーズチャンピオンのコンビです。チームでは8年連続のフルシーズンとなり、トヨタのWRC参戦の歴史の中で、チームのドライバーとして最も多くのラリーに出場してきました。過去5回のランキング2位を経て、2026年についに世界タイトルを手にしました。
オリバー・ソルベルグ/エリオット・エドモンドソン
2026年にTGR-WRTで初めてフルシーズンを戦い、ランキング2位に入ったコンビです。最終戦までタイトルを争い、エバンスとの差はわずか5ポイントでした。新しいマシンの開発に関われることを楽しみにしているとコメントしています。
サミ・パヤリ/マルコ・サルミネン
トップカテゴリーでのフルシーズンが2年目だった2026年に、ランキング3位、3勝を挙げたフィンランドのコンビです。13戦中9戦で表彰台に上がり、安定感の高さを示しました。
2027年型GRヤリス ラリー1で戦うGAZOO Racing TOYOTA

もう一方のチームは、2027年型のGRヤリス ラリー1で参戦します。現行規定ですでに大きな成功を収めているGRヤリスを、新しい規定でさらに発展させることがねらいです。
タナックとヤルヴェオヤのエストニア人コンビは、2019年にTGR-WRTで世界タイトルを獲得して以来、7年ぶりのチーム復帰です。勝田貴元とアーロン・ジョンストンは、2026年にケニアで初優勝、続くクロアチアでも勝利しました。勝田は日本人ドライバーとして初めて選手権ランキングの首位に立っています。ロバンペラとハルットゥネンは、1年間WRCを離れたのちの復帰となります。
新型GRセリカ ラリー1が戦う2027年の新しい車両規定
2027年のWRCは、FIAの新しい車両規定のもとで行われます。公式発表では、この新規定は最高峰のRally1カテゴリーへの参戦をより容易にし、競争を激しくすることを目的としたものと説明されています。
トヨタはこの新規定でも「全てのドライバーに勝てるクルマを提供する」という考え方を中心に据えて開発を進めています。フィンランド中部の森では、2027年型プロトタイプカーを使った6日間のラリーシミュレーションテストを行い、11月3日に最終日を迎えました。ホモロゲーション(公認)の手続きは12月末までに完了する予定です。
エンジンの形式や出力、車体サイズなどの具体的な数値は、現時点では公式に発表されていません。ドライバーたちは「これまで慣れ親しんできたものとは大きく異なる」とコメントしており、新規定のマシンは現行のRally1とはかなり性格が変わると考えられます。

2026年のトヨタはどうだった?シーズンを振り返り
TGR-WRTは2026年、史上最多記録に並ぶ6年連続のマニュファクチャラーズタイトルを獲得しました。所属した5組すべてのドライバー/コ・ドライバーが複数回の優勝を果たし、ドライバーズ選手権の争いも最終戦までもつれ込みました。最終的にエバンスがソルベルグに5ポイント差、パヤリに6ポイント差をつけて王者になっています。
さらに、体制発表の前日の11月2日には、ユヴァスキュラ近くのマヤヤルヴィで建設が進む新しい技術センターの起工式も行われました。TGR-WRTという名前は、今後も車両開発を担う会社の名前として使われます。


セリカとWRCの歴史をおさらい
セリカ GT-FOUR(ST165)
4WDターボの「セリカ GT-FOUR」は、1990年にカルロス・サインツがドライバーズタイトルを獲得し、日本メーカーの車として初めてWRCのドライバーズチャンピオンを生んだモデルです。
セリカ GT-FOUR(ST185)
次の世代のST185は、1993年にトヨタ初のマニュファクチャラーズタイトルをもたらし、1994年も連覇しました。日本メーカーとして初めてメーカー部門の世界王者となった、記念すべきモデルです。
セリカ GT-FOUR(ST205)以降
その後のST205を最後に、トヨタのWRCマシンはカローラWRCへ移り、さらに2017年の復帰からはヤリスWRC、GRヤリス ラリー1へと受け継がれてきました。2027年のGRセリカ ラリー1は、こうした流れの中で、セリカの名前を約30年ぶりにWRCへ戻すマシンとなります。
市販車の新型GRセリカはどうなる?(予想)
ラリーマシンの名前に「GRセリカ」が使われたことで、市販スポーツカーのGRセリカが登場するのではないかという期待も高まっています。ただし、市販車のGRセリカについて、トヨタからの公式発表はまだありません。発売時期、パワートレイン、価格はいずれも未発表です。
トヨタは「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を掲げ、GRヤリスのようにラリーで鍛えた技術を市販車へ生かしてきました。今回もラリーマシンの開発で得た知見が、将来の市販スポーツカーに生かされる可能性はあると見込まれます。市販車の情報が公式に発表され次第、あらためてお伝えします。
新型GRセリカ ラリー1の実車公開はいつ?注目したい3つのポイント
公式発表では、GRセリカ ラリー1とGRヤリス ラリー1の車両の詳細やカラーリングは、2027年シーズンの開幕前に発表される予定です。2027年1月には東京オートサロン2027も開かれるため、国内での展示があるかどうかにも注目が集まりますが、展示の有無や内容はまだ公式には発表されていません。
1つ目は、マシンのデザインです。セリカらしいクーペのシルエットになるのか、往年のGT-FOURを思わせる要素が入るのかは、多くのファンが気にしている点です。
2つ目は、2チームの力関係です。2台は同じ出力と性能を備えるとされていますが、ボディ形状の違いが路面ごとの得意・不得意につながるのかどうかは、実戦が始まるまで分かりません。
3つ目は、日本人ドライバーの活躍です。勝田貴元はGAZOO Racing TOYOTAから参戦し、タイトル争いを目指します。また、GR WRCチャレンジプログラムからは松下拓未がWRCラウンドへ参戦する予定で、山本雄紀はWRC2に再挑戦する予定です。
新型GRセリカ ラリー1に関するよくある質問(FAQ)
Q. GRセリカ ラリー1はいつから走りますか?
A. 2027年のWRCシーズンから投入されます。ホモロゲーションの手続きは2026年12月末までに完了する予定です。
Q. 誰がGRセリカ ラリー1をドライブしますか?
A. TOYOTA RACINGのエバンス、ソルベルグ、パヤリの3人です。
Q. GRセリカ ラリー1とGRヤリス ラリー1の性能差はありますか?
A. 公式発表では、2台は並行して開発され、同じ出力と性能を備えるとされています。
Q. GRセリカ ラリー1のエンジンや出力は?
A. 現時点では公式に発表されていません。車両の詳細は2027年シーズン開幕前に発表される予定です。
Q. 市販車のGRセリカは発売されますか?
A. 市販車についての公式発表はまだありません。発売時期や価格も未発表です。
まとめ:新型GRセリカ ラリー1は「セリカ復活」の第一歩
トヨタは2027年のWRCに、新型GRセリカ ラリー1と2027年型GRヤリス ラリー1の2車種、TOYOTA RACINGとGAZOO Racing TOYOTAの2チームで挑みます。世界王者3人を含む6組のドライバーがそろい、1ラウンドに最大6台という大規模な体制です。
マシンの姿やスペックはまだ明かされていませんが、セリカの名前が世界ラリーに戻ること自体が大きなニュースです。開幕前に予定されている車両発表と、市販車GRセリカの動きに注目していきましょう。最新情報が入り次第、随時更新していきます。

