2025年12月5日、レクサスは次世代を担う革新的なバッテリーEV(BEV)スポーツカーのコンセプトモデル「Lexus LFA Concept」を世界初公開しました。トヨタ自動車公式によると、このモデルはTOYOTA 2000GT、初代Lexus LFAに続く、トヨタのフラッグシップスポーツカーの系譜を継承する重要な位置づけとなっています。
Lexus LFA Conceptとは?世界初公開の全容

主要スペック
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 全長 | 4,690mm |
| 全幅 | 2,040mm |
| 全高 | 1,195mm |
| ホイールベース | 2,725mm |
| 乗車定員 | 2名 |
| 駆動方式 | BEV(バッテリー電気自動車) |
この圧倒的な低全高(1,195mm)は、スーパースポーツカーとしての性能を物語っており、空力性能と低重心化を徹底的に追求した結果です。
トヨタの式年遷宮:技術継承の理念

式年遷宮とは何か
「式年遷宮」とは、日本の伝統的な神社建築の概念から着想を得た、トヨタ独自の技術継承プログラムです。伊勢神宮が約20年ごとに社殿を建て替え、建築技術を次世代に伝承するように、トヨタもスポーツカー開発を通じて「クルマづくりの秘伝のタレ」を次世代のエンジニアに継承しようとしています。
なぜスポーツカーなのか

マスタードライバーである**豊田章男会長(モリゾウ)**の想いの下、スポーツカーこそが:
- 技術の結晶:最先端技術と伝統的な職人技の融合
- 極限の追求:性能限界を追求することで基礎技術が磨かれる
- 感性の伝承:数値では測れない「いいクルマ」の感覚を伝える
- 挑戦の場:新技術を試す実験場としての役割
これらの要素を凝縮できる最適な存在であるという考えに基づいています。
TOYOTA 2000GT → Lexus LFA → Lexus LFA Conceptの系譜
| 世代 | モデル | 年代 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 第1世代 | TOYOTA 2000GT | 1967-1970 | 日本初の本格的スーパーカー、技術力の証明 |
| 第2世代 | Lexus LFA | 2010-2012 | カーボンファイバー技術、V10エンジンの官能性 |
| 第3世代 | Lexus LFA Concept | 2025- | BEV技術、次世代への架け橋 |
3つのコア技術要素
Lexus LFA ConceptはGR GT、GR GT3と共通の開発思想に基づき、以下の3つのキー要素を核としています。
1. 徹底した低重心化
BEVの利点を最大活用
- バッテリーパックを車体中央の最も低い位置に配置
- エンジン車よりも重量物を低く配置できるBEVの構造的優位性
- ロール剛性とコーナリング性能の飛躍的向上
- 全高1,195mmという超低設計により重心高さをさらに削減
2. 軽量・高剛性を実現するオールアルミニウム骨格
トヨタ初採用の革新的フレーム
- GR GTと共通のオールアルミニウムシャシー構造
- 従来のスチールフレームと比較して大幅な軽量化
- ねじり剛性の向上によりサスペンションの性能を最大化
- BEVの重量増(バッテリー重量)を相殺する設計
- アルミニウム加工技術の継承と発展
3. 空力性能の徹底追求
デザインと機能の完全融合
- ノーズからリアへ流れる低く伸びやかなシルエット
- アクティブエアロダイナミクス技術の可能性
- ダウンフォース生成と空気抵抗低減の両立
- BEVの航続距離延長にも寄与する空力設計
- 風洞実験と実走テストの反復による最適化
エクステリアデザイン:空力と美の融合

官能的な造形美の進化
Lexus LFA Conceptのエクステリアは初代LFAの官能的な造形美を受け継ぎながら、次世代でも色褪せない普遍的な価値を追求しています。
デザインの特徴
フロントデザイン
- シャープで低く構えたノーズ
- レクサスの新しいデザインアイデンティティ
- 冷却性能とダウンフォース生成を両立するフロントエアインテーク
- BEVならではの大胆なフロントマスク設計の自由度
サイドビュー
- ロングノーズ・ショートデッキの正統派クーペプロポーション
- キャビンを後方に配置したミッドシップライクなシルエット
- ドアからリアフェンダーへと流れる彫刻的な面構成
- 筋肉質でありながら繊細なボディライン
リアデザイン
- ワイドなスタンスを強調する後方形状
- 高性能を示唆するディフューザー形状
- 先進的なリアランプデザイン
- 空力性能を最大化するリアスポイラー統合設計
色褪せないデザインの追求
「時代の境界を越え、見る者の心を揺さぶる普遍的な魅力」をテーマに、流行に左右されない本質的な美しさを追求。国や文化を超えて共感されるスポーツカーの理想形を提示しています。
インテリア設計:究極の没入感

Discover Immersion - 走りへの没入体験
Lexus LFA Conceptのインテリアコンセプトは「Discover Immersion」。ドライバーを走りの世界へと完全に引き込み、クルマと一体化する究極の体験を創出します。
理想的なドライビングポジション

GR GTと共通の開発思想
- マスタードライバーや複数のプロドライバーが参画した人間工学設計
- シートポジション、ペダル配置、ステアリング位置の黄金比
- あらゆる体格のドライバーに対応する調整範囲
- 長時間のスポーツドライビングでも疲労しない設計
革新的なステアリングデザイン
以下の特徴を持つ専用ステアリングを採用:
- 持ち替え不要の操舵性:素早いコーナリングでもグリップを離さず操作可能
- ブラインドタッチ可能なスイッチ配置:視線を外さずに直感的操作
- 最適なグリップ径とD字形状:スポーツドライビングに特化した設計
- 触感フィードバック:路面情報を的確に伝達
ミニマルな室内空間設計
機能美の追求
- 研ぎ澄まされた機能部品を運転席周りに集約
- 余計な装飾を排除したシンプルな構成
- メカニカルデザインの美しさを活かした意匠
- 乗り込んだ瞬間から高揚感を呼び覚ます空間演出
視覚的特徴
- ドライバー中心に配置された計器類
- 最小限ながら必要十分な情報表示
- アルミニウム素材を活かした質感表現
- シンプルと高級感の両立
GR GT/GR GT3との技術共有
ONE TEAM開発体制
Lexus LFA Conceptは単独開発ではなく、TOYOTA GAZOO RacingのGR GT(市販スポーツカー)、GR GT3(レーシングカー)と同時並行で開発されています。この「ONE TEAM」アプローチにより:
- 技術の相互フィードバック:レース現場の知見が市販車に、市販車の技術がレースカーに
- 開発効率の向上:共通プラットフォームによるコスト削減と開発期間短縮
- 品質の担保:レーシングカーレベルの耐久性と信頼性
- 技術者の成長:異なるカテゴリーの知識交換による人材育成
GR GTとの共通技術
| 技術要素 | 詳細 |
|---|---|
| オールアルミニウム骨格 | 基本構造を共有し、BEV用に最適化 |
| ドライビングポジション | 同一の理想的なポジション設定 |
| サスペンション思想 | ダブルウィッシュボーン形式の基本設計 |
| 空力哲学 | 低重心と空力性能追求の共通思想 |
GR GT3との技術交流
レース技術の市販車フィードバック
- 極限状態での耐久性試験データの活用
- 軽量化ノウハウの転用
- 空力チューニング技術の応用
- ドライバーフィードバックに基づく操縦性改善
開発思想:マスタードライバーモリゾウの想い
「振り切ってほしい」「もっと突き抜けてほしい」
豊田章男会長(モリゾウ)から開発チームに投げかけられたこの言葉が、Lexus LFA Conceptの開発方向性を決定づけました。
多様なドライバーによる評価体制
参画ドライバー陣
- マスタードライバー:豊田章男会長(モリゾウ)
- プロレーシングドライバー:片岡龍也選手、石浦宏明選手、蒲生尚弥選手
- ジェントルマンドライバー:豊田大輔選手
- 社内評価ドライバー:各分野の専門家
この多様性により:
- プロの極限性能評価
- アマチュアの扱いやすさ評価
- 異なる体格・技量での検証
- 幅広いユーザー層への対応
「走る・壊す・直す」の開発哲学
TOYOTA GAZOO Racingの伝統的な開発手法を継承:
- 走る:実走テストによる性能確認と問題発見
- 壊す:限界まで追い込み弱点を明確化
- 直す:即座に改善し再度検証
このサイクルを何度も繰り返すことで、真に優れたスポーツカーが生まれます。
今後の展望とBEVスポーツカーの未来
BEVスポーツカーの可能性を示す
レクサスは「BEVのスポーツカーが未成熟である認識を刷新し、クルマづくりの未来に挑戦していく」と宣言しています。Lexus LFA Conceptは以下を実証するモデルです:
BEVのスポーツカーとしての優位性
- 瞬時のトルク発生:エンジン車を超える加速性能
- 低重心設計:バッテリー配置による理想的な重量配分
- 静粛性と官能性の両立:電動化ならではの新しい走行感覚
- 設計自由度:エンジン・トランスミッションの制約からの解放
- 環境性能:高性能とゼロエミッションの両立
市販化への道筋
コンセプトモデルとして発表されたLexus LFA Conceptですが、以下の可能性が考えられます:
短期的展望(1-2年)
- モーターショーでの追加情報公開
- 走行デモンストレーション
- 技術詳細の段階的発表
中期的展望(3-5年)
- 量産プロトタイプの開発
- 限定生産モデルの可能性
- 先行予約受付開始の可能性
長期的展望(5年以上)
- 本格的な市販化
- LFAブランドの復活とシリーズ展開
- 次世代BEVスポーツカーのスタンダード確立
レクサスの電動化戦略における位置づけ
Lexus LFA Conceptは、レクサスのBEV戦略における技術的フラッグシップとして:
- ブランドイメージの強化:高性能BEVのイメージリーダー
- 技術開発の牽引:量産モデルへの技術トリクルダウン
- 市場教育:BEVスポーツカーの可能性を示す
- 競合への対抗:ポルシェ・タイカン、BMWi4 M50等への回答
まとめ:次世代へ受け継がれるスポーツカーの魂
Lexus LFA Conceptは単なる電動スポーツカーではありません。TOYOTA 2000GTから続く約60年のスポーツカー開発の技術と想いを、電動化時代に適応させながら次世代へと継承する、トヨタ自動車の決意の表れです。
Lexus LFA Conceptが示す未来
- 技術継承の重要性:デジタル化時代でも職人技は不可欠
- 電動化の可能性:BEVでも感動的なスポーツカーは作れる
- 総合力の勝負:単一技術ではなく統合力が差別化要因
- 持続可能な高性能:環境性能と走行性能の両立は可能
「式年遷宮」の意義
20年ごとに社殿を建て替える伊勢神宮のように、トヨタも定期的にフラッグシップスポーツカーを生み出すことで:
- 技術の陳腐化防止:常に最新技術を取り入れる
- 人材育成サイクル:ベテランから若手への確実な継承
- ブランド価値維持:スポーツカーメーカーとしての矜持
- 企業文化の維持:「もっといいクルマづくり」の精神継承
Lexus LFA Conceptは、過去の栄光に甘んじることなく、未来に向けて挑戦し続けるトヨタ・レクサスの象徴として、自動車史に新たな1ページを刻むことでしょう。
今後の続報にご期待ください。詳細が明らかになり次第、随時更新してまいります。
