2026年1月9日から11日まで幕張メッセで開催された「東京オートサロン2026」にて、トヨタが満を持して世界初公開したフラッグシップスポーツカー「GR GT」とレーシングマシン「GR GT3」。2025年12月5日のワールドプレミアから約1ヶ月、ついに一般公開された両モデルの実車を徹底レポートします。
TOYOTA GAZOO Racingのフラッグシップとして2027年1月の発売が予定されている「GR GT」は、V8 4.0Lツインターボエンジンとハイブリッドシステムを組み合わせた650PS以上のモンスターマシン。実際に会場で見た内外装の魅力、そして気になる点まで詳しく解説していきます。

GR GTのエクステリア:圧倒的な存在感を放つフラッグシップデザイン


【優れている点】伝統と革新が融合したスタイリング
実車を目の前にして最初に感じるのは、その圧倒的な存在感です。ロングノーズ&ショートデッキの伝統的スポーツカーフォルムを採用しながら、現代的な空力性能を両立させたデザインは見事の一言。
ボディサイズ:

- 全長4,820mm × 全幅2,000mm × 全高1,195mm
- ホイールベース2,725mm
GRスープラ(全長4,380mm)と比較すると、全長で440mm、全幅で135mmも拡大されており、実際に見るとその迫力は写真の比ではありません。特に全幅2メートルという数値は、ポルシェ911ターボS(1,900mm)を100mmも上回る堂々たるスタンス。
空力デザインの完成度

会場で特に目を引いたのが、機能美を追求したエアロダイナミクスパーツ。アグレッシブなサイドスカート、精密に設計されたデュフューザー、そして前面投影面積を最小化した低いルーフラインは、すべて「ダウンフォースの最大化」と「空気抵抗の最小化」という相反する要素を高次元で両立させています。

フロントのエアインテークは冷却性能を確保しながらも、流麗なボディラインを崩さない絶妙な配置。リアのデュフューザーは車体下部の気流を効率的に処理し、320km/h以上の最高速度でも安定性を確保する設計です。

CFRP製ボディパネルの質感

実車で確認できるカーボンファイバー強化プラスチック(CFRP)製のボディパネルは、軽量化だけでなく質感の高さも印象的でした。樹脂パネルとの組み合わせも違和感がなく、トヨタ初のオールアルミニウム骨格との相乗効果で1,750kg以下という驚異的な軽量化を実現しています。
【残念な点】日常使用での懸念
一方で、実用性に関しては気になる点もあります。
全幅2メートルという現実
全幅2,000mmという数値は、日本の道路環境では明らかに持て余します。機械式駐車場はほぼ全滅、一般的な立体駐車場でも入庫できない施設が多数。都市部での日常使用には相当な覚悟が必要でしょう。
視界の制約
全高1,195mmという超低重心設計は走行性能には最適ですが、ドライバーの着座位置も極端に低く、展示車両のドア開口部を確認する限り、乗降性には課題がありそうです。後方視界も、デザイン優先の結果、制約があることが予想されます。
前面投影面積の小ささによる実用性
空気抵抗を減らすために前面投影面積を極限まで小さくした結果、室内空間、特にヘッドクリアランスは最小限。身長175cm以上の方は、実際に試乗する際に注意が必要かもしれません。

GR GTのインテリア:サーキット性能を追求したコックピット

【優れている点】最新テクノロジーとドライバビリティの融合
展示車両のコックピットは、まさに「走りのための空間」として設計されていました。

デジタルインターフェースの先進性
デジタルメーターとタッチ式インフォテインメントシステムは、直感的な操作性を実現。車体セッティングの変更や状態確認がリアルタイムで可能です。特筆すべきはデータロガー機能の搭載で、以下の情報を記録・分析できます:
- アクセル、ブレーキ、ステアリング操作
- 車速、エンジン回転数
- 加速度などの各種センサー数値
- 車両の位置と方向
- カメラ撮影した走行映像
この機能により、サーキット走行後の詳細な分析が可能。タイムアタックやドライビングスキル向上に大いに役立つでしょう。
シートとステアリングの配置
ドライバーの位置は極限まで低く設定され、重心高の最適化に貢献。前後重量配分は45:55とリア寄りで、FR駆動方式と相まって理想的なハンドリングバランスを実現しています。
高品質な素材使用
カーボンファイバーやアルカンターラなど、レーシングカー由来の高品質素材が随所に使用されており、3,000万円中盤という予想価格に見合った仕上がりです。
【残念な点】実用性とのトレードオフ
収納スペースの限界
純粋なスポーツカーゆえ、収納スペースは最小限。展示車両からは、日常的な荷物を置くスペースさえ限られていることが見て取れました。週末のサーキット走行専用と割り切る必要があります。
乗降性の課題
低い着座位置と、空力を優先した結果のドア開口部の形状は、スムーズな乗降を難しくしています。特に年齢を重ねたドライバーには、物理的な負担が大きいかもしれません。
快適装備の優先度
走行性能を最優先した設計のため、快適装備に関しては必要最小限。長距離ツーリングよりも、サーキット走行やワインディングロードでの短時間走行に適した仕様です。
革新的な車体構造:トヨタ初のオールアルミニウム骨格
【優れている点】レーシングカー技術の市販車への応用

東京オートサロン2026で特に注目を集めたのが、GR GTとGR GT3に採用されたトヨタ初のオールアルミニウム骨格の実物展示でした。
低圧鋳造による9つの重要部品
骨格の要となる9つの重要部品には、アルミ低圧鋳造技術が採用されています。これらの部品の特徴は:
- 中空構造の採用: 砂型の中子を使用した鋳造により、内部に空洞を作成。強度を保ちながら大幅な軽量化を実現
- 一品もの製法: 鋳造の度に中子を壊す必要があるため、レーシングカー同様の手法で一つ一つ丁寧に生産
- 精密な削り出し加工: 平滑面が必要な箇所には精密な削り出し加工を実施
会場で実物を見ると、GRのマークが部品に刻まれているなど、職人的なこだわりも感じられました。
押し出し材による接続
9つの低圧鋳造部品は、アルミ押し出し材で接続される構造。すべてを一体化せず、必要な部分に必要な強度を配分することで、軽量化と高剛性を両立しています。
修理コストへの配慮
ボルトで取り付けられた部品も多く、万が一の接触事故でも該当部分のみ交換可能な設計。ただし、展示パネルには「修理費はとても高い」という注意書きもありました。
【残念な点】メンテナンスコストの懸念

高額な修理費用
アルミ低圧鋳造部品は、一つ一つが高コスト。軽微な接触でも部品交換となれば、修理費用は数百万円単位になる可能性があります。
専門技術の必要性
通常の鉄骨格とは異なる構造のため、修理には専門知識を持つ技術者が必要。一般の整備工場では対応できないケースも想定されます。
経年変化への対応
アルミニウムと異種金属の接合部における電食(腐食)リスクは、長期使用において注意が必要です。
パワートレイン:V8 4.0Lツインターボ+ハイブリッドの実力
【優れている点】650PS超のハイパフォーマンスユニット
スペック概要:
- エンジン: V型8気筒4.0Lツインターボ
- モーター: トランスアクスル内蔵1モーター
- システム最高出力: 650PS以上
- システム最大トルク: 86.7kgm(850Nm)以上
- トランスミッション: 8速AT
- 駆動方式: FR
- 最高速度: 320km/h以上
ドライサンプ方式の採用
エンジンは低重心化を徹底するため、ドライサンプ方式を採用。オイルパンを持たない構造により、エンジンをより低い位置に搭載できます。この結果、全高1,195mmという超低重心ボディが実現しています。
トランスアクスル・レイアウト
リアに配置されたトランスアクスルには、8速AT、1基のモーター、機械式LSDを統合。エンジンとトランスアクスルはCFRP製トルクチューブで接続され、前後重量配分45:55という理想的なバランスを実現しています。
このレイアウトは、ポルシェ911やシボレー・コルベットなど、ハイパフォーマンスカーで採用される伝統的手法。重量物を前後に分散させることで、運動性能を最大化します。
8速ATの高速シフト
サーキット性能を重視した8速ATは、短時間での変速を可能とし、パワーバンドを常に最適な範囲に保ちます。ハイブリッドシステムのモーターアシストと組み合わせることで、ターボラグも最小化されているでしょう。
カーボンセラミックブレーキ
前後にカーボンセラミック・ディスクブレーキを装備。320km/h超の高速域からも、フェードすることなく安定した制動力を発揮します。
【残念な点】環境性能とランニングコスト
燃費性能
650PSを発生するV8ツインターボエンジンに、ハイブリッドシステムを組み合わせても、燃費性能は決して良くないでしょう。エコカー減税の対象外となる可能性も高く、自動車税も高額です。
メンテナンスコスト
複雑なハイブリッドシステム、高性能なカーボンセラミックブレーキ、特注のV8エンジンなど、メンテナンスには高額な費用が必要です。ブレーキローター一枚だけで100万円を超える可能性もあります。
給油の頻度
大排気量ターボエンジンは、サーキット走行時には驚異的な燃料消費を示すでしょう。ハイペースで走行すれば、1時間程度で給油が必要になるかもしれません。
GR GT3:市販車とレーシングカーの技術共有

【優れている点】FIA GT3規格への完全準拠

展示されたGR GT3は、市販車のGR GTとボディ骨格を共有しながら、レーシング専用の装備を追加したモデル。
レーシング専用エアロパーツ
巨大なリアウイング、フロントスプリッター、デュフューザーなど、GT3規定に基づいた空力パーツを装備。市販車とは比較にならないダウンフォースを発生させます。
軽量化の徹底
市販車の1,750kg以下からさらに軽量化され、GT3規定の最低重量(約1,300kg前後)に近づけられているでしょう。内装は完全にレーシング仕様で、不要な装備はすべて撤去されています。

モータースポーツへの参戦予定
トヨタは、GR GT3を以下のレースカテゴリに投入する計画を発表しています:
- スーパーGT GT300クラス
- ニュルブルクリンク24時間
- 世界各地のGT3レース
- IMSA GTDクラス
2027年からの実戦投入が予定されており、レーシングカーとしての実績が市販車にもフィードバックされるでしょう。
【残念な点】市販車との価格差
GR GT3の予想価格: 5,000万〜7,000万円
市販車のGR GTが3,000万円中盤と予想される中、レーシング仕様のGR GT3は5,000万〜7,000万円と、大幅に高額になります。一般的なGT3マシンが5,000万〜8,000万円の価格帯であることを考えれば妥当ですが、気軽に購入できる金額ではありません。
維持費の高額化
レーシングカーとして使用する場合、タイヤ、ブレーキ、エンジンなど、消耗品のコストは市販車の比ではありません。1レース(例:スーパーGT 1戦)で数百万円の費用が必要です。
ライバル車種との比較:世界のスーパースポーツと競合
ポルシェ 911 カレラS との比較
| 項目 | GR GT | 911 カレラS |
|---|---|---|
| エンジン | V8 4.0L ターボ+HV | 水平対向6気筒 3.7L ターボ |
| 最高出力 | 650PS | 480PS |
| 駆動方式 | FR | RR/AWD |
| 車重 | 1,750kg以下 | 約1,500kg |
| 価格 | 約3,500万円(予想) | 約1,900万円〜 |
GR GTの優位点: 圧倒的なパワー、ハイブリッドシステムによる環境性能
911の優位点: 軽量、実績あるパッケージング、リセールバリュー、日常使用の利便性
フェラーリ 296 GTB との比較
| 項目 | GR GT | 296 GTB |
|---|---|---|
| エンジン | V8 4.0L ターボ+HV | V6 3.0L ターボ+HV |
| 最高出力 | 650PS | 830PS |
| 駆動方式 | FR | MR |
| 車重 | 1,750kg以下 | 約1,470kg |
| 価格 | 約3,500万円(予想) | 約4,200万円 |
GR GTの優位点: 価格優位性、メンテナンスネットワーク(トヨタディーラー)
296 GTBの優位点: 圧倒的なパワー、MRレイアウトによる運動性能、ブランド力
マクラーレン 750S との比較
| 項目 | GR GT | 750S |
|---|---|---|
| エンジン | V8 4.0L ターボ+HV | V8 4.0L ターボ |
| 最高出力 | 650PS | 750PS |
| 駆動方式 | FR | MR |
| 車重 | 1,750kg以下 | 約1,277kg |
| 価格 | 約3,500万円(予想) | 約4,600万円 |
GR GTの優位点: ハイブリッドシステム、価格競争力、信頼性(トヨタブランド)
750Sの優位点: 圧倒的な軽量化、カーボンモノコック、純粋なスーパーカー体験
実際に見て感じた総合評価
GR GTの魅力:トヨタが本気で作ったスーパースポーツ

東京オートサロン2026で実車を見て、最も強く感じたのは「トヨタの本気度」です。
技術的ハイライト:
- トヨタ初のオールアルミニウム骨格
- 低圧鋳造による高強度・軽量部品
- V8ツインターボ+ハイブリッドの最新パワートレイン
- トランスアクスル・レイアウトによる理想的な重量配分
- CFRPを多用した車体構造
これらすべてが、「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」というTOYOTA GAZOO Racingの理念を具現化したものです。
購入を検討する際の判断ポイント
GR GTに向いている人:
- サーキット走行を本気で楽しみたい
- 最新のレーシング技術に触れたい
- トヨタのフラッグシップスポーツカーを所有したい
- データロガーを使った走行分析に興味がある
- 週末専用のセカンドカーとして使用できる
GR GTに向いていない人:
- 日常使用がメインの用途
- 維持費を抑えたい
- 機械式駐車場を利用している
- 実用性重視のスポーツカーを求めている
- 全幅2メートルの取り回しに不安がある
価格と発売時期:限定500台の争奪戦
予想価格: 3,000万円中盤〜3,500万円
価格設定の根拠:
- Lexus LFA (3,750万円): 同じくトヨタのフラッグシップスポーツ
- ポルシェ911ターボS (約2,500万円): 同等パワーのライバル
- フェラーリ296 GTB (約4,200万円): ハイブリッドスーパーカー
GR GTは、これらの中間に位置する価格設定が予想されます。初回限定500台は3,000万円中盤、その後の追加生産分(合計1,500台予定)はやや価格が上昇する可能性があります。
発売時期: 2027年1月
2025年12月5日のワールドプレミアから約1年後の2027年1月に正式発売が予定されています。
購入までのスケジュール予想:
- 2026年1月: 東京オートサロン2026で一般初公開
- 2026年春〜夏: 先行予約開始(限定500台)
- 2026年秋: 試乗会実施
- 2027年1月: デリバリー開始
初回限定500台は、発表と同時に完売する可能性が高く、早期の意思表示が必要でしょう。
リセールバリューの予測
Lexus LFAが発売から15年経過した現在でも、新車価格を大幅に上回る中古車価格で取引されていることを考えると、GR GTも高いリセールバリューが期待できます。
リセールバリューを高める要因:
- 限定生産(初回500台、総計1,500台)
- トヨタ初のオールアルミニウム骨格搭載車
- モータースポーツ参戦による実績
- 歴史的価値(TOYOTA 2000GT、Lexus LFAに続く第3のフラッグシップ)
まとめ:GR GTとGR GT3は「買い」なのか?
【結論】純粋にドライビングを楽しみたい人には最高の選択
東京オートサロン2026で実際にGR GTとGR GT3を見て、触れて、細部まで観察した結果、以下の結論に至りました。
GR GTが素晴らしい理由:
- 技術の結晶: トヨタが培ってきたレーシング技術を惜しみなく投入
- 走行性能: 650PS超のパワー、理想的な重量配分、最新の空力設計
- 希少性: 限定生産による所有する喜び
- 進化の可能性: モータースポーツからのフィードバックによる継続的な改良
購入前に理解すべき制約:
- 実用性の低さ: 全幅2メートル、低い全高、限られた収納
- 高額な維持費: メンテナンス、保険、税金
- 日常使用の困難さ: サーキット・ワインディング専用と割り切る必要
- 修理費用: 万が一の事故時の高額な修理費
最終的な購入推奨度
10点満点中: 8.5点
減点理由:
- 実用性の低さ (-0.5点)
- 高額な維持費 (-0.5点)
- 全幅2メートルの取り回し (-0.5点)
それでも8.5点という高得点をつけたのは、「純粋なドライビングプレジャー」という観点で、GR GTが提供する体験が他に代え難いものだからです。
レクサスLFAの再来とも言える歴史的な一台。トヨタがこれまで蓄積してきた技術とノウハウのすべてを注ぎ込んだGR GTは、日本が誇るスーパースポーツカーとして、世界に挑戦します。
2027年1月のデリバリー開始まであと1年。購入を検討されている方は、早めにトヨタディーラーまたはGAZOO Racing取扱店に問い合わせることをお勧めします。
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