日産自動車は2026年4月20日、同月24日に中国・北京で開幕する「北京モーターショー2026(Auto China 2026)」において発表予定の新型コンセプトカー2台のシルエット画像を公式Webサイトおよび公式SNSで公開した。いずれも中国のNEV(新エネルギー車:BEV・PHEV・FCVを含む)市場を強く意識したモデルとされており、日産が推進する電動化・知能化戦略の新たなマイルストーンと位置づけられている。
2台のコンセプトカー、それぞれのシルエットから読み解く
公開されたシルエット画像から、2台のコンセプトカーはまったく異なる方向性を持つことが見て取れる。
2026年4月24日(金)10:50より、北京モーターショー2026 日産プレスカンファレンスの模様を中継します。
— 日産グローバル (@NissanGlobal) April 20, 2026
日産の長期ビジョンにおいてリード市場の一つと位置づける中国で、2台の新エネルギー車(NEV)コンセプトモデルをお披露目します。
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1台目は、明らかなオフロード指向のハードコアSUVだ。シルエットからは大型のグラウンドクリアランス(最低地上高)、メッシュやスラットのないフルクローズドと思われるフロントグリル、スレンダーなヘッドライト、フロントバンパー上に装着されたボンネットマウント式の補助ライト、フェンダーフレアに設けられたマーカーライト、そして光るルーフラックといった特徴的なディテールが確認できる。フルクローズドのグリルは、内燃機関を持たない完全EV(BEV)である可能性を強く示唆するデザインだ。また、ずんぐりとしたボディが高くそびえ立つスタイリングは、北米向けに復活が発表された「Xterra」のオフロードDNAを色濃く継承しつつも、中国市場専用の独自フロントエンドを採用した別モデルである可能性が高い。
2台目は対照的に、スタイリッシュなハッチバック/クロスオーバースタイルのモデルと見られる。フロントにはシャークノーズ風の造形が確認でき、なだらかに弧を描くルーフラインとリフトゲートに設けられたスポイラーも特徴的だ。ライティングユニットのデザインは2026年モデルとして刷新された新型「リーフ」のそれに近い印象を持ち、都市生活者向けのスマートEVという方向性が感じられる。
日産は両モデルについて、「電動化と知能化における重要な新たな節目」と表現するにとどめており、詳細スペックや発売計画については正式発表を待つ必要がある。
北京モーターショー2026での日産の展示全体像
日産はコンセプトカー2台の発表に加え、北京モーターショー2026では新型ミドルサイズSUV「NX8」も展示する。NX8は東風日産(Dongfeng Nissan)が手掛けた中国向けモデルで、ピュアEVとレンジエクステンダーEV(REEV)の2種類のパワートレインを設定。ピュアEVはCLTCモードで最大650kmの一充電走行距離を誇り、800Vシステムを採用して現地の競合EVに匹敵する超高速充電(最大5C)に対応するなど、技術的完成度の高さが注目されている。価格帯は15.99万元〜20.99万元(日本円換算で約320万〜420万円前後)と設定されており、急速に進化する中国のNEV市場に真正面から挑む姿勢が鮮明だ。
また、日産は2026年4月24日(金)10時50分(日本時間)よりYouTubeで北京モーターショー2026の日産プレスカンファレンスをライブ配信する予定で、2台のコンセプトカーの詳細もこの場で正式に明らかになる。
「中国で・中国のために・世界へ」——日産の長期ビジョンと中国戦略
今回のコンセプトカー公開は、日産が2026年4月14日に発表した長期ビジョン「モビリティの知能化で、毎日を新たな体験に」とも密接に連動している。このビジョンの核心は「AI定義車両(AIDV=AI-Defined Vehicles)」戦略であり、スマートモビリティを日常生活に自然に溶け込ませるとともに、BEV・PHEV・ハイブリッドといった多様な電動化技術で世界各地のニーズに応えることを掲げている。
中国市場については「中国で・中国のために・世界へ」という戦略的コミットメントのもと、日本・米国・中国の主要3市場のひとつに位置づけ、単なる販売市場としてではなく「グローバル競争力と産業能力を牽引する中核エンジン」としての役割を担わせる方針だ。具体的には、2030年度までに中国での年間販売台数100万台を目指しており、4ドアEVセダン「N7」のラテンアメリカ・ASEAN向け輸出や、PHEVピックアップトラック「フロンティア プロ」のラテンアメリカ・ASEAN・中東向け輸出を通じて、中国を"グローバル輸出拠点"として活用していく戦略を明確にしている。
長期的には、AIドライブ技術を搭載するモデルをラインアップの約9割まで拡大することを目指しており、2026年夏に発売予定の「エルグランド」からその取り組みが本格化する見通しだ。
復活するXterra——北米市場での布石も見逃せない
北京モーターショーのコンセプトカーとは別に、日産は北米市場向けに「Xterra(エクステラ)」の復活も正式にアナウンスしている。新型Xterraは2015年に生産終了して以来11年ぶりの復活となり、ボディオン・フレーム構造を採用した本格オフロードSUVとして開発が進む。パワートレインにはV6エンジンとハイブリッドV6の2種類が設定され、生産は米国内のミシシッピ州工場(現行フロンティアと同じ施設)で行われる見込みだ。

価格については、日産アメリカズのCEOであるクリスチャン・ムーニエ氏が「4万ドル以下(約600万円以下)に設定する」と明言しており、フォード・ブロンコ(40,495ドル〜)やジープ・ラングラー(36,035ドル〜)、トヨタ・4ランナー(41,870ドル〜)といった強力な競合ひしめくセグメントに真っ向勝負を挑む。ムーニエ氏は「最近、我々は少し道に迷っていた。Xterraは"必要なものすべて、不要なものは一切なし"というシンプルな哲学を象徴するモデルになる」と語っており、このフレーズは2002年の初代Xterraのスローガンをそのまま復活させたものだ。過剰なテクノロジーや装備による価格膨張に歯止めをかけ、ブランドの原点に立ち返る姿勢が色濃く反映されている。

電動化と本格オフロード、二つの柱で再起を図る日産
かつて「技術の日産」として世界市場をリードしてきた同社は、近年の経営不振を経て大きな変革期を迎えている。北京モーターショー2026では、中国市場向けのNEVコンセプトカー2台とNX8を軸に電動化の本気度を示しつつ、北米ではXterraという感情的な訴求力を持つオフロードSUVを復活させることで、グローバル規模でのブランド再建を目指している。
特に今回公開されたオフロードコンセプトは、北米向けXterraとの設計哲学的な共鳴を感じさせると同時に、フルクローズドグリルが示す完全EV化の可能性という点で中国市場の電動化トレンドへの適応も見据えた意欲作だ。日産が「AIで定義される次世代モビリティ」と「泥にまみれる本格オフロード」という、一見相反する二つのビジョンをどう統合して見せるのか、4月24日のプレスカンファレンスが大きな注目を集めている。
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