2026年4月24日、中国・北京で開幕した「北京モーターショー2026(Auto China 2026)」にて、日産自動車がNEV(新エネルギー車)戦略の新たな一手として、2台のPHEVコンセプトSUVを世界初公開した。その名も「テラノ PHEV コンセプト」と「アーバンSUV PHEV コンセプト」。どちらも単なるショーカーにとどまらず、1年以内に市販化モデルを公開するという、極めて現実的なコンセプトカーとして注目を集めている。
北京モーターショー2026における日産の戦略的発表:
会場のステージに立ったイヴァン・エスピノーサ社長は「中国は単に競争の激しいローカル市場にとどまらず、グローバルイノベーションの発信地でもある」と述べ、中国が日本・米国と並ぶ日産の3大主要市場として、製品開発と輸出の両面で戦略的な役割を担うことを強調した。日産が掲げる新たなビジョン「Mobility Intelligence for Everyday Life(モビリティ インテリジェンス フォー エブリデイ ライフ)」のもと、2026年から中国で開発・生産した競争力の高いモデルを積極的に輸出していく方針も明言された。
今回の2台のコンセプトカーに加えて、今後1年以内にさらに3モデルが商品ラインアップに加わる予定であることも発表されており、日産の中国市場におけるNEV攻勢は、かつてない規模とスピードで加速している。2030年度までに中国での年間販売台数100万台という高い目標に向け、同社は本気のコミットメントを示した形だ。
復活する伝説の名前「テラノ」:
今回の発表でとりわけ大きな注目を集めたのが、「テラノ PHEV コンセプト」だ。「テラノ(Terrano)」は、1990年代半ばから2000年代半ばにかけて販売されたコンパクトオフロードSUVとして、日産の歴史に刻まれている名前である。その象徴的なネーミングが、約20年の歳月を経てついに復活する。

エスピノーサ社長は「テラノという名前は、日産にとって特別な意味を持つ。最新のプラグインハイブリッド技術を搭載しながら、日産が長年培ってきたオフロードの走行性能を継承するモデルだ」と語り、そのアイデンティティがアウトドアでの高い走破性と、都市部での快適な日常使いという「二刀流」の性能に集約されていることを紹介した。

デザイン面では、かつてのテラノの象徴でもある3スロットグリルをLEDデイライトとして現代的に再解釈した大胆なフロントフェイスが目を引く。スキッドプレートやトウフック、オフロードライト、ロックスライダー、ルーフレール、そして角ばったブラックのホイールアーチといった、本格オフローダーにふさわしい装備が随所に盛り込まれており、ランドローバー・ディフェンダー110を彷彿とさせる伸びやかなロングボディスタイルはひと目見て圧倒されるほどの存在感だ。

リアエンドには、スペアタイヤをセンターバーで囲い、そのバーに「NISSAN」のレタリングバッジを配置することで、まるで日産ロゴそのものを立体的に再現したかのような遊び心溢れるデザインも採用されている。さらにリアテールランプも、日産ロゴの背面円弧を意識した弧状のLEDデザインが施されており、細部まで作り込まれたデザイナーのセンスが光る。

ポジショニングとしては、フラッグシップSUVのパトロールとエクストレイル(米国名ローグ)の間に位置づけられる見通しで、グローバル市場においてトヨタ・ランドクルーザー250や三菱パジェロなどと正面から競合するラダーフレーム構造のフルサイズSUVとなる可能性が高い。
期待されるパワートレイン:

現時点でテラノ PHEV コンセプトの具体的なスペックは非公表だが、同じくラダーフレーム構造を持つ日産のピックアップトラック「フロンティア プロ PHEV」との共通プラットフォームを採用する可能性が極めて高いとされている。フロンティア プロ PHEVは、1.5リッター直列4気筒ターボエンジンに高出力電動モーターを組み合わせたプラグインハイブリッドシステムを搭載し、システム総出力429馬力(320kW)、最大トルク800Nm(590 lb-ft)という驚異的な数値を誇る。さらにEVモードでの最大航続距離は165kmを実現しており、通勤用途ではほぼガソリンを消費しない実用的な一台となっている。このパワートレインがテラノに流用されるとすれば、オフロード性能と電動化の両立という点で、競合他社を圧倒するスペックが期待できる。
若い世代へ向けた「アーバンSUV PHEV コンセプト」:
もう1台のコンセプトカー「アーバンSUV PHEV コンセプト」は、テラノとは対照的に、中国の若い世代の都市ユーザーをターゲットに開発されたモデルだ。そのデザインは、北京モーターショー同日に公開された純電気クロスオーバー「NX8」のデザイン哲学と日産の将来のSUVラインアップに通じる要素を取り入れており、NX8の弟分的存在として位置づけられると見られる。

フロントフェイスにはスリークなLEDが奢られ、大型のロアブラックグリルが印象的なコントラストを生み出す。リアのテールランプはセンター直結式の一文字デザインで、リアエンドの「NISSAN」ロゴは赤いLEDでテールランプと統一された。ドアハンドルが外観からほぼ見えないフラッシュサーフェスデザインを採用することで、際立ってスリムかつスポーティなシルエットを実現している点も特徴的だ。クーペライクなSUVスタイルで、セグメントとしてはトヨタ・ハリアーに近い立ち位置になる可能性がある。

さらに特筆すべきは、ルーフトップにLiDARシステムが搭載されていると見られる点だ。これは高度な自動運転支援技術の搭載を示唆しており、日産の「プロパイロット 2.0」に匹敵するハンズオフ走行支援システムや、高度なドライビングサポートが実装されることへの期待が高まる。

パワートレインはテラノ同様にプラグインハイブリッドが採用される予定だが、詳細スペックは未公表。兄貴分となるNX8の中国現地価格が15.99万元〜20.99万元(日本円で約374万円〜491万円相当)であることを踏まえると、アーバンSUV PHEVコンセプトの量産モデルはこれよりも競争力のある価格設定になると予想される。
中国からグローバルへ:日産の輸出戦略:
今回の2台のコンセプトカーは、中国国内市場向けにとどまらないグローバル展開が視野に入っている。特にテラノ PHEV コンセプトの量産モデルは、選ばれたグローバル市場への輸出が正式に予定されており、NX8についても選定済みのグローバル市場への輸出計画があることが明らかにされた。一方、すでに市販化済みのN7は中南米およびASEAN地域へ、フロンティア プロは中南米・ASEAN・中東へと輸出が開始される予定となっている。

日産は2025年以降、中国市場でのNEV新車攻勢を急速に加速させており、N7・フロンティア プロ PHEV・N6・NX8といったモデルを相次いで市場投入してきた。日産グローバルクオリティと中国スピードの融合、そして最先端のローカルテクノロジーを組み合わせたこれらのモデルは、中国の消費者から高い評価を得ている。エスピノーサ社長が述べたように「日産のパワートレイン戦略はセダン・SUV・ピックアップトラックの全領域において、BEV・PHEV・レンジエクステンダーEVを網羅する」ものとなり、各モデルが明確な役割を持ってブランド価値の強化に直接貢献することが求められている。

まとめ|日産の本気を示す2台のコンセプト:
北京モーターショー2026で世界初公開された「テラノ PHEV コンセプト」と「アーバンSUV PHEV コンセプト」は、どちらも1年以内の量産モデル公開という明確なコミットメントとともに発表された、極めて現実的かつ野心的な2台だ。テラノはランドクルーザー250をはじめとする本格オフロードSUV市場に、アーバンSUV PHEVはハリアーやNX8が牽引するプレミアムクロスオーバー市場に、それぞれ強力な一石を投じる存在となりうる。
2030年度に中国での年間100万台販売という大きな目標を掲げる日産が、中国を起点にグローバル市場へと再び躍進する——そのシナリオを強烈に印象づけた今回の発表は、自動車業界全体にとっても見逃せないビッグニュースといえるだろう。今後発表される量産モデルの詳細に、引き続き注目したい。

