フィアットが、ミニバン・SUV・ピックアップトラックの3つの役割を1台にまとめたコンセプトカー「マルチプレイ(Multiplay)」を、パリモーターショー2026の前夜に開かれたステランティスのイベントで世界初公開しました。全長は4.45mで、Cピラーから後ろの部分が前後に動き、6+1人乗りのファミリーカーから荷台付きの4人乗りピックアップに姿を変えます。
車名から想像できるとおり、モチーフは1956年の「600 ムルティプラ」と1998年の「ムルティプラ」です。どちらも小さなボディにたくさんの人を乗せることを追求したフィアットらしいクルマで、マルチプレイはその考え方を「使い方に合わせて形が変わる」という方向へ広げています。
ただし、フィアットはマルチプレイを「特定の市販車を予告するものではなく、これからのフィアットのアイデアを試す実験室」と位置づけています。パワートレインや価格、発売時期は公表されておらず、日本導入の予定もありません。
この記事では、フィアット 新型 マルチプレイの特徴、変身のしくみ、ボディサイズ、内外装、市販化と日本導入の可能性、あわせて発表された超小型EV「マルチプリナ」まで、わかりやすくまとめました。


そもそもフィアット 新型 マルチプレイとは?
マルチプレイは、フィアットが「家族のための新しいクルマのかたち」を探るために作ったコンセプトカーです。仕事、学校、習い事、アウトドアと、1日の中でも変わる人数や荷物の量に、1台で応えられないかという問いから生まれました。
発表の場は、パリモーターショー2026の開幕前夜に行われたステランティスのメディア向けイベント「The Night Before」です。フィアットは2026年10月11日付(トリノ発)のリリースで概要を公開しました。会場では、ステランティスの戦略アドバイザーであるオリヴィエ・フランソワ氏と、フィアット・アバルト・ランチアのCEOで欧州のマーケティング責任者も務めるアルノー・ベローニ氏が車両を紹介しています。
発表の最後には、フランソワ氏がベローニ氏にキーを手渡す演出があり、フィアットはこれを「ブランドの新しい章」と表現しています。
新型マルチプレイの特徴まとめ
フィアットが発表したマルチプレイの主な特徴は、以下の通りです。
ボディ・変身機構
- 3in1のパッケージ:全長4.45mに、ミニバンの広さ・SUVの存在感・ピックアップの使い勝手をまとめた
- Cピラー「メタモルフォージ」:後部のモジュールが専用のガイドに沿って前後に動き、6+1人乗りから4人乗りピックアップに変身
- 自転車ラックになるリアスポイラー:回転させると、ピックアップ時に自転車を最大2台積めるラックになる
室内・装備
- 「ペッセンジャーシート」:チャイルドシートの取り付け、ペットの居場所、小さなテーブル、収納に使い分けられる
- 「サンシート」:停車中に助手席を後ろ向きのラウンジチェアのようにして、パノラマルーフの下でくつろげる
- 隠れるディスプレイ:電源を切るとダッシュボードの中に見えなくなる
- スイカがテーマの色:緑のボディに、赤とピンクの室内を組み合わせた
① Cピラーごと動く「メタモルフォージ」構造
マルチプレイの一番の見どころが、「C-Pillar ‘Metamorfosi’(メタモルフォージ=イタリア語で変身)」と名付けられた構造です。Cピラー(後席の横にある柱)を含む後部のモジュールが、専用のガイドに沿って前後にスライドします。数ステップの操作で、屋根のある箱型のファミリーカーから、荷台がむき出しになったピックアップに変わるしくみです。
ファミリー仕様では6席に「ペッセンジャーシート」を加えた6+1の構成、ピックアップ仕様では4席と開放型の荷台という構成になります。荷台には自転車、スポーツ・アウトドア用品、大きな荷物を積むことを想定しています。フィアットは「荷室の大きさを、必要なときに呼び出せる機能にした」と説明しています。


② リアスポイラーが自転車ラックに変わる
屋根の後端にあるリアスポイラーは、回転させると自転車用のラックになります。ピックアップ仕様では、ここに自転車を最大2台積むことができます。ふだんは空気の流れを整える部品として働き、必要なときだけ荷物を積む道具になるので、別売りのキャリアを用意しなくて済むというアイデアです。

③ 家族とペットのための室内装備
室内では、6人乗りだった初代ムルティプラの考え方を発展させ、「ペッセンジャーシート(Petsenger seat)」という多目的のユニットを加えています。チャイルドシートの取り付け場所、ペット専用のスペース、小さなテーブル、収納と、その日の乗る人や用途に合わせて使い分けられます。
クッションの外側の部分は取り外してペットのリードとして使え、ドアには折りたたみ式の食器を入れる場所もあります。

新型マルチプレイの価格・発売日は?
マルチプレイはコンセプトカーのため、価格・グレード・発売日は発表されていません。フィアット自身が「特定の市販車の予告ではない」と説明しており、このままの形で販売される予定もありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 車名 | フィアット マルチプレイ(Multiplay) |
| 位置づけ | コンセプトカー(将来の技術・アイデアを試すためのクルマ) |
| 初公開 | 2026年10月(パリモーターショー2026 前夜のステランティスのイベント) |
| 価格 | 未発表 |
| 発売日 | 未発表(市販の予定は発表されていない) |
| 日本導入 | 未発表 |
新型マルチプレイのボディサイズ
公表されているボディサイズは全長4.45m(4,450mm)だけで、全幅・全高・ホイールベースは発表されていません。乗車定員はファミリー仕様が6+1、ピックアップ仕様が4人です。
| 車種 | 全長 | 定員 |
|---|---|---|
| マルチプレイ(コンセプト) | 4,450mm | 6+1人/4人(ピックアップ時) |
| グランデ パンダ(日本仕様) | 4,010mm | 5人 |
| 600(日本仕様) | 4,200mm | 5人 |
日本で販売中のグランデ パンダより約44cm、600より約25cm長い計算です。国産車でいえば、トヨタ シエンタやホンダ フリードといったコンパクトミニバンより少し長い程度で、3列目までしっかり使える大型ミニバンと比べるとずっとコンパクトです。この長さに6+1の座席と荷台を両立させようとしている点が、マルチプレイの挑戦といえます。
フィアットは、多くのファミリーカーで「3列目が実際には使いにくい」ことを課題に挙げています。マルチプレイでは効率のよいパッケージによって、後ろのスペースに子ども2人、必要なら大人1人まで座れるとしています。子どもたちだけの「キッズエリア」を作りながら、親の目と手が届く距離に置けるのもポイントです。
遊び心たっぷり!新型マルチプレイの外装(エクステリア)
フロント
フロントは、横一列に並んだドット状のライトと、中央の「FIAT」ロゴが目を引きます。バンパーの両端には半円形のライトがあり、明るく親しみやすい顔つきです。四隅に置いたタイヤと四角いボディで、SUVらしさとミニバンの広さを両立させています。

ボディカラー
色のテーマはスイカです。ボディの鮮やかな緑はスイカの皮を、室内の赤とピンクは果肉をイメージしています。イタリアの夏と、みんなで過ごす楽しい時間を表現したものだといいます。屋根は白で、緑のボディとのツートーンになっています。
大きなガラス面とパノラマルーフで、室内に自然の光をたくさん取り入れています。
リビングのような空間!新型マルチプレイの内装(インテリア)
コックピットと隠れるディスプレイ
ダッシュボードには、地中海の水平線をイメージした横長の帯が通っています。空と海が溶け合うような景色を表したもので、ディスプレイもこの帯の中に組み込まれています。ディスプレイは車の電源を切ると見えなくなり、すっきりとした室内に戻るのが特徴です。昔のフィアットが得意とした「ボディと同じ色を室内にも使う」手法も、外装と内装の色の組み合わせで新しく表現しています。

シート・素材・サンシート
助手席は「サンシート(Sunseat)」に変えられます。停車中に後ろ向きにして、ダッシュボードを背もたれのように使うことで、パノラマルーフの下に寝椅子のような場所ができます。本を読んだり、休んだり、景色を楽しんだりするための装備です。
シートなどの多くには、1種類の素材でできた布(モノマテリアル)を縫い目のない3Dニットで使い、ゴミを減らしています。子どもやペットのエリアは防水仕上げです。床はやわらかいピンクで、キッズエリアにかけてターコイズを含むドット状のグラデーションが広がります。



新型マルチプレイのパワートレインとスペック
フィアットはマルチプレイのパワートレイン(エンジン・モーター)、出力、駆動方式、バッテリーなどを発表していません。電気自動車なのかハイブリッド車なのかも明らかにされていないため、この記事でも予想の数値は書かないでおきます。
最近のフィアットは、1つのボディに電気自動車とハイブリッド車の両方を用意する例が増えています。日本でも2026年11月7日にグランデ パンダ ハイブリッドが発売されます。今後マルチプレイのアイデアが市販車に生かされる場合も、どのパワートレインになるかはフィアットの発表を待つ必要があります。
ムルティプラの精神を受け継ぐ!フィアットの「たくさん乗れる小さなクルマ」の歴史
1956年 600 ムルティプラ
初代の600 ムルティプラは、小型車「600」をもとにした多人数乗りのモデルです。全長約3.5mのボディに6人が乗れる、当時としては画期的なパッケージでした。
1998年 ムルティプラ
1998年のムルティプラは、全長4m未満のボディに3人がけのシートを2列並べ、6人乗りを実現したモデルです。個性的なデザインでも話題になりました。マルチプレイは、この2台が追求した「外の大きさと中の広さの関係」を、形が変わる構造という新しい方法で探っています。
2026年 マルチプリナ(コンセプト)
パリモーターショーでは、マルチプレイと並んで小さなコンセプトカー「マルチプリナ(Multiplina)」も注目を集めました。フィアットが2026年10月23日に公開したリリースでは、マルチプリナは全長3.04m・全幅1.40m・全高1.53mの電気自動車で、4人が乗れます。欧州の「L7」という重量四輪車(ヘビー・クアドリシクル)の枠組みで作られており、2人乗りの超小型EV「トポリーノ」と普通の乗用車の間を埋める存在として考えられています。
こちらは600 ムルティプラから直接デザインのヒントを得ていて、前に出たフロントガラス、ツートーンのボディ、フロントの「ひげ」のような形、リアの通気口のデザインなどに面影があります。マルチプレイが「1台を使い方に合わせて変える」ことを探るのに対し、マルチプリナは「とても小さなボディで、どれだけ広さと使いやすさを確保できるか」を探るクルマです。
| モデル | 登場 | 全長 | 定員 |
|---|---|---|---|
| 600 ムルティプラ | 1956年 | 約3.5m | 6人 |
| ムルティプラ | 1998年 | 4m未満 | 6人(3人×2列) |
| マルチプリナ(コンセプト) | 2026年 | 3.04m | 4人 |
| マルチプレイ(コンセプト) | 2026年 | 4.45m | 6+1人/4人 |
新型マルチプレイは市販される?日本発売はいつ?
2026年10月時点で、マルチプレイの市販化と日本導入は発表されていません。フィアットはマルチプレイを「将来のイノベーションのためのアイデアの実験室」と説明しており、変身する構造、空間の使い方、多目的に使える部品などは、これからのフィアット車の試験場になるとしています。
ベローニCEOも、変わっていく家族のニーズに合わせたソリューションを探るためのコンセプトだという趣旨のコメントを出しています。ペット用の装備や多目的シート、隠れるディスプレイといった個々のアイデアが、将来のモデルに採り入れられる可能性はありそうです(どのモデルに使われるかは未発表)。
購入前にチェックしたい3つのポイント
1つ目は、マルチプレイは買えるクルマではないという点です。いまフィアットの3列シート車や広いクルマが欲しい場合は、日本で販売中のモデルから選ぶことになります。
2つ目は、日本で買える身近なフィアットとして、2026年11月7日発売のグランデ パンダ ハイブリッド(369万円〜420万円)がある点です。マルチプレイと共通する明るいデザインの雰囲気を、現実的なサイズと価格で楽しめます。
3つ目は、コンセプトカーのアイデアが市販車に生かされるまでには時間がかかることが多い点です。正式な情報はフィアットの発表を待つのが確実です。
新型マルチプレイに関するよくある質問(FAQ)
Q. フィアット マルチプレイはいつ発表されましたか?
A. 2026年10月、パリモーターショー2026の開幕前夜に行われたステランティスのイベント「The Night Before」で世界初公開されました。フィアットのリリースは2026年10月11日付です。
Q. 何人乗りですか?
A. ファミリー仕様は6席+多目的の「ペッセンジャーシート」の6+1、ピックアップ仕様は4人乗りです。
Q. 電気自動車ですか?
A. パワートレインは発表されていません。
Q. 日本で発売されますか?
A. 市販化・日本導入ともに発表されていません。フィアットは特定の市販車を予告するものではないとしています。
まとめ:新型マルチプレイはフィアットの「次の章」を示すアイデアの宝箱
フィアット マルチプレイは、全長4.45mのボディにミニバン・SUV・ピックアップの役割をまとめ、Cピラーごと後部を動かして6+1人乗りから4人乗りピックアップに変身するコンセプトカーです。自転車ラックになるリアスポイラー、ペットにやさしいペッセンジャーシート、停車中にくつろげるサンシートなど、家族の毎日を想像したアイデアが詰まっています。
市販の予定はなく、パワートレインや価格も未発表ですが、600 ムルティプラから続く「小さなボディで大きな空間を」というフィアットの考え方を、これからの時代に合わせて広げたクルマです。同時に発表されたマルチプリナとあわせて、今後のフィアットのファミリーカーがどのように変わっていくのか注目です。
最新情報が入り次第、随時更新していきます。

