スズキから待望の5ドアモデルとして登場した「ジムニーノマド」。ベースとなるジムニーシエラの圧倒的な悪路走破性と唯一無二のデザインはそのままに、後部座席の居住性と積載量を大幅に向上させ、多くのファンが発売を心待ちにしています。
しかし、その無骨でタフなキャラクターゆえに、一般的な乗用車と同じ感覚で購入すると「こんなはずじゃなかった…」と後悔する可能性も。
この記事では、ジムニーノマドの購入を検討している方が後悔しないために、事前に知っておくべき「残念な点」や「注意点」を、提供された情報に基づいて詳しく解説します。
購入前に知るべきジムニーノマドの「残念な点」7選
ジムニーノマドは多くの魅力を持つ一方で、その個性とも言える「割り切り」が存在します。購入後にギャップを感じやすいポイントを7つにまとめました。
1. 圧倒的に少ない収納スペース
ジムニーノマドは、快適性よりも悪路走破性やヘビーデューティな使い方を優先しています。そのため、収納スペースは非常に限られています。
- ドリンクホルダーの不足: ドアポケットにドリンクホルダーはなく、車内全体でも前後合わせて2つのみ。乗員全員分の飲み物を置く場所はありません。
- 後席アームレストなし: 後席にセンターアームレストはなく、快適性は限定的です。
- 小物入れの少なさ: 「収納とかを求めてはいけない車」と評されるほど、スマートフォンや小物を置くスペースは最小限です。
一台で何でもこなしたいと考えている方は、社外品のアクセサリーで収納を拡張するなどの工夫が必要になるでしょう。
2. シート周りの快適装備の割り切り
長時間の運転や同乗者の快適性に関わる部分でも、ジムニーならではの仕様が見られます。
- シート調整機能の制限: 運転席にシートリフト機構(高さ調整)がありません。調整できるのは前後スライドとリクライニングのみです。
- ステアリングの調整範囲: ステアリング調整は上下のチルト機能のみで、前後のテレスコピック機能がありません。体格によっては最適なドライビングポジションが取れない可能性があります。
- 後席リクライニングは1段階のみ: 後席はシエラより格段に快適になったものの、リクライニングは「ちょっとだけ」可能な1段階のみ。長距離移動での快適性は他のSUVに劣る場合があります。
3. 後席を倒した際のラゲッジスペースに段差が発生
5ドア化で格段に使いやすくなったラゲッジスペースですが、注意点もあります。後席は座り心地を優先したファブリックシートになった結果、シートを格納した際に荷室との間に段差が発生します。
3ドアのジムニーシエラは樹脂製でフラット化できたため、この点は大きな違いです。車中泊などを考えている方は、ディーラーオプションで発売予定のラゲッジボードなどで段差を解消する必要があります。
4. 悪路走破性のわずかな低下
ジムニーの魂とも言える悪路走破性。基本性能は維持されていますが、ホイールベースが340mm延長された影響は皆無ではありません。
- ランプブレイクオーバーアングル: 腹下を擦りにくくする指標であるランプブレイクオーバーアングルが、シエラの28∘から25∘へと3∘悪化しています。
もちろん、一般的な乗用車とは比較にならないほど高い数値を維持していますが、極限のオフロード性能を求めるユーザーにとっては無視できないポイントかもしれません。
スペック | ジムニー | ジムニーシエラ | ジムニーノマド |
---|---|---|---|
全長 | 3,395mm | 3,550mm | 3,965mm |
全幅 | 1,475mm | 1,645mm | 1,645mm |
全高 | 1,715mm | 1,730mm | 1,720mm |
ホイールベース | 2,250mm | 2,250mm | 2,590mm |
最低地上高 | 205mm | 210mm | 210mm |
最小回転半径 | 4.8m | 4.9m | 5.7m |
アプローチアングル | 41度 | 36度 | 36度 |
ランプブレーク オーバーアングル | 28度 | 28度 | 25度 |
デパーチャーアングル | 51度 | 50度 | 47度 |
5. 運転支援システム「ACC」の制約
ジムニーノマド(AT車)には、シエラにはなかった**アダプティブクルーズコントロール(ACC)**が搭載されました。しかし、その機能には制約があります。
- 作動は時速40km以上: 全車速追従機能はなく、作動は40km/h以上からとなります。高速道路での疲労軽減には役立ちますが、渋滞時のストップ&ゴーには対応していません。
- MT車はACC非搭載: MT車に搭載されるのは、設定した速度を維持するだけの通常のクルーズコントロールです。前方車両との車間距離は調整してくれないため、注意が必要です。
6. 昔ながらの「バルブ式ランプ」
ヘッドライトはLEDですが、リアコンビネーションランプや室内のルームランプは昔ながらのバルブ式(豆球)です。これは整備性や交換コストを考慮したジムニーらしい仕様ですが、現代の車としては物足りなく感じる方もいるでしょう。特にバックランプは左側のみの点灯となります。
7. 快適性より「タフさ」優先の内装
内装は基本的にジムニーシエラを踏襲しており、傷つきにくさを重視した硬質なプラスチックが多用されています。助手席前のグリップなど、機能美にあふれるデザインですが、ソフトパッドなどを多用した乗用車のような質感や高級感を期待すると裏切られます。
「残念な点」はジムニーの"味"?唯一無二の魅力
ここまで厳しい点を挙げてきましたが、これらの「残念な点」は、ジムニーノマドが持つ「唯一無二のキャラクター」の裏返しでもあります。
- 最適化された走行性能: 5ドア化は単純な延長ではなく、フレームの補強、ブレーキの強化(ベンチレーテッドディスク化)、サスペンションの最適化など、走行性能を損なわないための専用設計が施されています。
- 考え抜かれたデザイン: 手袋をしていても操作しやすい大型スイッチ類、オフロード走行時に体をホールドしつつも動きを妨げないシート形状、タイヤ周りの状況を確認しやすい「耳たぶミラー」など、すべてが「本物の道具」としての機能性を追求した結果です。
- 進化した実用性: 何よりも、後席ドアが約90∘開閉し、大人がしっかり座れる後席空間と、日常の買い物にも十分対応できるラゲッジスペースが手に入ったことは最大の魅力です。3ドアでは諦めていたファミリー層や、多用途に使いたいユーザーにとって、これ以上ない選択肢となります。
編集部から一言
ジムニーノマドは、ジムニーシエラのタフな魂を受け継ぎながら、日常の使い勝手を劇的に向上させた画期的なモデルです。新色「シズリングレッド」や専用デザインのパーツも所有欲を満たしてくれます。
しかし、その本質は快適性を追求したSUVではなく、ヘビーデューティなオフローダーです。
ご紹介した「残念な点」や「注意点」を「欠点」と捉えるか、「個性」や「味」として受け入れられるかが、購入後の満足度を大きく左右します。
この唯一無二のキャラクターを深く理解し、自分のライフスタイルに本当に合っているかを見極めることが、ジムニーノマドとの最高のカーライフを送るための鍵となるでしょう。