ホンダのアメリカ法人は2025年11月18日、ミッドサイズ3列シートSUV「パイロット」の改良モデルとなる2026年モデルを発表しました。現行4代目モデルのデビューから3年を経ての中期改良となる今回のアップデートは、単なるマイナーチェンジの枠を超え、外観デザインの刷新、先進テクノロジーの大幅拡充、走行性能の向上、そして静粛性の改善など、多岐にわたる改良が施されています。

クラストップの3列シートSUVがさらなる進化を遂げる
カリフォルニア州でデザインされ、オハイオ州で開発、アラバマ州リンカーン工場で製造される2026年モデルのパイロットは、2025年12月から全米のディーラーに順次納車が開始される予定です。
エクステリア:よりタフで力強い存在感を放つデザインへ
フロントデザインの大胆な変更

2026年モデルのパイロット最大の変更点は、フロントマスクの全面的な刷新です。従来モデルよりも大型化され、より直立したグリルデザインを採用。台形形状が緩やかになり、SUVらしい力強さと存在感が大幅に向上しています。

フロント・リアバンパーには、よりロバストなスキッドプレートが装備され、トリムレベルによってシルバーまたはブラックの加飾が選択可能。特にオフロード志向の強いトレイルスポーツ(TrailSport)グレードでは、シルバー加飾のスキッドプレートが採用され、アウトドアでの使用を想起させる力強いスタイリングとなっています。

グレード別の外観差別化
- スポーツ・EX-L:ブラックグリルにグロスブラックサラウンド
- ツーリング・エリート・ブラックエディション:グロスブラックグリル
- トレイルスポーツ:グレーグリル(専用デザイン)
新色追加とホイールデザイン
2026年モデルでは、以下の3つの新色が追加されました。
- ソーラーシルバーメタリック:洗練された都会的な印象
- スモークブルーパール:スタイリッシュで印象的な色合い
- アッシュグリーンメタリック:トレイルスポーツ専用色で、すべてのホンダトレイルスポーツモデルで展開
また、ツーリング、エリート、ブラックエディションには新デザインの20インチホイールが装着されます。
- ツーリング・エリート:シャークグレー機械加工アルミホイール(ブラックラグナット)
- ブラックエディション:ベルリナブラックアルミホイール(ブラックラグナット)
さらに、ルーフレールが全グレードに標準装備となり(EX-Lに追加)、実用性とスタイリングの両面が向上しています。Honda News
インテリア:デジタル化と快適性の大幅向上

デジタルコックピットの標準装備

2026年モデルで最も注目すべき進化が、完全デジタル化されたコックピットです。
- 12.3インチHDタッチスクリーン:従来の7インチまたは9インチから37%大型化
- 10.2インチデジタルインストゥルメントクラスター:従来モデルより43%(3.2インチ)拡大
- 最新HMIソフトウェア:スムーズでラグのない操作性
- Google Built-in:統合されたGoogleサービス
- ワイヤレスApple CarPlay/Android Auto:全グレード標準装備
- 5G Wi-Fi機能:車内での高速インターネット接続
新しいインフォテインメントシステムは、シンプルで直感的なナビゲーション構造を採用。画面左側には、ユーザーが簡単にプログラムできる3つのショートカットが配置されています。

グレード別の内装装備

トレイルスポーツ
- 2列目外側席にヒーター付きシート(新規追加)
- ブラウンレザーにオレンジステッチ(オプション設定)
- トレイルスポーツバッジ付きヘッドレスト
ツーリング
- 360度サラウンドビューカメラ(新規追加)
- プレミアムな素材とトリム
- ブラウンレザーオプション
- ハイコントラストのシートアクセントとドアパネルステッチ
エリート
- ウルトラスエード座面アクセントにダイヤモンドステッチ
- ハイコントラストのドアパネルステッチ
- シートベンチレーション機能
ブラックエディション
- ダイヤモンドキルティングのウルトラスエード座面アクセント
- 最上級のラグジュアリー仕様
静粛性の大幅向上

ホンダは2026年モデルのパイロットで、キャビンの静粛性向上に力を注ぎました。
- セミ強化ドアガラスの採用
- ドアと防音材の追加断熱
- 新型フードインシュレーター
- その他の吸音技術
これらの対策により、主要周波数帯で2〜3dBのノイズ低減を実現。高速道路での巡航がより静かで快適な体験となっています。ツーリングおよびエリートグレードには、さらに密閉型フェンダーライナーが追加され、路面ノイズをさらに低減しています。

パワートレインとドライビングダイナミクス
エンジンスペック(変更なし)
2026年モデルのパイロットは、従来と同じ信頼性の高いパワートレインを搭載しています。
- エンジン:3.5L V型6気筒DOHC自然吸気
- 最高出力:285hp(212kW / 289PS)@6,100rpm
- 最大トルク:262lb-ft(355Nm)@5,000rpm
- トランスミッション:10速オートマチック(パイロット専用チューニング)
- 駆動方式:FF(前輪駆動)/ AWD(四輪駆動)
Honda i-VTM4四輪駆動システム
受賞歴のあるHonda i-VTM4四輪駆動システムは、全グレードで選択可能で、トレイルスポーツ、ツーリング、エリート、ブラックエディションでは標準装備となっています。
このトルクベクタリング機能付きAWDシステムは、前後アクスル間だけでなく、左右の後輪間でもトルクを最適配分。エンジントルクの最大70%をリアアクスルに送り、そのトルクの100%を左右どちらかの後輪に配分できます。
コーナリング時には、外側の後輪により多くのトルクを配分することで、ヨーモーメントを発生させ、より正確なコーナリング、アンダーステアの軽減、操縦性の向上を実現しています。
5つの走行モード
全グレード標準で5つの走行モードを搭載:
- ノーマル:日常走行に最適
- エコン:燃費重視のモード
- スノー:雪道での安定性向上
- スポーツ:ダイナミックな走行性能
- トウ:トレーラー牽引時に最適化
EX-L以上のAWDモデルでは、さらにサンドモードとトレイルモードが追加され、オフロード性能が最適化されます。全グレードにヒルディセントコントロールシステムも標準装備されています。
ステアリングフィールの改良
2026年モデルでは、電動パワーステアリング(EPS)システムが再チューニングされました。
- ステアリングフィールと精度の向上:全走行モードで実現
- スムーズで自然なダイレクト感:ワインディングロードでの自信と安全性をサポート
- オンセンターウェイトの増加:高速道路での安定感とリラックスした走行を実現、ドライバーの操作入力を軽減
トレイルスポーツの本格オフロード性能
パイロット トレイルスポーツは、家族でのアドベンチャーに対応する本格的なオフロード能力を備えたSUVです。
- 専用のラギッドハードウェア
- 頑丈なスチールスキッドプレート:下部を保護
- リフトアップされたオフロードチューン サスペンション:地上高増加、アーティキュレーション向上、オフロード乗り心地改善
- オールテレインタイヤ:泥、砂、岩場、雪での大幅なトラクション向上
- オンロードでの快適性維持:ベストインクラスのハンドリング性能も犠牲にしない
安全装備:Honda Sensing®の進化
2026年モデルのパイロットは、ミッドサイズSUVクラスで最先端の安全性能を誇ります。
標準装備の安全技術
- Honda Sensing®:最新の安全・運転支援技術スイート
- 先進的な衝突安全ボディ構造(ACE™):ホンダ独自の高度互換性設計
- 先進エアバッグ技術:頭部を支え、保護性能を向上
新規追加:ポストコリジョンブレーキシステム(PCB)
2026年モデルすべてに、**ポストコリジョンブレーキシステム(PCB)**が新たに追加されました。これは、最初の衝突後の二次衝突によるダメージと負傷を軽減するためのシステムです。
Honda Sensing®の機能一覧
- 衝突軽減ブレーキシステム(CMBS™):歩行者検知機能付き
- 前方衝突警報
- 路外逸脱抑制機能(RDM):車線逸脱警報(LDW)含む
- 車線維持支援システム(LKAS)
- アダプティブクルーズコントロール(ACC)
グレード構成と価格展望
2026年モデルのホンダ パイロットは、以下の6つのトリムレベルで展開されます。
- スポーツ:エントリーグレード、AWDオプション
- EX-L:中間グレード、AWDオプション
- ツーリング:上級グレード、AWD標準
- トレイルスポーツ:オフロード志向グレード、AWD標準
- エリート:ラグジュアリーグレード、AWD標準
- ブラックエディション:最上級グレード、AWD標準
価格については、発売が近づくにつれて公開される予定です。
ハイブリッドモデルは?将来の展望
多くの消費者が期待するハイブリッドパワートレインですが、2026年モデルのパイロットには残念ながら搭載されていません。
ホンダは北米市場向けに新しいハイブリッドV6エンジンの開発を確認していますが、この改良版パイロットでは引き続き非電動化モデルのみとなります。
現行の3.5L V6エンジンは信頼性が高く、285馬力の十分なパワーを発揮しますが、燃費面では競合のトヨタ ハイランダー ハイブリッドやキア テルライド ハイブリッド、ヒュンダイ パリセード ハイブリッドに後れを取っています。
- 市街地燃費:約19mpg(約8.1km/L)
- 高速道路燃費:約25mpg(約10.6km/L)
YouTubeレビュアーのカーク・クライフェルス氏も動画で指摘しているように、「パイロットとホンダの大型プラットフォーム車両すべてのアキレス腱は燃費」であり、ハイブリッド化は待望されています。現実的には、大型プラットフォーム用ハイブリッドパワートレインの搭載は2〜3年先になると予想されます。
販売動向と市場での位置付け
2024年(10月まで)のパイロット販売台数は約104,000台で、前年同期の115,000台と比較して約9%減少しています。特に2024年10月単月では約9,800台と、前年同月の約12,000台から18%近く減少しています。
一方で、2ローSUVのパスポートは2,000台以上増加しており、ホンダはこの販売バランスに満足していると考えられます。パスポートは、よりスタイリッシュな外観と2列シートの使い勝手の良さで人気を集めています。
パイロットは、ミニバンのオデッセイを避けたい家族向けの実用的な3列シートSUVとして、引き続き重要な役割を果たしています。
競合車種との比較
主要競合モデル
- トヨタ ハイランダー / グランドハイランダー:ハイブリッド設定あり、高燃費
- キア テルライド:デザイン性と価格競争力
- ヒュンダイ パリセード:ラグジュアリー志向、ハイブリッド追加
- フォルクスワーゲン アトラス:欧州テイストの選択肢
- マツダ CX-90:プレミアム志向、直6エンジン
パイロットの強みは、ホンダの信頼性、優れたハンドリング性能、充実した標準装備、そして本格的なオフロード能力を持つトレイルスポーツの設定です。
まとめ:進化を続けるファミリーSUVの決定版
2026年モデルのホンダ パイロットは、現行世代の中期改良モデルとして、多岐にわたる改良が施されました。
主な進化ポイント
✅ より力強く洗練された外観デザイン
✅ 大幅に拡大されたデジタルディスプレイ(37%アップ)
✅ 静粛性の大幅向上(2〜3dBノイズ低減)
✅ 改良されたステアリングフィール
✅ 充実した標準装備(全グレードでパワーテールゲートなど)
✅ 進化した安全装備(ポストコリジョンブレーキ追加)
✅ 魅力的な新色追加
今後の期待
❌ ハイブリッドパワートレインは未搭載(2〜3年後に期待)
⚠️ トレイルスポーツにシートベンチレーション非搭載
⚠️ 燃費面では競合ハイブリッドモデルに劣る
2026年モデルのパイロットは、3列シートが必要で信頼性と走行性能を重視する家族にとって、引き続き魅力的な選択肢です。特にトレイルスポーツグレードは、オンロードの快適性とオフロード性能を高次元で両立した、他にはないキャラクターを持っています。
ハイブリッド化の遅れは残念ですが、現行の3.5L V6エンジンは十分なパワーと信頼性を提供しており、アラバマ州で製造される高品質な作りと相まって、アメリカンファミリーのニーズに応え続けることでしょう。
2025年12月の発売開始が待ち遠しい、進化した2026年モデルのホンダ パイロット。さらなる詳細情報は、発売が近づくにつれて公開される予定です。
参考リンク:

