2025年のジャパンモビリティショー(JMS2025)で、三菱自動車が注目の新型コンセプトカー「MITSUBISHI ELEVANCE Concept(エレバンス コンセプト)」を世界初公開しました。このモデルは次期アウトランダーPHEVの方向性を示唆するSUVとして、自動車ファンの間で大きな話題を呼んでいます。今回は実際に展示車両を詳細にチェックした内容をもとに、このELEVANCE Conceptの魅力や特徴、優れた点と気になる点について徹底的に解説していきます。

ELEVANCE Conceptとは? 名前に込められた意味

「ELEVANCE」が表す次世代のクルマ像
ELEVANCE(エレバンス)という車名は、「Elevate(高める)」と「Advance(前進)」という2つの英単語を組み合わせた造語です。この名前には、お客様の生活を高め、豊かなカーライフを提供するという三菱自動車の強い想いが込められています。
三菱自動車が掲げる「FOREVER ADVENTURE(永遠の冒険)」をテーマに、単なる移動手段を超えた上質な体験を提供することを目指して開発されたコンセプトモデルです。都市から大自然まで、どこへでも快適かつ力強く移動でき、目的地での滞在も含めた旅全体を豊かにする——それがELEVANCE Conceptの目指す世界観といえるでしょう。
エクステリアデザイン 精悍で先進的なスタイリング

進化したダイナミックシールド
ELEVANCE Conceptのフロントマスクは、三菱自動車のアイデンティティである「ダイナミックシールド」を大胆に進化させたデザインが採用されています。
フロントデザインの特徴:
- ボンネットセンターから伸びる力強いキャラクターライン
- 三菱らしい特徴的なLEDヘッドライト配置(上部にLEDライン、サイドにメインヘッドライト)
- ハニカムパターンの開閉式グリル(空力性能を考慮)
- グリル下部の複雑なレイヤー構造で奥行き感を演出
特に、ボンネット中央から一直線に伸びるキャラクターラインは、現行アウトランダーにはなかった新しいデザインアプローチで、よりシャープで精悍な印象を与えます。
筋肉質で力強いサイドビュー

サイドから見たELEVANCE Conceptは、圧倒的な存在感を放ちます。
サイドデザインの見どころ:
- 大径の285/45R22タイヤと迫力あるホイールデザイン
- 張り出した太いフェンダーアーチモール
- SUVらしい力強いサイドステップ形状
- デジタルアウターミラーの採用
- ドア全体がガラス張りの革新的な「カプセルキャビン」構造
中でも注目すべきは、透明なガラスドアと内部のインテリアトリムがフローティングして見える斬新なデザイン。これにより、開放感と外界との一体感を視覚的に表現しています。
先進的なリアデザイン

リアビューも三菱の新しいデザイン言語を感じさせる仕上がりです。
リアデザインの特徴:
- 新型のH字型LEDリアコンビネーションランプ
- 奥行き感のある立体的なテールランプデザイン
- 中央に配置された発光する三菱エンブレム
- 専用トレーラーを牽引できる構造
また、このコンセプトには専用設計のトレーラーハウスが付属しており、目的地でのグランピング体験を可能にする装備も提案されています。トレーラーには太陽光パネルとバッテリーが搭載され、自給自足のアウトドア体験をサポートします。
インテリアデザイン 上質で革新的な室内空間

全面液晶パネルの先進コックピット
ELEVANCE Conceptの室内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのが圧倒的な大画面ディスプレイです。
コックピットの特徴:
- ステアリング奥から助手席側まで続く超ワイドな液晶パネル
- ステアリング中央にも液晶ディスプレイを配置
- 巨大なデジタルインナーミラー(左右のミラー映像も表示)
- 「スケルトンボンネット」機能搭載(フロントカメラで足元の路面を透視表示)
特に「スケルトンボンネット」は、オフロード走行時に非常に有用で、通常は見えない足元の障害物や路面状況を確認できる画期的な機能です。
AI Co-Driver(AIコパイロット)システム

ステアリング中央の液晶ディスプレイには、「AI Co-Driver(AIコパイロット)」と呼ばれるAI搭載システムが表示されます。
AI Co-Driverの機能:
- ドライバーの運転癖や好みを学習
- その日の気分や状況に応じた目的地やルートを提案
- 対話形式でコミュニケーション可能
- ナイト2000の「キット」のようなインターフェース
このシステムは単なるナビゲーションを超え、ドライバーとの対話を通じて最適な冒険を提案してくれる、まさに「相棒」のような存在を目指しています。
上質な素材と広大な空間

内装の質感は、三菱自動車の最近のこだわりが随所に感じられる仕上がりです。
インテリアの特徴:
- レザーで覆われた高品質なダッシュボード
- 間接照明による上質な雰囲気づくり
- フラットなフロア(インホイールモーター採用のメリット)
- 非常に広い足元スペース
- 全面ガラスルーフ(中央に操作系コンソール配置)
現行アウトランダーでも評価の高い内装質感がさらに進化しており、ラグジュアリーSUVとしての品格を感じさせます。
革新的な転換クロスシート
ELEVANCE Conceptの最大の特徴の一つが、1列目シートの革新的な機構です。
シートの特徴:
- 背もたれのみ回転して後ろ向きになる「転換クロスシート」機構
- 2列目シートと対面配置が可能
- 3列シートSUV(6〜7人乗り想定)
- センターコンソールと連続するフローティングデザイン
- ヘッドレストにはヤマハ製スピーカーを内蔵
この機構により、目的地での休憩時や車中泊時に、家族や仲間と対面で会話を楽しむことができます。SUVでは珍しい仕組みで、新しいクルマの使い方を提案しています。
パワートレイン 革新的な4モーターPHEVシステム
クアッドモーター4WD式S-AWC
ELEVANCE Conceptの走行性能を支えるのが、革新的な4モーターシステムです。
パワートレインの構成:
- PHEVシステム(カーボンニュートラル燃料対応)
- フロント:インホイールモーター×2(左右独立制御)
- リア:デュアルモーター+AYC(アクティブヨーコントロール)
- クアッドモーター4WD式S-AWC(Super All Wheel Control)
この構成により、従来のPHEVシステムでは実現できなかった高度な四輪制御が可能になります。
インホイールモーターのメリット
フロントにインホイールモーターを採用したことで、多くのメリットが生まれます。
メリット:
- 左右のトルクを独立して緻密に制御可能
- 真のトルクベクタリング制御を実現
- エンジンルームのスペース効率向上
- フラットな室内フロアを実現
- 優れた操縦安定性と旋回性能
従来は内側タイヤへのブレーキ制御で旋回性能を高めていましたが、このシステムでは左右のトルク配分で積極的に旋回をアシストできるため、より自然で気持ちの良いハンドリングが期待できます。
PHEVの利点
多くのメーカーがBEV(バッテリー電気自動車)に注力する中、三菱自動車は引き続きPHEV(プラグインハイブリッド)にこだわりを見せています。
PHEVの優位性:
- 長距離ドライブでも航続距離の不安がない
- 充電インフラが整っていない地域でも使える
- 日常使いはEVモード、長距離はエンジン併用で柔軟に対応
- 大容量バッテリーによる外部給電機能
特にアウトドアや冒険をテーマにしたELEVANCE Conceptには、PHEVのフレキシビリティが最適といえるでしょう。
ELEVANCE Conceptの優れている点
実際に見て体験した上で、ELEVANCE Conceptの優れた点をまとめます。
1. 革新的なデザインコンセプト
カプセルキャビンと堅牢なボディの組み合わせは、SUVデザインの新しい方向性を示しています。透明性と安全性を両立させたアプローチは、他メーカーにはない独自性があります。
2. 圧倒的な開放感
全面ガラスドアとガラスルーフにより、室内からの視界が極めて良好です。大自然の中でも外界と一体感を感じられる設計は、「冒険」をテーマにしたコンセプトに完璧にマッチしています。
3. 先進的なパワートレイン
4モーター式のPHEVシステムは、走行性能と環境性能の両立を高次元で実現します。特にインホイールモーターによる四輪独立制御は、次世代SUVの可能性を大きく広げる技術です。
4. AI Co-Driverの可能性
単なる音声アシスタントではなく、ドライバーの好みや癖を学習して最適な提案をするAIシステムは、クルマと人との新しい関係性を示唆しています。
5. 上質な内装質感
レザーを多用した高品質な素材選びと、間接照明による雰囲気づくりは、ラグジュアリーSUVとしての品格を十分に感じさせます。近年の三菱車の内装向上傾向がさらに進化しています。
6. 実用性の高い3列シート
大型SUVとしての実用性も確保されており、3列シートで6〜7人乗りを想定しています。さらに転換クロスシート機構により、移動だけでなく目的地での滞在も快適にする工夫があります。
7. アウトドアライフをサポートする装備
専用トレーラーハウスとの組み合わせにより、グランピングなどの上質なアウトドア体験をサポート。太陽光発電とバッテリー搭載で自給自足の旅が可能です。
8. スケルトンボンネット機能
オフロード走行時に足元の路面状況を確認できるスケルトンボンネット機能は、悪路走破性の高い三菱SUVにふさわしい先進装備です。
ELEVANCE Conceptの残念な点・課題
一方で、コンセプトカーならではの課題や実用化に向けての懸念点もあります。
1. 量産化の実現性
現時点では完全なコンセプトモデルであり、特にガラスドア全面や転換クロスシートなどの機構は、量産化にあたって大幅な変更が必要になる可能性があります。
2. ドアの実用性
全面ガラスの観音開きドアは見た目は美しいですが、実用面では以下の課題があります:
- 狭い駐車場での開閉スペース
- ガラス面の強度確保とコスト
- プライバシー保護
- 汚れや傷の目立ちやすさ
3. インホイールモーターのコスト
インホイールモーター技術は非常に先進的ですが、量産車への搭載にはコストや耐久性の課題があります。価格面で競争力を保つのが難しい可能性があります。
4. 車両サイズと重量
大型のSUVで4つのモーターとバッテリーを搭載すると、車重がかなり重くなることが予想されます。これは燃費や運動性能に影響を与える可能性があります。
5. 複雑なメカニズムの信頼性
転換クロスシートや複雑な電動システムは、長期的な信頼性や故障時のメンテナンスコストが懸念されます。
6. AI機能のプライバシー懸念
AI Co-Driverがドライバーの行動を学習するということは、個人情報の収集・管理が必要になります。プライバシー保護の観点からの配慮が求められます。
7. 価格設定の課題
これだけ先進的な技術を搭載すると、販売価格がかなり高額になることが予想されます。アウトランダーPHEVの価格帯を大きく超える可能性があり、市場での受け入れが課題になるでしょう。
8. 充電・給電インフラ
大容量バッテリーを搭載したPHEVの場合、フル充電に時間がかかります。また、トレーラーへの給電システムなど、インフラ面での整備も必要になります。
次期アウトランダーとの関係性
多くの自動車メディアや専門家が、ELEVANCE Conceptは次期アウトランダーPHEVの方向性を示唆していると指摘しています。
共通する要素
デザイン面:
- 進化したダイナミックシールド
- 三菱らしい力強いスタンス
- PHEVパワートレインの継承
技術面:
- S-AWCの進化系
- PHEV技術のさらなる深化
- 3列シートSUVとしての実用性
実際の次期アウトランダーへの採用予測
現実的には、次期アウトランダーには以下のような形で技術が継承されると予想されます:
採用される可能性が高い要素:
- S-AWCの進化版(ただしインホイールモーターではない可能性)
- AI搭載のアシスタントシステム(簡略化版)
- 大画面ディスプレイ
- 高品質な内装素材
- スケルトンボンネット機能(カメラシステム)
- PHEVシステムの改良版
量産化が難しい要素:
- 全面ガラスドア
- 転換クロスシート
- インホイールモーター
- 専用トレーラーハウス
三菱自動車の戦略とELEVANCE Conceptの位置づけ
ELEVANCE Conceptは、三菱自動車の今後の方向性を示す重要なモデルです。
「FOREVER ADVENTURE」の具現化
三菱自動車が掲げる「永遠の冒険」というブランドテーマを、最も明確に表現したコンセプトカーといえます。都市から大自然まで、あらゆる環境での冒険を上質に楽しむ——その世界観を視覚化しています。
電動化とSUVの融合
三菱自動車が強みとするPHEV技術とSUV、そして四輪制御技術を高次元で融合させたモデルであり、同社の技術的アイデンティティを強く打ち出しています。
ラグジュアリー路線への挑戦
近年の内装質感向上の流れをさらに推し進め、ラグジュアリーSUV市場への参入意欲を感じさせるモデルです。単なる実用SUVではなく、上質な体験を提供するプレミアムモデルを目指していることが伝わってきます。
競合他社との比較
ELEVANCE Conceptのコンセプトを、競合する他社のモデルと比較してみましょう。
vs レクサスRX(トヨタ)
レクサスRXは日本を代表するラグジュアリーSUVですが、ELEVANCE Conceptはより冒険志向が強く、PHEVとS-AWCの組み合わせで悪路走破性を重視しています。
vs ランドローバー ディフェンダー
ディフェンダーも冒険をテーマにしたSUVですが、ELEVANCE Conceptはより先進技術(AI、インホイールモーター)を前面に出しており、テクノロジーによる新しい冒険スタイルを提案しています。
vs BMW X5/X7
BMWのSUVラインナップは都市的な洗練さが特徴ですが、ELEVANCE Conceptは大自然との一体感を重視したデザインで差別化を図っています。
まとめ 三菱自動車の未来を占う意欲作
MITSUBISHI ELEVANCE Conceptは、次期アウトランダーの方向性を示唆しつつ、三菱自動車の技術力とデザイン哲学を凝縮したコンセプトカーです。
総合評価:
優れている点:
- 革新的なデザインアプローチ(カプセルキャビン)
- 4モーターPHEVという先進パワートレイン
- AI Co-Driverなどの次世代技術
- 上質な内装と開放的な空間
- 転換クロスシートなどの独創的な機能
- アウトドアライフを支える専用トレーラー
課題・残念な点:
- 量産化の実現性に疑問が残る部分が多い
- コストが高額になる可能性
- 複雑なメカニズムの信頼性への懸念
- 全面ガラスドアなど実用性に課題のあるデザイン
現時点では完全なコンセプトモデルですが、ここに示された技術やデザインの一部は、確実に次期アウトランダーや今後の三菱SUVに反映されていくでしょう。特に、PHEVとS-AWCの進化、AI技術の導入、内装質感の向上といった要素は、近い将来実現される可能性が高いと考えられます。
ジャパンモビリティショー2025で多くの来場者の注目を集めたELEVANCE Conceptは、「冒険」と「上質さ」を両立させるという難しい課題に対する三菱自動車なりの解答です。今後、このコンセプトがどのように量産モデルに落とし込まれていくのか、大いに期待が持てる意欲作といえるでしょう。
三菱自動車ファン、そしてSUV好きにとって、ELEVANCE Conceptは未来への期待を膨らませる魅力的なモデルです。次期アウトランダーの登場が、今から楽しみになる一台でした。

