2025年10月29日、マツダはジャパンモビリティショー2025のプレスカンファレンスにて、次世代を担う革新的なコンセプトカー「MAZDA VISION X-COUPE(マツダ ビジョン クロスクーペ)」を世界初公開しました。このモデルは、マツダが掲げる2035年のビジョン「走る歓びは、地球を笑顔にする」を具現化した、同社の技術力と環境への取り組みを象徴する一台となっています。
MAZDA VISION X-COUPEとは?新しいクロスオーバークーペの全貌

魂動デザインの進化形を纏う美しいフォルム

MAZDA VISION X-COUPEは、マツダが長年追求してきた「魂動(こどう)」デザイン哲学をさらに進化させたクロスオーバークーペです。流麗でありながら力強いボディラインは、かつての名車ユーノス・コスモを彷彿とさせる優雅さを持ちながら、現代的な都会派SUVの実用性も兼ね備えています。
主要ボディスペック:
- 全長: 5,050mm
- 全幅: 1,995mm
- 全高: 1,480mm
- ホイールベース: 3,080mm
このサイズ感から、MAZDA VISION X-COUPEは現行のMAZDA6に相当するフラッグシップセグメントに位置づけられると考えられます。堂々としたボディサイズでありながら、クーペスタイルならではの低い全高(1,480mm)が、スポーティかつエレガントなシルエットを生み出しています。

実用性を両立した4ドアレイアウト

美しいクーペスタイルでありながら、4ドア構成を採用することで実用性も確保。この設計思想は、トヨタのクラウンクロスオーバーや、メルセデス・ベンツのCLSクラスのような、クーペとセダンの良いところを融合したモデルを目指していることが伺えます。
フロント・リアフェンダーモールにはグロスブラック塗装が施され、クロスオーバーSUVとしての存在感を演出。足元にはブリヂストン製の専用タイヤを装着し、走行性能と快適性の両立を図っています。
ロータリーエンジン復活!革新的なパワートレインシステム

2ローター・ロータリーターボエンジン×PHEVの組み合わせ
MAZDA VISION X-COUPEの最大の注目ポイントは、マツダの伝統技術であるロータリーエンジンの復活です。本モデルには2ローター・ロータリーターボエンジンが搭載され、これに電動モーターとバッテリーを組み合わせたプラグインハイブリッド(PHEV)システムが採用されています。
パワートレイン詳細:
- システム総出力: 510馬力
- EV航続距離(モーターのみ): 160km
- 総航続距離(エンジン併用時): 800km
- 駆動方式: 後輪駆動(FR)ベース(AWDの可能性大)
510馬力という圧倒的なパワーは、ポルシェ・パナメーラやBMW M5といったプレミアムパフォーマンスセダンに匹敵するスペックです。さらに、モーターのみで160kmという実用的なEV走行が可能な点も、日常使いでの利便性を高めています。
ロータリーエンジンがPHEVに最適な理由
ロータリーエンジンは、そのコンパクトな設計と滑らかな回転特性から、PHEVシステムの発電用エンジンとして理想的です。従来のピストンエンジンと比べて振動が少なく、軽量コンパクトであるため、バッテリーとモーターを搭載するPHEV車のパッケージングに優れています。
マツダは既にMX-30 R-EVでロータリーエンジンをレンジエクステンダーとして採用していますが、VISION X-COUPEではさらに大型の2ローターを採用し、より高性能な走りと実用性を両立させています。
走るほどCO2削減!マツダ独自の環境技術
カーボンニュートラル燃料×CO2回収技術の革新
MAZDA VISION X-COUPEのもう一つの革新は、環境への取り組みです。本モデルには微細藻類由来のカーボンニュートラル燃料と、マツダ独自開発の「Mazda Mobile Carbon Capture(マツダ モバイル カーボン キャプチャー)」技術が組み合わされています。
この画期的なシステムにより、走行すればするほど大気中のCO2を削減できるという、これまでにない環境性能を実現。従来のEVやHVが「CO2排出をゼロまたは低減する」ことを目指すのに対し、VISION X-COUPEは「走行することでCO2を削減する」という、一歩先を行くアプローチを提示しています。
マツダが目指すマルチソリューション戦略
マツダは「一つの技術だけがカーボンニュートラルの解ではない」という考え方のもと、BEV(バッテリー電気自動車)だけでなく、PHEV、HV、さらにはカーボンニュートラル燃料を活用した内燃機関など、多様なソリューションを提供する戦略を取っています。
VISION X-COUPEはその象徴的なモデルであり、ロータリーエンジンという伝統技術と最新の電動化・環境技術を融合させることで、マツダならではの「走る歓び」と「地球環境への配慮」の両立を目指しています。
インテリアデザイン|レトロとモダンの融合
エレガントなグリーン系アルカンターラ内装

MAZDA VISION X-COUPEのインテリアは、シンプルでありながらエレガントな空間が広がります。内装カラーには珍しいグリーン系のアルカンターラのような素材が採用され、クラシックかつ洗練された雰囲気を演出しています。
インテリアの特徴:
- メーター: レトロ感のある円形デザイン(メーターリング内はフル液晶)
- ステアリング: 懐かしさを感じさせる3本スポークデザイン
- インパネ: 横長の液晶パネルを配置
- シート: 2列4人乗り(後席は左右独立タイプ)
2+2レイアウトによる上質な空間

一般的な5人乗りではなく、2列4人乗りのレイアウトを採用。後席は左右独立したセパレートシートとなっており、ラグジュアリークーペらしい上質な空間を提供します。このレイアウトは、ポルシェ・パナメーラやアストンマーティン・ラピードといった高級スポーツセダンに通じる思想です。
メーターデザインは一見アナログに見えますが、実際にはメーターリング内がフル液晶という、クラシックとモダンを融合させたユニークな設計。ドライバーの視認性と美しさを両立させた、マツダのこだわりが感じられます。
MAZDA6の後継モデルか?市販化の可能性を考察
フラッグシップセダン復活への期待
現行のMAZDA6は2018年のマイナーチェンジ以降、大きな変更がなく、後継モデルの開発が注目されてきました。VISION X-COUPEのボディサイズやコンセプトから、次期MAZDA6の方向性を示唆するモデルである可能性が高いと考えられます。
市販化のポイント:
- FRベースのプラットフォーム採用
- ロータリーPHEVという独自のパワートレイン
- クロスオーバークーペという新カテゴリーへの挑戦
- 510馬力というプレミアムセグメントの性能
実現への課題とタイムライン
ただし、現時点でマツダは具体的な量産化・市販化スケジュールを明らかにしていません。ロータリーエンジンの生産体制、CO2回収技術の実用化、そして価格設定など、市販化に向けてはいくつかの課題が残されています。
しかし、マツダが「2035年の走る歓び」という明確なビジョンを掲げていることから、2030年前後には何らかの形で市販化される可能性は十分にあると考えられます。
ジャパンモビリティショー2025での反響
VISION X-COMPACTとの2本立て出展
ジャパンモビリティショー2025のマツダブースでは、VISION X-COUPEに加えて、もう一台のビジョンモデル「MAZDA VISION X-COMPACT(マツダ ビジョン クロスコンパクト)」も世界初公開されました。
VISION X-COMPACTは、MAZDA2の後継を想起させるコンパクトモデルで、共感型AIを活用した次世代のスマートモビリティを提案。フラッグシップのVISION X-COUPEと、コンパクトなVISION X-COMPACTという2つの方向性を示すことで、マツダの技術力と未来ビジョンの幅広さをアピールしています。
新型CX-5も同時展示
さらに、フルモデルチェンジを果たした新型MAZDA CX-5(欧州仕様)も世界初披露され、マツダブースは多くの来場者で賑わいを見せました。既存モデルの進化と、未来を見据えたビジョンモデルを同時に展示することで、マツダの「今」と「未来」を効果的に伝える構成となっています。
マツダ社長のメッセージ|走る歓びと地球の未来
マツダの代表取締役社長兼CEOである毛籠勝弘(もろ・まさひろ)氏は、ジャパンモビリティショー2025のプレスカンファレンスにて、次のようにコメントしています。
「『走る歓びは、地球を笑顔にする』という言葉はマツダの原点であり、今後の挑戦のコアでもあります。カーボンニュートラルという人類共通の使命のもと、『走る歓び』が、社会と地球の未来をよくする力になると信じ、『クルマが好き』『いつまでも運転をしていたい』という想いを叶え続けます」
この言葉には、単なる移動手段としてではなく、人々に感動と喜びを提供し続けるという、マツダの強い信念が込められています。VISION X-COUPEは、まさにその理念を体現したモデルと言えるでしょう。
まとめ|マツダが描く次世代モビリティの姿
MAZDA VISION X-COUPEは、以下の点で自動車業界に新しい可能性を示しています。
技術的革新:
- ロータリーエンジンの復活とPHEVへの最適化
- 510馬力という圧倒的なパフォーマンス
- 走るほどCO2を削減する画期的な環境技術
デザイン哲学:
- 魂動デザインのさらなる進化
- クーペの美しさと実用性の両立
- レトロとモダンを融合した上質なインテリア
マツダの姿勢:
- 一つの解にこだわらないマルチソリューション戦略
- 走る歓びと環境性能の両立
- 人とクルマの絆を大切にする「ひと中心」の価値観
MAZDA VISION X-COUPEは単なるコンセプトカーではなく、マツダが目指す2035年の姿を具体的に示した重要なモデルです。ロータリーエンジンという伝統技術と最新の電動化・環境技術を融合させることで、「走る歓び」と「地球環境への配慮」を両立させる──そんなマツダならではの未来が、このモデルには詰まっています。
市販化の時期は未定ですが、このビジョンが現実のものとなる日が待ち遠しい、そんな期待を抱かせるモデルとなっています。
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