2025年10月25日、トヨタ自動車が米国で生産した車両を日本に「逆輸入」する方針を米国側へ伝える方向で調整していることが明らかになりました。共同通信
これは米国の対日貿易赤字削減という政治的背景がありますが、多くの自動車ファンにとっては「ついにハイランダーが日本で正規販売されるのでは?」という期待が高まる材料となっています。
トヨタの佐藤恒治社長も「一つのアイデアとして検討は進めている」と発言しており、27日からのトランプ米大統領来日に合わせて豊田章男会長が具体的な方針を伝達する見通しです。
トヨタの本気が試される時 - ハイランダー日本上陸への期待高まる
ハイランダーとは? - 日本名「クルーガー」の進化系


トヨタ・ハイランダーは2001年に登場した3列シートミディアムSUVで、初代は日本でも「クルーガー」として販売されていました。現在は北米、欧州、中国で高い人気を誇り、特に北米では2025年上半期のSUV販売台数でTOP10入りを果たすほどの実力車です。
現行4代目ハイランダーの特徴


2019年にフルモデルチェンジした4代目ハイランダーは、RAV4やハリアーと同じGA-Kプラットフォームを採用しながら、ひと回り大きなボディサイズを実現しています。
主要スペック:
- 全長:4,950mm〜5,116mm(グランドハイランダー)
- 全幅:1,930mm〜1,989mm
- 全高:1,730mm〜1,781mm
- ホイールベース:約2,949mm
- 乗車定員:7〜8人

ランドクルーザー300(全長4,975mm)とほぼ同等の全長ながら、全幅は60mm狭く、全高は約200mm低いため、日本の駐車場環境にも対応しやすい絶妙なサイズ感となっています。






2026年モデルの最新情報 - 価格高騰も装備充実
北米仕様の価格動向
2026年モデルから大きな変更がありました。エントリーグレードのLE廃止と全車AWD(四輪駆動)標準化により、価格は約5,000ドル(約76万円)上昇し、45,270ドル(約688万円)からのスタートとなりました。
興味深いことに、これによりハイランダーは兄弟車のグランドハイランダー(41,360ドル〜)よりも高額になるという逆転現象が発生しています。
2026年モデル価格(北米):
- XLE AWD:45,270ドル(約688万円)
- XSE AWD:48,000ドル前後(約730万円)
- Limited AWD:51,000ドル前後(約775万円)
- Platinum AWD:54,675ドル(約831万円)
ハイブリッドモデルは約44,210ドル(約673万円)からとなります。
中国仕様の進化 - 15.6インチ巨大ディスプレイ搭載
2026年の中国仕様(GAC トヨタ)では、大幅な内装アップデートが実施されました。最大の注目点は15.6インチの超大型タッチスクリーンディスプレイの採用です。従来の12.3インチから大幅にサイズアップし、最新のインフォテインメントシステムを搭載しています。

中国仕様の特徴:
- 15.6インチタッチディスプレイ
- 12.3インチデジタルメーター
- 10インチHUD(ヘッドアップディスプレイ)
- 50W高速ワイヤレス充電
- JBL 11スピーカーシステム
- 5人/7人乗り選択可能
パワートレインは2.0Lターボ(248PS)と2.5Lハイブリッド(246PS)の2種類で、価格は249,800〜325,800元(約550万〜720万円)となっています。

グランドハイランダーとの違い - どちらを選ぶべきか
2023年に追加された「グランドハイランダー」は、ハイランダーの派生車種として登場しました。主な違いは以下の通りです。

サイズ比較:
| 項目 | ハイランダー | グランドハイランダー |
|---|---|---|
| 全長 | 4,950mm | 5,116mm |
| 全幅 | 1,930mm | 1,989mm |
| 全高 | 1,730mm | 1,781mm |
| 乗車定員 | 7名 | 8名(標準) |
| 価格帯 | 45,270ドル〜 | 41,360ドル〜 |
グランドハイランダーは3列目の居住性を大幅に向上させ、大人が快適に座れる空間を確保しています。垂直に近いテールゲートデザインにより、荷室容量も拡大されました。

パワートレインの詳細 - ハイブリッドMAXが最強
2.4L ターボガソリンエンジン

- 最高出力:265PS(198kW)
- 最大トルク:420Nm(310lb-ft)
- トランスミッション:8速AT
- 燃費:EPA複合約10.2km/L
- 牽引能力:最大2,268kg(5,000ポンド)
2.5L ハイブリッドシステム
レクサスES、クラウン、RAV4と共通の「A25A-FXS」エンジンベースのトヨタハイブリッドシステムを搭載。
- システム出力:243PS(181kW)
- バッテリー:6.5Ahニッケル水素電池
- 駆動方式:AWD-i(E-Four相当)
- 燃費:EPA複合約14.9km/L(35mpg)
- 0-96km/h加速:8.1秒
ハイブリッドMAX(グランドハイランダーのみ)
- システム出力:362PS
- 最大トルク:542Nm(400lb-ft)
- 0-96km/h加速:6.3秒
- 駆動方式:AWD専用
- トヨタ史上最もパワフルなミドルサイズSUV
ハイブリッドMAXは2.4Lターボエンジンにモーターを組み合わせた高性能仕様で、「鬼加速」と評されるほどの俊敏な走りを実現しています。
欧州仕様の魅力 - 右ハンドル設定あり!
日本での並行輸入を考える場合、注目すべきは欧州仕様、特にイギリス仕様です。英国仕様は右ハンドルのため、日本でも違和感なく運転できます。
英国仕様の特徴
グレード構成:
- EXCEL(標準グレード)
- 全席レザーシート
- JBL 11スピーカーシステム
- 8インチマルチメディアシステム
- 価格:約52,590ポンド(約975万円)
- EXCEL PREMIUM(上級グレード)
- ベンチレーションシート(前席)
- 液晶バックミラー
- パノラミックビューモニター
- パワーバックドア
- 専用10スポークアルミホイール
欧州仕様は全車ハイブリッド×AWDとなっており、2.5Lハイブリッドのみのラインナップです。燃費はWLTPモードで16.7〜16.9km/L程度と、2トン超の4WD SUVとしては優秀な数値を記録しています。
安全装備 - Toyota Safety Sense 標準装備
最新のToyota Safety Sense 3.0(北米)または同等機能を全車標準装備しています。
主な安全機能:
- プリクラッシュセーフティ(衝突回避支援・自動ブレーキ)
- レーンディパーチャーアラート(車線逸脱警報)
- アダプティブクルーズコントロール(全車速追従)
- レーントレーシングアシスト(車線維持支援)
- ブラインドスポットモニター(後側方車両検知)
- リアクロストラフィックアラート
- 歩行者・自転車検知(夜間対応)
- 7つのエアバッグ
上級グレードでは渋滞時のハンズフリー運転を支援する機能も利用可能です。
内装の質感 - アルファード級の高級感

「ハリアー以上ランクル未満のクラウンSUV」という評価が与えられており、内装の質感は非常に高いレベルにあります。




インテリアの特徴:
- RAV4と似たレイアウトだが質感は上位
- ソフトパッド多用の上質な仕上げ
- ウッド調トリム(上級グレード)
- 12.3インチデジタルメーター(グレードによる)
- 10インチHUD(最上級グレード)
- 3ゾーンオートエアコン
- 2列目USB充電ポート×2
XSEスポーツグレードでは、フレアレッドと呼ばれる鮮烈な赤色のシートを採用し、スポーティな印象を強調しています。
3列シートの実用性 - CX-8とガチンコ勝負
ハイランダーの3列シートは、実用性でライバルのマツダCX-8を上回るとの評価を得ています。
シート配置:

- 2列目:3人掛けまたはキャプテンシート
- 3列目:3人掛け(2-3-2で合計7人/8人乗り)
- 2列目スライド量:30mm増加(4代目)

3列目シートは大人が座れるサイズを確保し、背もたれのしっかりした作りが特徴です。2列目を多少前にスライドさせれば、3列目でも膝前に拳1.5個分程度のスペースが確保できます。
ラゲッジスペース:
- 3列使用時:約500L
- 2列使用時:約1,200L超
- トノカバー床下収納機能あり
- 3列目電動格納(グレードによる)
「3列目を使わない時のトノカバー収納はランクルより優れている」との指摘もあり、実用性の高さが評価されています。

競合車種との比較
国産SUVとの比較
| 車種 | 全長 | 全幅 | 全高 | 乗車定員 | 価格帯 |
|---|---|---|---|---|---|
| ハイランダー | 4,950mm | 1,930mm | 1,730mm | 7〜8名 | 688万円〜 |
| アルファード | 5,010mm | 1,850mm | 1,950mm | 7〜8名 | 540万円〜 |
| CX-8 | 4,925mm | 1,845mm | 1,730mm | 6〜7名 | 299万円〜 |
| RAV4 | 4,600mm | 1,855mm | 1,685mm | 5名 | 293万円〜 |
| ハリアー | 4,740mm | 1,855mm | 1,660mm | 5名 | 312万円〜 |
ハイランダーは全幅が広いため、日本の狭い駐車場では注意が必要ですが、その分室内空間は圧倒的に広く、「RAV4やハリアーじゃ物足りない」というユーザーに最適です。
海外ライバルとの比較
- 日産パスファインダー:同クラスの3列SUV、V6エンジン搭載
- ホンダ・パイロット:北米で人気の3列SUV
- 現代パリセード:韓国メーカーの大型3列SUV
燃費性能ではハイブリッド搭載のハイランダーが優位に立ちますが、価格面では他メーカーも競争力があります。
日本発売の可能性と課題
逆輸入の現状
現在、ハイランダーを日本で乗るには並行輸入(逆輸入)しかありません。並行輸入専門業者を通じて購入する場合、以下のコストが発生します。
並行輸入時の総費用例(英国仕様EXCEL PREMIUM):
- 現地車両価格:52,590ポンド(約976万円)
- 輸送費・諸経費:約100〜150万円
- 登録費用・整備費:約50万円
- 総額:約1,100万円〜1,200万円
並行輸入のメリット:
- 早期入手可能
- 右ハンドル欧州仕様が選べる
- 希少性が高い
並行輸入のデメリット:
- 正規保証が限定的
- メンテナンス・部品供給に不安
- リセールバリューが不透明
- 総費用が高額
正規販売の障壁
日本での正規販売を実現するには、以下の課題をクリアする必要があります。
- 型式認証と安全基準
- 日本の保安基準への適合
- 衝突試験の実施
- 排ガス規制のクリア
- 市場ポジショニング
- アルファードとの棲み分け
- ランドクルーザーとの差別化
- 適正価格の設定
- 生産・供給体制
- 右ハンドル仕様の生産
- 部品供給網の整備
- アフターサービス体制の構築
- 販売チャネル
- トヨタ店での取り扱い
- 専用ディーラーの設置
2026年発売の可能性は?
今回の「逆輸入検討」発表は、政治的な背景が強いものの、ハイランダー日本導入の追い風となる可能性があります。
発売が実現しやすいシナリオ:
- 米国生産車の逆輸入という形での限定導入
- 左ハンドル仕様での少量販売
- 特定ディーラーでの取り扱い
- 段階的な右ハンドル化
予想価格帯(正規導入時):
- ベースグレード:650万円〜
- ハイブリッド:750万円〜
- 上級グレード:850万円〜
アルファードが540万円〜、ランドクルーザーが700万円〜という価格設定を考えると、ハイランダーは700万円前後が妥当なラインと予想されます。
ユーザーの声 - SNSでの反応
期待の声:
- 「TXじゃなくてグランドハイランダーでもいいから日本に入れて欲しい」
- 「RAV4やハリアーじゃ物足りない人には需要ありそう」
- 「アルファードは満席で狭い。もっと大きなSUVが欲しい」
- 「ハイブリッドマックス速すぎ。鬼加速」
懸念の声:
- 「1.9m超の全幅は日本では厳しい」
- 「駐車場に入るか心配」
- 「価格が高すぎないか」
- 「メンテナンスはどうなる?」
総じて、商品力の高さは認められている一方、サイズと価格に対する懸念も存在します。
維持費のシミュレーション
ハイランダーを日本で所有した場合の年間維持費を試算します。
年間維持費(ハイブリッドモデル・年間走行10,000km):
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 自動車税(2.5L) | 約66,500円 |
| 自動車保険 | 約80,000〜120,000円 |
| 車検・メンテナンス | 約40,000〜60,000円 |
| 燃料費(15km/L・ハイオク190円) | 約127,000円 |
| 年間合計 | 約31万円〜37万円 |
ガソリンモデル(燃費11km/L)の場合、燃料費は約173,000円となり、年間維持費は約36万円〜42万円となります。
大型SUVとしては妥当な水準ですが、ハイブリッドモデルの方が年間約5万円のランニングコスト削減が期待できます。
専門家の評価
自動車ジャーナリストや業界関係者からは、以下のような評価が寄せられています。
高評価ポイント:
- プラットフォームの完成度が高い
- ハイブリッドの燃費性能が優秀
- 3列シートの実用性が高い
- 内外装の質感が価格以上
- 走行性能のバランスが良い
改善が望まれる点:
- 日本市場向けの右ハンドル化
- 全幅1.9m超は日本では扱いにくい
- 価格競争力の向上
- アフターサービス体制の整備
まとめ - ハイランダー日本導入への期待
トヨタ・ハイランダーは、「ハリアー以上、ランクル未満」という絶妙なポジショニングを持つ魅力的な3列SUVです。2026年の新型は価格上昇という課題はあるものの、装備の充実度や走行性能の高さで十分に対応できるレベルにあります。
今回の「逆輸入検討」という発表は、政治的な文脈が強いものの、日本市場への正規導入に向けた第一歩となる可能性を秘めています。トヨタが本気で日本導入を検討するなら、以下の条件が重要となるでしょう。
成功のための条件:
- 右ハンドル仕様の早期投入
- 700万円前後の適正価格設定
- 充実したアフターサービス体制
- ハイブリッドモデル中心のラインナップ
- アルファード・ランクルとの明確な差別化
「日本で売ってほしい」「これなら買う」という声が多数上がる中、トヨタがどのような判断を下すのか、2026年はハイランダー日本導入の正念場となりそうです。

