フェラーリが2025年9月9日(現地時間)に世界初披露した「849 Testarossa」は、1980年代から1990年代にかけて一世を風靡した伝説的なスーパーカー「テスタロッサ」の名を冠した最新のプラグインハイブリッド・フラッグシップモデルです。この新型モデルは、SF90 Stradaleの後継車として位置づけられ、フェラーリの70年にわたる歴史の中でも特に象徴的な名前を受け継いでいます。
パワートレインと性能:1,035馬力のハイブリッドシステム
V8ツインターボエンジンの進化
新型849 Testarossaの心臓部には、大幅にアップグレードされたV型8気筒ツインターボエンジンがミッドリアに搭載されています。このエンジン単体で830CV(819馬力)を発生し、従来のSF90 Stradaleから50CV向上を実現しました。
主な改良点:
- 新設計のシリンダーヘッド
- 改良されたエキゾーストマニホールド
- フェラーリ史上最大のターボチャージャーを搭載
3つの電気モーターによるハイブリッドシステム
完全なハイブリッドシステムは、V8エンジンと3つの電気モーターを組み合わせて、合計1,035馬力(772kW)の出力を実現しています。
電気モーター配置:
- フロントアクスル:2つのモーター(トルクベクタリング機能付き)
- エンジンとギアボックス間:1つのモーター
フロントの2つのモーターは時速130mph(約209km/h)まで動作し、リアのモーターはそれ以上の速度でも全力を発揮します。7.45kWhのバッテリーパックにより、EVモードでは最大25km(15.5マイル)の走行が可能で、最高速度は時速80mph(約129km/h)に制限されます。
驚異的な加速性能
クーペモデルの性能数値:
- 0-100km/h加速:2.2秒
- 0-200km/h加速:6.3秒
- 最高速度:330km/h以上
スパイダーモデルは重量増加により若干パフォーマンスが劣りますが、それでも驚異的な性能を誇ります。
エアロダイナミクスとハンドリング技術
アクティブ・エアロダイナミクス
849 Testarossaは、レーシング界で培われた最新のエアロダイナミクス技術を採用しています。時速250km/hで415kg(915ポンド)のダウンフォースを発生し、優れた高速安定性を実現します。
主要な空力装備:
- 再設計されたアクティブ・スポイラー
- レース由来の新エアロソリューション
- 統合されたサイドインテーク(ドアに一体化)
先進的な電子制御システム
新技術「FIVE」の導入:
- Ferrari Integrated Vehicle Estimator(フェラーリ・インテグレーテッド・ビークル・エスティメーター)
- 新しい予測制御システム
- 改良されたABS Evo
- フェラーリラインアップ中最も先進的な電子制御
バリエーションとモデル展開
849 Testarossa Spider
スパイダーモデルでは、リトラクタブル・ハードトップがわずか14秒で開閉可能です。これにより、驚異的なパフォーミャンスをオープンエアでも楽しむことができます。
849 Testarossa Assetto Fiorano
最上級トリムのAssetto Fioranoパッケージでは:
- 30kg(66ポンド)の軽量化
- チタンやカーボンファイバーなど軽量素材の採用
- 固定式Multimaticダンパー
- ツインウィングによるリアダウンフォースの3倍増
- ミシュランCup R2タイヤの選択可能
デザインと内装
エクステリアデザイン
フラヴィオ・マンツォーニが率いるフェラーリ・スタイリングセンターは、1970年代のスポーツプロトタイプと航空機からインスピレーションを得た鋭い幾何学的ラインを採用しました。
デザインの特徴:
- 512Sインスパイアの「ダブルテール」デザイン
- 1980年代フェラーリの要素を取り入れたノーズデザイン
- ヘッドライトを繋ぐブリッジライク水平デザイン
- キャブフォワードスタンス
インテリア
先進的なキャビン設計:
- F80インスパイアのギアセレクター
- 物理的なコントロール重視のステアリングホイール
- ドライバーと乗客を分けるセンターセイル
- デジタルスクリーンによる情報表示
- コンフォートシートまたはレーシングシートの選択可能
新色とカスタマイゼーション
専用カラー
新色の導入:
- Rosso Fiammante:マットRosso Corsaにメタリックフレークを加えた特別色
- Giallo Ambra:天然琥珀の豊かな色合いを再現
インテリア素材
新しいアルカンターラトリム:
- Giallo Siena:Giallo Ambraと調和するよう設計された内装色
「テスタロッサ」の名前の由来と歴史
「テスタロッサ(Testarossa)」の名前は、実は1980年代の有名なモデルよりもはるかに古い歴史を持ちます。1950年代のフェラーリレーシングカーは、赤いバルブカバーから「テスタロッサ(赤い頭)」と呼ばれていました。
フェラーリのチーフマーケティング・商業担当責任者エンリコ・ガリエラ氏は「我々は過去のデザインからインスピレーションを得ているのではなく、単に過去を振り返りたいわけではない。テスタロッサの名前は、もともと同レンジで最もパワフルなモデルのエンジンカバーに由来している」と説明しています。
市場展開と価格
新型849 Testarossaの価格は未発表ですが、SF90 Stradaleの約47万ドル(約7,000万円)を上回ると予想されます。クーペとスパイダー両モデルのデリバリーは2025年から開始予定です。
まとめ:フェラーリの新時代を象徴するハイブリッドフラッグシップ
849 Testarossaは、フェラーリが伝統的なV8エンジンと最新のハイブリッド技術を見事に融合させた傑作です。1,035馬力のパワー、最先端のエアロダイナミクス、そして洗練されたデザインにより、スーパーカーの新基準を打ち立てています。
この新型モデルは、フェラーリの豊かな歴史を尊重しながらも、電動化時代における同社の技術革新と設計哲学を体現しています。SF90 Stradaleからの進化は単なるマイナーチェンジではなく、フェラーリが描く未来のスーパーカーの姿そのものと言えるでしょう。
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