トヨタが2025年9月12日に発表し、10月1日から発売する「GRヤリス エアロパフォーマンスパッケージ」は、WRC(世界ラリー選手権)で培った技術を惜しみなく投入したハイパフォーマンスモデルです。モータースポーツの現場で実証された6つの専用アイテムにより、富士スピードウェイでのラップタイムを約1秒短縮という驚異的な性能向上を実現しています。
GRヤリス「25式」最新モデル概要
呼称整理で分かりやすく
これまで「進化型」と呼ばれていたGRヤリスですが、2025年モデルから呼称を整理:
- 20式:2020年デビュー当初のモデル
- 24式:2024年の改良モデル(従来の進化型)
- 25式:2025年の最新改良モデル
この呼称変更により、まるで戦車のような印象を与えますが、スーパー耐久、全日本ラリー、ニュルブルクリンク24時間、WRCに参戦する「戦うクルマ」として自然な流れと言えるでしょう。
エアロパフォーマンスパッケージの全貌
価格設定とグレード構成
RZ"High performance"+Aero performance package
- 8速AT:582万5000円
- 6速MT:547万5000円
RC+Aero performance package
- 8速AT:440万5000円
- 6速MT:405万5000円
ベースモデルから約50万円のプレミアムですが、その価値は十分に実感できる性能向上を実現しています。
6つの専用アイテム詳細解説
1. ダクト付きアルミフード
- 全日本ラリー選手権で先行開発
- GRMNヤリス採用のカーボン製フードと同形状
- 高速走行中にエンジンルーム内の熱をダクトから放出
- 冷却効果を大幅に向上
2. フロントリップスポイラー
- スーパー耐久シリーズで学んだ空力バランスを実現
- プロドライバー大嶋和也選手のフィードバックにより追加採用
- フロントリフト発生を抑制し、車両全体のリフトバランスを向上
3. フェンダーダクト
- ホイールハウス内の溜まった空気を後方へ放出
- ノーズダイブ時のステアリングフィール向上
- コーナー入口での操縦安定性を大幅改善
4. 燃料タンクアンダーカバー
- スーパー耐久参戦車両のアイデアを採用
- ボディ下部の空気流れを最適化
- 空力性能向上によりCd値を改善
5. 可変式リヤウイング
- 3段階の角度調整が可能
- 高速域での操縦安定性に寄与
- ブレーキング時のスネーキング現象を抑制
- サーキット走行時の設定変更に対応
6. リヤバンパーダクト
- パラシュート効果の抑制によりCd値を低減
- スーパー耐久でのリヤバンパー脱落を起点に開発
- モータースポーツ特有の厳しい環境に対応
試乗インプレッション - 袖ケ浦フォレストレースウェイでの実証
「25式」標準仕様の進化
袖ケ浦フォレストレースウェイでの試乗により、「25式」は質感が大幅に向上していることが判明しました。一般公道700kmの走行テストでも、以下の改善点が確認されています:
- 車両との一体感向上
- タイヤの接地性改善
- 路面凹凸への対応力強化
- ロングドライブでの疲労軽減
シャシー改良のポイント
- リアサスペンションメンバー×ボディ締結ボルト頭部サイズ拡幅
- フロントロアアーム×ロアボールジョイントボルトフランジのリブ形状追加
- リアショックアブソーバー×ボディ締結ボルトフランジ厚み向上
- ショックアブソーバーの減衰力最適化
- EPSプログラム変更によるリニア感追求
GR-DAT(8速AT)の進化
Direct Automatic Transmission(GR-DAT)は以下の改良により、より洗練された操作感を実現:
- Dレンジ走行中のダウンシフト可能回転数拡大
- パドル操作変速時間短縮
- レブ当て作動時間拡大
- 上り勾配対応シフトアップタイミング最適化
特に「お仕置き制御」として悪名高かったトルク制限が大幅に改善され、サーキット走行でのパドルシフト使用がより実用的になりました。
エアロパフォーマンスパッケージ装着車のインプレッション
専用EPSプログラムが織り込まれたエアロパフォーマンスパッケージ装着車は、「レベルが高い!」という評価を得ています:
走行性能の変化
- ステアリングの確実な手応え
- 4輪接地感の大幅向上
- フロント接地感の劇的改善
- かつての「20式」のような感覚の復活
- リアの挙動が穏やかで予測しやすい
試乗レポートによると、「25式を選択してサーキットで楽しもうというのであれば、もれなくエアロパフォーマンスパッケージを付けることを忘れずに!」と強く推奨されています。
技術的進歩とモータースポーツからのフィードバック
プロドライバーとの共同開発
大嶋和也選手との共同開発により、富士スピードウェイでの課題を解決:
- TGRコーナー(第1コーナー)でのブレーキング時挙動改善
- グリーンファイト100Rコーナーでのアンダーステア解消
- 操舵応答性の向上
モータースポーツ現場からの知見活用
- スーパー耐久シリーズ参戦車両からの空力改善アイデア
- 全日本ラリー選手権での冷却性能検証
- WRC参戦マシンの技術転用
これらの実戦データが市販車に直接反映されることで、他メーカーでは実現困難なレベルの性能向上を達成しています。
競合車種との比較優位性
独自の4WDシステム「GR-FOUR」
- 前後駆動配分を0:100~100:0で可変
- 前後デフにトルセンLSD装備
- スピンターン対応機構搭載
エンジン性能
直列3気筒1.6Lガソリンターボ
- 最高出力:304ps
- 最大トルク:40.8kgm
- 6速MT「iMT」または8速AT「GR-DAT」を選択可能
軽量化技術
- カーボンファイバー製ルーフ
- アルミ製ボンネット・ドア
- 最適化された前後重量配分
購入検討時のポイント
おすすめグレード構成
サーキット走行を視野に入れる場合:
RZ"High performance"+Aero performance package
コストパフォーマンス重視の場合:
RC+Aero performance package
注意すべき要素
- エアロパッケージ非装着車との性能差は明確
- サーキット走行には専用パッケージがほぼ必須
- 日常使用でも質感向上のメリット大
まとめ - 「25式」が示すGRヤリスの進化
新型GRヤリス「25式」エアロパフォーマンスパッケージは、単なるマイナーチェンジを超えた真の進化を遂げています。モータースポーツで実証された技術の市販車への転用は、トヨタのガズーレーシングカンパニーだからこそ実現できる独自の価値と言えるでしょう。エアロパフォーマンスパッケージの効果は絶大です。サーキット走行を楽しみたいユーザーには必須のオプションと言っても過言ではありません。
2025年10月1日の発売開始に向けて、ハイパフォーマンスカー市場に新たな基準を提示する「25式」の動向に注目が集まります。