日産は、ミドルサイズSUV「エクストレイル(X-TRAIL)」のフルモデルチェンジを行い、2027年8月頃に発売を予定しています。
日産の主力ミドルサイズSUVとして、長年にわたり多くのユーザーから支持を集めてきた「エクストレイル(X-TRAIL)」。現行のT33型は、第2世代e-POWERや進化した4WDシステム「e-4ORCE」を搭載し、2022年7月に日本市場へ投入されました。そのタフギアとしてのコンセプトはそのままに、電動化による上質な走りと先進性を融合させ、SUV市場において独自のポジションを確立しています。海外では「ローグ(Rogue)」の名で販売され、グローバルでの人気も高いモデルです。
そして今、そのエクストレイルが次なる世代、T34型へと進化を遂げるフルモデルチェンジの足音が聞こえ始めています。日産が発表した情報や公開されたティザー画像からは、デザイン、パワートレイン、先進技術のすべてにおいて、大きな飛躍が期待されます。本稿では、現在までに判明している情報や予測を基に、新型エクストレイル(T34型)の全貌に迫ります。
新型日産エクストレイル(T34型)フルモデルチェンジ情報のまとめ
- フルモデルチェンジ時期
- 北米向け姉妹車「ローグ(T34型)」は、2026年度に生産開始が予告されています。
- 日本市場向けの新型「エクストレイル(T34型)」の導入は、北米から1年程度の遅れが予想され、現時点では2027年度頃が有力と見られています。
- エクステリアデザイン
- 型式も新たに「T34型」となるフルモデルチェンジが実施されます。
- 公開されたティザー画像からは、ハニカムパターンの大型グリル、グリル両脇に配置される特徴的なハニカム形状デイタイムライト(片側5灯)、シンプルでコンパクトな三眼LEDヘッドランプ、ワイド感を強調する一文字テールランプなどの採用が確認できます。
- 全体として、より先進的でシャープ、かつ存在感のあるデザインへの刷新が期待されます。サイドウィンドウ周りは現行型の意匠を踏襲する可能性も示唆されています。
- インテリアデザイン
- 最新世代のデジタルメーター、Googleビルトイン搭載の大型インフォテインメントディスプレイ、大型ヘッドアップディスプレイ(HUD)が採用され、デジタル化とコネクテッド機能が大幅に向上します。
- 内装材や加飾により、現行モデル以上の上質な室内空間が追求される見込みです。
- パワートレイン
- 第3世代e-POWER:
- 発電用に新開発の1.5Lエンジンを採用。
- 高速走行時の燃費が現行比で最大15%向上します。
- システム出力向上(FF:300ps/4WD:340psとの予測情報あり)や、さらなる静粛性向上も期待されます。
- アクセル操作で加減速を制御する「e-Pedal Step」は継続搭載されます。
- e-4ORCE:
- 4WDモデルには、さらに進化した電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」が搭載され、優れた走行安定性と快適な乗り心地を実現します。
- プラグインハイブリッド(PHEV):
- 三菱アウトランダーPHEVをベースとしたモデルが新たに設定される見込みです。
- 2.4Lエンジン+前後ツインモーター4WDシステムを採用し、EV走行距離は80km超が期待されます。
- 外部給電機能(V2H/V2L)も利用可能です。
- ガソリンターボ:
- 1.5L VCターボエンジン搭載モデルが設定される可能性もありますが、日本市場への導入は未定です。
- 第3世代e-POWER:
- 燃費性能
- 第3世代e-POWER搭載モデルは、特に高速燃費の改善により、WLTCモードでFF:21.0km/L、4WD:19.5km/L程度が予測されています。
- PHEVモデルは、WLTCモードで燃費17km/L台後半、EV走行距離80km超という高い経済性が期待されます。
- 安全装備・運転支援技術
- 車両周囲360°の安全を確保する「360°セーフティーアシスト」がさらに進化します。
- 「アダプティブLEDヘッドライトシステム」や「SOSコール」なども搭載されます。
- 高速道路同一車線運転支援技術「プロパイロット(ナビリンク機能付き)」も性能向上が図られます。
- 将来的には、AIを活用した次世代プロパイロット(Wayve AI Driver連携)の搭載も期待されます(日産は2027年度以降の市販車搭載を発表)。
- 駐車支援「プロパイロット パーキング」も継続されます。
- ボディサイズ・プラットフォーム
- ボディサイズは現行モデル(T33型)から小幅な変更に留まる見込みです(全長+10mm、全高+5mm程度の予測あり)。
- プラットフォームは最新世代(CMF-C/D進化版)に刷新され、ボディ剛性が大幅に向上します。
- これにより、操縦安定性、乗り心地、静粛性、衝突安全性が向上します。
- 価格予測
- パワートレインの進化や装備充実により、現行モデルから20万円程度の価格上昇が予測されています。
- e-POWERモデルのエントリー価格は370万円台から、PHEVモデルは600万円を超える可能性も考えられます。
- まとめ
- 新型エクストレイル(T34型)は、日産の電動化戦略と先進技術を牽引する重要なモデルとして開発が進んでいます。
- 伝統のタフギアコンセプトに、進化したe-POWER/PHEV、先進的なデザイン、高度な安全・運転支援技術を融合させ、総合的な商品力の大幅な向上が期待されます。
フルモデルチェンジの時期は? 北米先行、日本導入は2027年度頃か
新型エクストレイルの登場時期については、複数の情報が交錯していますが、最新の情報と過去の事例から総合的に判断すると、日本市場への導入は2027年度頃になる可能性が高いと考えられます。
その根拠となるのが、日産が北米市場で展開するエクストレイルの姉妹車「ローグ」に関する発表です。日産は2025年に入り、ローグに関する具体的な計画を明らかにしました。まず、2025年度にはプラグインハイブリッド(PHEV)モデルのローグが登場予定であることが示されました。公開されたシルエットなどから、これは同グループの三菱「アウトランダーPHEV」をベースとしたOEM供給モデルであると見られています。このローグPHEVが、次期型T34ローグ登場後も併売されるのか、あるいは先行導入的な位置づけなのかは注目される点です。
さらに重要な情報として、2025年2月の決算発表資料および同年3月の経営計画「The Arc」発表において、日産は「2026年度」に新型ローグの生産を開始すると予告しました。この新型ローグは、エクステリアデザインが大きく変更されるティザー画像も公開されており、フルモデルチェンジを受けた次期型、すなわちT34型ローグであると考えられます。そして、このT34型ローグには、後述する進化したハイブリッドシステム「第3世代e-POWER」が搭載される計画も明記されています。
では、日本仕様のT34型エクストレイルの登場はいつになるのでしょうか。過去の例を見ると、T33型において、北米ローグの発売(2020年10月)から日本エクストレイルの発売(2022年7月)まで、約1年9ヶ月のタイムラグがありました。また、2023年10月に北米ローグで実施されたフェイスリフトを含むマイナーチェンジが、2025年4月現在、日本仕様のエクストレイルにはまだ適用されていません。このマイナーチェンジが仮に2025年中に日本で実施されるとすれば、北米からやはり1年半~2年程度の遅れが生じることになります。
こうした背景を踏まえると、北米で2026年度に生産が開始されるT34型ローグe-POWERが、日本市場にT34型エクストレイルとして導入されるのは、北米から1年程度の遅れを見込み、2027年度あたりになるのではないかと推測されます。北米でのT34型ローグの動向が、日本仕様の登場時期を占う上で重要な鍵となります。
エクステリアデザイン:ティザー画像が示す大胆な変革
フルモデルチェンジする新型エクストレイル(T34型)のエクステリアデザインは、現行T33型から大きく進化し、より先進的で存在感のあるスタイルへと変貌を遂げることが、公開されたティザー画像から明らかになっています。これは単なるマイナーチェンジ(フェイスリフト)ではなく、型式も新たにT34系となる、文字通りのフルモデルチェンジであることを示唆しています。
ティザー画像の明るさを調整して分析すると、フロントマスクの印象を決定づける要素が浮かび上がってきます。まず目を引くのが、大型化されたフロントグリルです。内部には緻密なハニカムパターンが採用されており、スポーティかつモダンな印象を与えます。注目すべきは、グリルの両脇に配置されたデイタイムランニングライトです。こちらもグリル同様のハニカム形状を採用し、片側に5つずつ配置されるという非常に特徴的なデザインとなっています。これにより、一目で新型エクストレイル(ローグ)と認識できる、強い個性を放つフロントフェイスが形成されるでしょう。さらに、ティザー画像からはグリル部分にボディ同色のような光沢感も見受けられ、近年のデザイントレンドであるシームレスな表現が取り入れられている可能性も考えられます。
ヘッドランプユニットも大きく変更されます。ティザー画像からは、内部に3つの光源を持つ「三眼LEDヘッドランプ」が採用されていることが確認できます。現行T33型と比較すると、ユニット自体はよりシンプルかつコンパクトな形状に見えます。この新しいヘッドランプのデザインに合わせて、ボンネットフードの形状も現行型とは大きく異なるラインを描いていることが見て取れます。
サイドビューに関しては、ティザー画像から読み取れる情報は限られますが、サイドウィンドウの形状やドアのプレスラインなどは、現行T33型から大きな変更がないようにも見えます。これは、近年の日産車(例えばセレナ C28型)のフルモデルチェンジで見られたように、一部のボディ骨格やパネルをキャリーオーバーすることで開発コストを抑制する手法が、新型エクストレイルでも採用されている可能性を示唆しています。ただし、ホイールデザインは特徴的なパターンが採用されるようです。一般的な放射状のデザインではなく、スクエアやハニカムを思わせるような、幾何学的なラインが確認でき、足元からも先進性を演出します。
リアデザインについては、2024年3月に発表された経営計画「The Arc」の中で公開されたティザー画像にヒントがあります。そこには、左右のテールランプを繋ぐ「一文字タイプのテールランプ」が採用されている様子が描かれていました。これは近年の自動車デザインのトレンドであり、ワイド感を強調し、モダンで洗練されたリアビューを創出します。
これらの情報を総合すると、新型エクストレイル(T34型)は、フロントとリアを中心にデザインを大幅に刷新し、よりシャープで先進的なSUVへと生まれ変わることが予想されます。現行モデルの持つタフなイメージは継承しつつも、都会的な洗練性と未来感を融合させたデザインが期待されます。
ボディサイズとプラットフォーム:剛性向上とユーティリティ
新型エクストレイル(T34型)のボディサイズは、現行T33型から大幅な変更はなく、扱いやすさを維持しつつ、若干拡大される可能性があります。一部予測情報では、全長4670mm(現行比+10mm)×全幅1840mm(現行同)×全高1725mm(現行比+5mm)、ホイールベース2705mm(現行同)といった数値が挙げられています。この程度の変更であれば、現行モデルからの乗り換えユーザーも違和感なく受け入れられるでしょう。
サイズ変更が小幅にとどまる一方で、車体の基礎となるプラットフォームは刷新され、大幅な進化を遂げると考えられます。最新のCMF(コモン・モジュール・ファミリー)プラットフォーム、おそらくは現行モデルで採用されているCMF-C/Dプラットフォームの進化版が採用されるでしょう。高張力鋼板の使用比率拡大や構造用接着剤の適用範囲拡大、レーザースクリューウェルディングなどの最新技術により、ボディ剛性は大幅に向上すると予想されます。
ボディ剛性の向上は、様々なメリットをもたらします。まず、操縦安定性の向上です。ステアリング操作に対する車両の応答性が向上し、より正確でリニアなハンドリングフィールを実現します。コーナリング時の車体のねじれが抑制されるため、安定感が増し、ドライバーは安心して運転を楽しむことができます。
次に、乗り心地の向上です。剛性の高いボディは、サスペンションがより効果的に機能するための強固な土台となります。路面からの入力や振動をしっかりと受け止め、不快な振動や騒音の車内への侵入を低減します。これにより、フラットで快適な乗り心地と、高い静粛性を両立することができます。
さらに、衝突安全性能の向上にも寄与します。強固なキャビン構造は、衝突時のエネルギーを効果的に吸収・分散し、乗員の生存空間を確保します。
プラットフォームの刷新は、室内空間やラゲッジスペースの設計自由度を高める可能性もあります。ボディサイズが大きく変わらなくても、パッケージングの最適化により、居住空間の拡大や、より使いやすいラゲッジスペース、豊富な収納スペースなどが実現されるかもしれません。特に、3列シート仕様の居住性向上には期待がかかります。
新型エクストレイルは、見た目のサイズ感は維持しつつも、見えない部分であるプラットフォームを刷新することで、走り、快適性、安全性、そして使い勝手といった、クルマとしての基本性能を大幅に引き上げることが期待されます。
インテリアデザイン:デジタル化と質感向上で快適性を追求
新型エクストレイル(T34型)の内装は、エクステリアの大胆な進化に呼応するように、デジタル技術の積極的な採用と質感の向上により、機能性と快適性が大幅に高められることが予想されます。
ドライバーインターフェースの中心となるのは、最新世代のデジタルインストルメントクラスター(デジタルメーター)と、大型化されたセンターインフォテインメントディスプレイでしょう。デジタルメーターは、高精細な表示により、速度、エンジン回転数、燃費情報といった基本的な情報に加え、ナビゲーションの案内表示や先進運転支援システム(ADAS)の作動状況などを、ドライバーの好みに合わせてカスタマイズ表示できると予想されます。これにより、視認性と情報量が格段に向上し、運転への集中をサポートします。
センターに配置される大型インフォテインメントディスプレイには、「Googleビルトイン」が搭載される可能性が高いです。これは、スマートフォンを接続することなく、車載システム単体でGoogleマップによるナビゲーション、Googleアシスタントによる音声操作、Google Playストアからのアプリダウンロードなどが可能になるものです。これにより、シームレスなコネクテッド体験が実現し、エンターテインメント機能や情報アクセスが飛躍的に向上します。大型のタッチスクリーンによる直感的な操作に加え、自然な対話が可能な音声操作によって、運転中の操作負担も軽減されるでしょう。
さらに、フロントウィンドウに必要な情報を投影する大型のヘッドアップディスプレイ(HUD)の採用も期待されます。速度、ナビゲーションの案内、ADASの警告などをドライバーの視線移動を最小限に抑えながら表示することで、安全運転に貢献します。
内装全体の質感についても、現行モデルからさらなる向上が図られると考えられます。ソフトパッドの使用範囲拡大、ステッチ加工、金属調加飾やウッドパネル(あるいはそれに準ずる素材)の効果的な配置などにより、上質で居心地の良いキャビン空間が創出されるでしょう。シート素材やデザインも一新され、長距離ドライブでも疲れにくい快適な座り心地が提供されることが期待されます。エクストレイルの特徴でもある防水シートなどのタフギア要素が、どのように現代的なデザインと融合されるのかも注目点です。
ラゲッジスペースの広さや使い勝手、シートアレンジの多様性といった、エクストレイルが伝統的に得意としてきたユーティリティ性能についても、プラットフォームの刷新やパッケージングの見直しにより、さらなる向上が図られる可能性があります。特に、現行モデルで設定されている3列シート仕様(7人乗り)が新型でも継続されるのか、そしてその居住性や使い勝手がどのように進化するのかも、ファミリー層を中心に高い関心が寄せられるポイントです。
パワートレイン:第3世代e-POWERとPHEVが柱に
新型エクストレイル(T34型)のパワートレインは、日産の電動化技術の粋を集めたラインナップとなることが予想され、特に進化した「第3世代e-POWER」と、新たに設定される「プラグインハイブリッド(PHEV)」が注目されます。
第3世代e-POWER:効率とパワーを両立
- エンジンの効率化: E-POWER専用に設計することで、効率を最大化。低回転域を捨て、燃費の良い範囲に特化。
- モーターの効率化: SICを使用したインバーターを採用するなど、モーター自体の効率も改善。
- 燃費向上: エンジンとモーターの効率改善により、燃費が15%向上。
- 静粛性の向上: 現行モデルに比べて静粛性も向上。
- 走行性能の向上: モーターの出力がよりスムーズになり、加速時の力がより強く感じられる。
- その他: エンジン音がより静かで、走行中の上品さが増している。
日産独自のシリーズハイブリッドシステムであるe-POWERは、新型エクストレイルで「第3世代」へと進化します。最大のポイントは、発電専用エンジンとして、新開発の1.5リッターエンジンを採用することです。この新エンジンはe-POWERシステムに最適化されており、特に従来のe-POWERが課題としていた高速走行時の燃費性能を、現行の第2世代e-POWERと比較して最大で15%向上させると日産は発表しています。これにより、市街地だけでなく、高速道路でのロングドライブにおける経済性も大幅に改善されることが期待されます。
発電効率の向上だけでなく、モーター出力の向上も図られる可能性があります。一部情報では、システム出力としてFF(前輪駆動)モデルで300ps、4WDモデルで340psといった、現行モデル(フロント204ps、リア136ps)を大幅に上回るスペックが予想されています。これが実現すれば、よりパワフルで気持ちの良い発進加速や、中高速域からの追い越し加速における力強さが増し、ドライビングプレジャーが一層高まるでしょう。
さらに、e-POWERシステムの制御も進化します。走行中のロードノイズの大きさを検知し、車が静かな時にはエンジンの始動をなるべく避け、逆にロードノイズが大きい状況(例えば荒れた路面や高速走行時)で積極的に発電を行うといった制御が導入される可能性があります。これにより、発電用エンジン作動時のノイズが車内に侵入するのを効果的に低減し、e-POWERの持ち味である静粛性にさらに磨きがかかると考えられます。
アクセルペダルの操作だけで加減速をスムーズに行える「e-Pedal Step」も引き続き搭載される見込みです。市街地でのストップ&ゴーだけでなく、ワインディングロードや滑りやすい雪道、下り坂などにおいても、油圧ブレーキと回生ブレーキを巧みに協調制御することで、ドライバーはより安心して運転に集中できるようになります。
e-4ORCE:進化した電動4WD
後輪にも独立した駆動モーターを搭載する4WDモデルには、引き続き日産独自の電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」が採用されます。第3世代e-POWERと組み合わされることで、その制御はさらに洗練されるでしょう。前後モーターのトルクを緻密かつ応答性良く制御することで、発進時や加速時には力強く安定したトラクションを発揮。コーナリング時には、ライントレース性を高め、狙い通りのスムーズな旋回を可能にします。
e-4ORCEの真価は、加速性能だけでなく、減速時の制御にもあります。ブレーキング時やアクセルオフ時に、前後輪の回生ブレーキ量を最適にコントロールすることで、車体のピッチング(前のめりになる動き)を抑制。これにより、乗員の頭部の揺れが減少し、車酔いを起こしにくいフラットで快適な乗り心地を実現します。特に凹凸のある路面や段差を乗り越える際にも、車体の揺れを効果的に抑え、上質な移動空間を提供します。雪道や悪路における走破性の高さはもちろんのこと、日常的なシーンでの快適性向上に大きく貢献する技術です。
プラグインハイブリッド(PHEV)モデルの導入
新型エクストレイルには、新たにプラグインハイブリッド(PHEV)モデルが設定される見込みです。これは、前述の通り、アライアンスを組む三菱自動車の「アウトランダーPHEV」のシステムをベースとしたOEM供給モデルとなる可能性が高いです。
具体的なスペックとしては、2.4L直列4気筒ガソリンエンジンに、フロントとリアにそれぞれ強力な駆動用モーターを組み合わせたツインモーター4WDシステムが予想されます。エンジンは主に発電に用いられますが、高速走行時など効率の良い領域では直接駆動にも関与する可能性があります。バッテリー容量は、アウトランダーPHEV(現行モデル)と同等の20kWhクラス(一部情報では22.7kWh)のリチウムイオンバッテリーを搭載し、EV走行換算距離(電気だけで走行できる距離)はWLTCモードで80km以上に達すると期待されます。
PHEVモデルの最大のメリットは、日常的な走行の大部分を電気だけでカバーできる経済性と環境性能、そして外部からの充電が可能である利便性です。自宅などで充電しておけば、ガソリンをほとんど使わずに通勤や買い物などの日常用途をこなせます。また、大容量バッテリーを搭載しているため、災害時などには外部給電機能(V2H/V2L)を活用し、家庭への電力供給や電化製品の使用が可能になる点も大きな魅力です。走行性能においても、ツインモーターによる力強く静かで滑らかな加速フィールが期待でき、e-POWERモデルとはまた異なる上質な走りを提供します。
ガソリンターボモデルの可能性
一部情報では、現行の北米ローグに設定されている1.5L 3気筒VCターボエンジン(最高出力204ps、最大トルク30.6kgm)を搭載した、純ガソリンエンジンモデルが新型エクストレイルにも設定される可能性が示唆されています。e-POWERやPHEVと比較して車両価格を抑えられるメリットがあり、選択肢の幅を広げる意味で設定される可能性は否定できません。ただし、日産の電動化戦略の流れを考えると、日本市場においてはe-POWERとPHEVを主軸とし、ガソリンモデルの設定は見送られる可能性も十分にあります。今後の公式発表が待たれるところです。
燃費性能:第3世代e-POWERで高速燃費を大幅改善
新型エクストレイル(T34型)の燃費性能は、特に主力となる第3世代e-POWERの進化により、現行モデルから着実な向上が期待されます。
日産が公式に発表している通り、第3世代e-POWERは新開発の1.5L発電専用エンジンと制御の最適化により、高速走行時の燃費が現行比で最大15%向上します。これは、従来のe-POWERが比較的苦手としていた領域での効率改善を意味し、高速道路を多用するユーザーにとっては大きなメリットとなります。
具体的な燃費目標値としては、一部予測情報ながら、第3世代e-POWER搭載モデルでWLTCモード燃費がFFモデルで21.0km/L、4WD(e-4ORCE)モデルで19.5km/L程度に達するのではないかと見られています。現行T33型エクストレイルe-POWERの燃費がFF:19.7km/L、4WD:18.4km/L(WLTCモード)であることを考えると、特に4WDモデルでの改善幅が大きく、走行性能の向上と燃費性能の改善を両立していることがうかがえます。市街地走行における燃費性能についても、発電効率の向上や制御の最適化により、現行モデル同等以上の数値を維持、あるいは若干の向上が期待できるでしょう。
新たに設定されるPHEVモデルについては、三菱アウトランダーPHEV(WLTCモード複合燃料消費率16.2km/L、EV走行換算距離83-87km)をベースとすることから、同等レベルの燃費性能、すなわちWLTCモードで17km/L台後半程度の燃費と、80kmを超えるEV走行距離が目標となると考えられます。日常的な移動の多くをEV走行で賄えるため、実用燃費としては非常に優れたものになるでしょう。
仮に純ガソリンターボモデル(1.5L VCターボ)が設定される場合、その燃費はWLTCモードで14km/L台半ば程度になると予想されます。これは、現行北米ローグの数値を参考にしています。
総じて、新型エクストレイルは、パワートレインの選択肢によって燃費性能は異なりますが、主力となる第3世代e-POWERにおいては、特に高速燃費の大幅な改善が実現される見込みです。これにより、市街地から高速道路まで、あらゆるシーンで優れた経済性を発揮するSUVへと進化することが期待されます。
安全装備と運転支援技術:次世代プロパイロットへの期待も
安全性能は、現代の自動車選びにおいて最も重要な要素の一つです。新型エクストレイル(T34型)では、日産の最新安全技術と運転支援システムが惜しみなく投入され、クラス最高水準の安全性能を目指すと予想されます。
まず、基本的な安全装備として、車両周囲360°の危険を検知し、衝突回避や被害軽減をサポートする「360°セーフティーアシスト(全方位運転支援システム)」がさらに進化して搭載されるでしょう。これには、衝突被害軽減ブレーキ(対車両、歩行者、自転車、交差点対応)、踏み間違い衝突防止アシスト、車線逸脱警報/防止支援、後側方衝突防止支援、後退時車両検知警報などが含まれます。ミリ波レーダーやカメラなどのセンサー性能向上により、検知精度や作動範囲が拡大され、より幅広いシーンでドライバーを支援します。
夜間の視界確保に貢献する「アダプティブLEDヘッドライトシステム」も、より高機能なものが採用される可能性があります。対向車や先行車を検知し、ハイビームの照射範囲を自動で細やかに制御することで、常に明るい視界を確保しつつ、他車への眩惑を防ぎます。
万が一の事故や急病時に、専門オペレーターに接続し、警察や消防への連携をサポートする「SOSコール(緊急自動通報システム)」も標準装備となるでしょう。
運転支援技術の中核を担うのは、高速道路同一車線走行支援技術「プロパイロット」です。現行エクストレイルにも搭載されているナビリンク機能付きプロパイロットがさらに進化し、よりスムーズで自然な加減速制御、カーブやジャンクションでの速度制御、車線変更支援機能などが強化されると予想されます。
さらに注目されるのが、将来的な「次世代プロパイロット」の搭載可能性です。日産は、英国のAI企業Wayve社と協業し、ディープラーニング(深層学習)を活用した高度な運転支援技術の開発を進めています。この技術は「Wayve AI Driver」と呼ばれ、人間のドライバーのように複雑な交通状況を認識・判断し、一般道を含むより幅広い環境での自動運転支援を目指すものです。日産は、この技術に高精度なLiDAR(ライダー)センサーなどを組み合わせた「Ground Truth Perception」を統合し、2027年度以降の市販車への搭載を目指すと発表しています。
T34型エクストレイルの登場時期(予測される2027年度頃)を考えると、発売当初からこの次世代プロパイロットが搭載されるかは不透明ですが、モデルライフの途中でのアップデートや、将来的な搭載は大いに期待できるでしょう。これが実現すれば、高速道路だけでなく、渋滞した市街地などでの運転負荷が大幅に軽減され、移動の快適性と安全性が飛躍的に向上します。
駐車支援システムについても、ステアリング、アクセル、ブレーキ、シフト操作、パーキングブレーキまで自動制御する「プロパイロット パーキング」が引き続き搭載され、駐車が苦手なドライバーを強力にサポートします。
このように、新型エクストレイルは、最新の予防安全技術と高度な運転支援システムを組み合わせることで、ドライバーと同乗者に最高レベルの安心と快適を提供することを目指しています。
価格予測:装備充実と価格上昇のバランス
フルモデルチェンジに伴い、新型エクストレイル(T34型)の車両価格は、現行モデルから上昇することが予想されます。一部情報では、全体的に20万円程度の価格アップが見込まれるとされています。
価格上昇の主な要因としては、以下のような点が挙げられます。
- パワートレインの進化: 第3世代e-POWERの採用や、新たに設定されるPHEVシステムは、現行の第2世代e-POWERよりもコストがかかる可能性があります。特にPHEVは高価な大容量バッテリーを搭載するため、価格帯はe-POWERモデルよりも上に設定されるでしょう。
- 先進装備の充実: 最新のデジタルメーター、大型インフォテインメントシステム(Googleビルトイン)、ヘッドアップディスプレイ、進化した安全運転支援システム(プロパイロット等)の採用は、コスト増につながります。
- 内外装の質感向上: デザインの刷新や、より高品質な素材の使用は、製造コストを押し上げる要因となります。
- 原材料価格や輸送コストの上昇: 近年の世界的な物価上昇の影響も、車両価格に反映される可能性があります。
現行T33型エクストレイルの価格帯(2025年4月現在、消費税込)は、e-POWERモデルが約351万円(S 2WD)から約533万円(AUTECH ADVANCED Package 4WD)となっています。ここに20万円程度の価格上昇があると仮定すると、新型エクストレイルe-POWERのエントリー価格は370万円台から、上級グレードやPHEVモデルは500万円台後半、あるいは600万円を超える可能性も考えられます。
もちろん、これはあくまで現時点での予測であり、実際の価格設定は、競合車種(トヨタRAV4/ハリアー、ホンダZR-V、マツダCX-5/CX-60、スバル フォレスター/アウトバック、三菱アウトランダーなど)の動向や、市場の状況を見ながら最終的に決定されます。
日産としては、価格上昇に見合うだけの価値、すなわちデザインの魅力、走行性能の向上、先進装備の充実、燃費性能の改善などをアピールすることで、ユーザーの納得感を得る必要があるでしょう。特に、第3世代e-POWERやPHEVといった電動パワートレインの魅力、そして将来的な搭載も期待される次世代プロパイロットなどの先進技術が、価格競争力を左右する重要な要素となりそうです。
日産 エクストレイルの歴史
初代 (T30型) 2000年11月発売
- ミドルサイズのクロスオーバーSUVです。コンセプト: 「4人が快適で楽しい、200万円の使える四駆」
- 特徴: 水洗い可能なラゲッジスペース、オフロード走行に対応した走破性
- 4年連続でクラスベストセラーを獲得
2代目 (T31型) 2007年8月発売
- 初代をベースに走行性能とインテリアを改良
- ボディサイズを拡大
- エンジン: 2.0Lガソリン、2.5Lガソリン、2.0Lディーゼル
3代目 (T32型) 2013年12月発売
- エクステリアデザインを大幅に変更
- 2列シート5人乗り仕様に加え、3列シート7人乗り仕様を追加
- エンジン: 2.0Lガソリン、ハイブリッド
4代目 (T33型) 2022年7月発売
- 新世代e-POWERを搭載
- e-4ORCE (電動駆動4輪制御技術) を採用
- 先進運転支援システム「プロパイロット」を搭載
2025年7月 (予定)
- マイナーチェンジ
- 新世代デザイン「デジタル・Vモーション」採用
- 12.3インチタッチスクリーンディスプレイ採用
- 日産初 Googleビルトイン搭載
その他
- 海外では「ローグ」の名称で販売
- 生産は日産自動車九州が担当
編集部から一言
日産エクストレイルの次期型、T34型へのフルモデルチェンジは、単なるモデルチェンジに留まらず、日産の電動化戦略と先進技術を象徴する重要なステップとなることが予想されます。
北米市場(ローグ)では2026年度の生産開始が予告され、その姿を示唆するティザー画像も公開されるなど、具体的な情報が出始めています。日本市場への導入は、過去の例から2027年度頃と予測されるものの、その進化の内容には大きな期待が寄せられています。
エクステリアは、ハニカムグリルや特徴的なデイタイムライト、三眼LEDヘッドランプ、一文字テールランプなどを採用し、より先進的で存在感のあるデザインへと生まれ変わります。インテリアも、デジタルメーターやGoogleビルトイン搭載の大型ディスプレイ、ヘッドアップディスプレイなどにより、機能性とコネクティビティが大幅に向上するでしょう。
パワートレインの核となるのは、高速燃費を最大15%向上させた新開発1.5Lエンジン搭載の「第3世代e-POWER」と、新たに設定される三菱アウトランダーベースの「PHEV」です。これに、進化した電動4WD「e-4ORCE」が組み合わされ、力強く滑らかで、かつ環境性能にも優れた走りを提供します。
安全面では、最新の「360°セーフティーアシスト」や「プロパイロット」に加え、将来的にはAIを活用した「次世代プロパイロット」の搭載も視野に入っており、クラス最高水準の安全・快適性能を目指します。
プラットフォームの刷新によるボディ剛性の向上は、操縦安定性、乗り心地、静粛性、衝突安全性のすべてを高め、SUVとしての基本性能を底上げします。
価格については上昇が見込まれるものの、それに見合うだけの価値を提供できるかが鍵となります。競合ひしめくミドルサイズSUV市場において、新型エクストレイルがどのような個性と魅力を打ち出し、ユーザーの心を掴むのか。
タフギアとしての伝統を受け継ぎながら、電動化と先進技術によって未来へと突き進む新型エクストレイル(T34型)。その正式発表と日本市場への登場が、今から待ち遠しくてなりません。今後のさらなる情報公開に注目していきましょう。
日産 ニュースリリース