日産自動車が2026年9月23日、欧州市場向けの新型コンパクトEV「ピクソ(Nissan PIXO)」を世界初公開しました。すでに販売中の「マイクラEV」よりもさらに小さいAセグメントのシティコミューターで、価格・仕様の詳細は2026年12月に発表、顧客への納車は2027年初頭からを予定しています。
この記事では、13年ぶりに復活した「ピクソ」というネーミングの由来から、ボディサイズ、スペック、内外装のデザイン、そして競合車種との比較まで、現時点で判明している情報を徹底解説します。
新型日産ピクソとは?マイクラの下に位置するエントリーEV
新型ピクソは、日本では販売されない欧州・英国市場専売のピュアEVです。日産のEVラインアップにおいては、ルノー「5(サンク)」ベースの「マイクラEV」のさらに下に位置する、最も手頃なエントリーモデルという立ち位置になります。
トヨタでいえば欧州専売のシティカー「アイゴ」に近いサイズ感ですが、ピクソは内燃機関を一切搭載しない100%電気自動車である点が大きく異なります。日産が掲げる長期ビジョン「モビリティの知能化で、毎日を新たな体験に」を体現するモデルとして、開発スピードと柔軟性を高めた新しい車両開発アプローチのもと、欧州の都市環境に最適化されて生み出されました。
そして最大のポイントは、このピクソがルノー「トゥインゴ E-Tech」のOEMモデルであるということ。生産はスロベニアのノボ・メスト工場で、姉妹車のトゥインゴやダチア「スプリング」と同じラインで行われます。プラットフォームやパワートレインを共有することで、コスト競争力の高いエントリーEVを実現しているわけです。
実は13年ぶりの復活!初代ピクソ(2009〜2013年)を振り返る
「ピクソ」という車名は、実は日産にとって完全な新規ネーミングではありません。日産は2009年から2013年にかけて、欧州で初代「ピクソ」を販売していました。今回の新型は、実に13年ぶりの名称復活となります。

初代ピクソはスズキ「アルト」をベースにしたOEMモデルで、ボディサイズはAセグメントのコンパクトカー。この立ち位置は新型ピクソにも受け継がれています。ただし、当時のピクソは排気量1.0リッター直列3気筒ガソリンエンジンを搭載し、最高出力68PS/最大トルク90Nmと、ほぼ日本の軽自動車並みのスペックでした。「アルトのOEM」から「トゥインゴのOEM・ピュアEV」へと、時代の変化を象徴するかのような世代交代といえます。
ボディサイズ:全長は短いのにワイド、欧州仕様らしいプロポーション
新型ピクソのボディサイズは以下の通りです。

- 全長:3,796mm
- 全幅:1,790mm
- 全高:1,512mm
- ホイールベース:2,492mm
- フロントオーバーハング:741mm/リアオーバーハング:563mm
- 最低地上高:140mm
全長はベースとなるトゥインゴよりわずか7mm長いだけで、ホイールベースは共通です。注目すべきは全幅1,790mmという数値で、これはホンダ「ヴェゼル」と同等のBセグメント相当。Aセグメントとは思えないほどワイドなプロポーションは、欧州市場向けモデルならではの特徴です。短い全長と広い全幅の組み合わせにより、都市部での取り回しの良さと踏ん張りの効いたスタンスを両立しています。
エクステリアデザイン:ピクセルドットを散りばめた遊び心
デザイン面では、ルノー・トゥインゴのボディスタイルやウィンドウ形状をほぼ踏襲しつつも、ヘッドライトやテールランプの意匠は完全に別物へと作り分けられています。

トゥインゴの丸みを帯びたカエル顔(フロッグアイ)のヘッドライトに対し、ピクソはグリルレスでボクシーなフロントフェイスを採用。四角いヘッドライトには斜めに走るLEDグラフィックが与えられ、車名の由来である「ピクセル(画素)」をモチーフにしています。

車名「PIXO」にちなんだピクセルドット風のアクセントは、車体の随所にちりばめられています。具体的には、リアハッチガラス周りのモール、マルチスポークアルミホイールの切削光輝仕上げ、フロントロアバンパー、テールランプ付近など。フロントバンパーやテール周りには笑顔のキャラクターアクセントも隠されており、遊び心が満載です。

リアエンドには、ホットハッチを思わせる大きく張り出したリアブリスターフェンダーが与えられ、シンプルなテールゲートは2000年代の「マイクラ K12(日本名:マーチ)」を彷彿とさせる仕上がり。テールゲート中央には「NISSAN」のレタリングバッジ、モール部には「Ⅱ三(ニッサン)」のエンボス加工も施されています。ボディカラーには、新色の「ワンダーパープル」と「ギアブルー」が加わりました。
インテリア:トゥインゴ譲りの水平基調とGoogle Gemini対応
内装は、ベースのルノー・トゥインゴと同じく水平基調のダッシュボードを採用。ステアリングホイールやデジタルコックピットもトゥインゴ譲りですが、随所に日産独自のアレンジが加えられています。

センターのディスプレイオーディオには、Google Gemini対応の「Google ビルトイン」インフォテインメントを搭載。自然な音声での操作が可能で、AI時代にふさわしい先進性を備えています。レッドアクセントのエアコン吹き出し口周りには「Ⅱ三(ニッサン)」ロゴ、ステアリングのセンターホーンやドアトリムには「PIXO」ロゴが配され、ブランドの主張も忘れていません。シートはオールファブリックで、グレーを基調にレッドのカラードステッチが特別感を演出します。

装備面では、自動ブレーキ、レーンキープシステム、日産お馴染みの「e-Pedal」を含む先進運転支援技術を搭載。さらに「MyNissan」アプリによるナビゲーション、リアルタイムルート案内、充電管理、車両操作などのコネクテッド機能にも対応します。オーナーが発見できる23個の「イースターエッグ」が隠されているのも、遊び心のあるこのクルマらしいポイントです。


競合にはない魅力!後席スライド機構と充実の荷室
コンパクトEVでありながら、ピクソは実用性でも光ります。特筆すべきは、Aセグメントとしては珍しい後席の前後スライド機構。後述するホンダ・スーパーワンなどの競合にはない魅力で、荷物と乗員のバランスを柔軟に調整できます。

荷室容量は、後席使用時で356リッター(充電ケーブル収納用の50リッターコンパートメントを含む)、後席を倒せば最大1,221リッターまで拡大。車内には別途18リッターの収納スペースも確保されています。ラゲッジフロア下には充電ケーブルが収納され、実用性への配慮が随所に見られます。ただし後席を倒した際に段差が生じるため、タイヤなど大きな荷物を積む際は少々工夫が必要かもしれません。

パワートレインとスペック:航続259km、日常使いに最適化
新型ピクソのパワートレインは、姉妹車のトゥインゴ、ダチア・スプリングと共通です。

- モーター最高出力:81hp(60kW/82PS)※フロント搭載
- バッテリー:27.5kWh リン酸鉄リチウムイオン(LFP)
- 航続距離:259km(WLTPモード)
- 急速充電:最大50kW DC(15〜80%まで約28分)
- 普通充電:最大11kW、V2L対応
航続距離259kmは決して長くはありませんが、都市部でのシティコミューターとしての用途を考えれば十分実用的な数値。LFPバッテリーの採用により、コストと安全性、耐久性のバランスを取っている点もエントリーEVらしい選択です。V2L(給電機能)に対応しているのも、日常のアウトドアや非常時に嬉しいポイントです。
ライバルはホンダ「スーパーワン」?スペックもカラーも意識か
新型ピクソのスペックやイメージカラーを見ると、ホンダの新型「スーパーワン(Super-One)」を強く意識しているのではないかとの見方があります。システム出力82PS、航続距離259kmというスペック感、そしてパープル(バイオレット)系のイメージカラーは、スーパーワンのバイオレット系と重なる部分が多いのです。

一方で、前述の後席スライド機構をはじめとする充実したシートアレンジは、スーパーワンにはないピクソ独自の強み。価格次第では、実用性を重視するユーザーにとって非常に魅力的な一台になりそうです。
気になる価格は?2万ユーロ以下の可能性
最も気になる価格については、2026年12月以降に正式発表される予定です。ただし、ベースとなるルノー・トゥインゴが欧州で2万ユーロ(約300万円強)を下回る価格帯をターゲットにしていることから、ピクソも同様に**2万ユーロ以下(約19,500ユーロ=約360万円との報道も)**のエントリー価格でデビューする可能性が高いと見られています。手頃な電動モビリティとして、欧州の都市部でどこまで支持を集められるか注目されます。
まとめ:日産の欧州Aセグメント再参入を象徴する一台
新型日産ピクソは、ルノー・トゥインゴをベースにしながらも、ピクセルをモチーフにした独自のデザインと日産らしい遊び心、そして後席スライドなどの実用装備を盛り込んだ意欲作です。13年ぶりに復活した「ピクソ」の名は、日産の欧州Aセグメント市場への再参入を象徴する存在ともいえるでしょう。
日本市場では販売されないのが残念ですが、Google Gemini対応のコネクテッド機能や2万ユーロを切ると予想される戦略的な価格設定など、コンパクトEVの新たなベンチマークとなる可能性を秘めています。正式な価格・仕様が発表される2026年12月、そして2027年初頭の納車開始に向けて、今後の続報にも注目していきたいところです。
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