2025年10月29日、トヨタ自動車は東京ビッグサイトで開催中の「ジャパンモビリティショー2025」において、新型「センチュリークーペ」を世界初公開しました。トヨタの最高峰ブランドとして位置付けられたセンチュリーに、初めてクーペモデルが加わることで、センチュリーブランドの新たな歴史が始まります。
センチュリーは、1967年の誕生以来、トヨタの最上級車として官公庁や企業の要人送迎車として活躍してきましたが、今回のクーペモデルでは個人ユーザーにも訴求する革新的なコンセプトが採用されています。
新型センチュリークーペのエクステリアデザイン|スポーティさと伝統の融合

重厚感と先進性を両立したフォルム
新型センチュリークーペは、ロールス・ロイス「スペクター」を彷彿とさせる重厚感のあるデザインを採用しながらも、ややリフトアップしたクロスオーバースタイルで差別化を図っています。従来のセンチュリーのイメージを覆す斬新なデザインは、ブランドの新たな方向性を示しています。
ボディサイズは全長約5,000mm×全幅1,990mm×全高1,430mmと、サルーンモデルから全長と全高が抑えられ、スポーティなプロポーションを実現。それでも5mの全長により、最上級ラグジュアリークーペとしての快適性が確保されています。
伝統を継承するデザインエレメント

センチュリーの象徴である「鳳凰」エンブレムは、フロントセンターとBピラーに配置されています。フロントの鳳凰エンブレムは、工匠が金型を丁寧に手で彫り込み、躍動する翼のうねりや繊細な羽毛の表情が鮮やかに描き出されています。
また、日本の伝統文様である「七宝文様」(同じ大きさの円を1/4ずつ重ねて描く伝統的なデザイン)が各所にあしらわれ、センチュリーらしい和のテイストが感じられます。トヨタ自動車のオリジンである自動織機に由来する「糸を紡ぐイメージ」も随所に展開され、ブランドのルーツを表現しています。
革新的な観音開きドア

最も注目すべきは、左側に採用された前後スライド式の観音開きドアです。トヨタが得意とするスライド式ながら、2分割の両開きタイプを採用することで、見た目の美しさと高い実用性を両立。この「現代的に解釈された観音開きドア」により、乗降性が大幅に向上しています。
インテリアデザイン|航空機のファーストクラスを超える贅沢空間

3人乗車のショーファーカー設計

新型センチュリークーペは、ショーファーカーとして3人乗車のデザインを採用。左右独立の後席を設定し、特に左側の後席は大きく前後にスライドする機構を備えています。「航空機のファーストクラス」をイメージした広く大きな空間を贅沢に使った設計となっており、究極の快適性を追求しています。
革新的なコクピットデザイン

コクピットは従来のセンチュリーと比較してかなりシンプルに進化。物理的なスイッチはほとんど排除され、複数の液晶パネルによってドライバーに情報を伝達します。「ブラックバタフライ」的なデザインコンセプトを大きく採り入れ、ショーファーカーでありながら新たな世界観を提示しています。
ステアリングはステアバイワイヤシステム用と思われる特徴的なデザインを採用。先進技術による次世代の運転体験が期待されます。

最上級の快適装備

シートはヘッドレスト&ベルト一体型で、あらゆる体型にフィットする設計。回転機構を備えることで乗降性を大幅に向上させています。専用デザインのアナログクロックも配置され、デジタル化が進む中でも上質さを感じさせる演出がなされています。

さらに、ロールス・ロイスを意識したと思われる専用アンブレラも搭載。世界最高峰ブランドを本気で目指す姿勢が随所に表れています。
パワートレインとパフォーマンス|環境性能と走行性能の両立
最新のプラグインハイブリッドシステム
新型センチュリークーペには、V型6気筒3.5Lエンジンと2基の電気モーターを組み合わせた最新プラグインハイブリッドシステムが搭載されます。
パワートレインスペック:
- エンジン出力:262ps/34.2kgm
- フロントモーター出力:182ps/27.5kgm
- リアモーター出力:109ps/17.2kgm
- システム合計出力:412ps(約406hp/303kW)
- EV航続距離:80km
- トランスミッション:電気式無段変速機
- 駆動方式:E-Four Advanced AWD(4WD)
システム全体で412psを発揮し、0-100km/h加速は約5秒と推定されています。大柄なボディをスムーズかつパワフルに加速させる性能を実現しています。
優れた環境性能
最新パワートレインの採用により、WLTCモード燃費は16.0km/L程度が見込まれています。走行性能と快適性を重視しながらも、優れた環境性能を両立しています。
走りを支える最新技術
四輪操舵システム「ダイナミックリヤステアリング」により、低速域では取り回しの良さ、中高速域ではシームレスかつ自然なハンドリングを実現。AVS機能付電子制御エアサスペンションを採用し、ソフトで目線の動きが少ないフラットな乗り心地に仕上げられています。
構造用接着剤によるボディ剛性の向上、乗心地に特化した新開発タイヤ、サスペンションアームやブッシュ、マウントなどのゴム部品に至る細部までチューニングが施されています。
さらに、エンジン起動時の音や振動にはアクティブノイズコントロールで対応し、圧倒的な静粛性を実現しています。
最新安全装備|Toyota Safety Sense搭載
新型センチュリークーペには、トヨタの予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense(トヨタセーフティセンス)」が標準搭載されます。
主要安全機能:
- プリクラッシュセーフティ(PCS):前方の車両や歩行者を検知し、衝突回避支援または被害低減
- レーンディパーチャーアラート(ステアリング制御機能付):車線逸脱時に警報とステアリング制御
- ヘルプネット(エアバッグ連動付):事故や急病時に専門オペレーターが警察や消防に取り次ぎ
- D-Call Net対応:エアバッグ作動時に車両データから重症度を推定し、ドクターヘリ等の早期出動判断を支援
最上級車にふさわしい先進安全技術により、乗員の安全を最大限に確保しています。
価格と発売時期|2027年発売予定、想定価格2,500万円
新型センチュリークーペの価格は約2,500万円が見込まれています。これは、センチュリーサルーン(2,008万円)とセンチュリーSUV(2,700万円)の中間に位置する価格設定です。
発売時期は2027年が予定されています。トヨタは新型センチュリークーペによってセンチュリーシリーズのラインナップを拡大し、「最上級車」から「最上級ブランド」へと進化させる戦略を推進していきます。
センチュリーオリジナルグッズ展開|ブランド価値の拡大









ジャパンモビリティショー2025では、センチュリーオリジナルグッズも展示されています。鳳凰をあしらったクッションやキーリング、さらには子ども用のミニカー(玩具)まで用意されており、ライフスタイルブランドとしての展開も視野に入れていることが伺えます。
センチュリーの歴史|60年の伝統を継承
センチュリーは1967年に初代モデルが発売されたトヨタの最高級乗用車です。モデル名の「センチュリー(世紀)」は、発表された1967年が明治100年であり、トヨタ創業者・豊田佐吉氏の生誕100年であったことに由来します。
初代は30年間、2代目は20年間という非常に長いモデルライフを持ち、細かな改良を重ねながら販売が継続されました。官公庁や企業の公用車・役員車として活躍し、2006年には天皇・皇后用の御料車として「センチュリーロイヤル」も製作されています。
現行3代目は2018年にフルモデルチェンジし、2023年にはSUVモデルが追加されました。そして2025年、クーペモデルの追加により、センチュリーは3つのボディタイプを擁する真の最上級ブランドへと進化を遂げようとしています。
まとめ|日本発の世界最高峰ブランドへの挑戦
新型センチュリークーペは、単なるラインナップ拡充ではなく、トヨタが「センチュリー」を世界の超高級車ブランドと肩を並べる存在に引き上げようとする強い意志の表れです。
ロールス・ロイスやベントレーといった欧州の伝統的ラグジュアリーブランドにはない、日本の美意識と匠の技術を融合させた唯一無二の価値提案。それが新型センチュリークーペに込められたコンセプトです。
2027年の発売に向けて、さらなる情報公開が期待されます。日本が世界に誇る最上級ブランド「センチュリー」の新たな挑戦から、今後も目が離せません。
トヨタ ニュースリリース

