トヨタが開発中のFIA GT3規格レーシングカー「GR GT3」が、2026年11月7日のスーパーGT第3戦(モビリティリゾートもてぎ)のGT300クラスで、ついに実戦デビューしました。車両名は「ENEOS X PRIME GR GT3 concept」。豊田章男会長がオーナーを務めるルーキーレーシングの「TEAM ENEOS ROOKIE」が走らせ、初めてのレースを49周走り切って19位で完走しています。
GR GT3は、2025年12月5日に公道用のフラッグシップスポーツ「GR GT」とともに世界初公開されたモデルです。これまではテスト走行やイベントでのデモ走行が中心でしたが、今回はほかのGT3マシンと同じコースを走る「本番のレース」に初めて投入されました。チームは今シーズン、メルセデスAMG GT3で6戦を戦ってきましたが、もてぎの2連戦からGR GT3 conceptに車両を切り替えています。
市販のGR GT3は、お客様(カスタマーチーム)向けに販売されるレース専用車です。モータースポーツに関心のある方はもちろん、2027年頃の発売を目指すGR GTに興味がある方にとっても、その仕上がりを占う重要な一戦になりました。
この記事では、GR GT3 conceptの実戦デビューの内容、決勝結果、車両の特徴とスペック、GR GTとの違い、今後の発売時期まで、わかりやすくまとめました。記事中の写真は、開発中の車両です。


そもそも新型GR GT3とは?GRがゼロから作った初めてのGT3
GR GT3は、公道を走るフラッグシップスポーツ「GR GT」をベースにした、FIA GT3規格のレーシングカーです。GT3は、市販のスポーツカーをもとに作られるレース車両の規格で、世界各地の耐久レースやスプリントレースで使われています。メーカーがレース車両をお客様に販売し、プライベートチームがそれを使って戦う「カスタマーレーシング」の中心となるカテゴリーです。
トヨタはこれまで、レクサス「RC F」をベースにした「RC F GT3」をGT3車両として展開してきました。これに対してGR GT3は、GAZOO Racing(GR)がゼロから作り上げた初めてのGT3と位置づけられています。開発の狙いは「ドライバーファースト」。プロドライバーだけでなく、アマチュアのジェントルマンドライバーを含め、だれが乗っても乗りやすいクルマを目指しています。
GR GT3の原点は、2022年1月の東京オートサロンで公開されたコンセプトモデル「GR GT3 Concept」です。その後、市販を前提とした開発車両として2025年12月にGR GTとともに正式に発表され、2026年1月の東京オートサロン2026で一般向けにお披露目されました。そして今回、ついに実戦の舞台に立ったことになります。
【実戦デビューまとめ】新型GR GT3のスーパーGT参戦はここがポイント
今回の実戦デビューの主なポイントは以下の通りです。
- 参戦レース:2026 AUTOBACS SUPER GT 第3戦・第8戦 モビリティリゾートもてぎ(2連戦)
- クラス:GT300クラス(ゼッケン32・TEAM ENEOS ROOKIE)
- 車両名:ENEOS X PRIME GR GT3 concept
- ドライバー:石浦宏明選手/鈴木斗輝哉選手
- 参戦の形:GTA(スーパーGTの運営団体)などの協力による「特認」でのオープン参戦
- 第3戦の結果:49周を走り切って19位で完走(ベストラップ1分48秒117)
① メルセデスAMG GT3からGR GT3 conceptへ車両を変更
ルーキーレーシングは2026年シーズン、GT300クラスにメルセデスAMG GT3で参戦し、ここまでの6戦で合計57ポイントを獲得してきました。チームとAMG GT3の付き合いは2023年のスーパー耐久(ST-Xクラス)から始まり、2シーズンを戦ったあと1年の空白をはさんで、今季のスーパーGTに参戦していました。
チームは2026年10月26日、シーズン終盤のもてぎ2連戦からGR GT3 conceptに車両を切り替えると発表しました。シーズンの途中で、しかもタイトル争いが大詰めを迎える最終盤にメーカーの開発車両を投入するのは異例のことです。

② 「特認」によるオープン参戦
GR GT3はまだ開発中の車両のため、通常の形でシリーズに組み込まれたわけではありません。スーパーGTを運営するGTAや関係者の協力を得て、「特認」という特別な扱いでオープン参戦しています。開発中の車両をシーズン途中から走らせるための、通常のシリーズ参戦とは別枠の扱いだという点は押さえておきたいところです。
つまり今回の参戦は、順位やポイントを狙うためというより、本番のレース環境で車両を試し、課題を洗い出すための場という性格が強いといえます。周りを多くのGT3マシンが走るレースでは、テスト走行では分からない、抜きつ抜かれつの状況や、ピット作業・ドライバー交代といった実戦ならではの経験が得られます。
③ 第3戦は19位で完走
11月7日に行われた第3戦の決勝で、32号車GR GT3 conceptは49周を走り切り、19位でチェッカーを受けました。優勝した96号車(K-tunes RC F GT3)からは1周遅れ、ベストラップは1分48秒117でした。初めてのレースで大きなトラブルなく完走したことは、開発の面では大きな成果です。
興味深いのは、GT300クラスを制したのがレクサス「RC F GT3」だったことです。トヨタのGT3の「現役」と「次世代」が同じレースを走り、現役のRC F GT3が勝利、次世代のGR GT3がデビュー戦を完走という結果になりました。第8戦の決勝は11月8日に行われます。

新型GR GT3の価格は?
GR GT3の販売価格は、2026年11月8日時点で未発表です。GR GT3はナンバーを付けて公道を走ることはできないレース専用車で、販売先はレースに参戦するチームやドライバーになります。
| モデル | 種類 | 駆動 | 価格 |
|---|---|---|---|
| GR GT3 | FIA GT3規格のレース専用車 | RWD(後輪駆動) | 未発表 |
| GR GT(参考) | 公道用スポーツカー | FR(後輪駆動) | 未発表 |
ベースのGR GTも価格は発表されていません。トヨタはGR GT3について、レースに参戦するお客様を支えるサポート体制づくりも進めるとしており、価格はそうした体制とあわせて発表されるとみられます。
新型GR GT3のボディサイズ
公表されている寸法は、開発車両の数値です。最終的な仕様とは異なる可能性があります。
| 項目 | GR GT3 | GR GT(公道用) |
|---|---|---|
| 全長 | 4,785mm | 4,820mm |
| 全幅 | 2,050mm | 2,000mm |
| 全高 | 1,090mm | 1,195mm |
| ホイールベース | 2,725mm | 2,725mm |
ホイールベースは公道用のGR GTと同じ2,725mmです。そのうえで全幅は50mm広く、全高は105mm低くなっており、レース専用車らしい、より低くワイドな姿になっています。全長がGR GTより35mm短いのは、前後のバンパーやエアロパーツの形がレース用に作り直されているためと考えられます。
空力を追求!新型GR GT3の外装(エクステリア)
フロント
フロントは、大きく口を開けた冷却用の開口部と、地面すれすれまで下げられたスポイラーが特徴です。ボンネット上にも熱を逃がすための開口部があり、V8エンジンやブレーキをしっかり冷やしながら、車体を路面に押し付ける力(ダウンフォース)を生み出す形になっています。フェンダーは大きく張り出し、幅の広いレース用タイヤを収めています。
リア
リアで目を引くのは、車体の後端に高く据えられた大型のリアウイングです。GT3はレースごとに性能調整(BoP)が行われるため、空力の効率や調整のしやすさも重要になります。GR GT3は「空力性能の追求」を開発の3つのキー要素の一つに挙げており、ベースのGR GTの段階から空力を最優先に形を決めてきたことが、ここでも生かされています。


低重心・軽量・高剛性
GR GT3の車両パッケージは、「徹底した低重心化」「軽量・高剛性」「空力性能の追求」の3つが柱です。骨格には、トヨタとして初めて採用したオールアルミニウム製のフレームを使っています。これはベースのGR GTから受け継いだボディ構造で、軽さと強さを両立しながら、エンジンを低く積むことで重心を下げています。
だれでも乗りやすく!新型GR GT3の内装(コックピット)
コックピットは、レース専用車らしく必要なものだけに絞り込まれています。ステアリングには多くのスイッチがまとめられ、走りながらでも手を離さずに操作できる配置です。その奥には液晶のディスプレイが置かれ、速度やエンジン回転、各種の警告などを確認できます。
GR GT3が重視しているのは、プロだけでなくジェントルマンドライバーにも扱いやすいことです。GT3のレースでは、体格の違う複数のドライバーが1台のクルマを交代で運転するのが一般的です。運転姿勢の合わせやすさや、乗り込みやすさ、視界の良さといった点も、カスタマー向けのレース車両では大切な性能になります。

新型GR GT3のパワートレインとスペック
| 項目 | GR GT3 | GR GT(公道用・開発目標値) |
|---|---|---|
| エンジン | V型8気筒ツインターボ | V型8気筒ツインターボ |
| 排気量 | 4L | 3,998cc |
| ハイブリッド | なし | 1モーターハイブリッド |
| 駆動方式 | RWD(後輪駆動) | FR(後輪駆動) |
| 最高出力 | 未発表 | システム650ps以上 |
| 骨格 | オールアルミニウム | オールアルミニウム |
エンジンは、GR GTと同じく新開発の4L V8ツインターボです。ただし、GR GTが1モーターのハイブリッドを組み合わせるのに対し、GR GT3はレースの規定にあわせてハイブリッドを持たないエンジン単体の構成になっています。GT3のレースでは、レースごとに車両の重さや出力が調整されるため、レース用の最高出力は公表されていません。
今回の第3戦では、GR GT3 conceptは決勝を49周走り切りました。デビュー戦で完走したことで、新しいV8エンジンやアルミ骨格の耐久性を、実際のレースの負荷の中で確かめる第一歩を踏み出したといえます。

新型GR GT3が走ったスーパーGT「GT300クラス」とは?
スーパーGTは、日本国内で最も人気の高いツーリングカー(ハコ車)レースのシリーズです。速さの異なる2つのクラスが同時に走るのが特徴で、上位のGT500クラスにはトヨタ・日産・ホンダの専用マシンが参戦し、もう一つのGT300クラスにはGT3規格の車両をはじめ、さまざまなメーカーのマシンが参加しています。
GT300クラスでは、ルーキーレーシングがこれまで使ってきたメルセデスAMG GT3をはじめとする海外メーカーのGT3車両と、日本メーカーの車両が同じコースで競い合います。世界の主要なGT3マシンと直接比べられることが、GR GT3のテストの場としてスーパーGTが選ばれた大きな理由の一つと考えられます。
トヨタのGT3の歴史
トヨタのGT3車両としては、これまでレクサス「RC F GT3」が国内外のレースで活躍してきました。今回のもてぎ第3戦でも、RC F GT3がGT300クラスで優勝しています。GR GT3は、そのRC F GT3に続く次世代のトヨタ製GT3という位置づけで、GR GTという専用のベース車から開発された点が大きな違いです。
新型GR GT3の発売日はいつ?
トヨタは、GR GTとGR GT3を2027年頃の発売を目指して開発中としています。カスタマー向けの具体的な発売日、販売価格、サポート体制の詳細は、2026年11月8日時点で発表されていません。今回走った車両も「concept」の名前が付いた開発車両で、最終的な仕様とは異なる可能性があります。
ルーキーレーシングが2027年シーズン以降にGR GT3でどのレースに参戦するのかも、公式には発表されていません。もてぎ2連戦で得られたデータが、市販に向けた開発にどう生かされるのかが注目されます。
今後チェックしたい3つのポイント
1つ目は、第8戦の結果です。もてぎ2連戦のもう1レースとなる第8戦の決勝は11月8日に行われます。2レース目で順位やペースがどう変わるのかは、開発の進み具合を見るうえでの手がかりになります。
2つ目は、2027年の参戦計画です。GR GT3がどのシリーズやどの耐久レースに投入されるのか、またカスタマーチームの手に渡るのはいつなのかは、今後の公式発表を待つ必要があります。
3つ目は、公道用GR GTの情報です。GR GT3とGR GTは、アルミ骨格や4L V8ツインターボなど多くの部分を共有しています。GR GT3のレースでの経験は、公道用のGR GTやGRの市販車づくりにも生かされるとみられるため、GR GTの価格や発売日の発表にも注目です。
新型GR GT3に関するよくある質問(FAQ)
Q. GR GT3が初めてレースに出たのはいつですか?
A. 2026年11月7日に決勝が行われたスーパーGT第3戦(モビリティリゾートもてぎ)のGT300クラスです。
Q. デビュー戦の結果は?
A. 49周を走り切って19位で完走しました。ベストラップは1分48秒117です。
Q. だれが運転しましたか?
A. TEAM ENEOS ROOKIEの石浦宏明選手と鈴木斗輝哉選手です。
Q. GR GT3はハイブリッドですか?
A. いいえ。公道用のGR GTはV8ツインターボに1モーターのハイブリッドを組み合わせますが、GR GT3はハイブリッドを持たない4L V8ツインターボです。
Q. GR GT3は一般の人も買えますか?
A. GR GT3はレース専用車で公道は走れません。販売先はレースに参戦するチームやドライバーになる見込みで、価格や販売方法は未発表です。
まとめ:新型GR GT3はデビュー戦を完走、市販化へ大きな一歩
トヨタのGR GT3は、2026年11月7日のスーパーGT第3戦で実戦デビューを果たし、初めてのレースを19位で完走しました。特認によるオープン参戦で、順位よりも本番のレース環境で課題を洗い出すことが目的の参戦です。GT300クラスでは同じトヨタのRC F GT3が優勝しており、トヨタのGT3の「現在」と「これから」が同じ舞台に並んだレースにもなりました。
GR GT3とGR GTは、2027年頃の発売を目指して開発が続いています。価格や販売方法、2027年の参戦計画は未発表なので、今後の公式発表をこまめにチェックしておきましょう。
最新情報が入り次第、随時更新していきます。

