日産自動車は、中東地域の多様なニーズに応えるべく、フラッグシップSUVである「パトロール」シリーズに新たな選択肢を加えました。モータースポーツの魂を受け継ぐハイパフォーマンスブランド「NISMO」が手掛けた新型「パトロールNISMO」です。2025年6月25日に世界初公開されたこのモデルは、パトロール史上最高の出力を誇り、2025年7月より中東地域での販売が予定されています。日本モデルも導入されるか注目のポイントとなります。
■ 発表概要
- 日産がフラッグシップSUV「パトロール」の史上最高性能モデルとなる新型「パトロールNISMO」を世界初公開。
- 主に中東地域のユーザーニーズに応えるために開発され、2025年7月より同地域で販売を開始する予定。
- 標準モデル、「パトロールPRO-4X」に加え、モータースポーツ由来の高性能モデルとしてラインナップの頂点に位置づけられる。
■ パワートレイン
- エンジン:NISMO専用チューニングが施されたV型6気筒3.5リッターツインターボエンジン「VR35DDTT」を搭載。
- 最高出力:495HP / 5600rpm
- 最大トルク:700Nm / 3600rpm
- 特徴:日産のいわき工場で生産され、NISMOの象徴である赤いエンジンカバーとスペシャルメタルプレートが装着される。
- トランスミッション:エンジンの高出力化に合わせて専用チューニングされた9速ATを搭載。パドルシフトによるマニュアル操作も可能。
■ エクステリアデザイン
- コンセプト:一目でNISMOとわかるデザインと、サーキットで培われた優れた空力性能を両立。
- フロント:立体的なハニカムメッシュを持つ専用Vモーショングリル、冷却性能を高めるエアカーテン、ダウンフォースを生むカナード形状のフロントスポイラーを装備。
- リア:延長されたリアスポイラーと、複雑な形状のレイヤード・ディフューザー、エアスプリッターにより、空気の流れを整流し高速安定性を向上。
- アクセント:フロント、サイド、リアにNISMOの魂を象徴する赤いアクセントラインが施されている。
■ インテリアデザイン
- 基調:ブラックを基調とし、高級感のあるスエード調表皮、精巧な金属調フィニッシャー、カーボン調加飾を組み合わせ、上質でスポーティな空間を演出。
- 専用装備:NISMOロゴが刺繍された専用スポーツシート、赤いシートベルト、赤いリング付きスタータースイッチ、アルミ製ペダルなどを採用。
- スポーツシート:本革と赤いスエード調素材のコンビネーション。電動ボルスター調整機能を備え、コーナリング時にドライバーの身体を強力にホールドする。
■ シャシー&パフォーマンス
- サスペンション:NISMOが専用チューニングした電子制御ダンパーを搭載。リアルタイムで減衰力を自動調整し、鋭いコーナリング性能と高速巡航時の安定性を両立。
- ステアリング:サスペンションに合わせて電子制御パワーステアリングも専用に調整。速度域に応じた最適な操舵力を提供する。
- ブレーキ:新設計のフロントバンパーによりブレーキの冷却性能が向上。ブレーキディスクの温度を6%低下させ、高負荷時でも安定した制動力を確保。
- ホイール:世界的なホイールメーカーRAYS社と共同開発した、軽量・高剛性な22インチ鍛造アルミホイールを装着。
- サウンド:専用エキゾーストシステムと室内のアクティブサウンドエンハンスメント(ASE)により、ドライバーを高揚させる迫力あるエンジンサウンドを実現。
■ ボディカラー
- NISMO専用色である「NISMOステルスグレー」を含む全5色を展開。
- モノトーンとツートーンを組み合わせることで、6つのバリエーションから選択可能。
パトロールNISMO:究極のSUVパフォーマンスを追求
新型「パトロールNISMO」は、日産が長年培ってきたモータースポーツの知見と技術を惜しみなく注ぎ込み、SUVの力強さとサーキットで培われた卓越したパフォーマンスを融合させた一台です。中東市場では、すでにブランドを象徴する「パトロール」と、よりタフな走りを追求した「パトロールPRO-4X」が展開されていますが、今回「パトロールNISMO」が加わることで、ユーザーはさらに幅広い選択肢の中から、自身のライフスタイルや走りの好みに合わせて最適な一台を選べるようになりました。
パワートレイン:圧倒的な動力性能を誇るVR35DDTTエンジン
新型「パトロールNISMO」の心臓部には、NISMO専用にチューニングされたV型6気筒3.5リッターツインターボ「VR35DDTT」エンジンが搭載されています。このエンジンは、最高出力495HP(約369kW)を5600rpmで、そして最大トルク700Nmを3600rpmで発生させる圧倒的なパフォーマンスを発揮します。日産のいわき工場で生産されるこの特別なエンジンには、NISMOの証である赤いエンジンカバーとスペシャルメタルプレートが誇らしげに装着されています。
この高出力エンジンに合わせて最適化された9速オートマチックトランスミッションとパドルシフトの組み合わせは、ドライバーにダイレクトで応答性の高い走行感覚を提供します。市街地でのスムーズな加速から、山岳路でのパワフルな登坂、そして高速道路での安定したクルージングまで、あらゆる走行シーンにおいて意のままの走りを実現し、ドライバーは常に「パトロールNISMO」の持つポテンシャルを最大限に引き出すことができるでしょう。
項目 | パトロール NISMO | パトロール | 差異(NISMO vs. パトロール) | 備考 |
---|---|---|---|---|
寸法 | ||||
全長(mm) | 5,295 | 5,205 | +90 | フロント/リアオーバーハングの延長による |
全幅(mm) | 2,070 | 2,030 | +40 | NISMO専用エアロパーツによる |
全高(mm) | 1,945 | 1,945 | 変更なし | |
ホイールベース(mm) | 3,075 | 3,075 | 変更なし | |
フロントオーバーハング(mm) | 1,020 | 990 | +30 | 新設計フロントバンパーによる |
リアオーバーハング(mm) | 1,200 | 1,140 | +60 | 延長されたリアスポイラーとディフューザーによる |
トレッド(前)(mm) | 1,730 | 1,730 | 変更なし | |
トレッド(後)(mm) | 1,730 | 1,730 | 変更なし | |
アプローチ角/ランプ角/デパーチャー角 [°] | 23 / 26 / 25.5 | 27.5 / 27 / 27 | 小さくなっている | エアロパーツ装着によりオフロード性能に影響 |
最低地上高(mm) | 195 | 244 | -49 | スポーツサスペンションによる車高低下 |
タイヤ/ホイールサイズ | 275/50R22 | 275/50R22 | 変更なし | NISMOは鍛造ホイールを採用 |
重量 | ||||
車両重量(kg) | 2,817 | 2,813 | +4 | NISMO専用パーツによるわずかな増加 |
乗車定員 | ||||
定員(人) | 8 | 8 | 変更なし | |
エンジン | ||||
排気量(cc) | 3,492 (ツインターボ) | 3,492 (ツインターボ) | 変更なし | |
最高出力(HP @rpm) | 495 @ 5600 | 425 @ 5600 | +70 | NISMO専用チューニングによる |
最大トルク(Nm @rpm) | 700 @ 3600 | 700 @ 3600 | 変更なし | トルク発生回転数は同じ |
エクステリア:機能美を追求した空力デザイン
新型「パトロールNISMO」のエクステリアは、一目でNISMOとわかるアグレッシブでありながらも洗練されたデザインが特徴です。卓越した空力性能を追求し、あらゆるパーツがその機能性を高めるように設計されています。
フロントフェイスには、縦と横のラインが織りなすVモーショングリルと、立体的なハニカムメッシュが採用されており、ラジエーターへの空気流入を最適化することでエンジンの冷却性能を向上させています。フロントバンパーの左右に設けられたエアカーテンと、カナード形状のフロントスポイラーは、走行中の風の流れを緻密にコントロールし、空気抵抗の低減と同時にダウンフォース効果を生み出します。これにより、高速走行時における車両の安定性と接地性が飛躍的に向上しています。
リアデザインにおいても、延長されたリアスポイラーと、エッジが重なって見えるレイヤード・ディフューザー形状のリアバンパーが、車両後方の空気の流れを効果的に整流し、空気抵抗を低減します。さらに、バンパーの両端に配されたエアスプリッターは、ボディサイドからの風の流れを理想的に剥離させる役割を果たし、車両全体の空力性能を一層高めています。NISMOを象徴する赤いアクセントが随所に施されたこれらの機能的なエクステリアパーツは、「パトロールNISMO」の強力な存在感を際立たせています。
インテリア:スポーツマインドを刺激する上質な空間
新型「パトロールNISMO」のインテリアは、高性能モデルにふさわしいスポーティさと上質さを兼ね備えた空間が広がっています。ダッシュボード、シート、ステアリング、ドアパネルはブラックを基調とし、精巧な金属調のフィニッシャーと高級感あふれるスエード調の表皮が採用されています。
随所に配置された赤いシートベルトやスタータースイッチ、カーボン調の加飾は、ドライバーのスポーツマインドを刺激し、NISMOモデルならではの特別な雰囲気を演出します。ヘッドレスト部分にNISMOロゴが刺繍されたスポーツシートは、本革と赤いスエード調素材の組み合わせが特徴です。電動ボルスター調整機能が備わっており、体の滑りを抑えながらしっかりと身体をホールドすることで、長距離ドライブでも疲れにくく、ハードなコーナリング時にも安定したドライビングポジションを維持できます。
ドライビング性能:NISMOのDNAを受け継ぐ走行性能
新型「パトロールNISMO」は、NISMOがモータースポーツで培ってきた知見と技術を余すところなく反映し、そのドライビング性能はさらに高められています。
NISMOによって特別にチューニングされた電子制御ダンパーは、リアルタイムで減衰力を自動調整する能力を備えています。これにより、鋭いコーナリング性能と、砂漠地帯のような高速クルージング時における安定性を高次元で両立しています。制御応答性が向上したことで、路面状況の変化に瞬時に対応し、常に最適な乗り心地とハンドリングを提供します。
サスペンションの変更に合わせて、電子制御パワーステアリングもNISMO専用にチューニングされています。都市部での低速走行時には、取り回しの良さを重視して操舵力が軽く設定されており、駐車や細い道の走行が容易に行えます。一方、高速走行時には、路面状況を的確に把握できるよう操舵力が適度に重く調整され、安定した走行と安心感のあるドライビングをサポートします。
高出力化されたエンジンに合わせて採用された専用のエキゾーストシステムは、深みと迫力のあるサウンドを奏で、ドライバーをその気にさせる鼓動を届けます。さらに、室内のアクティブサウンドエンハンスメント(ASE)システムと組み合わせることで、エンジンサウンドの音質を一層高め、ドライバーは「パトロールNISMO」をドライブする高揚感を全身で感じることができます。
ホイールには、RAYS社と共同開発された22インチ鍛造アルミホイールが採用されています。この9スポークデザインのホイールは、リム幅をワイド化しながらも、軽量化と高い剛性を両立しており、バネ下重量の軽減に貢献しています。ホイールの大きな開口部は、デザイン性だけでなく、ブレーキの冷却効果を向上させる機能性も持ち合わせています。グロスブラックと切削加工が施されたこのホイールは、NISMOのロゴと相まって、上質感と機能性の両方を感じさせるデザインです。高性能タイヤとの組み合わせにより、より高い次元での高速安定性とコーナリング性能が実現されています。
その他の装備とカラーバリエーション
新型「パトロールNISMO」には、スポーティ感をさらに高めるアルミ製のアクセルペダルとブレーキペダルなども採用されており、NISMOモデルを所有する喜びを細部にまで感じることができます。
ボディカラーは、ホワイトパール、グレーメタリック、ブルーメタリック、ブラックパール、そしてNISMO専用色のNISMOステルスグレーの5色が用意されており、さらにモノトーンとツートーンの組み合わせにより、合計6種類のバリエーションから選択することが可能です。これにより、ユーザーは自身の個性を表現する一台を見つけることができるでしょう。
新型「パトロールNISMO」の日本市場導入に関する考察
新型「パトロールNISMO」が中東市場向けに開発されたことは明確に示されていますが、日本市場への導入の可能性については、いくつかの観点から考察することができます。
まず、市場のニーズと特性が挙げられます。「パトロール」は元来、中東や北米といった広大な国土を持ち、オフロード走行や牽引能力が重視される地域で高い人気を誇るフルサイズSUVです。これらの地域では、その圧倒的な存在感と力強い走りが高く評価されています。一方、日本の道路事情は比較的狭く、大型SUVの需要は中東ほど大きくはありません。また、燃費性能や取り回しの良さが重視される傾向が強く、排気量の大きいVR35DDTTエンジンの「パトロールNISMO」が日本のユーザー層に広く受け入れられるかという点は課題となるでしょう。
次に、NISMOブランドの戦略も重要な要素です。NISMOは日産のモータースポーツ活動から生まれたハイパフォーマンスブランドであり、日本国内でも「GT-R NISMO」や「フェアレディZ NISMO」といったスポーツモデルが展開されています。これらのモデルは、サーキット走行を意識した高性能とブランドイメージが確立されており、特定の熱狂的なファン層に支持されています。しかし、「パトロールNISMO」のようなSUVタイプのNISMOモデルは、これまで日本市場には導入されていません。もし日本に導入されるとすれば、日産が日本におけるNISMOブランドの展開をどのように多様化していくかという戦略的な判断が必要になります。
さらに、法規制と環境基準も考慮すべき点です。日本の自動車排出ガス規制や騒音規制は世界的に見ても厳しく、特に大排気量エンジンを搭載する車両にとっては、これらの基準への適合が求められます。中東向けの仕様がそのまま日本で販売できるとは限らず、日本独自の法規に対応するための追加開発やコストが発生する可能性があります。
一方で、日本市場への導入の可能性を完全に否定するわけではありません。近年、日本でもアウトドアブームやSUV人気が続いており、高性能なSUVに対する一定の需要は存在します。また、限定的な台数での特別モデルとして、あるいは受注生産の形で導入される可能性もゼロではないでしょう。過去にも、海外専売モデルが日本で限定販売された事例は存在します。
結論として、現状の情報を鑑みると、新型「パトロールNISMO」が日本市場に正規導入される可能性は、現時点では低いと言えるでしょう。主な理由は、日本の市場ニーズとの乖離、NISMOブランドの日本における展開戦略、そして法規制への適合コストなどが考えられます。しかし、今後の市場動向や日産のグローバル戦略の変化によっては、限定的な形での導入や、将来的に日本市場向けに特化したSUVタイプのNISMOモデルが登場する可能性も考えられます。
編集部から一言
新型パトロールNISMOの登場は、中東の自動車市場、特に高性能SUVセグメントにおいて、新たなベンチマークを打ち立てるものとなるでしょう。ボディカラーには、静謐な輝きを放つホワイトパール、都会的なグレーメタリック、深みのあるブルーメタリック、そして威厳を感じさせるブラックパールに加え、このモデルの特別なキャラクターを象徴するNISMO専用色「NISMOステルスグレー」が用意されています。モノトーンとツートーンを組み合わせることで、全6つのバリエーションから、オーナーは自らの個性を表現することが可能です。
この一台は、単に速さを追求しただけのモデルではありません。それは、日産が誇る技術力の結晶であり、パトロールという偉大なヘリテージへの敬意、そしてNISMOというモータースポーツブランドの情熱が注ぎ込まれた、走る芸術品です。圧倒的なパフォーマンス、機能に裏打ちされたデザイン、そしてドライバーをどこまでも高揚させるドライビング体験。新型パトロールNISMOは、そのすべてを手にし、中東の道を、そして砂漠を、新たな伝説と共に走り始めるのです。この究極のSUVがもたらす興奮と感動は、間違いなく世界中の自動車ファンの心を捉え、語り継がれていくに違いありません。
新型「パトロールNISMO」は、中東地域のお客様の多様なニーズに応えるため、最高のパフォーマンスと洗練されたデザイン、そしてNISMOならではのドライビングプレジャーを追求した一台として、今後の中東市場における日産の存在感を一層強固なものにするでしょう。
日産 ニュースリリース
https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/250625-01-j
日産